銀剣のステラナイツ『四面楚歌』(GM:珪素)


本作は、「どらこにあん」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『銀剣のステラナイツ』の二次創作物です。
(c) Fuyu Takizato / Draconian 2018 / (c) LAM 2018

諏訪月(すわづき)陶花(とうか)(PL:アスハル)/白鷺(はくろ)達一(たついち)(PL:珪素) キャラシート

アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート(PL:珪素)/イーレ・リュニック(PL:缶詰) キャラシート

テトラ・トライア(PL:缶詰)/香取(かとり)陽吾(ようご)(PL:嗣子) キャラシート

セリ=ティンカー(PL:嗣子)/ルバート・アロス(PL:アスハル) キャラシート


メインログ雑談ログ

目次

プリプレイ

GM:それでは清楚美少女ステラナイツを始めます "我々"の決起集会を……!
嗣子:ぱちぱちぱちぱち~!
缶詰:ドコドコドコドン
GM:キャラクター紹介からやっていきましょう。順番はイニシアチブ表の通りで、ブリンガーに続いてシースの紹介をやっていきます
アスハル:いえー
GM:最初はGMのキャラ!GMも普通にプレイヤー参加するし、なんならボスと別人だから……!
GM:キャラシートはこちら。キャラシート
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートです。
アレアテルナ:ある先進的異世界出身の第三皇女でしたが、世界そのものが滅亡してしまい、再建のために奔走しています。
アレアテルナ:なんかGMが自分でキャラ紹介してるのすごい変な感覚だな……
缶詰:不思議と初手!
アレアテルナ:王女ですが、統治政府や上層市民とのコネクションを得て自分の世界を再興するために
アレアテルナ:山の手の学校(聖アージェティア学園)に留学してきています。めちゃめちゃ色んなところを動き回る必要があるので護衛も一人しかつけてません。
アレアテルナ:性格は非の打ち所のない優等生ですが、願いが「私だけのもの」なので……独占欲が強いところを見せていきたい!
缶詰:やった~!意外な一面!
アレアテルナ:勿論王族なので元々貴族の許婚がおり、なんならすぐさま結婚しないと怪異に変貌してしまう宿命を持ってるのですが
アレアテルナ:そのお相手もいなくなってしまった……世界が崩壊しちゃったから……!
缶詰:あわわ……
アレアテルナ:誰か結婚してくれないかな……(チラッ)
缶詰:皇女様にふさわしい相手を…!
アレアテルナ:構成は白のアマランサス。味方(主に自分)に危害を加えながら大火力を発揮する自己中(ファック)大統領
缶詰:王族(トップ)の自覚がありますね
アレアテルナ:後半戦になってくると生命の図書館やより疾きは光の一手で嫌な動きをしはじめるぞ
アレアテルナ:そんな感じです。よろしくお願いします!
缶詰:よろしくお願いします~!
GM:続いてはシースのイーレくんのご紹介です。PC番号とかないんだよなステラナイツ
イーレ・リュニック:皆が舞台の主役というわけですね。
イーレ・リュニック:ご紹介にあがりました、イーレ・リュニックと申します。
GM:キャー
イーレ・リュニック:世界が崩壊する前は、イフトノート王家に騎士として仕えていました。
イーレ・リュニック:周りからは騎士の素質として最優である、と過分な評価を戴いています。
GM:カッコよすぎる……
イーレ・リュニック:世界の崩壊後は、再建を目指すアレアテルナ皇女の力となるべく、護衛として務めさせていただいてます。
GM:機械+魔法文明なので、「騎士」っていう職業の意味するところもこちらとはちょっと違う可能性が高いですね
イーレ・リュニック:魔法をこめた機械や道具を扱う専門職を「騎士」階級としてる…とかありそうですね。
イーレ・リュニック:そういう道具の扱いがうまかったり、次々と剣以外のガジェットを習熟していった騎士クラス、とかなんだと思います
GM:カッコいい ライダーみたいな武器使っててほしい……
イーレ・リュニック:きっとCMのアニメとかでだけ使われる宝具もあります
イーレ・リュニック:一介の騎士候補生から成り上がったわけですが、その出自は貧しい生まれ。
イーレ・リュニック:過去に道を変えるきっかけとなった転機があり、その出来事を胸に理想に邁進しているらしいですが、はたして……?
GM:どっどういうことですか
GM:あの素敵な騎士様がそんなことあるわけ……
イーレ・リュニック:敵対勢力のプロパガンダかもしれませんね……
イーレ・リュニック:イーレ・リュニックの経歴は以上です!公表されている情報以外はわかりませんでした!いかがでしたか?
GM:クソ情報ブログも今や懐かしいぜ
GM:あいつらも滅亡してアーセルトレイに取り込まれたのかもしれませんね
イーレ・リュニック:滅亡の原因を調べてみました!
イーレ・リュニック:一人称は「私」。何をするにも王女様第一でやっていく所存です。よろしく!
GM:よろしくお願いします!
GM:続いて(諏訪月)陶花さんのご紹介に参ります 名字についてる不思議なカッコは一体……?
陶花:かしこまりました
陶花キャラシート
陶花:諏訪月家の跡取り、陶花と申します。
GM:なにっその割には諏訪月がないようだが……
陶花:上流階級然としたお嬢様。聖アージェティア学園の二年生なのでアレアテルナ様と同じ学校に通っている。
陶花:諏訪月家は、統治政府に深く食い込んだ元財閥の家系であり、上層職員のあたりで地位をほしいままにしていました。
GM:立派なおうちだな~。というかアーセルトレイにおける上流階級ってそういうことなんでしょうね
GM:世界崩壊前からロアテラ対策を密かに準備していた特権階級
陶花:異世界転移組にとって、真っ先にコネを作るべきは諏訪月家! 住所は専用の『階層』を持っており、もはやアーセルトレイの今後をほしいままにできる立場!
陶花:でしたが。
陶花:その驕り高ぶった精神をロアテラに狙われ、ものすごい勢いでアーセルトレイを占拠する陰謀を企てた結果
GM:驕り高ぶりすぎだろ
陶花:専用にしていた"階層"ごと崩壊し、滅びました。たぶんステラバトル負けた。
GM:なるほどなあ……でも実際そういう連中いてもおかしくないですね 統治政府の権力相当でかそうだもんな
陶花:ステラバトルに負けるとその階層が滅ぶよ。みんな知っているね。
GM:だから専用の階層を用意する必要があったんですね(一敗)
陶花:とはいえ、その影響力や財産は、本家の階層のみに留まらず。なんとか生き残ったため、没落したお家の後処理を行なっています。
陶花:その手段は……その家名と遺産を目的とした新進気鋭の企業社長に輿入れすること。
白鷺(諏訪月)陶花:書面上は白鷺・陶花になっているものの、交渉に必要なので旧姓名も使っている……という感じです
GM:そういうところもきちんと活用してるの、名家のリアリティあっていいなあ
白鷺(諏訪月)陶花:そもそもそういう用途で育てられてきたので嫁ムーヴは得意だけれど、本人も色々と考えている感じです。
白鷺(諏訪月)陶花:前提条件説明が長くなってしまったが、要するに企業社長愛人の没落令嬢です
GM:興奮してきたな
白鷺(諏訪月)陶花:能力は新ルルブから、琥珀のシロツメクサ。サポートをしながら耐久しながら、ロマン砲を狙います。
白鷺(諏訪月)陶花:ロマン砲は3ラウンド目以降しか使えないだろう
GM:なんだかとんでもないエフェクト書かれてますよ
白鷺(諏訪月)陶花:そんな感じです。既に朽ちた家の残骸ではありますが、いたずらに落ちた瓦礫が被害が広げるのも本意ではありません。
白鷺(諏訪月)陶花:潔い終わりを迎えるため、尽力しております。よろしくお願いいたします。
GM:では続いてそんな陶花さんのシースのご紹介です。
白鷺達一:白鷺達一と申します……読みはハクロタツイチ。
白鷺達一:南斗白鷺拳のハクロだよ
白鷺達一:諏訪月家とは完全に正反対の、新興企業で成り上がったイケイケのド成金。
白鷺達一:経営するサルスト・ホールディングスは製薬事業も手掛けており、異世界由来の疫病の特効薬を開発して世界間融和に貢献したりしたよ。
白鷺達一:ホールディングスなので他の企業もガンガン買収していってます。
白鷺達一:そんな中目をつけたのが解体された諏訪月家関連事業の数々……!
白鷺達一:みんなは厄ネタ扱いして敬遠してるが
白鷺達一:ルール無用の成金社長にとってこんなうまいネタはないぜ なんか美少女もついてきたしな
白鷺(諏訪月)陶花:お買い上げ頂きありがとうございます
白鷺達一:性格は大変悪く、SNSでも差別的発言しまくりレスバしまくり炎上しまくりでもう大変なことになってます
白鷺達一:ろくろ系インタビューもめちゃくちゃ受け、ビジネス書だかなんなんだかみたいな本もめちゃくちゃ出してる
白鷺達一:そもそもアーセルトレイの統治政府下でこんな大規模な企業活動するのが大丈夫なのか怪しいところではあり……
白鷺達一:近い内に破滅して大喜びされそうなムーブばかりしてる男です
白鷺達一:とはいえそうした暴れ野郎の数々はパフォーマンスとしてやってる面も多々あるので
白鷺達一:私生活では印象ほど落ち着きのない男ではないという感じです。性格は悪い(二度目)
白鷺達一:以上です!よろしくお願いします
GM:それでは次のブリンガーのご紹介です。テトラ・トライアさん!
テトラ・トライア:はぁい
テトラ・トライアキャラシート
テトラ・トライア:テトラ・トライア。アーセルトレイ公立大学附属中等学校に通ってる中学生です
GM:か、かわいい~
テトラ・トライア:えへへ。
テトラ・トライア:表情筋は薄く、ぼんやりしてるように見えて専門分野での行動は早いです。
テトラ・トライア:元々はとある犯罪組織の鉄砲玉として育てられてました。
テトラ・トライア:犯罪組織"センチュリオ"はアーセルトレイから他の階層に無理やり進出しては、その世界にしかないものをハックアンドスラッシュしており
テトラ・トライア:その実行部隊として研鑽を積んでいました。
GM:え~~最悪
GM:アーセルトレイを不思議のダンジョンだと思ってやがる
テトラ・トライア:悪いですよねぇ。
テトラ・トライア:行く度に階層が代わり、お宝も復活する!元手もスラムのガキでリーズナブル!
テトラ・トライア:だから滅びました。
GM:面白い発想だなあ 実際完全な無法状態ならありそうな稼業でもある
テトラ・トライア:アーセルトレイ警察が察知して組織ごと鎮圧。その時に助けられた恩人に外の世界に連れ出され、今では立派に学生してます。
テトラ・トライア:年齢的には高等部を主張しましたが、入学時の試験で学力が測られたため、現在では中学生をしています。
GM:統治政府にもこういう警察機構があるんですねえ
GM:中学生にしては発育がいいようだが……?
テトラ・トライア:元々は最低限食べるだけの皮と骨だったんですけどねぇ
テトラ・トライア:食糧事情が改善されて、ぐんぐん背も伸びてます
GM:ありがたいぜ……救助されてくれてありがとう
テトラ・トライア:ごはんおいしい!
GM:よかったね
テトラ・トライア:元々は命令に従うだけの戦闘マシーンでしたが、保護してくれた人に影響を受けて日々感受性を伸ばしています。
テトラ・トライア:現在では卒業した後に警察の力になるため頑張り中。生活費は自分で稼ぐためにバイトを転々としてます!
テトラ・トライア:特技は邪魔を排除することと壁を乗り越えること!よろしくお願いします!
GM:考えてみれば普通にそうか、戦闘スキル持ってるから統治政府の警察を進路にしてるという
GM:かなり当たり前のことをしてるだけなんですね
テトラ・トライア:そうです。真面目に将来を考えた結果ですよ?
GM:ほんとかなあ
テトラ・トライア:ほんとです。テトラ嘘つかない
GM:本当なんですか?テトラさんのシースに意見を伺いましょう
テトラ・トライア:パチパチ(アイコンタクト)
香取陽吾:はいは~い、シースの香取陽吾です。
香取陽吾:さっき紹介に与かりましたアーセルトレイ警察の人です。今25です。歳取ると時間が早いなあ…
香取陽吾:なんかこんな感じのゆるいあんちゃんです。ただし身長は180以上あるし、ガタイもかなりいい。
GM:でもなんだか優しそうだよ?本当にそんな強いのかなあ
GM:というか25なんて全然若いだろ!結婚しろ!
香取陽吾:今はアーセルトレイの学園内派出所に所属しており、まあこんな感じなので学生には舐められがちみたいです。
香取陽吾:ええ?周りが学生だからさ…・・・
香取陽吾:そんな中で結構気安く学生と話したり学生を色々補導したりがんばっています。緩いぞ。
香取陽吾:一応過去は警察特殊部隊に所属しており、
GM:なにっ
香取陽吾:階層外にちょっかいだしたりだされたり”隣人”の人とかのトラブルに対処していました。
香取陽吾:特にテトラちゃんのとかああいうのは駄目!絶対!というわけでがんばりすぎたせいか
香取陽吾:色々ケガして引退し、今の学生連中の所にいる…みたいな感じです。
GM:というか統治政府の警察ってことは、あらゆる異世界から一番戦闘能力の高い連中が集まってるだろうから
GM:「警察」って称号でイメージするよりあり得んくらい強いんだろうな
GM:だから最前線じゃなくて学生と接する環境にいるわけですね 考えられているなあ……
香取陽吾:軍隊というかそう言うの除けばかなり精鋭がいたのかもしれない…
香取陽吾:そういうこと!
香取陽吾:此方としては、まあ保護した子どもたちがきちんと健やかに成長して欲しいよ…っていう思いで見ているようです。
GM:元エリートの優しいお兄さん……嫌いな人がいるはずない!私(私のこと)も俄然お付き合いしたいです
香取陽吾:はは、嬉しいなあ。とはいえ、お仕事中だから受け取れないんだ。ごめんね?
香取陽吾:こんな感じかな!
GM:ありがとうございます!では最後のキャラクターのご紹介……
GM:セリ=ティンカーさんの自己紹介をお願いします
セリ=ティンカーキャラシート
セリ=ティンカー:はーい!妖精美少女なセリ=ティンカーだよ~
GM:やった~ いい言葉ですね、妖精
セリ=ティンカー:元々はティンバーという異世界出身の半妖精で、
セリ=ティンカー:チェンジリングだったりする春の妖精さんです。春を告げる役割がありました。
GM:春を告げるだけでいいんだ 簡単そうなお仕事だね
GM:ぼくもやってみたいなあ
セリ=ティンカー:そしてティンバーの世界は、四季が1年ごとじゃなくて何十年かに一回回るんだけど
セリ=ティンカー:春を告げる妖精さんがいないと冬のまま凍っちゃいます。
GM:た、大変じゃないですか
セリ=ティンカー:なので、何十年かに一回、春を告げる妖精さんが自分を犠牲にして種火にならないといけなかったんですね~
セリ=ティンカー:だが、ロアテラによってもうなくなった!
セリ=ティンカー:その際にいろいろあり、下層のとある階層に落着。
GM:そ、そんな……
セリ=ティンカー:今はシースのお医者様の所にお世話になっています。
セリ=ティンカー:なぜか寿命は世界が滅んだのに伸びたというわけ
GM:とんでもね~設定……!こういう設定考えさせたら嗣子さんの右に出る者はいないだろう
セリ=ティンカー:あと特徴として、種火になる為の巡礼を進めたため、色々なものを失っていますが
GM:またなんでもかんでも失わせて!
GM:あんたどうすんの!そんなんで一人で生きてけるの!
セリ=ティンカー:一番の特徴は脚がうごかないこと。そして、視力が悪い事。
セリ=ティンカー:元々得意なのはダンスだったそうです。今でも唄は得意。
GM:バカ
GM:やめなさい……そういうのを失わせるのは……!
セリ=ティンカー:なので世界漂流してぎりぎりのところで 助けた人がシースだったので そのままお世話になっています。
セリ=ティンカー:お医者様なので、事務員的なことをやったりしてるようです。
セリ=ティンカー:一応今でも力の残滓はあるので、ちょっとした魔術とかを使えたりはする模様。
セリ=ティンカー:とはいえ、もう彼女は世界を救う資格を失ったので、ステラナイトにならなければほぼ無力です。
GM:なんてことだ……でもステラナイトとして戦えるだけ良かったですね
セリ=ティンカー:データは…秘密だぜ!
GM:え……
GM:どうしてですか……一緒に戦いましょうよ……
セリ=ティンカー:何故なら今回のボスである…エクリプスだから……!
GM:ゲボォ~~~ッ
GM:死
セリ=ティンカー:という訳で色々頑張って可愛くしたり唄を歌ったり
セリ=ティンカー:呪われておかしくなったりしようと思います!よろしくお願いします~
GM:おかしくなるな 何も失うな
GM:誰かこの子を助けてくれ~~  セリさんのシースのご紹介です
ルバート・アロス:つまりそう、ぼくの出番だ。
ルバート・アロス:ルバート・アロス。下層で辻医者をやっている青年です。
GM:ウワッイケメンが登場……!
ルバート・アロス:転移組で、かなり医療技術が進んだ国の出身。
ルバート・アロス:こちらに来て絶望はしたものの、その技術で人を救うことを自らの役割と決めつけることにした医療フリーク。
ルバート・アロス:とはいえ元々は医学生なので経験豊富ではなく。治療の最中に怪我をして死にかけていたところ、
GM:またこの人絶望したお医者さんやってる……
ルバート・アロス:通りがかった少女に助けられました。いやあやっぱり異世界の出身、治療魔法もあるのかと感心していたところ、
ルバート・アロス:なんか……元の世界から持ち込めた最後の羽根の力だとかで……
GM:何やってんだお前ェェェェッ
ルバート・アロス:もともと壊れかけてたからって、残った部分を丸ごと……
ルバート・アロス:というわけで彼女の治療を誓いつつ助手として雇っています。
GM:そんなことされちゃったらね……
GM:セリさんが悪いよ
ルバート・アロス:隻眼の医者ではなく、片方が見えすぎるから眼帯している。
GM:カッコいい~!珪素そういう眼帯だ~いすき
ルバート・アロス:妖精パワーアイです
ルバート・アロス:そういうわけで……このぼくが居る限りセリくんの身命は保障されているといってもいい。
GM:頑張って……!相手の不幸がデカすぎるけど……!
ルバート・アロス:全力でステラナイツを執刀しよう。見たまえ、この優れたデータを……
ルバート・アロス:ん? 見えないな。通信悪いのかな
GM:ヒィ~
GM:助けてくれ~~
GM:エクリプスの境遇、キツければキツいほどいいという説があります
ルバート・アロス:仕方ない。セリくんの脚力を100万倍にする研究の続きに戻ろう。
ルバート・アロス:というわけで頑張ります
GM:あ、意外とトンチキな治療を考えてくれてた
GM:ありがとうございます!!以上8名で今回のステラナイツを行うぞ
GM:ステラナイツのいいところってGMがあり得ないくらい簡単で
GM:トレーラーも死ぬほど簡単に作れるんですよね なぜならテンプレがもうできてるから

トレーラー 舞台の幕は上がらない
喝采の声はない
これより始まるのは、世界を喰らう侵略者との戦い
 
異端の騎士が現れる
心と願いを歪ませた、星喰の騎士が現れる
此度の決闘、願いの決闘場フラワーガーデンに咲き乱れるは、
白のアマランサス、琥珀のシロツメクサ、黄のオダマキ
そして舞台の中央に咲くは、一輪の歪な青のヒルガオ
 
願いあるならば剣をとれ
二人の願い、勝利を以て証明せよ




銀剣のステラナイツ『四面楚歌』





【Scene1-1:テトラ・トライア/香取陽吾】

テトラ・トライア:アーセルトレイ積層世界。
テトラ・トライア:ミルフィーユ状に世界が積み重なる構造の中でも、6層を境にその様相は大きく変わる。
テトラ・トライア:その中でも学校の集まる区画、アーセルトレイ公立大学附属中等学校は比較的治安の落ち着いた場所に存在している。
テトラ・トライア:「それはそれとして」
テトラ・トライア:しゃー、がたん。しゃー、がたん、がたん。
テトラ・トライア:ところどころ錆の浮いた自転車(廃棄物。捨てられていたものを修理して使っている)がときおり悲鳴をあげている。

テトラ・トライア:「おとどけものでーす」「はい、おかいけいありがとうございますー」
テトラ・トライア:「またのごりようをー」
テトラ・トライア:「高評価お願いします」
テトラ・トライア:ふう、とひと仕事を終えて、配達のロゴの入ったカバンをカゴに乗せる。
テトラ・トライア:少し遅れて、シャリーン、と型落ちの連絡端末から完了の通知が入っていた。
テトラ・トライア:「世は並べて事もなし……」
テトラ・トライア:達成感に包まれながら、ギギガガと自転車をゆっくりを漕いで行く。
テトラ・トライア:この辺はあまり来ない区画だから、ついでに散歩することにしたのだ

香取陽吾:「お。バイト中かい、勤労少女」どこか草臥れたスーツを着た青年だ。
テトラ・トライア:ギギーッ(高音)。「あっ」
香取陽吾:「うおっ、耳に響く……買い替えない?これ」耳を抑え。
テトラ・トライア:「香取くんだ。こんにちは」頭を下げる。
テトラ・トライア:「まだ使えるから大丈夫だよ。それに、買ってないもの」
香取陽吾:「一応歳は上なんだから君付けじゃなくてせめてさん付けな。…ってまーた節約かい?学生だからって変に切り詰める奴がいるけど…」
テトラ・トライア:「カトリサン」怪しいイントネーション。
テトラ・トライア:「うん。お金貯めなきゃだからね」
香取陽吾:「なんでそこで変なイントネーションになるかな……んー、」
香取陽吾:「一応学生課とかに相談すればきっちりそこらへんの生活プランとか立ててくれる(色々所得とかが危ない学生向け)けど。行きづらいって言うなら一緒に行こうか?」
テトラ・トライア:「うーん」
テトラ・トライア:顎に手を添えて首を傾げる。
テトラ・トライア:「でも、あれ」
テトラ・トライア:「ちゃんと使ったお金とか報告しなきゃいけないから」
テトラ・トライア:「生活が、ばれる」
香取陽吾:「変なオンラインカジノとかゲームとかに手ぇ出した?一応ぼくも謝るから、そうならきちんと言いなさいよ」何処か緩い表情をそれでも少し引き締めて。
香取陽吾:「大人に相談することは恥ずかしい事じゃないからね?むしろ大人になってからそう言うスキル大事だから」
テトラ・トライア:「ゲーム?はしてないよ?」
テトラ・トライア:真面目な表情になったのをまじまじとみつめつつ
テトラ・トライア:「あと、別に生活には困ってない、から」
テトラ・トライア:「大丈夫。うん」
香取陽吾:「じゃあユルカリ(フリマアプリ等。色んな規則の緩さからそう呼ばれる)で変なの買ったりした?ダメよああいうのは……と、変にうるさく言うのも逆効果か」
テトラ・トライア:「うん。正規の値段以外は信用できない」真面目な顔で頷く。
香取陽吾:「大丈夫だ、ってテトラちゃんが言うなら信じるけどね、本当キツかったりヤバくなったら言うんだぞ」
テトラ・トライア:「知らない人に得させようとするはずがないから……」
香取陽吾:「その感想はその感想で不安になるなあ…!」
テトラ・トライア:「生活は、ほんとに大丈夫。教科書は買ってるし、服は予備も買えたし」
テトラ・トライア:「お金を貯めてるのは………」
テトラ・トライア:「卒業後のため……とか?」
香取陽吾:上から下まで少女を眺める。制服の改造とかは無さそうで、寧ろきっちり着込んでいるくらいだ。下手な生徒どもに見せたいくらいである。
テトラ・トライア:じ、と新緑の瞳を逸らさずに顔を見ている。
香取陽吾:「卒業後?いや、確かに金はあればあるだけ色々使えるけど……」
テトラ・トライア:「生活が変わると色々"いりよう"になる……と、聞いたから」
テトラ・トライア:「今のうちに準備してる」得意げな仕草。
香取陽吾:「あ~~……」
テトラ・トライア:「あと、ね」
香取陽吾:「テトラちゃん、一応アーセルトレイエレベーターして役所っていうかウチ(警察)志望だよね?ならこう……いや志望にもよるかぁ…?」
テトラ・トライア:「仕事にちゃんと報酬が出るのは」
テトラ・トライア:「楽しい」
テトラ・トライア:型落ちの端末の画面を見せる。歩合制の料金の振込と、口コミが追加。
香取陽吾:その少女の様子に、少し息を呑む。
テトラ・トライア:『頼んで数分で来たけど待機されてたの?』『自分で行くより早いんだけど』『思考漏れてる?』
テトラ・トライア:得意げ。
香取陽吾:”あの”時にはあんなだった少女が、こういう顔をするのか。
テトラ・トライア:個人情報の流布である。
香取陽吾:「あいやちょっと待った今何かしなかった???」
テトラ・トライア:「進路はそう。今は寮だから引っ越しもあるし……」
テトラ・トライア:「? どうしたの?」
香取陽吾:「いや……なんか怪しい気配が……」
香取陽吾:ごめん、変な挟み方した…と謝りつつ、君の言葉を続けて、と手を振る。
テトラ・トライア:「そう……?あ、この人は他の人には気難しいんだけど、何度かこなしたら諦めてくれて……」シュシュッ。個人情報。
香取陽吾:(聴いていい奴かなあコレ……)
テトラ・トライア:「ところで」
テトラ・トライア:「香取くんはここで何してたの?お仕事?」
テトラ・トライア:「カトリサン」敬称。
香取陽吾:「うん?」君の話を表情をくるくる変えながら聞いていた。「変なイントネーションだなあ。いいよ、今は勤務外だから普段通りで」後で慣れてくれよな、と。
テトラ・トライア:「うん。香取くん、ね」
香取陽吾:「あー、一応帰る途中だったんだ。朝番だったからね」
香取陽吾:「迷子だなんだとか拾い物だとか怪しい奴がなんだとか、普段通りさ」
テトラ・トライア:「そうなんだ」
テトラ・トライア:「じゃあ、今日もいっぱい人を助けたんだね」
香取陽吾:「うん?……ああ、まあ……そう大したことはしてないけど、そうなるのかな…?」
香取陽吾:何処かくすぐったそうに彼は笑った。あまり慣れていないかのようだった。
テトラ・トライア:「うん。香取くんが普段通りなら、きっとそう」
テトラ・トライア:わずかに目を細める。木々の間から陽の光を見るように。
香取陽吾:「大したことはしてないさ」事実そうだった。彼からすれば、学生の面倒を見るのも、お年寄りやらの道案内をするのも、本当に大したことではなかった。
香取陽吾:多くの人が、きっと同意するだろう。
香取陽吾:「テトラちゃんは、どうだったんだい。何か困った事とか変わった事はあった?」
テトラ・トライア:その"多く"に含まれない人がいることを、彼は意識しているだろうか?
テトラ・トライア:"多く"から弾かれて、網の目をすり抜けて、転げ落ちて。
テトラ・トライア:その一番下に、網ではなく掬い上げる"手"が有ったことの驚きを。
テトラ・トライア:「うん。たくさん有った」
テトラ・トライア:「授業内容が進んで、新しい公式と、単語が出たよ」
香取陽吾:「ほう。あのあたりから数学とか難しくなるもんなあ」
テトラ・トライア:「うん、皆困ってた。……私も困った」
テトラ・トライア:「隣のクラスには、教えるのが得意な"隣人"さんが居るらしいって聞いて」
テトラ・トライア:「どうにか引き抜けないか……って話になってたよ」
香取陽吾:「はは。懐かしいなあ。そう言う教えるのが上手い奴、引っ張りだこだったっけ」
香取陽吾:大きくたくましい身体からは、どこか長閑な声がする。「困ってるなら、ぼくが教えたっていいし…問題集とか、自分でやってみてもいいな」
テトラ・トライア:食べるものが変わって、少し身長が伸び始めたけど。
テトラ・トライア:その顔を見上げる角度はまだ変わらない。
香取陽吾:「ああいうの、自分でやってみると意外と分かったりするもんだよ。…本当、先生の言う事はちゃんと聞いておくもんだなあ」
テトラ・トライア:「いいの?じゃあ、教えて」
香取陽吾:君の隣から少し下がった所を歩いている。昔でもそうだった。
テトラ・トライア:「問題集ならたしか、図書室にあったから」
テトラ・トライア:「明日、借りてくるね」
香取陽吾:「うん…?構わないよ。明日も早番だったはずだから」
香取陽吾:「ぼくも昔の教科書とかを引っ張ってこないとなあ。どこに仕舞ったっけ…」
テトラ・トライア:「うん。約束、ね?」
テトラ・トライア:小指を差し出す。
香取陽吾:長閑にさえ見える微笑みを浮かべている。きみを助けたときも、彼はそう言う顔をしていた。血が流れていないのは違いだったけれど。
香取陽吾:「お?はは、流行ってるのかい。じゃあ、指切りだ」此方も差し出す。
テトラ・トライア:「ん」きゅ、と一回りサイズの違う指を絡める。「約束」
テトラ・トライア:ぶんぶん、と降る。
テトラ・トライア:(………ちょっと、嘘ついちゃった)
香取陽吾:「うん、約束だ。明日、君に教えるよ」
テトラ・トライア:正確には嘘じゃない。続きを話してないだけだ。
テトラ・トライア:隣のクラスの物知りさんを襲撃して、勉強会を開催させる企みは発動した。
テトラ・トライア:ただ、その結果として憤懣やる方ないその人が『大人に聞けばいいじゃん!』と叫んだだけで。
テトラ・トライア:(なので、私が勉強するのは他の子のため。では、あるけど……)
テトラ・トライア:「うん。……じゃあ」
テトラ・トライア:「明日、家、行くね」
香取陽吾:「え!?」
香取陽吾:「あ、いや……図書室とかじゃなくてかい」
テトラ・トライア:(口実にしてしまった)感情のこもらない目をやや斜めに向けている
テトラ・トライア:「家」
テトラ・トライア:「ダメ?」
香取陽吾:「いや…別にダメではないが」
香取陽吾:「色々…年頃だろう、きみも。変に噂とかになったりするかもしれないぞ」
テトラ・トライア:「変?どんな噂?」
香取陽吾:少し早口で話す。いや、まったくそういう気持ちはない。ないのだが…
テトラ・トライア:やや不安そうに見る。
香取陽吾:「ええ…?中学生ってもっとこう……進んでるんだと思ってたぞぼくは」
香取陽吾:「噂は……うーん…あそこの警官の家に通って反省させられてるとか、色々だ」
テトラ・トライア:「そんなことね」ほ、と息を吐く。
テトラ・トライア:「大丈夫。香取くんは有名だから」
香取陽吾:実際改めて見てみれば、テトラ――彼女がもう、立派な女の子になっているのは分かる。(これで引いてくれれば……!)
テトラ・トライア:「皆、誤解しない」
香取陽吾:「えっ」どういうこと!?という顔。
テトラ・トライア:「私が有名にした」得意げに胸を張る。バイトの報告より更に。
香取陽吾:「????????………?????」宇宙猫顔。
テトラ・トライア:クラスで聞こえてくる警官の話について、個人を特定したのだ。
香取陽吾:「なっ………なんか最近早番多いなって思ってたけど……!」
テトラ・トライア:「香取くんは人助けをしてて、えらい」
テトラ・トライア:「皆感謝してる」
香取陽吾:「まさかウチの派出所の奴ら……!?」本当かどうかはわからない。
テトラ・トライア:「ふふふ」
香取陽吾:「い、いやね……」なにか色々言おうとして、それが変に傷付ける言葉になりそうで口籠る。
テトラ・トライア:「?」不思議そうに見る。つまり、いつもどおりの無表情だ。
香取陽吾:「本当、ぼく明日からどういう顔して職場行けばいいの!?!?」
テトラ・トライア:「……?」
テトラ・トライア:「いつも通りで、いいんじゃないかな」
テトラ・トライア:「そういう香取くんが、いいと思う」
香取陽吾:中学生/自分で保護した子に手を出した鬼畜警官です、の石文字が背中に乗っているかのように背を折っていた。
香取陽吾:「……そのいつもどおりにならなさそうなんだよな……!!」

GM:テトラ・トライアのブーケを27増加(0 → 27)


【Scene1-2:(諏訪月)陶花/白鷺達一】

諏訪月 陶花:――――かたん、かたん。
諏訪月 陶花:ぷしゅう、と空気の抜ける音がして、バスの扉が開いた。
諏訪月 陶花:聖アージェティアの、通学バス。遥か年少の頃から、この学校に通っていたが。
諏訪月 陶花:諏訪月陶花がこれを使うのは初めてだった。
諏訪月 陶花:構内にある道路に降りて、バス停を見上げる。生徒達は、お互いにお喋りをしながら降りていく。

諏訪月 陶花:「有難うございます」
諏訪月 陶花:運転手に礼をして、バスが去るのを見送った。それから、校舎へと向かう。
諏訪月 陶花:学校を訪れるのは、先日の教師達への聴取以来だ。
諏訪月 陶花:普段通りの生徒として授業を受けに来るのは、およそ一月ぶりになる。
諏訪月 陶花:通りすがった学生に会釈する。上品な彼女たちは、習慣的に会釈を返して。
諏訪月 陶花:そして通り過ぎてから、再びこちらを驚いた顔で見るのだった。
諏訪月 陶花:背中に目がついているわけではないが、視線には敏感だった。
女子生徒:「ねえ、あの子……」
女子生徒:「諏訪月の子でしょ?顔写真流れてたもん」
諏訪月 陶花:「…………」
諏訪月 陶花:廊下を進んで、慣れ親しんだ教室に入る。まだ始業前だが、生徒と教師が来ていた。
諏訪月 陶花:「先生。ご心配をおかけしました。本日より、授業に復帰いたします」
女子生徒:「……大丈夫?」隣の席の生徒が、心配そうに尋ねる。
諏訪月 陶花:「お気遣いありがとうございます。ええ、一通りの手続きは終えました」
女子生徒:「それもそうだけど、その……」
女子生徒:「噂になってたから。今朝の投稿……」
諏訪月 陶花:にこりと瑕疵なく笑う。背筋はぴんと伸びている。
諏訪月 陶花:心配をかけるような笑い方も、背筋の曲げ方も、知らない。
諏訪月 陶花:「…………」
女子生徒:無言で、携帯端末を見せる。

白鷺達一@無企業時代の社長 @PresidentHakuro 8:06
俺が誰と結婚しようが、世の中のほとんどの人間には無関係なこと。
自分の人生にとって損でも得でもないことにそこまで興味を持てるのは暇そうで羨ましいとさえ思う。
そういうバカどものために個人情報を説明してやる義務は一切ない。
せいぜい、品性にお似合いな週刊誌の記事でも信じてろ。

白鷺達一@無企業時代の社長 @PresidentHakuro 7:22
文句ばかり言うのは結局、行動しないやつ。
自分で自分の人生を決められないから、「文句」で他の奴を動かそうとする。

白鷺達一@無企業時代の社長 @PresidentHakuro 7:10
@G73mQfuW3327
朝から不快なもん見せんな。働いてから言えボケ。


諏訪月 陶花:「………………」
諏訪月 陶花:笑顔から次の動作に移るのがやや遅くなったのはあるかもしれない。
教師:「あのー……ということでね、諏訪月さんがね、今日からまた教室に来られるということで」
教師:「欠席していた間のノートなんか……ね。お友達は見せてあげてくださいね」
女子生徒:「……」気まずそうな顔をする。
諏訪月 陶花:「はい。授業の進行は抑えているつもりですが、ご迷惑をおかけしたら申し訳ありません」
女子生徒:「……見る?」気が進まなさそうに。
諏訪月 陶花:「あなたの勉学を優先してくださいませ」
諏訪月 陶花:(あのかたは) 喋る言葉の単語一つ単位で、自分のこれまでの生活環境とはかけ離れている。
諏訪月 陶花:最後の二日で備えた授業の進捗度は。
諏訪月 陶花:8割方は当たっていたが、それでも教師独自の傾向の見極めに不足があった。今夜、一時間ほど修正が必要だろう。

諏訪月 陶花:放課後。
諏訪月 陶花:「………………」 誰も居なくなった教室で、ふぅ、と小さく息をつく。
諏訪月 陶花:周りが帰るのを待っていた、というのもあるが、遠巻きにされている。当然だろう。自分でも、同じ立場ならばそうする。
噂話:(「え、諏訪月さん? なんで?」)
噂話:(「だって崩れたって……」「ほら、聞いてないの?」「誰か確認してきてよ」「できるわけないでしょ!」)
諏訪月 陶花:…………「ありがとうございます」「どうかお気になさらないで」「先生達には了承を頂いております」「上の方の判断ですから」
諏訪月 陶花:ごく僅かな、勇気のある同級生も無碍に弾いた。
諏訪月 陶花:それでいいと思う。彼女らにとって自分は、もう仲良くする価値がない。
諏訪月 陶花:立ち上がり、帰路につく。帰る前に、改めて担任の教師に挨拶をしておこう。
諏訪月 陶花:そう考え、職員室に向かった。
白鷺達一:廊下からでも、職員室が普段とは違うことが分かった。
白鷺達一:騒がしい声が漏れ聞こえてくるのだ。
白鷺達一:「――あっ、じゃあ週末!週末どうです!?」
白鷺達一:「そうなんですよ!系列のとこで新しく下層ツアー始めようって奴らがいるんで」
白鷺達一:「すげー安くできます!面白いですよ~~下層!教頭さんも興味あるでしょ!?」
白鷺達一:「いやいやいやいや、そうなんすよ!ネットだともうひどい書かれようなんですから俺!」
白鷺達一:「実際会うとぜんぜん違うってもう何回言われたか……あ、いやぜひ!お願いします!」
白鷺達一:「勿論!予定入れておきますから!また飲みいきましょう!」

白鷺達一:扉が開く。ブランド物の生地で仕立てたスーツに、さらさらとした銀色の髪。
白鷺達一:顔立ちは整っているが、性根を反映しているのか、どこか歪んでいるようにも見える。
白鷺達一:「……あ」
白鷺達一:「陶花じゃないか。こっちに何か用か」
諏訪月 陶花:「……は、くろさま」
諏訪月 陶花:襟元を抑える。「帰宅する前に、教師に挨拶をと思いました」
諏訪月 陶花:白鷺達一。学校には、彼は「後見人」だと伝えている。
白鷺達一:「チッ」不快そうに舌打ちをする。
白鷺達一:「無駄なことすんな。今更そんな真似したって」
白鷺達一:「お前の印象は上がらない。無駄な投資だ」
諏訪月 陶花:ああなった実家に対し、一時的に援助を申し出てくれている、と。
諏訪月 陶花:実際にはそうであり、そうではない。
諏訪月 陶花:「状況が変わったからといって、軽々にこれまでの態度を変更すべきではありません」
諏訪月 陶花:「状況に応じて態度を変える人物である、と思われてしまいます」
諏訪月 陶花:「教頭先生にはなんと?」
白鷺達一:「別に?まあ、これからも学校には同じ名前で通えよ」
白鷺達一:「結婚の件、あのカス週刊誌が暴露しやがったからな……後始末が大変なんだ」
白鷺達一:頭をガシガシと掻く。
諏訪月 陶花:その手指を見る。
白鷺達一:指輪はつけていない。これまでも、人前に出る時にはつけていなかった。
諏訪月 陶花:ゆるく自分の襟元を抑える。布の奥、胸元に、ネックレスにつないだ金属の輪が揺れている。
白鷺達一:「それにちょうど良かった。今日はどのみち、セキュリティシステムの件で担当者に話するつもりだったからな」
白鷺達一:「行くぞ」
白鷺達一:特に返事を待つこともなく、廊下をスタスタと歩いていく。
諏訪月 陶花:「――――はい」
白鷺達一:「……」
白鷺達一:「久しぶりの学校はどうだ?」
諏訪月 陶花:どちらに、と聞くことはしない。それが自分の役割だからだ。
諏訪月 陶花:「皆さんお変わりがなくて、安心致しました」
白鷺達一:「つまらないならつまらないって言え」
白鷺達一:「学校なんて、制度自体がカス過ぎる。高校まで律儀に通ってた自分をぶん殴りたいくらいだ」
諏訪月 陶花:「………通われていたのですか」
白鷺達一:「学ぶだけならどこでもできるんだ。世界そのものがぶっ壊れたのに、学歴ごときを手に入れてどうする?」
諏訪月 陶花:「ですが……」言いかけて。「白鷺さまのおっしゃる通りですね」
諏訪月 陶花:「お友達などは作られなかったのですか」
白鷺達一:「会社を立ち上げれば嫌でも人と関わることになる。自分とレベルの近い連中にな」
諏訪月 陶花:相手のほうが歩幅が大きい。少しだけ早足になる。
白鷺達一:「しょうもないカスと関わる手間も省ける。そうやって自然に形成された友人関係のほうが遥かに有益だ」
諏訪月 陶花:「含蓄があります」
諏訪月 陶花:生徒達とすれ違う。
諏訪月 陶花:遠巻きなのは相変わらず、忌避感と好奇の視線が三割ほど増している。
白鷺達一:「どうせ皆知ってる」
白鷺達一:「気にしなくていい。一人で帰っても俺は構わないが――」
白鷺達一:「バスを使うのは嫌だろ」
諏訪月 陶花:「……」「いえ。むしろ、早く慣れたいと考えています」
諏訪月 陶花:「ですが」
諏訪月 陶花:「お供いたします」
諏訪月 陶花:す、と斜め前に出る。囁くような声が届くように。
諏訪月 陶花:「妻ですから」
白鷺達一:「…………」
白鷺達一:「ただの契約だ。何度も言わせるなよ――俺は諏訪月を買い上げる契約の一部として」
白鷺達一:「形式上、お前と結婚しているだけだ」
白鷺達一:下校する生徒達の目に晒されながら向かったのは、警備室だった。
白鷺達一:そこから先は、白鷺達一のいつもの仕事である。
白鷺達一:担当者と朗らかに接し、取り入り、自社か系列会社の大口契約を結ばせる。
白鷺達一:社長でありながら、今でもまるで営業担当者のようなことをしている。
白鷺達一:それは、メディアを通して広まった自分の「顔」の強みを理解しているからだ。
警備主任:「それで、私どもとしてはもっと効率的に校内を監視できるような仕組みにしたいのですが」
警備主任:「何分大きな校舎ということもあり……この予算では大変厳しいとは思うのですが……」
諏訪月 陶花:「契約」によって、彼の行動範囲は大きく広がった。今の彼を、たとえ予定にない迷惑な飛び入りだろうと、頭ごなしに追い出すことはできない。
諏訪月 陶花:そしてそれさえ避けてさえしまえば、彼はいくらでも踏み込んでみせる。
白鷺達一:「はいはい、分かります、分かります……」真剣な表情で、校舎内の見取り図を眺めている。
白鷺達一:「ただ、これ以上設置台数を減らすとなると……難しいかもしれませんね……」
警備主任:「どうにかなりませんかね……?」
諏訪月 陶花:「……よろしいですか?」
諏訪月 陶花:手腕を背後から見ていたが、不意に声を出していた。
警備主任:「あ、諏訪月くん……悪いね、退屈させちゃって」
警備主任:「学生の安全ってなると、上から下から突き上げがすごいんだ」
諏訪月 陶花:「あ、いえ……いつも校のためにお気遣い頂きありがとうございます」
警備主任:「最近だってあれだ……"センチュリオ"の摘発とかあっただろ?学生さんは知らないか」
諏訪月 陶花:「さわりくらいしか。それで……」
諏訪月 陶花:「ここ。中庭に複数箇所設置されていますが、これはこちらの……このベランダから一望できます」
警備主任:「おお、本当だ」
諏訪月 陶花:「一般学生には解放されていない場所ですから、カメラがあっても問題ないかと……」
白鷺達一:陶花を小さく肘で小突く。
白鷺達一:(おい。余計な口出しするな)
白鷺達一:(これで3台分水増しできたんだぞ)
諏訪月 陶花:(……失礼いたしました)
警備主任:「これでちゃんと予算に収まるんじゃないか!?いやあ、頭いいねえ諏訪月くん!」
警備主任:「パッと見ただけでこういう……図形?の問題とか分かっちゃうんだなあ」
白鷺達一:「ほんとだあ~っ!全然気付かなかった!」
白鷺達一:「よかったよかった!これで導入……できるじゃないですか!主任さん!」
諏訪月 陶花:「この校舎は特に、大昔から増築が重ねられていますから……」
諏訪月 陶花:「生徒会に申請していただければ、もう少し細かい図面があるかもしれません」
諏訪月 陶花:「ご利用下さい。他の校舎にも、同じようにカメラの設置を見直せるかもしれませんから」
白鷺達一:「お……おい!そういうのはいいんだよ……!」思わず口に出してしまう。
諏訪月 陶花:首を傾げて白鷺に目線を送る。「その際にも、白鷺さまが主導してくだされば」
白鷺達一:「図面の申請と検証でまた時間かかるだろ!せっかく契約がまとまりかけてるところを……」
警備主任:「いやあ勿論、白鷺社長にお願いするつもりですよ!ただ、諏訪月くんの言う通りかもなあ」
警備主任:「大体警備室の把握してない死角が多すぎるんだ。そこかしこで生徒がいちゃついてるって聞くし……全く」
警備主任:「そういうわけでまた来週ご相談しましょう、社長!」
白鷺達一:「え……契約は……?」
警備主任:「はっはっは!今回で予算内に収まるのは分かりましたんで、考える余裕ができました!今度改めてお願いしますよ!」
諏訪月 陶花:「……?」 首を傾げる。
白鷺達一:商談を終えて、二人は警備室を後にする……。
白鷺達一:「あの……なあ……!」
白鷺達一:「なんで余計なこと言った……?」
諏訪月 陶花:「……余計?」
白鷺達一:「計画では今日強引に押し切ってサインまでさせる予定だったんだよ……!」
白鷺達一:「これじゃまた一日分この案件でスケジュール埋まるだろ!」
諏訪月 陶花:「ですが……あの方の持っている図面は明らかに古いものでした。警備員ですので仕方ないのでしょうが」
諏訪月 陶花:「あれでは、いざカメラを設置しても、あとで……ともすれば設置時に、現地が違うと苦情が来てしまいます」
諏訪月 陶花:「その方がお手間ではないかと……」
白鷺達一:「仕方なくは……なくないか!?なんで警備室なのに学校を把握してないんだよ!」
白鷺達一:「だが、あれが古いって気付かなかったのは……俺の落ち度でもある……か……」どうにか納得しようとしている。
白鷺達一:「コピーされてた範囲だと年度の部分が切れてたよな……学生目線じゃないと分からん……いや、まさかとは思うが印刷を見落としてただけか……?」
諏訪月 陶花:「ここは聖アージェティアです。外部委託の業者の、業務縦割り分担は非常に著しく……」
諏訪月 陶花:「……身内の恥ですね」
白鷺達一:「おい!恥って俺のことを言ってるんじゃないだろうな」
白鷺達一:「言っておくが、今のパワーバランスは俺が上!諏訪月が下!だからな!」
諏訪月 陶花:「承っております。あなたには深く感謝しております」
諏訪月 陶花:「あの時、火中の栗と称することすらおこがましい状況の諏訪月に手を出せるのは、白鷺さまくらいでしょうから」
白鷺達一:「どーせ悪食だって言いたいんだろ……フン」
諏訪月 陶花:「差し出がましい口を挟みました。以降は注意いたします」
白鷺達一:携帯端末の画面を見て、不愉快そうに舌打ちする。
白鷺達一:「……災難だったな」
白鷺達一:「世間にこんなことが知られなきゃ、卒業と同時に離婚してやって……」
白鷺達一:「適当な額の慰謝料でもつけて放り出すつもりだった」
諏訪月 陶花:「ええ」 彼にとって、自分との婚約自体が重荷であることは分かっている。
白鷺達一:「そうすれば、後腐れなく……諏訪月のクソとの関わりも絶って、別の人生でも送れただろうにな」
諏訪月 陶花:「……諏訪月の傘下でも、全てが罪があるわけではありません」
諏訪月 陶花:「貴方には、それらの後処理をお願いしています。それが終わりましたら……」
諏訪月 陶花:「残った財産も、何もあなたの自由にして頂いて」
諏訪月 陶花:「わたしは放り出して頂いて構いません」
白鷺達一:「今更そんなマネできるか。俺はイメージ戦略で売ってるんだ」
白鷺達一:「それに、諏訪月全部が悪いわけじゃない――っていうのは」
白鷺達一:「本当はお前が世間からそう見られたがってるんじゃないのか?」
白鷺達一:「諏訪月は『全部悪い』んだよ」
白鷺達一:「それがこの世のイメージだからな」
諏訪月 陶花:「……白鷺様は、お言葉がいつも直截ですね」
諏訪月 陶花:「それでも、切り離せるものは、一つでも多く切り離したいのです」
諏訪月 陶花:「伝染病が起きたとして、病気のものが死ぬのは仕方ありません」
諏訪月 陶花:「伝染病だと疑われただけで迫害に遭う人々がいるとしたら、それは避けられるべき被害者です」
白鷺達一:「……俺の考えは違うな。救われるべきは、マシなものだ」
白鷺達一:端末に映るSNSの画面を叩く。「俺のリプライ欄で喚いてるカスどもみたいな」
白鷺達一:「『元々カス』の連中が謂れのない迫害でカス扱いされようが、知ったことか」
白鷺達一:「そういうものをより分けるには力が必要だ。……金が。もっと金がいる」
白鷺達一:「……だが」
諏訪月 陶花:「?」
白鷺達一:ポケットに手を突っ込んで、遠くの道路を見る。「今日の契約は後回しにして、良かったかもしれないな」
白鷺達一:「少しはマシな契約になる」
諏訪月 陶花:「…………」
諏訪月 陶花:「余分な口出し、だったのでは」
白鷺達一:「帰るぞ。ハイヤーを待たせてる」
白鷺達一:「それとも、やっぱりバスで帰るか?」
諏訪月 陶花:「…………いえ」
諏訪月 陶花:「今日はもう少し、白鷺さまとお話をさせていただければ」
諏訪月 陶花:「夕飯のご予定はお決まりですか?」
白鷺達一:「何か作れ。なんでもいい」
白鷺達一:そのまま、後ろを振り返らずに歩き出す。

GM:白鷺(諏訪月) 陶花のブーケを57増加(0 → 57)


【Scene1-3:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート/イーレ・リュニック】

アレアテルナ:アーセルトレイ第76層。
アレアテルナ:アーセルトレイ深層の多くに言えることだが、この階層は他の階層とは光景からして異なる。
アレアテルナ:都市文明そのものを稼働させる、建造物と見紛うほどに巨大な黒鉄の機械がいくつも動き続ける。
アレアテルナ:その中でも一際巨大な、階層を縦に貫くように生えるいくつもの塔は、炉だ。
アレアテルナ:だが、本来のこの世界の姿――惑星に存在する国家の7割近くを占めていたテアト大陸連邦を知る者からすれば
アレアテルナ:見る者を圧倒するようなこの光景も、小さい、という印象になるかもしれない。
アレアテルナ:世界そのものだった王国は、ひどく狭くなった。今は数ある『滅亡した世界』の一つでしかない。
アレアテルナ:「今日はここで最後だね」

アレアテルナ:白い、王族専用機車から降りながら言う。未だ復興支援の行き届いていない貧民街への慰問のため、第76層へと一時帰国していた。
アレアテルナ:「水たまりがあるよ。足元に気をつけた方がいいかも」
イーレ・リュニック:「お気遣いはありがたいのですが──」
イーレ・リュニック:「その心配は、私の役目ではないでしょうか?」

イーレ・リュニック:蜂蜜色の髪の奥の瞳を、困ったように細めて言う
アレアテルナ:「大丈夫だよ。先に降りるか後に降りるかなんて、大した違いじゃないもの」
アレアテルナ:「それに、上の層と比べたら、ずっと気が楽」
イーレ・リュニック:「そう言われましても、私にとっては大問題なのです。」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様の御身に関わることですので」
イーレ・リュニック:結局、先に降りられてしまったので速やかに場所の外へ。
イーレ・リュニック:馬車に共通する白いデザインの騎士服の裾を汚すような無間をしないように心がける。
アレアテルナ:文明や福祉の外にある市街の光景は、どんな文明だろうと大抵は同じだ。
アレアテルナ:住居に使えそうななにかの隙間を見つけて、その日に手に入れた食料で飢えを凌ぐ。都市の機械などを手に入れられる者はいない。
アレアテルナ:「イーレの仕事はこれからだよ」
アレアテルナ:「みんなの前で復興の約束をする。これからの具体的な支援策と、どうすればその支援に辿り着けるのか……」
アレアテルナ:「わたしが分かりにくいことを言っていたら、合図をしてね」
アレアテルナ:『襲われたら守って』とは言わない。
イーレ・リュニック:「心得ております」
イーレ・リュニック:返事の速さは、慣れ……ではなく、そうあるべしと意識しているがゆえの反応だ。
アレアテルナ:「……」姿勢良くイーレの隣に並んで歩いているが。
アレアテルナ:じっと、隣のイーレを見上げる。
イーレ・リュニック:自らの主は、"敵"を想定して話をしない。彼女にとって、国民とはとく守るべきものだからだ。
イーレ・リュニック:「…………」
アレアテルナ:「イーレ。背が伸びたね」
イーレ・リュニック:「そう、かもしれません」
イーレ・リュニック:目線を、こちらを見上げる少女に返す。
イーレ・リュニック:初めて会った時はその過尾を見上げていたはずだ。
アレアテルナ:「うん。ほんとに伸びてるよ。前……同じこと言った時より、指二本分くらい伸びてる……」
アレアテルナ:かなり背伸びをして、自分の頭の高さと手で比べる。
イーレ・リュニック:「体を作るのは騎士の基本だと、騎士団長殿に扱かれましたので」
イーレ・リュニック:「二本分もですか。よく覚えておいでですね」
アレアテルナ:「え~~?騎士団長さんに言われたら背が伸びるの?」
イーレ・リュニック:「えぇ、実は伸びるんです」
イーレ・リュニック:伸ばせなければ大変なことになるからだ、とは言わない。騎士団内のジョークは内輪ネタだ。
イーレ・リュニック:「命令ですので。食事も美味しいですからね」
アレアテルナ:「じゃあ、どんどん言ってもらうといいね。ふふふふふ、ふふふふふ……」ころころと笑う。
イーレ・リュニック:「ふふ。」その表情を見る時だけ、普段の微笑みとは違う、静かな笑みになる。
イーレ・リュニック:「そうですね。毎日言われたら、塔より高くなってしまうかもしれません」
イーレ・リュニック:「そうなると、体に合う剣の調達が大変そうです」
アレアテルナ:「それはいや。ちょうどいい大きさでいて」
アレアテルナ:「わたしの近衛騎士は一人だけなんだから。王女が命令したら、大きくなるのも止まるでしょう?」
イーレ・リュニック:「仰せのままに。騎士団長殿には、ちょうどいい所で止めてもらいましょう」
イーレ・リュニック:「もちろん。アレアテルナ様の御下命とあらば、騎士団長殿より優先させて頂きます」
アレアテルナ:「真面目」目を細めて笑う。
アレアテルナ:「そろそろ時間だね。行きましょう」
イーレ・リュニック:にこり、と微笑みを返す。
アレアテルナ:貧民支援の演説は、大きなアクシデントもなく終わった。
アレアテルナ:今や唯一の王女がイーレ・リュニック一人だけを連れて自ら訪問したことは、市民達の間では少なからず大きな驚きをもって受け取られ
アレアテルナ:演説とともに告げられた公約も、信じるに足るものだと認識されたらしい。
アレアテルナ:――実情としては、こうした雑務にも王女自らが対応できてしまうほど、世界が狭くなっているのだ。
アレアテルナ:アレアテルナは世界復興政策として、人的資源の大半を実務的労働へと振り分け、担当できる交渉や演説は可能な限り自らの手で行うことにしている。
アレアテルナ:そうして、まるでとんぼ返りのように第76層を去ろうとしていた頃……
子供:「あ、あのっ」
子供:「イーレさんですよね……!一級騎士の!」
イーレ・リュニック:「あぁ。どうかしたのかい?」
イーレ・リュニック:口調をやや柔らかく、優しげなものに変える。
子供:「おれ、イーレさんに憧れてて……きっ、騎士団に入りたいって思ってて……」
子供:「すごいなあって……お、お話できるなんて、思ってなかったから……」ガチガチに緊張している。
アレアテルナ:(話をしてあげて)囁く。
アレアテルナ:(わたしの予定は、大丈夫だから)
イーレ・リュニック:「(はい)」頷きと、唇の動きだけで応える。
子供:「あのう、演説……すごい、よかったです。王女様も、とてもきれいで……」
イーレ・リュニック:「そうか、私に憧れてくれるとは嬉しいな」
イーレ・リュニック:子供に合わせて膝をつき、目線を合わせる。
子供:「はい!ど、どうやったらそんなに強くなれるんですかっ!?」
イーレ・リュニック:真っ白な騎士服の膝が汚れるが、技術者を多く抱えるイフトノートでは仕事で汚した数こそを誉れとする。
イーレ・リュニック:「そうだね。強くなるためならやっぱり、訓練や、技術を学んだりすることも必要かもしれないけど」
イーレ・リュニック:「何より必要なのは、コレだ」
イーレ・リュニック:右手を自分の胸に添える。騎士による宣誓に似たポーズ。
子供:「コレ……」意味も分からず真似をしている。
イーレ・リュニック:「うん。心と意志。もっとわかりやすく言うと」
イーレ・リュニック:「"思い"だよ」
イーレ・リュニック:「私に憧れてくれてるなら、きっと君にも、守りたい誰かが居るのだろう?」
子供:「え……ど、どうかな……母ちゃんとか……?」
イーレ・リュニック:「……ふふ。お母さんがいるんだね。いいじゃないか」
子供:「でも母ちゃんが大事なんてみんなそうだし……おれにはイーレさんにとっての王女様みたいな人っていないから……」
イーレ・リュニック:「大事なのは、その気持ちだよ」
イーレ・リュニック:「私にとってアレアテルナ様が大事なように、君にとってはお母さんが大事で、いいのさ」
イーレ・リュニック:「"大事な人を守りたい"という思い。それさえあれば、人は頑張ることが出来るんだ」
子供:「すごい……」
子供:「イーレさんが言うなら、本当にそうかも、って思います。おれ……頑張って、母ちゃんのこと守ります!」
イーレ・リュニック:「うん」にこり、と笑う。
イーレ・リュニック:「誰かを守りたいという思い。それを忘れずに居れば──」
イーレ・リュニック:「君は、私よりカッコいい騎士になれる」
イーレ・リュニック:パチリ、と片目をつむる。
イーレ・リュニック:「もちろんその時は、私も負けていられないけどね?」
イーレ・リュニック:口調を崩して、冗談を含むように言う
子供:「~~っ、イーレさん……」
子供:感極まったように目を瞑っていたが、ふと慌てたようにイーレを見て、アレアテルナを見る。
子供:「ご、ごめんなさい!ずっと話しちゃって……王女様だってお忙しくあらせら……ですのに」
アレアテルナ:「ううん。イーレだって、君と話せて嬉しいって思ってるよ」
アレアテルナ:アレアテルナは地面に膝を突かない。万民が汚れを尊ぶ国家にあって、唯一白を象徴色とするのが王族である。
イーレ・リュニック:「もちろんです。褒めていただけるのはなにより嬉しいことですからね」
アレアテルナ:「他に聞きたいことはない?わたし達は第1層に行っちゃうから、次にお話できるのはしばらく後になっちゃうかも」
子供:「え、ええ……じゃ、じゃあ、あの……」
子供:「イーレさんと王女様は……い、いつ結婚するんですか!?」
アレアテルナ:「――――ぇっ」赤面する。
イーレ・リュニック:「っ」ドン。胸に置いた手で無寸勁。リアクションを抑え込む。
イーレ・リュニック:横隔膜の痙攣を気合で飲み込んだ。
イーレ・リュニック:「けっ──こん、とは、いきなりだね。どうして?」
イーレ・リュニック:「難しいかもしれないが、私は騎士で、アレアテルナ様は王女で──」
子供:「え……でも、みんな言ってますよ……大人だって……」
子供:「イーレさんは一番立派でカッコいい騎士だから、きっとお似合いだって……」
イーレ・リュニック:「大人も……??」
子供:「ち、違うんですか?」ショックを受けた表情。
イーレ・リュニック:「~~~~~」
イーレ・リュニック:コレが例えば。
イーレ・リュニック:"王女"としての立場の今後を探るために社交場で言われたのであれば、笑顔で受け流すことも可能であったが。
イーレ・リュニック:「…………内緒話だ。少し耳を貸してごらん」
子供:「は、はい」
アレアテルナ:「イーレ。わたしは」不安そう
アレアテルナ:「わたしは?」
イーレ・リュニック:「いえあの」
イーレ・リュニック:「……順番で。一旦順番でお願いします」
アレアテルナ:「ねぇ。ねぇねぇ」子供の手前割り込んでくることはないが、裾を小さくつまんで引っ張ってくるので、気が散る。
イーレ・リュニック:「というわけでだね、君……」
イーレ・リュニック:クイクイされている。体幹がブレることはないが、思考の70%程はそっちに気を取られている。
イーレ・リュニック:騎士団固有スキルの食いしばりだ。すべてを持っていかれてもおかしくはなかった。
イーレ・リュニック:「ええと、いいかな? 結婚というのはお互いの気持が大事だから、片方だけが好きでも出来ないんだ」
イーレ・リュニック:「だからね、私がアレアテルナ様の騎士だとしても、相手が結婚したいと思っていなければ、結婚はできないんだ」
イーレ・リュニック:「わかったかな?」
子供:「でも、イーレさんは……その」
子供:「コレがあるんですよね……!?」
イーレ・リュニック:(くっ、話をちゃんと理解してくれている……!)
イーレ・リュニック:「将来有望だな……!」
子供:「ありがとうございます!!?」わけもわからず一礼する。
子供:「お、おれはこれで……!ありがとうございました、イーレさん!王女様!」
イーレ・リュニック:「うん。……うん」
イーレ・リュニック:「将来が楽しみだな………頑張りなよ」手を振る。笑顔だけは完備。
アレアテルナ:「い……行っちゃったね」
イーレ・リュニック:「行ってしまいましたね」
アレアテルナ:「……」
イーレ・リュニック:「…………」
イーレ・リュニック:「さぁ」
イーレ・リュニック:「次の場所に向かいましょうか」
アレアテルナ:「うん……」
アレアテルナ:機車の中では、街に来た時と同じように隣り合わせで座ることになる。
アレアテルナ:護衛としては当然、そうなるべき位置取りではある。
アレアテルナ:「……ね。イーレ」
アレアテルナ:ちらりと、イーレの横顔を見る。
イーレ・リュニック:「はい」
アレアテルナ:「知ってると思うけど、わたし……決められてた相手が、いなくなっちゃったの」
イーレ・リュニック:「…………そうですね」
イーレ・リュニック:隣の体温をいつもより意識する。心が揺れるほど、表情は意識していつも通りになることを付き合いの長いものは知っている。
アレアテルナ:「あと、その……ね」
アレアテルナ:「"蛹"のこともあるから……侍医さんも言ってること……だから」
イーレ・リュニック:イフトノート王家に伝わる"蛹"の話。特定の年齢までに婚姻を結ばねば訪れる悲劇。
イーレ・リュニック:それは騎士としてなら当然知っている。
アレアテルナ:「ここ100年くらいは、実際に王家から"出ちゃった"わけじゃないけど」
アレアテルナ:「結婚……考えなきゃ、ね。あの子に言われたから思い出したわけじゃないんだよ……」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様」
イーレ・リュニック:「心配は無用です」
イーレ・リュニック:横顔が、いつの間にか向き合うように見ている。
イーレ・リュニック:「貴方が、」
アレアテルナ:「……っ」まっすぐ見つめられて、顔を赤くする。
イーレ・リュニック:これは、"イーレ・リュニック"としては相応しくない、騎士としての逸脱した発言である。
イーレ・リュニック:しかし、立場にふさわしいものではなく、名声が求めるものではなく。
イーレ・リュニック:騎士を目指した少年が抱く心が発させる言葉だ。
イーレ・リュニック:「化物になることは、絶対にない」
イーレ・リュニック:「"オレ"が絶対、そうさせない」
イーレ・リュニック:「どんな手を使っても。だから──安心してくれ」
アレアテルナ:「……ありがとう」
アレアテルナ:「本当は……」手で顔を覆う。
アレアテルナ:「ずっと、怖かったから。……ちょっとだけ」
アレアテルナ:「どんなことをしたって、イーレが助けてくれるんだよね?」
イーレ・リュニック:「あぁ。……えぇ」
イーレ・リュニック:「私が絶対に貴方をお守りします」
アレアテルナ:「覚えてるからね」
イーレ・リュニック:「どうぞ。もちろん、約束を違えることはありませんので」
アレアテルナ:「わたし、物覚えはいいんだからね」
アレアテルナ:少し笑う。
イーレ・リュニック:「存じ上げております。一度出会った、ただの子供の事すら覚えておいでですからね」
イーレ・リュニック:こちらも笑って、少し窓の外に目を移す。
イーレ・リュニック:(…………そうだ。どんなことをしてでも)
イーレ・リュニック:塔のような炉の並び立つ世界。その一つ一つが、どの様な用途か知っている。
イーレ・リュニック:イフトノート王家に伝わる祝福にして呪。19才を未婚で迎えることで、怪物へと変貌するという現象。
イーレ・リュニック:(だが…………形さえ整えば、結婚は、形式でもいい、、、、、、
イーレ・リュニック:王女付きの騎士にまで上り詰めた。周りは自分を信頼してくれている。仕事の中で、知り合いの司祭も増えた。
イーレ・リュニック:いざという時、自分が"王女"を拐って儀式を行うまで、全員の相手をする自信も────ある。
イーレ・リュニック:(……………まぁ)ふぅ、と内心で息を吐く。
イーレ・リュニック:(アレアが円満に結ばれるのが、一番なんだけどな)

GM:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのブーケを65増加(0 → 65)


【Scene1-4:セリ=ティンカー/ルバート・アロス】

ルバート・アロス:アーセルトレイ とある下層
ルバート・アロス:突き抜ける青空が、いやに眩しい、灰色の階層だった。
ルバート・アロス:地平を見渡しても、まともに立っている建物より、瓦礫のほうが多い。大地震にでも見舞われたかのような有様。
ルバート・アロス:そんな階層の一角。あちこち穴は開いているものの、ギリギリで建物の体を為している。
ルバート・アロス:元は教会だったのだろうか。屋根の先端には、小さな鐘が残っている。
ルバート・アロス:玄関には、大雑把に文字が書き殴られた板が下がっていた。
ルバート・アロス:【アロス医療所】
患者:「ぎゃあああああ~~~~~!」
患者:静寂とはかけ離れた、大男の野太い悲鳴が響き渡る。
患者:だが、慣れたものなのか、周囲の小鳥すら逃げない。

ルバート・アロス:「大の大人が喚くな。僕は言ったぞ、何度も言った!」
ルバート・アロス:「薬を飲め! 怪我した箇所を動かすな! 酒を飲むな!」
ルバート・アロス:細身の男が、大男を抑え付ける。傷口を洗い、添え木と包帯を巻き直す。
患者:「だ、だってよう、先生、あの薬の苦さと言ったら……!」
ルバート・アロス:「百歩譲って、復興のために働くのは許そう……」
ルバート・アロス:「酒を飲むな! 薬を飲め! だから長引くんだろうが~~~ッ」
患者:「せっ先生! ギャアアアアアア~~~~~!」
患者:……十数分後の処置の後。片腕から背中にかけての大きな裂傷を完璧に血止めされた男が。
患者:「ウッウッ、先生……あ、ありがとよ……」
ルバート・アロス:「礼は完治してからだ。……引きつりを感じたら言え。痒みが出たら処方した軟膏を使え」
ルバート・アロス:「次の処置は十日後だ。必ず来い。さもなくば地獄の果てまで追って治療してやる」
患者:「ひっ、ひぇえええ~~~~~!」
ルバート・アロス:ほうほうのていで逃げ帰った患者を見送る。
ルバート・アロス:「ふう。今日の予定はこのくらいか」
ルバート・アロス:軽く肩を鳴らす。治療となれば不眠不休で動き、大男から獣人、アンドロイドさえ屈服させるが。
ルバート・アロス:緊急時の馬鹿力であり、本人の体躯は細い。望むならあと腕の太さが三倍くらいほしい。
ルバート・アロス:そのまま診察室に戻る。
セリ=ティンカー:「‐‐せんせ?」何処か鈴を鳴らしたような、澄んだ高い声がする。
セリ=ティンカー:「今日は大体終わったよ。後は事務処理とかだけど、こっちでやっておくから…あ」

セリ=ティンカー:燃える赤の髪と、そこに浮かぶ光の輪ハイロゥ。誰もが彼女を一目見たなら、それがまず眼へ焼き付く。
セリ=ティンカー:そうしてから、眼鏡をかけた卵型の整った顔、細くも均整の取れた腕と胴、そして脚が車椅子に収まっていることに気付かされる。
セリ=ティンカー:そんなどこか浮世離れた少女だった。薄く汚れた黒いポンチョと薄い患者服を着ていても、その印象は変化しない。
ルバート・アロス:「ああ。ありがとう、セリくん」 眼帯の奥の右目が疼く。椅子に浅く座る。
セリ=ティンカー:「大分汗ひどいね。拭くよ~」車椅子から腕を伸ばして取った布巾で君の汗を拭う。
ルバート・アロス:「まったく、信じられん。大の男があの程度の苦さの薬でどうのこうと……」
ルバート・アロス:「あのな、セリくん」「今は手術中ではないので、汗は自分で拭く」
セリ=ティンカー:「しょうがないよ、苦いの苦手な人は本当に苦手なんだから」苦笑しながら、ん、とがんばって上体を伸ばしている。
セリ=ティンカー:「え~」口をとがらせる。
セリ=ティンカー:「いいじゃないですかあ。あたしが消毒とかもやれますよ~?」
ルバート・アロス:仕方なさげに、頭の位置を下げる。薄茶色の硬い髪。
ルバート・アロス:「手術の予定はないし。やってもらいたいときはこちらから頼むから」
セリ=ティンカー:その硬い髪を、白い繊手がさらりと撫でる。「うーん、いいのに」
セリ=ティンカー:そうして汚れた布巾を手に取り、少女は謡うようにくちずさむ。
セリ=ティンカー:「”つちのめぐみ”。”きぎのしげり”。”しろのひかり”」この世界では聞きなれないリズムとトーン、言葉だった。ちかりと布巾が光ると、真っ白になっている。
ルバート・アロス:揺れる赤い髪。先端に従い少しだけ色が薄くなっていくように見えるのは、
ルバート・アロス:もともとは、発光していたかららしい。
セリ=ティンカー:彼女は、妖精――正確には半妖精なのだ、と君には告げていた。
ルバート・アロス:現実離れした歌。最先端のオゾンを上回る消毒の技術。
セリ=ティンカー:今やあかしたる羽根もなく、伴う光もなく、威ももはや薄れて久しいが、それでも簡単な魔法なら使えるらしい。
ルバート・アロス:「……何度見ても、慣れないな」
ルバート・アロス:「シーツや包帯が使い回せるのはありがたいけど」
セリ=ティンカー:「うちの世界だと一般技法だったんですけどね。いや、妖精の血を引いてないと滅茶苦茶修行しなきゃ無理なんですが」すこしふふんと得意げだ。
ルバート・アロス:彼女に接するときは、少しだけ口調が戻る。医者としての高圧的かつ断定的なものではなくなる。
ルバート・アロス:いかんいかん。彼女だって僕の患者だ。それも、もっとも優先すべき。
ルバート・アロス:「妖精ねえ……病院に幽霊はつきものだけどな」
セリ=ティンカー:昔は、それこそもっとすさまじい事が出来たのだというが。彼女はこうした消毒や小さな生活の魔法への称賛を好んだ。
ルバート・アロス:「清潔な水と空間の確保は、医療技術者には必須……というか前提だからな」
ルバート・アロス:この教会を医療所にするさいも、彼女に「結界」を張って貰っている。
セリ=ティンカー:「漢方?じゃないですけど、薬草の扱いくらいは出来ますが。現代医療は全然だから役に立ててよかったですよう」
ルバート・アロス:「本当ならきちんと報酬を出したいところなんだけどな」
セリ=ティンカー:簡単な消毒や、害意を退けるようなものだ。元の世界で言えば、本当に蚊帳のようなものにすぎない。
セリ=ティンカー:「良いんですよ、せんせ」
セリ=ティンカー:「あたし、今がいちばんたのしいです」
セリ=ティンカー:本人なりに真剣に言おうと思ったのか、どこかやわこい表情がきりっとする。
ルバート・アロス:眉をしかめて、口元を釣り上げるように笑う。
ルバート・アロス:「……病院の手伝いが楽しいなんて、困った患者だ」
セリ=ティンカー:「あたし、お金は持ってないですからね」
セリ=ティンカー:「こうやってお返ししないと」ほにゃっとした微笑み。
セリ=ティンカー:「実際、あたし自身じゃどうしようもないですからねえ」脚を撫でる。
セリ=ティンカー:彼女の脚は、僅かな感覚は残っているが、能動的動作能力を喪失している。
ルバート・アロス:「医者は見返りを求めない。求めるのは、次の誰かの治療に必要な分だけだ」
ルバート・アロス:立ち上がり、セリの頭をくしゃりと撫でる。
セリ=ティンカー:「ふにゃっ」眼をバッテンにしながら大人しく撫でられる。
ルバート・アロス:あくまで理想論ではあるが、彼のいた世界での教えだ。見返りの多寡で、患者を選ぶことがあってはならないからだ。
ルバート・アロス:「そういえば、この前に完治した患者から、差し入れを貰った。果物のゼリーだ」
セリ=ティンカー:「わあ!」
セリ=ティンカー:「何味ですか~?甘くて好きなんですよ~」ふにゃふにゃな顔。
ルバート・アロス:「柑橘に、ベリー類に……あとよく分からん色合いのものがあった」
ルバート・アロス:ふにゃふにゃしている顔を眺めている。
セリ=ティンカー:「ミカンとかにいちごとかラズベリーとか美味しいですよねえ。よくわからんもの……」
ルバート・アロス:「知らない果物だ。この階層特有のものだろう。もし何らかの薬効があれば……」
ルバート・アロス:すぐに考え込む。医者モードだ。もしかしたらこの果物は……治療に活かせるかも知れない!
セリ=ティンカー:「そう言うウィッチドクターというか、薬草医さんが居たりしたら聴けたんですけどねー。ともあれ、まずは味ですよ味!」
セリ=ティンカー:「メモは取っておきますから~、ほらほら」ぐいぐい背中にくっつくくらいに、彼を押す。
ルバート・アロス:「車椅子で押すな。まったく」バタバタと歩いて行く。
ルバート・アロス:腰あたりにひっつかれると、ふわりと花の香りがする。
ルバート・アロス:知らない世界の、優しい匂いだった。そう伝えたことはないが。
セリ=ティンカー:この世界にも、あなたが歩んできた世界のどこにもないようでいて、どこか春先に感じたことがあったかもしれない。”春”のにおいだった。
セリ=ティンカー:「んん~~………!」何処か柔らかな感触がした。彼女もひとに、というかきみに触れるのが好きだから、ついそうなったのかもしれない。
ルバート・アロス:「…………」
ルバート・アロス:知ってる彼女の、優しい感触だった。そう伝えるわけがないが。
ルバート・アロス:ないが。
セリ=ティンカー:「あれ。どうしたんですか、せんせ?」本人は気付いてないのか、くっついたまま喋る。
ルバート・アロス:「どうしただと? 僕はいたって健康体の無症状だが?」
セリ=ティンカー:「………あっ」
ルバート・アロス:平静を装っているが耳元は赤くなりやすい。
セリ=ティンカー:「…………」ぐっと車椅子を動かし、胸元を抱きしめる。
セリ=ティンカー:「……気付いたなら言ってよ!」頬を真っ赤にして、少女は理不尽にそうなじる。
ルバート・アロス:「知らんし! 君なあ……!」棚からゼリーを取り出す。
セリ=ティンカー:こんな風に甘えるようなことを、彼女は君以外にしたことはない。
ルバート・アロス:患者に応対するときは、彼女は頼りになる。それこそ子ども相手には、姉のように実に見事に治療まで誘導してくれる。
セリ=ティンカー:「………したいならそ、それはそのときというか………」凄い小声で。「何というか……むーどとか…あるもん!」
ルバート・アロス:「おちつけ。よくわからないことを言っているぞ」
セリ=ティンカー:「べっ、べつに………な、なんでもないです!せんせのえっち!」
ルバート・アロス:「エッチ…………!?」 ガガーン、と雷に打たれる。
ルバート・アロス:彼女の、子どもっぽい動作に、困るのが半分、安心するのが半分。
ルバート・アロス:ゼリーを器にあける。食事用の皿も、彼女と出会ってから用意したものだった。
ルバート・アロス:フラスコでコーヒーを呑んでいたら同情されたことは今でも記憶に新しい。
セリ=ティンカー:(せんせ……?フラスコは実験用具なんだよ?器だとしても食用じゃないんだよ?)
セリ=ティンカー:「と、ともあれっ」
セリ=ティンカー:「せっかく贈ってもらったんですからね!たべましょう!そうしましょう!うん!」
ルバート・アロス:「そ、そ、そうしよう。甘味はいい。苦い薬も包んで子どもにも呑みやすくしてくれる」
セリ=ティンカー:「こんな時まで医療の事考えてるの、せんせ……?」
ルバート・アロス:職業病であった。

ルバート・アロス:ルバート・アロスは辻医者である。主に下層を中心に、怪我人がいる場所を飛び回る生活を送っていた。
ルバート・アロス:だが、この教会を根城にしてからは、随分と長く一箇所に留まっている。
ルバート・アロス:この階層がかなり広い上に、色々な災害が起きていて離れがたいというのもあるが。
ルバート・アロス:最大の理由は、ここで出会った彼女の治療を優先するためであった。
ルバート・アロス:「足と背中の調子は、変わりないか」
セリ=ティンカー:「ん………」診察台に身を乗せている。
ルバート・アロス:奥の診察室で、屈み込んで少女を見上げている。
セリ=ティンカー:「……うん。感覚は薄くあるけど、それだけ」ゆっくりと自分の手で脚や、背中をさすっている。
セリ=ティンカー:黒いポンチョを脱いで、患者服をはだけて背中を出している。
ルバート・アロス:真っ白な背中。彼女が春の象徴というなら、これは残雪の色なのだろうか。
セリ=ティンカー:背中には、薄く線のような跡がある。そこに何かが生えていたあかし。
ルバート・アロス:手袋を外して、指先で触れていく。常人ならば、肩甲骨のあるあたり。
セリ=ティンカー:「ん……」
セリ=ティンカー:微かに吐息を零す。かつてであれば、様々な情報がそこから伝わってきていたはずだった。
ルバート・アロス:強めに押し込む。体温と、血の流れを確認する。治療の最中は、彼女の美しさと妖艶さは意識から飛ぶ。
セリ=ティンカー:ティンバーの妖精の羽根は、かれらのあかしだ。それはただの象徴と言うだけでなく、立派な力を持つ。出力機関であり、感覚器官であり、魔術的な刻印でもある。
セリ=ティンカー:「ふ、ぅ…ふぁっ」
ルバート・アロス:薬草。軟膏。包帯。歴史の教本にあるような、呪術治療すら試した。
ルバート・アロス:そのどれもが、セリ=ティンカーの失われた翼を取り戻すには足りなかった。
セリ=ティンカー:人間ならば存在しない感触が君の手に伝わる。眼帯に覆われた”眼”は、じりじりと手で触れらない構造があることをきみに知らせている。
セリ=ティンカー:そしてその構造は、途中から引きちぎれたようにばらばらとなって、中空で途絶えている。
ルバート・アロス:まるで幻肢痛が視覚化したような痛々しい『傷跡』に、胸の内が辛くなる。
ルバート・アロス:「……痛くはないのか。喪失感はあるか?」
ルバート・アロス:背中から手を離す。その見えない羽根をなぞるように、指が虚空を掻き回す。
セリ=ティンカー:‐‐妖精というものは、世界ごとに当然その本来の姿、ルーツも異なる。科学を源とするもの、魔術を源とするもの、その二つ、それ以外。
セリ=ティンカー:その中でも、彼らは幾つかの世界で、世界の管理者さえ勤め上げる種族だ。
セリ=ティンカー:セリも、ハーフとはいえ、その末端にある。
セリ=ティンカー:「ん、く、ぅ、ぁ……」
セリ=ティンカー:「いたい、というか……」
セリ=ティンカー:「なんだろう……すすきにでも触れてるみたい」
ルバート・アロス:「ススキ?」
セリ=ティンカー:淡い柔らかな、本当にかすかな感触だけが彼女に伝わっている。
セリ=ティンカー:「しらないの、せんせ?」
ルバート・アロス:「……子どもの頃に見たことはあったかもしれない」
ルバート・アロス:「勉強漬けだったからな」
セリ=ティンカー:「秋にね、白くてやわらかい穂をいくつも並べてね、お月様の下だと本当にきれいなのよ‐‐」
セリ=ティンカー:「触ると、本当に柔らかくて滑らかで……すぐに手から離れてしまうの」
ルバート・アロス:人差し指と中指を軽く丸めて、挟むように摘まむ。妖精の羽は、ほんの僅か掴めたようで、すり抜ける。
セリ=ティンカー:「空から見たら、銀色の波が揺れて……」
セリ=ティンカー:吐息。
セリ=ティンカー:「せんせも、飛べたらきっと気に入るわ」
ルバート・アロス:彼女の声は、子守歌のようだ。些細な言葉、相槌、吐息の一つ一つに音韻がある。
セリ=ティンカー:ん、と微かな熱が籠った吐息。きみの手がふれるたびに、彼女は楽器のような声と息を零す。
ルバート・アロス:「……悪いが、僕は高所恐怖症なんだ」
ルバート・アロス:羽根を離す。診察台に座る彼女の、その動かない足元に跪く。
セリ=ティンカー:「飛べないからよ」くすり、と少女は笑った。膝をわざわざ自分の胸に抱き起こして。
セリ=ティンカー:「あ、」
ルバート・アロス:「足を出して」
セリ=ティンカー:彼女は毎回、あなたがそうするたびに頬を染めた。みだりに肌をゆるしたりしないんだからね、とは最初のときだったろうか。
セリ=ティンカー:「うん………」ゆっくりと腕で、動かない脚を君の元へ差し出す。
ルバート・アロス:それを恭しく手に取る。硝子の宝玉でも触るかのように。
ルバート・アロス:素足の指を、甲を触る。感覚はあるらしいが、まるで麻痺しているかのように抵抗はない。
ルバート・アロス:「…………いつも分からない。巡礼で"捧げた"っていうのは、なんだ?」
セリ=ティンカー:かれはずっと真面目だ。医療に関して、彼はいつも真摯だ。あたしがみた誰よりも。
セリ=ティンカー:「それはね、妖精を”種火”にする為のこと」
セリ=ティンカー:「あたしの世界…”ティンバー”は、数十年に四季が巡るけど、最後は冬になる…って言ったよね?」
セリ=ティンカー:「惑星の熱が足りないのよ」
ルバート・アロス:「熱」
セリ=ティンカー:「そう。冷めちゃうのよ」
ルバート・アロス:「星の熱……マグマとか、そういうものなのか」このときばかりは、少女の顔を見上げる形になる。
セリ=ティンカー:「そうね。マグマだとか、もっと奥の星の核のはなし。だから、あたしたちは。一番”熱”を呼び起こすのに特性が合う妖精たちを」
セリ=ティンカー:「星の中心に送って、火を付けなきゃいけない」
ルバート・アロス:傷一つ無い足先から、たおやかな腰。少し背後に倒れた姿勢。胸元のなだらかな丘陵越しに、彼女の口元が見え隠れする。
セリ=ティンカー:「そのためには、色んなものが必要で」
セリ=ティンカー:「色んなものが、いらない、、、、の」
ルバート・アロス:「…………」
ルバート・アロス:「捧げるんじゃないのか」
ルバート・アロス:「削がれていく・・・・・・?」
セリ=ティンカー:「正確に言うと、”整える”のかな」
セリ=ティンカー:「星の核へ向かうための外郭。其処で燃えるための燃料。‐‐そして、火をつけるための火花」
ルバート・アロス:足首に手を回し、上下に動かす。動かしていないというのに、硬くなったり、痩せこけたりしていない。
セリ=ティンカー:「あたしが、この世界に”落ちて”くるまで、何とか生きてたのも」
セリ=ティンカー:「きっと、そうやっていじられてたからかも」
セリ=ティンカー:「ねえ、せんせ」
セリ=ティンカー:そう言って、彼女はあなたの瞳を覗き込んだ。
セリ=ティンカー:「諦めても、あたしはいいよ」
ルバート・アロス:「セリくん?」
セリ=ティンカー:「こうやって暮らして、助手とか、事務員さんをするの、好きだから。今のままでもいいの」
ルバート・アロス:「……セリくん」
ルバート・アロス:ぐ、と手が強まる。
セリ=ティンカー:きっと、誰も責めないはずだ、と彼女は思った。彼女自身が許して、元居た星の誰もが考えもするまい。「ん、ぅ…」
ルバート・アロス:ふくらはぎ。細くて、柔らかくて、温かい。
ルバート・アロス:星を熱するほどのものだと言われたら、そうかもしれないとすら思う。
ルバート・アロス:「セリ。いるんだ」
ルバート・アロス:「きみのからだのなかに、いらないところはない」
セリ=ティンカー:「………、」
ルバート・アロス:「君は、もう一度飛べる」たとえ。眼帯越しに右目で見える、彼女の輝きのような。活力のようなものが。
ルバート・アロス:どんどん、日に日に、目に見えて薄れていくとしても。
セリ=ティンカー:「……せんせ、そうかな」
ルバート・アロス:蝋燭の火のように、もっとも美しく熱い瞬間に、消えるために作られていたとしても。
セリ=ティンカー:「あたしね……」本当に、彼女は誰かに聞かれて、責められるのを恐れるように、細く言う。
セリ=ティンカー:「ほんとうは、また飛びたいよ」
セリ=ティンカー:「ここの世界だって、空から見たら、きっときれいなのよ」
セリ=ティンカー:「せんせにも、みせてあげたい」
ルバート・アロス:「そうだ。……僕はあの二柱の女神に願っている。君の体を治す……んじゃない」
ルバート・アロス:「君の体を治すための、理論と素材と技術を、だ」
ルバート・アロス:「君の足の力を、羽根の力を、何百倍にもしてあげる。何度失おうと、何度でも治せるように」
セリ=ティンカー:「……あは」
セリ=ティンカー:「そうなったら、きっと……また綺麗に見せてあげられるかな」彼女は、踊るのが得意だったのだ、と君に言った事があった。
セリ=ティンカー:空を舞いながら、脚を用いて荷重を移動し、勢いをつけ、補佐する魔術を行使して。
ルバート・アロス:「そうだね。……想像もつかない」
セリ=ティンカー:そうやって、妖精としての少女は。本当に踊ることが得意だったのだと。
セリ=ティンカー:「見てほしいよ」
ルバート・アロス:「見られるよ。……きっと、とても綺麗なんだろう」
ルバート・アロス:「止まっていても、宝石のようなんだから」
ルバート・アロス:「動いたらきっと、蝶のように」
ルバート・アロス:「楽しみだ。楽しみにしよう」
セリ=ティンカー:顔を真っ赤にしながら、少女は笑った。花のようで‐‐きっと後ろに羽根があれば、更に美しく彩っただろう。
セリ=ティンカー:「あたし、今は好き。今が好きだよ。せんせがいるもの」
セリ=ティンカー:「だけど、あたしが一番きれいなときは、見てもらってないから」
セリ=ティンカー:「…………そのときがきたら、あたしのぜんぶ。あなたのものだから」
ルバート・アロス:両手で捧げ持つ少女の足を、すこし掲げる。
ルバート・アロス:その指先に、額を当てる。「おかしいな。僕の命を救ったんだ」
ルバート・アロス:「僕はとうに、きみのものだと思っていた」
セリ=ティンカー:「~~~~~っ」じたばたと腕を振り回す。耳まで真っ赤だ。
セリ=ティンカー:「……せんせのそういうとこ、ずるいっておもいます!」
ルバート・アロス:「……そうかな。これでもかなり自制しているんだが」
ルバート・アロス:「君は自分の魅力にもうすこし自覚的になってほしい」
セリ=ティンカー:「~~………っ」
セリ=ティンカー:腕で身を跳ね上げて。
セリ=ティンカー:そのままあなたへ抱き着く。
ルバート・アロス:「っと!」
セリ=ティンカー:「……………だっこ」
セリ=ティンカー:「きょうは、そうしてください」
ルバート・アロス:「こら、危ない……ったく」 これで今日の分の診察は終わった。
ルバート・アロス:膝下に手を回して、横抱きにする。
ルバート・アロス:耳元に口を近づける。「どちらまで、お姫様」
セリ=ティンカー:むすーっとした顔のまま、君に抱き着いて密着する。
セリ=ティンカー:「………女の子に、言わせないでください」
セリ=ティンカー:「さっして。ばかっ」
ルバート・アロス:「うん。自認が妖精から女の子になったね。良い傾向だ」
ルバート・アロス:ぎゅうっと片手で強く抱いて、空いた片手でなんとか扉を開ける。
ルバート・アロス:どうか。
ルバート・アロス:信じさせてください。
ルバート・アロス:自分が、この世界に落ちてきたのは――この少女を救うためなのだと。

GM:セリ=ティンカーのブーケを80増加(0 → 80)


【Scene2-1:テトラ・トライア/香取陽吾】

テトラ・トライア:アーセルトレイにおける"学校"の授業はやや特殊だ。
テトラ・トライア:"卒業後の進路"という視点で見た場合、技術的な要請がかなりの数を占めており。
テトラ・トライア:必然、生徒たちが受ける"実技授業"も増え、多彩になっていく。
テトラ・トライア:一日の内、座学と特別需要の割合は半々と言った所。
テトラ・トライア:今日はその特別授業の中でも、更に"特別"な日だった。
テトラ・トライア:「第76階層、イフトノート……ふぅん」
テトラ・トライア:配られたレジュメを確認しながら、心ここにあらずといった感じ。
テトラ・トライア:最も、生徒は大体が同じ様な反応だ。
テトラ・トライア:その目線は、スポーツの会場のように白線で区切られたオープンな"模擬戦場"に向けられている。
女子生徒:「あのイーレって人、すごくカッコよくない?」
女子生徒:「『騎士』なんている世界の人なんだ~。こんなスマートなのに強いって、憧れちゃうなあ」
テトラ・トライア:「うん。騎士様か。初めてみた」
テトラ・トライア:言いつつも目線は別の方を向いている
テトラ・トライア:「……怪我、させないといいけど」
女子生徒:「相手は……ああ、いつものおまわりさんだ」
女子生徒:「あの人強いの?」
女子生徒:「さあ?でもイーレさんの方応援しちゃうな~。顔がいいもん!」
テトラ・トライア:「もちろん」こくりと頷く
テトラ・トライア:「む……」
テトラ・トライア:「……がんばれー」
イーレ・リュニック:生徒の目線が注目する先。
イーレ・リュニック:体外用に誂えたシンプルなシャツとベスト。蜂蜜色の金髪を陽光に反射させている。
イーレ・リュニック:一体の彫像のようにそこに佇んでいる。
女子生徒:「ほんとに姿勢いい……上流階級って感じ~」
女子生徒:「こうして見ると、騎士っていうより執事だよね」
イーレ・リュニック:皆のざわめきが収まるのを見計らって、整った礼をする。
イーレ・リュニック:「お招き頂き、ありがとうございます」
イーレ・リュニック:「イフトノート王家に仕える騎士、イーレ・リュニックです」
イーレ・リュニック:その目線は対峙する相手に。
香取陽吾:対する先に、香取陽吾がいる。とはいえ、普段知っている人ほど一見で見違えるかもしれなかった。此方も礼をする。
香取陽吾:どこか猫背気味だった背を真っ直ぐ伸ばし、草臥れたスーツはミリタリージャケットに幾つもの装備品が着いた実戦的なものに変わっている。
香取陽吾:「此方こそ、栄えあるイフトノート王家の剣たるリュニック卿にお目見えでき光栄です。香取陽吾と申します」
女子生徒:「おまわりさんはスーツで戦うんだ」
テトラ・トライア:「うん。滅多に見れないから、貴重」
女子生徒:「普段気にしてなかったけど、表情がキリッとしてるとカッコいいかも」
女子生徒:「ね~、いつもニコニコしてるから」
テトラ・トライア:頬が緩んでいる。
男子生徒:「へっ、あんなにこにこした警官が強いわけねえぜ!」
男子生徒:「だよな~、あっちの騎士? だってスカちゃってよ~」
女子生徒:「男子ってサイテー」
テトラ・トライア:「……………………」
男子生徒:「これだから女子はな~。どうせ台本通りのやらせに違いないぜ」
テトラ・トライア:目線を向けようと思ったが、一秒でももったいないので辞める
香取陽吾:見てみると、幾つかの勲章がジャケットに付けられている。そのいくつかは時間が経っているのか、丁寧な手入れをした上でくすんで見えた。
イーレ・リュニック:「招かれたからには、胸を借りるつもりで……というつもりはありませんが」
イーレ・リュニック:「期待を挫くことのなきよう、務めさせて頂きます」
香取陽吾:「卿に対しては、此方の方が不足や未熟を晒すかもしれませんね」苦笑している。「すでに退役した身ですが、誠心誠意務めさせて頂きます」
イーレ・リュニック:笑顔。お互いの会話を、群衆が理解するだけの時間を待つ。
イーレ・リュニック:「さて、皆様をお待たせしてしまってもいけません」
イーレ・リュニック:「初めたいと思いますが、開始の合図などは?」
香取陽吾:「そろそろアナウンスが入ると思います。…はは、学生が色々と失礼を…」
イーレ・リュニック:「いえ、いえ。こちらにとっても得難い経験ですので」
香取陽吾:そう言いながら、どこかだらりと力が抜けたような――ゆらりと肩や脚を揺らすような構えへ移る。
イーレ・リュニック:「では──」
アナウンス:〈これより、テアト大陸連邦との親善授業を開始します〉
アナウンス:〈受講希望の学生はグラウンドをご注目ください〉
アナウンス:〈5。4。3。2。1。……始め〉
イーレ・リュニック:アナウンスに合わせて、ポケットから手入れのされた懐中時計を自然な仕草で取り出す。
香取陽吾:アナウンスのコールと共に、即座に駆け出す。
香取陽吾:(間合いを詰める。あっちの世界は魔術系だけじゃなくて機械系との複合――)
イーレ・リュニック:「──"抜剣を告げる"」
イーレ・リュニック:開いた懐中時計の中に文字盤はなく、くり抜かれた内部に炎が封じ込められている。
香取陽吾:(”兵器”が来る!)呼吸は静かに悟らせず。駆けながらもあまりに足音が響かない。余計なエネルギーは全て前進に使われている。それでも。
香取陽吾:(抜く前…は当然無理か…!)
イーレ・リュニック:テアト大陸連邦にて作成された"兵器"。魔法という無形の概念を、形ある機械へと落とし込む媒介。
イーレ・リュニック:懐中時計を中心として展開したパーツが右腕を包み込み、腕全体を覆う鎧となる。
イーレ・リュニック:一見、機械の腕のように置き換わった右腕を無手のまま振り切る。その手にはリアルタイムで直剣が生成されていく。
イーレ・リュニック:「行きます」
イーレ・リュニック:加速に合わせて機械仕掛けの剣が一直線に振るわれた
香取陽吾:(腕部に鎧――身体強化は当然)(籠手、時計、針――)(直剣以外もあるか?)間合いは詰まっている。剣の間合いだ。
香取陽吾:ぱん ! !
香取陽吾:破裂音。香取陽吾の左腕が剣を振う腕鎧と衝突した音だった。
香取陽吾:(つっ~~~~~っ、いってぇぇえええ……!)
イーレ・リュニック:「防がれますか。流石です」
香取陽吾:用いた技法はナイフファイトのブロックだが、内部としては中華拳法の発勁や各種寸打も取り込んだ、打撃的なブロック。それで、なんとかギリギリ自分に当たる前。
香取陽吾:「ははは。流石に初撃で落ちたら参考にならないんで」痛みを堪えながらなんとか笑う。
イーレ・リュニック:こちらも同じく反動で姿勢が崩れている。しかし、体制を立て直す前に直剣が『崩れる』。
女子生徒:「ウッソでしょ」
女子生徒:「今、おまわりさんが何かした?だって剣が……」
イーレ・リュニック:お互いの体制が崩れたことで変わった間合い。剣が逆手持ちの槍に変貌していく。
女子生徒:「もしかしておまわりさんって……めちゃくちゃ強いの!?」
テトラ・トライア:「振りかぶる前に刃先を合わせたの。タイミングをずらせば、支点に近いほうが力が入るから」淀みない口調
香取陽吾:「ちょっと其れの連撃は勘弁かな……!」腕を取り、合気道の小手返しに似た形の技を掛ける。手首への負担を掛けてディザームと投げを狙う技。
イーレ・リュニック:「っと…!」間合いを変えた瞬間に距離を詰めてくる。そこは先程の剣の間合いだった。
イーレ・リュニック:(反応が早い? 予測されたのか、いや……)
イーレ・リュニック:「多対一、、、の想定。相手が違う武器を使う戦場への慣れですね?」
香取陽吾:(いや甘く見てるつもりはなかったけどさあ……!)普通に反応されてるのに少しショック。(これ覚えて実戦で使えるようになるのに俺4年かかったんだけど!)
イーレ・リュニック:投げられる動きに合わせて両足を踏切り、勢いをつけて一回転して着地する。
香取陽吾:「いやー、うちもやっぱ物騒な所は物騒ですからねえ。しっかり技術として学ぶんですよ」
イーレ・リュニック:「参考になります。護衛と言うのは基本的に多勢に無勢ですからね」
イーレ・リュニック:近づいた間合いを小剣に変えて対応する。香取のナイフ術とはまた違った、間合いを崩すための牽制の動き。
香取陽吾:そのまま逃がさないように踏み込む。ナイフを抜く。順手持ちでの突き、横切り、その逆回し。
イーレ・リュニック:「よ、と、ほッ……!」
香取陽吾:イーレが知る中なら、バックラー術にも近い術理があるように見えた。とにかく相手が加速する前に、己の盾や腕をぶつけていく。
女子生徒:「槍ッ……いや、槍が消え……」目で追えた時には既に5手は攻防が進んでいる。
香取陽吾:(ふつーに凌ぐの!?本業は剣じゃねーの!?)
テトラ・トライア:「突きをそらして、香取くんの横薙ぎを回避、そのまま距離を取ろうとした所を切り返しで狙ってる」
テトラ・トライア:「ただ、距離が近いから、そろそろ至近距離での組み伏せが……」
女子生徒:「香取くん……?」
女子生徒:「トライアさん凄すぎない!?なんで見えてるの!?」
テトラ・トライア:「…………?」
テトラ・トライア:「前の授業でやった、よね?」
女子生徒:「た、確かにウチら警察志望じゃないけど……この速さ、そういう問題じゃ……」
香取陽吾:(ズルくねえ!?)
香取陽吾:とにかく先手先手を取っていく。
イーレ・リュニック:「失礼。流石にこの距離では私が不利だ」
香取陽吾:簡単に言えば、そもそも距離を離された時点で取れる手段と火力が段違い過ぎる。つまり負ける。
イーレ・リュニック:香取の攻撃に対して反撃を撃てていない。本来、イーレがこの距離で一人を相手する時点で劣勢だ。
男子生徒:「おい……なんだこれ! どっちが勝つんだ?」
女子生徒?:「この勝負……白いほうが勝つわ」
テトラ・トライア:「シャツが?」
香取陽吾:そう言うレベルだった。そういう風に自分より年下が、そうまで練り上げている。嫉妬交じりの感嘆を脳裏で処理しながら。何とか押さえつけ続けようと。
イーレ・リュニック:"専門職"に専門で対抗している事でアドバンテージを取られ続ける。つまり解決策は。
イーレ・リュニック:「"歯車よ、回れ"」
イーレ・リュニック:右手の炉が煌々と燃え始める。
イーレ・リュニック:イフトノート王家の重視する科学技術と対を成す、もう一つ。
香取陽吾:「……ッ」そろそろ粘られ過ぎてこっちの手に”慣れられた”。回避と共に離された間合いで、相手に一手を打つ時間が与えられた。
イーレ・リュニック:"魔法"の起動句キーワード
イーレ・リュニック:「"我が身は軋み"、"空に茜の紅を差す"」
イーレ・リュニック:ぼう、と『左手』に光が満ちる。
イーレ・リュニック:ナイフを持つ右手に対して意識を反らせた瞬間に、生み出された魔法の炎が矢となって香取に飛んだ。
香取陽吾:スローイングダガーを投擲。(だーっ…!分隊支援火器持ってきてくれよ!!!)
香取陽吾:あっさりと燃え尽きる。
イーレ・リュニック:命中。"標的"に当たり、矢は止まる。
女子生徒:「今度は銃!?大丈夫なの!?」火を吹いた機械をそう認識した。
テトラ・トライア:「……む」
イーレ・リュニック:ただその一手、至近で本体がフリーとなった。
イーレ・リュニック:「──ハァッ!」
香取陽吾:「チッ、クソ……!」悪態が零れる。此方も左手でグレネードを自分の足下に落とそうとして――
イーレ・リュニック:直剣。上段に振りかぶった剣をまっすぐに振り下ろす──
香取陽吾:「………、勝負あり、ですかね」両手を上げて、手にしていたナイフを落とす。
イーレ・リュニック:「………………」
イーレ・リュニック:寸前で止めた剣が、無数の破片へと戻る。
イーレ・リュニック:「はい。いい試合でした」
アナウンス:〈親善授業を終了とします。特別講師のお二方は、ありがとうございました〉
男子生徒:「……え、も、もう終わり?」
イーレ・リュニック:開始位置に戻り、儀礼に則った礼をする。
テトラ・トライア:「むぅ」
テトラ・トライア:その様子をやや不服そうに見ていたが。
テトラ・トライア:ちゃんと周りの生徒に習って拍手をする。
女子生徒:「か、カッコよすぎ……かも」座り込んで、ボーッとイーレを見つめている。
香取陽吾:「いえ、此方こそ。かの王家の剣のすさまじさ、身に刻みました」
香取陽吾:「とはいえ、此方の得意な間合いで均衡、それ以外は圧倒されてしまいましたよ。凄まじい武錬です」
イーレ・リュニック:全方位を囲う観客に対して、それぞれお辞儀。
香取陽吾:此方も綺麗な一礼。
女子生徒:「おまわりさんも……こんな動きできたなら、なんで普段ああなの?」
イーレ・リュニック:「ありがとうございます。Mr.香取。そういっていただけると、今までが無駄ではなかったと面映ゆくなります」
イーレ・リュニック:「私も、"ここでなければ"どうなったことか」
イーレ・リュニック:綺麗に笑って握手を求める。
香取陽吾:「いやはや……此方も修練が足りていませんでしたよ」あくまでこっちの練度不足が原因だ、ということにして。
香取陽吾:握手に応じる。…その時のかの騎士の手つきは、本当に様々な武器に手を出しながら丁寧に鍛え上げてきたのだとわかる手だった。
イーレ・リュニック:「貴方とともにいると、新しい発見が多そうだ」それ以上は言わず、笑顔で勝利を受け取る。
イーレ・リュニック:柔和な顔に似合わない硬い手。このような手には覚えがある。
イーレ・リュニック:"専門家"だ。もう一度固く握りしめた後、他の職員達の方へと歩いていく。
女子生徒:「ねえトライアさん、イーレさんも凄いけど、おまわりさんも意外とカッコよくない?」
女子生徒:「見直しちゃったかもな、アタシ」
男子生徒:「いつも交番でニコニコしてるだけだと思ってたのに……やべえよ」
香取陽吾:此方も舞台袖に下がってゆく。その時には、普段通りのゆるっとした笑顔だ。
テトラ・トライア:「でしょう。香取くんはすごい」得意げ。
テトラ・トライア:口角に内心が現れている。
テトラ・トライア:「じゃあ、私はここで」皆の目線が金髪に注がれている間に抜け出し始める。

香取陽吾:”授業”が終わった後、アーセルトレイ内のさびれた公園。
香取陽吾:そこのベンチに座りながら、香取とテトラは二人でそこにいた。公園はサッカーボールが転がっていて、誰かがサッカーでもしていたのかもしれない。
香取陽吾:「……っと、いやあ…今日は参考になった?」もう普段通りの草臥れたスーツにゆるい表情をしている。
テトラ・トライア:「もう着替えてる……」
テトラ・トライア:「はい、お疲れ様」
テトラ・トライア:スポーツドリンクを差し出す。事前に用意してあったのか、少しぬるい
香取陽吾:「外あの服で歩いてたら流石に俺…いや、ぼくが職質されるわ」
香取陽吾:「あいや、ありがとうね」
香取陽吾:受け取って少し口に含む。
テトラ・トライア:「そっか、残念」
香取陽吾:「は~~……いや、本当世界は広いよなあ。普通に負けたわ」
テトラ・トライア:「でもみんな褒めてた。かっこよかったって」
香取陽吾:「そうかい?もう少しあれで言う事聞くようになってくれりゃ久し振りにやった甲斐はあるかもなあ」
香取陽吾:そう言うと彼は、ゆるく笑った。
テトラ・トライア:「私も、久しぶりに見れて懐かしかったな」
テトラ・トライア:「香取くんを最初に見た姿だし」
香取陽吾:「あ、あ~~……あはは。いやあ結構切羽詰まったから、色々と」照れくさそうに頭を掻く。
テトラ・トライア:ベンチ横、ブランコに腰掛けてキイキイと揺らす。
香取陽吾:「血だらけだったし、それで勝手に抱き締めたり、色々と余裕がなかったなあ」
テトラ・トライア:「香取くんのなら気にしないよ?」
香取陽吾:「いや……気にしてね?…って、これもぼくの勝手なのかもしれないけどさ~…」
テトラ・トライア:「イフトノートの人も、汚れるのは気にしないんだって」
香取陽吾:「そうなのかい?」
テトラ・トライア:「うん」
テトラ・トライア:「"仕事をした人の勲章だから"って」
テトラ・トライア:「私もそう思う」
香取陽吾:確かに戦ったあの騎士を想うと、変に儀礼用の装備でもあろうにそこを気にしてはいなかった。
香取陽吾:「テトラちゃんは、あーー………」
香取陽吾:「いや、いいことだ。いいことなんだから、気にしてるのは俺の問題か…」
テトラ・トライア:「香取くんはよく悩むね……」
テトラ・トライア:「話、聞くよ?」
香取陽吾:「悩みまくりの人生だよ。そうだな……」苦笑して。
香取陽吾:「ぼくとしちゃ、テトラちゃんは寧ろ警官とかより普通の学生とか血生臭いことから離れて欲しくてさ」
テトラ・トライア:「血なまぐさいこと……」
香取陽吾:「ぼくに懐くのはまあ嬉しいんだけど、もっと大事なものとか色々できるだろうとか、学校通ったりするうちに、なんて思ってたから。結構好感度下がってなくて困ってるとか」
テトラ・トライア:「……下がったほうが嬉しいの?」
香取陽吾:「その方が、色々そう言う事からは遠くなるかなーって思ってたの。…いや、これもぼくの勝手なんだが」
テトラ・トライア:「…………実はね」
テトラ・トライア:「好感度を高めることで、血なまぐさいことから遠ざける方法、あるよ」
香取陽吾:「うん……?」
テトラ・トライア:「お嫁さん」
テトラ・トライア:「に」
テトラ・トライア:「なる……」
香取陽吾:「ぶっ」
テトラ・トライア:「とか…………」
テトラ・トライア:きいきいきい。
香取陽吾:ちょっと噴いた。
テトラ・トライア:「なんで笑うのっ!」
香取陽吾:「あ、あのね…いや、笑ってないよ!」
香取陽吾:「驚いたの!」
香取陽吾:「いやさ……!ここまで好かれるのは嬉しいんだけど、いやちょっと待ってくれと言う想いもあるんだよぼくには!」
テトラ・トライア:「……………」
テトラ・トライア:夕日にやや頬を染めて、八つ当たりにように目を細める
テトラ・トライア:「それは」
テトラ・トライア:「既に」
テトラ・トライア:「好きな人がいる、とか…………?」
テトラ・トライア:「ですか?」敬語
香取陽吾:「は!?い、いや…いないけども」
香取陽吾:「そ、そもそもだよ!何か……こう、ぼくが何かできたか!?きみに…!?」
テトラ・トライア:「そう。……………そう」
テトラ・トライア:「そうなんだ~」きこきこ
テトラ・トライア:「え?」
香取陽吾:「助けはしたさ。でも、あんなのぼくじゃなくたって部隊の誰かがやってみせただろうし…それから、まあ会いはしたけど、こう…近所のお兄さんみたいなもんだったじゃん!?」
テトラ・トライア:「…………?」
テトラ・トライア:「え、それをしたのが香取くんだからでしょ……?」
香取陽吾:頭を抱える。
香取陽吾:「いや……!だってさあ……!大体助けたってそう言う事ならないんだよ普通は!小説か映画の中だけだって部隊皆分かってたぜ…!」
香取陽吾:寧ろ逆になんで早く来てくれなかったんだだとか、もっと犯罪者とかに容赦なくしないんだとか言われる方が多かったくらいだ。
テトラ・トライア:「普通とかよくわかんないもん」
テトラ・トライア:「じゃあ………さっきスポーツドリンク渡した時」
テトラ・トライア:「ありがとうって私に言ったけど」
テトラ・トライア:「誰でも買えるんだから道端の人にお礼言いなよ、って言ったら」
テトラ・トライア:「どうするのさ」
テトラ・トライア:「辻感謝するの?」
香取陽吾:「そりゃ…くれた人に言うよ!でも…いや、そこじゃなくて…!」
テトラ・トライア:「じゃあ私だって助けてくれた人を特別に思ってもよくない?」
香取陽吾:「ぼくは、きみに、普通の……もっとなにか、大事なものを、見つけて欲しかったんだ」
香取陽吾:「ぼくが……諦めたものだったからさ…」
テトラ・トライア:「ふーん」
テトラ・トライア:「ふーーーん」
テトラ・トライア:「じゃあ香取くんは私のこと好きじゃないんだ」
テトラ・トライア:「遠くへ行けっていうんだ~~」ぎぃぎぃぎぃ
香取陽吾:「いや……そ、そもそもだぞ。助けた相手を警官がそういう目で見るの……ダメじゃないか」
香取陽吾:「…………ぼくの中の警官は……そう言う事をしない…って、これも……はは」
テトラ・トライア:「ぶー」
香取陽吾:「ごめん。正直に言うけど…!今迄そういう目で見たことはない!」
テトラ・トライア:「さっき、"自分以外も助けられる"って言ったのに、今度は助けた相手を特別扱いしてます」
香取陽吾:「見ちゃいけないって思ってたともいうが…!」
テトラ・トライア:「ぐっ……!」
テトラ・トライア:「ぐぐっ……」
テトラ・トライア:「それは…………正直、自分でも、しょうがないとは思ってる」
テトラ・トライア:「学校に通って、他の子を見て、思ったけど……」
テトラ・トライア:「昔の私は、骨と鶏皮みたいだったから……」
テトラ・トライア:「"女の子"はもっと、かわいい……」
香取陽吾:「……」
香取陽吾:胸が苦しかった。
香取陽吾:善き者であれば。本当に正しい事が出来て、世界も誰もよくすることができるのだろうと信じていた。今もそうかもしれない。
香取陽吾:「ぼくは…いいや、俺は」今の自分では、いえないこと。でも、いう必要があるから。昔の自分に戻る必要があった。
香取陽吾:「香取陽吾は、テトラちゃんのこと、可愛い女の子だって思うよ」
テトラ・トライア:「…………あり、がと?」
香取陽吾:「言っちゃうけど、俺はさあ」
香取陽吾:「幼馴染に初恋したら、一切意識されてなくてフラれてさあ」
香取陽吾:「警察学校でなんとかやって、同期に良い奴いるなーって思ったら、もう誰かの恋人だったりして」
テトラ・トライア:「…………………」すごく微妙な表情を目つきだけで伝える。
テトラ・トライア:「うん」
香取陽吾:「恋とかなんとか、分かんないよ。でも、きみが魅力的な女の子なのは、そうだって思う」
香取陽吾:「…女神様も、見る目がないんだ」
香取陽吾:「俺が、運命の人ってさ。なんかもっと、上手く出来ないのか?」
テトラ・トライア:「私ね」
テトラ・トライア:「運命って信じてないんだ」
テトラ・トライア:「"わたし"にとっては、運命って」
テトラ・トライア:「いつも苦しい訓練をして、同じ話を聞いて」
テトラ・トライア:「いつか、別の世界に行って終わること、だったから」
テトラ・トライア:「でも、ずっと聞かされた"きまりごと"は一つも実現しなくて」
テトラ・トライア:「その代わりに、"かみさま"みたいな人達は別の人達がやっつけにきて」
テトラ・トライア:「"今まで君たちが聞いていた運命は嘘だよ"って言われて」
テトラ・トライア:「私の世界は、一回変わったの」
香取陽吾:「………」
テトラ・トライア:とん、とブランコから勢いをつけて飛び降りる。
テトラ・トライア:座っている時だけ、目線の高さは入れ替わる。
香取陽吾:少女の姿を目で追う。自然とそうしていた。
テトラ・トライア:「だからねぇ」
テトラ・トライア:「私は信じてないよ」
テトラ・トライア:「運命じゃないから、とか」
テトラ・トライア:「警察と少女だから、とか」
テトラ・トライア:「助けた人と助けられた人だから、とか」
テトラ・トライア:「誰かにとって大事なことでも、変えちゃえるんじゃない?って思うの」
テトラ・トライア:くるり、くるり、とスカートの位置を動かさない足取りで、回る。
香取陽吾:「変わった先が、いいコトかどうかも分かんないのに、かい」ずっと少女から目を離せないでいる。
香取陽吾:思えば、最初からそうだった気もした。そもそも、彼女を助けたときから。
テトラ・トライア:「あはは」
テトラ・トライア:「だって、どうなるか決まってるから、やるんじゃないもん」
テトラ・トライア:「私は、私はね」
テトラ・トライア:「今のままじゃ我慢できないから、そうするの」
テトラ・トライア:「だから…………だからね」
テトラ・トライア:「今まで、香取くんがそういう対象として見られてなくても、それは……まぁ………」
テトラ・トライア:「いいの。うん、いいの」
テトラ・トライア:「ともかく」
テトラ・トライア:「これからは、香取くんにとって、テトラ・トライアって女の子が」
テトラ・トライア:「好……………」
テトラ・トライア:「好き………な……」
テトラ・トライア:「………」
テトラ・トライア:「そういう目で見られる女の子になれるように、これから頑張ろうと思うので」
テトラ・トライア:「自覚……覚悟?しててください」
テトラ・トライア:「………以上!」
テトラ・トライア:途中で勢いがしぼんだ
香取陽吾:「は……」
香取陽吾:何か言おうとして、どうにも思い浮かばなかった。だから香取陽吾としては珍しく、意識が止まって。
テトラ・トライア:「……………う~」みるみる内に真っ白な頬に紅が刺していく。勢いに任せて既に後悔し始めているのかもしれない。
テトラ・トライア:「あの……出来ればなにか言ってくれると……」
テトラ・トライア:「うれしい……」
警官:「HEYボブ!お前ドーナツ食いすぎじゃねえかァ~~?」
警官:「そんなんじゃまたワイフにどやされちまうぜ!HAHAHA!」
香取陽吾:「!」止まっていた意識が戻ってくる。同僚の声だ。
警官:「そんなこと言ったって仕方ないじゃないかァ~。うまいんだもん」
テトラ・トライア:「!!!」
香取陽吾:「…、まずい…!」何というか今の状況がまずいのは香取の頭でも分かった。
警官:「ちょうどよく公園があるじゃねえか。休憩チルと行こうぜボブ」
警官:「ハァ~、ボクもヨーゴみたいにスマートになりたいよォ~」
テトラ・トライア:「ど、どうしよう?こっちに来る?」
香取陽吾:「ごめん、テトラちゃん!」小声で叫ぶと、彼女の脚と背中を取り。
テトラ・トライア:いや、別に問題ないはずだ。おそらく。いつも会話しているし、お世話になっているし。
テトラ・トライア:ニューロンがスパーク!(既成事実……!)
テトラ・トライア:「え?」
警官:警官の足音はどんどん近づいている。
香取陽吾:姫抱きにして、武術の縮地法にて一気にそこにあった物陰に飛び込む!
テトラ・トライア:抵抗するヒマもなく、ふわりと運ばれます
テトラ・トライア:「わ………!?」
テトラ・トライア:とっさに手を回して密着する。
香取陽吾:そこにあったのは半球状の遊具で、横穴が開いている。其処の横穴に飛び込んでいた。
香取陽吾:「ッと……これなら大丈夫かな」小声で。顔が近い。
警官:「聞いたか?ヨーゴの奴、今日は下層の王国キングダムのやつと親善授業してんだってよ」
警官:「あいつもよくやるよ~。ほとんど引退してるようなもんなのに、現役のボクより動けるよきっと」
警官:警官たちはよりによって、先程まで二人がいたブランコに座って休憩しはじめたようだった。
警官:外では雑談が続いている……
香取陽吾:「ったく、もっと署の道場を使えってんだ……大丈夫かいテトラちゃ、ん……」姫抱きにしていた少女を見る。
テトラ・トライア:「……そうだね」
テトラ・トライア:ぱちり。至近距離で目が合う。瞳の中に貴方の顔がある距離。
香取陽吾:何というか、凄く近いし良い匂いがして、凄く柔らかな感触がした。
香取陽吾:「……あ、いや……」
香取陽吾:「ごめん…つい」
テトラ・トライア:ぎゅうと縮こまり、見つからないように腕の中に収まろうとしている。
香取陽吾:少女が制服を着て、ずっと大きくなったのだと。どこか今迄見ていなかった。
テトラ・トライア:「大丈夫。香取くんは痛かったら、言ってね?」
香取陽吾:「あ、ああ…ぼくは平気だよ」
香取陽吾:脚を伸ばして何とか触れる面積を減らそうとする。
テトラ・トライア:姫抱きから、胸に抱きつく形。
香取陽吾:「………て、テトラちゃん?ちょっと近くない?」
テトラ・トライア:「んぅっ」
テトラ・トライア:「……二人で土管は、ちょっと狭い」
香取陽吾:何というか。ずっと、自分の中では、あの血だらけの細くて折れそうな、小さな女の子だったのが。
香取陽吾:凄い強制的に改められている気がする。
香取陽吾:(お、俺って奴は……こんなに単純なのか…!?)
テトラ・トライア:髪の毛を敷いて巻き込まないように、体の前に集めている。
香取陽吾:「あ、髪…下敷きにしちゃったかもな。ごめん、今…」腰を浮かせて巻き込んでしまった髪を戻す。
香取陽吾:艶やかで、美しい銀色の長く伸びた髪だった。
テトラ・トライア:「…………ふふ」
テトラ・トライア:「前も、そういうコト言ってた」
テトラ・トライア:懐かしい記憶。以前助けられた時も、こういう体勢だった。
香取陽吾:(あんなに枝毛とかも一杯でひどく汚れてたってのに)こうなるまで、彼女は努力をしたのだろうか。
香取陽吾:「……懐かしいな」
香取陽吾:「俺は………」
テトラ・トライア:「うん」こてん、と無意識に肩に頭をあずける。
香取陽吾:「どうだろうな。もうおっさんかもしれない。身体だってまだ大丈夫だが、少しずつ眼とかが弱くなってる」
テトラ・トライア:「そうなんだ」
香取陽吾:「きっと……段々弱く、汚くなっていくんだ。それが人間ってことだ。老いていくってことだ」
香取陽吾:「きみは、まだきれいになっていくんだろうな」
テトラ・トライア:「そうかな、そうかも」
テトラ・トライア:「成長は、するかもね」
香取陽吾:「そうだな。歩みを止めたらそこから下がってゆくだけだ……」苦笑しながら。
香取陽吾:「――きみが満願叶っても、君が好きな俺のままでいるかはわからないよ」柔らかな声で。
テトラ・トライア:「私は、香取くんのきれいな姿だけを見てたわけじゃないよ」
テトラ・トライア:「初めて見た香取くんは、汚れてた」
テトラ・トライア:「…………でも、かっこよかった」
香取陽吾:「俺の全盛期さ」笑って。
香取陽吾:「きっと、これから俺は下がってゆくだけだ。……ああ、本音を言うよ」
香取陽吾:「きみが離れて行けば、あの時のままの俺はそこにいる気がしたんだ」
香取陽吾:「だから、部隊もやめる決心がついた。……実際、いいタイミングだったろうしな」
テトラ・トライア:「なるほど」
テトラ・トライア:「そうなんだ……じゃあ、私がひとりじめだ」
香取陽吾:「……お、おう?」少し戸惑った顔だった。
テトラ・トライア:「あのね、香取くん。私はきっと、わるい子なの」
テトラ・トライア:「私が香取くんに惹かれたのは、助けてくれたときじゃないのよ」
香取陽吾:そうなの!?という顔になる。何というか、分かりやすい奴なのであった。
テトラ・トライア:「その時は、何もかも突然で、わけがわからなくて、ただ、眩しい光を見た気持ちで」
テトラ・トライア:「それが特別で、温かいものだって気づけたのは」
テトラ・トライア:「香取くんが言う所の、全盛期を過ぎた後なのだわ」
香取陽吾:「え、え~…、そうなの?結構助けたからだと思ってた…」
テトラ・トライア:「それは感謝はしてるけれど……」
テトラ・トライア:「助けたからって、それだけで好きになるわけではないと思うよ。うん」
テトラ・トライア:「それ以外のことも思い出として語れるけど、聞きたい?」
テトラ・トライア:「どうせまだ出れなさそうだし……」
香取陽吾:「な、なら好きになる要素、俺にある!?みたいな気になりはあるが…」
テトラ・トライア:「ある」
テトラ・トライア:「私、多分、わるい子だから」
テトラ・トライア:「相手のこととか、慮ったりとか、よく出来ないの」
テトラ・トライア:「香取くんが気にしてる、下がり続けるだけの時にしたことの方が、印象に残ってるかもしれない」
テトラ・トライア:「だからね」
テトラ・トライア:「私ばっかり、香取くんの良い所を知っちゃってるから」
テトラ・トライア:「これからは私の良い所を見てもらえるように、頑張るね」
テトラ・トライア:「…………それでもまだ、香取くんが気にして、遠ざけるのか、どうか」
テトラ・トライア:「勝負、しよ?」
香取陽吾:「え、あー…いや……」
テトラ・トライア:「だめ?」
香取陽吾:色々と大分物事が起こりすぎたのもあるが。なにより本当に美しく成長した少女が、ほぼ密着するような状態で囁かれているのである。
香取陽吾:なんというか、色々キャパシティが限界なのであった。香取陽吾は悲しい位に恋愛的な経験がない。
香取陽吾:「……じゃあ」
香取陽吾:「君が、俺以外のなにか、もっと大切にしたいものを見つけるのが先か、どうかだ」
香取陽吾:「一個だけじゃ、この一度滅んだ世界で生きるのに――」
香取陽吾:「きっと、楽しみ足りないと、俺は思うから」
テトラ・トライア:「うん」
テトラ・トライア:ほう、と息を吐く。
テトラ・トライア:気付かれないように、でも、この距離じゃ隠しようもなく。
香取陽吾:「……きみに、世界は美しいものでもあると、俺はそう思って欲しいよ」
香取陽吾:そっと、彼女の額に張り付いた髪を払う。
テトラ・トライア:断られたらどうしよう、という不安が不要になって、吐き出すように。
テトラ・トライア:「じゃあ、勝負だ」
香取陽吾:「ああ」
香取陽吾:そっと少女の手を取り、その甲に口づける。
テトラ・トライア:「私に、香取くんが思う、すてきなことをたくさん教えてね」
テトラ・トライア:「じゃないと、捕まえちゃうんだから」
テトラ・トライア:くすぐったそうに笑った
香取陽吾:「ああ。……約束だ」

GM:テトラ・トライアのブーケを70増加(27 → 97)


【Scene2-2:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート/イーレ・リュニック】

アレアテルナ:アレアテルナ王女達は、第一層は聖アージェティア学園に在籍している。
アレアテルナ:だが、護衛騎士のイーレがこの日に親善授業を行ったのは、アーセルトレイ公立大学附属中等学校だ。
アレアテルナ:それは王女の働きかけの結果である。自身の学園に限らず様々な場所でイベントを開くよう、統治政府に掛け合っている。
アレアテルナ:試合を終えた後、アーセルトレイ中学の応接室で、二人は教師に応対されていた。
教師:「いやいや、リュニック卿の武技は実に見事でした」
教師:「相対した香取氏も、統治政府警察で腕利きの方を特別に呼んでもらったのですがね……」
教師:「担任の教師達からは、あれでは逆に授業にならないなんて冗談が出たくらいで!はっはっは」
アレアテルナ:「お褒めいただき、ありがとうございます」丁寧に一礼する。
イーレ・リュニック:「光栄です。」合わせて礼
イーレ・リュニック:「えぇ、お相手してくださった香取殿の手練も見事でした」
アレアテルナ:「テアトでは、こうした武道もまた体育教育の一環です。単なる軍事力とは異なる文化として――」
アレアテルナ:「代々洗練され、民の憧れとして発展していったものです」
アレアテルナ:「試合中にお見せしたテアトの魔沸機構ともども、アーセルトレイ中学の子供達に、少しでもテアトへの興味を抱いていただければ幸いです」
教師:「王女様から直々にそのように言われるとは……いやはや、身の引き締まる思いです」
イーレ・リュニック:相槌として頷く。
教師:「寄贈いただいた品々や歴史資料は、ぜひ、子供達の階層教育にも使わせていただきます」
教師:「リュニック卿も、本日はありがとうございました。これだけお若いのにあの動き、相当練習なされたでしょう」
イーレ・リュニック:「私としても、今回は花を譲っていただきましたようなので」
イーレ・リュニック:「次の機会では、ぜひともお返しをさせていただこうかと」
アレアテルナ:少しまばたきをする。
イーレ・リュニック:「えぇ。」笑顔で頷く。そこで謙遜はしない。「若輩ですが、よき師に仕込んでいただいております」
アレアテルナ:「イーレ」
イーレ・リュニック:「はい、アレアテルナ様?」
アレアテルナ:「闘争心は尊ぶべき心構えですが、対抗心とは異なるものです。人前で『お返し』などと言ってはいけませんよ」
教師:「い、いやいやいや!リュニック卿もそんな意味で言ったわけではないと分かってますとも!」
イーレ・リュニック:「おっと…………」
イーレ・リュニック:「いえ、これは失礼いたしました」深々と頭を下げる。
教師:「いえ、全く気にしません!本当に、年上の私のほうが恐縮してしまう……!」ハンカチで額を拭っている。
イーレ・リュニック:「どうやら、香取殿との手合わせで自分の中で昂りが抜けていなかったようです。ご容赦ください」
アレアテルナ:「それでは、名残惜しいですが――次の予定が控えておりますので」
アレアテルナ:「どうか、ご健やかに。生徒の皆様方にもよろしくお願いいたします」
アレアテルナ:立ち上がり、両手を体の前に重ねる姿勢で丁寧に礼をする。
イーレ・リュニック:後方で、片手を胸に置く騎士の礼。
アレアテルナ:応接室を去り、中等部の廊下を二人で歩いていく。
アレアテルナ:「……ね」横を歩きながら、イーレの裾を引く。
アレアテルナ:「花を譲ってもらった、って本当?」
アレアテルナ:「わたしもよく見てたつもりなのに、全然気付かなかった」
イーレ・リュニック:「あぁ、なるほど」
イーレ・リュニック:「なにかお気にされてると思ったら、そのことでしたか」
イーレ・リュニック:「えぇ。本当ですよ。香取殿はナイフしか使わなかったでしょう?」
アレアテルナ:「うん」
アレアテルナ:「凄いよね。ナイフであれができるってことは、拾った鉄片とかでもいいってことだから」
アレアテルナ:「……どこの階層でも戦える。だから統治政府警察は、特別な兵器に頼らないんでしょう?」
イーレ・リュニック:「えぇ。特殊な武器や技術に依存することがなければ、どんな状況でも対応出来ます」
イーレ・リュニック:「極論、水を扱うものは砂漠では無力となりますからね」
イーレ・リュニック:「ですが、アーセルトレイの特殊部隊の標準装備として、別の装備がないわけではありません」
アレアテルナ:「蒸気機関がないのって、何度来ても慣れないな。対蒸空調が効いてないから、逆に暑いくらい……」
アレアテルナ:自分の服の裾を、子供っぽくパタパタとさせる。
イーレ・リュニック:「……はしたないですよ、アレアテルナ様?」
アレアテルナ:「イーレしか見てないよ」困ったように笑う。
イーレ・リュニック:蒸気を対策する76層の建築に比べて、湿度を許容する建物はやや蒸し暑い。
イーレ・リュニック:「だからこそです。誰かにバレたら、私が叱られます」
イーレ・リュニック:「何故お諌めしなかったのか、と」
アレアテルナ:「秘密にしてればいいでしょ?」
アレアテルナ:「わたしとイーレしかいないんだもん」
イーレ・リュニック:こちらはわざわざシャツを襟元まで締め、ネクタイに緩みもない。
アレアテルナ:王女の身でありながら、アレアテルナは近衛騎士を一人しかつけていない。
アレアテルナ:それは単純に、他階層での交渉や会談のスケジュールが過密であるために、大人数を引き連れることができないからだ。
アレアテルナ:イフトノート王家の方針として、それを認めさせた。それだけの実力と信頼が、イーレ・リュニックにはある。
イーレ・リュニック:一人いるだけで人数の利点とコストすら狂わせる。イーレ・リュニックの目指す領域とはそういうものだ。
イーレ・リュニック:「もちろん、告げ口はいたしませんが……」
アレアテルナ:「いたしませんが?」
イーレ・リュニック:「癖になって、普段も出てしまっても知りませんよ?」
イーレ・リュニック:「油断、という言葉がございますからね」
イーレ・リュニック:パタパタしている王女に目は向けず、前を見ている。万が一にもはしたない姿を見てはたまらない、という姿勢。
アレアテルナ:「そんなことないよ。いつも通り、完璧だったでしょ?」少し距離を詰めて、隣で囁く。
イーレ・リュニック:「それは」「えぇ、はい」
イーレ・リュニック:仕草を止めたのでようやく目線を向ける。
イーレ・リュニック:「いつも通りの素晴らしいお姿でした。」
アレアテルナ:「ずっと不思議なんだけど、みんな、丁寧な方、、、、が演技だって決めつけがちよね」
アレアテルナ:「こっちがそうだったらどうする?」
イーレ・リュニック:「────」
イーレ・リュニック:公の姿が本来の性格であり、こうして笑う姿こそが演技だとするのなら。
イーレ・リュニック:「……光栄に思う次第です」
イーレ・リュニック:「年相応な姿で接する相手、と見做して頂けているのですからね」
アレアテルナ:(表に見せる顔の、どっちが演技なのか)
アレアテルナ:(心を覗かない限り、そんなことは分からない)
アレアテルナ:(昔の振る舞いを知っている人が変わった時……みんな、変わった姿の方が嘘だと思ってしまうのでしょうか)

アレアテルナ:貧民街の一角には、黒煙が立ち上っていた。
貧民:「火事だァーッ!」
貧民:「燃え移る前に消せ!みんな起きろ!」
アレアテルナ:複数の機車を巻き込む大爆発だった。
アレアテルナ:近年になって活発化してきた過激派の反王族勢力によるテロであると判明したのは、後の話だ。
アレアテルナ:――かつて、テアト大陸連邦という大国があった。『世界』が健在だった頃の話だ。
アレアテルナ:ほぼ世界全域を統べる王族と出会える機会など、一生に一度も来ない。ましてイーレの暮らすような、誰にも見捨てられた貧民街には。
アレアテルナ:イーレにとってそれは幸運だった……貧民街を火災に巻き込みかねなかった、爆破テロさえもそうだ。
アレアテルナ:何故なら、彼の目的は。
アレアテルナ:「はぁ……はぁ、はぁ……っ」
アレアテルナ:怯えた様子で物陰に身を隠して、火災現場を恐る恐る見る。
アレアテルナ:テロリストがアレアテルナの機車を仕留めそこねたのは、単純な無知ゆえだ。
アレアテルナ:王族専用車には、多重の障害魔沸機構が搭載されている。最悪の事故にあっても、護衛対象を防護するものだ。
アレアテルナ:だが、犠牲は多大だった。さらに運悪く、騎士団の機車とも分断されたタイミングで事故は起こってしまった。
アレアテルナ:つまり、幼い皇女だけが一人、荒廃した貧民街に放り出される形になった。
アレアテルナ:「落ち、つかなきゃ……落ち……」
イーレ:──イーレと呼ばれる少年は幸運だった。
イーレ:テアト大陸連邦の貧民街に生まれた少年は、学を身につける環境はなかった。
イーレ:しかし人と比べて勝る機能として、観察眼があったらしい。
イーレ:粗雑に扱われる"炉"を判断する事ができた。────出来ないものは居なくなった。
イーレ:管理が杜撰な"炉"から漏れる火が時折、貧民街を燃やす兆候を知ることが出来る。────出来ないものは居なくなった。
イーレ:燃え広がった火が、町を燃やすとどうなるか。壁に残る煤に気付くことが出来た。────出来ないものは居なくなった。
イーレ:誰かが居なくなるたび、その理由を「学ぶ」事ができた。
イーレ:そのたびに、少年は一つずつ手に入れた。
イーレ:一番初めに手に入れたのは──母が古い言葉で呼びかける、「あなたイーレ」という名前だった。
イーレ:(これは、ダメだな)
イーレ:だから、それに気付くことも学びの一つだった。誰かが消えた翌日だ。
イーレ:(もう、持たないな)
イーレ:それは例えば、日々の糊口をしのぐ廃材漁りで、いつもより回収が少なかっただとか。
イーレ:どこかで修理されたのか、温水パイプの隙間から漏れていた蒸留水が少なくなっただとか。
イーレ:"炉"を扱って高温になったパイプの掃除が少なくなっただとか……
イーレ:そういう細かな変化を無意識に見つけて、このままでは生活出来なくなる、と漫然と直感していた。
イーレ:「よし」
イーレ:イーレはこれまで、犯罪に手を染めたことは無かった。
イーレ:貧しくとも仕事はあり、古くても食べ物はあり、襤褸でも着るものは有った。だから犯罪は割に合わない。
イーレ:それが"割に合って"しまったから。
イーレ:空を見上げる。黒鉄の炉が、天に手を伸ばす爪のようだ。
イーレ:手を伸ばした先には、白亜の城がある。汚れを誉れとするこの国が、唯一汚れない象徴。
イーレ:「お姫様を、さらおう」
イーレ:────イーレは幸運だった。
イーレ:その準備を整え、決行を決めた日。
イーレ:他の誰かが、先にそれをしたからだ。

イーレ:「おい」
イーレ:町中を走るパイプラインにつま先を掛けて、壁を乗り越える。
イーレ:「そこで泣いてると、死ぬぞ」
アレアテルナ:「……っ」白いブラウスの余った袖で、思わず目元を拭う。
アレアテルナ:自分が泣いていた、とは自覚していなかった。ちゃんとできていると思っていたのだ。
アレアテルナ:「こ、こ……こんにちは。わたしは、アレ……」
イーレ:本人なりに考え抜いた準備を行い、ワイヤーを編んだ網や、用途のわからない廃材を組み合わせたものを背負っている。
アレアテルナ:ぱ、と今度は口を両手で抑える。それが危険を伴うだろうことは、幼いながらに分かっていた。
アレアテルナ:「……どな、どなたですか」
イーレ:俯くと、放置している前髪が目にかかる。こんな時は煤が目に入るのを防いでくれる。
アレアテルナ:精一杯姿勢をまっすぐに直すが、指は震えていた。
イーレ:「…………コンニチハ」挨拶を返す。顔をあわせた時、悪態をつかないのは街の"外"の連中だ。
イーレ:「"お前イーレ"」
アレアテルナ:長く美しい髪の毛が、まっすぐに下まで流れている。
イーレ:古い言葉の二人称。名前としてというより、ただ音を発したようにも聞こえる。
アレアテルナ:ブラウスもスカートも、純白だ。
アレアテルナ:灰色の大きな瞳には涙が溜まっていたが、強いてまばたきをこらえて、少年を見ている。
イーレ:大人の着古しのズボンとシャツ。熱に対処するための作業着を、上着としている。
アレアテルナ:そうすることで何か事態が好転するのか、アレアテルナ自身にも分かっていない。幼いからだ。
アレアテルナ:「イーレ」
アレアテルナ:「イーレ、というのですね」
アレアテルナ:「ま、街の外には」
アレアテルナ:「どのようにして、出ればよいのでしょう」
イーレ:「あぁ?」名前を問われる、ということが不慣れなように。「……ん、あぁ」
イーレ:「なんだ、街の外に出たいのか、お前……」
イーレ:そこでやや考える間。名前を呼ばれた。だから……
イーレ:「"アレThat."つったか」
アレアテルナ:「アレ……。アレア」
アレアテルナ:「アレア、とお呼びください」
イーレ:「アレアね」
イーレ:アレア、アレアと呟く。声を出すと覚えるのに便利だからだ。
イーレ:「街の外に出たいのか」
アレアテルナ:「はい」
アレアテルナ:「けれどわたしは、この街の地理を知りません。私の足では、通りを行くにはとても時間がかかってしまうでしょう」
アレアテルナ:「お恥ずかしいことですが、一人では、難しいことです」
イーレ:「そっか…………」返答にまた間がある。他人を気にせず、自分の言いたいことを考えている時間。
イーレ:"他人との会話"が日常に存在しない、そんな印象だ。
イーレ:目線を巡らせる。火の手が上がっている。だけど、いつもの失火じゃない。大通りに近い場所は普段、燃えない。
イーレ:誰かが叫んでいる。いつものことだ。誰かが怒っている。いつものことだ。悲鳴。いつものことじゃない。
アレアテルナ:「手助けは求めません。知識をお借りしたいのです。わたし、わたしは……」ごしごしと、目元を拭う。
貧民:「おい、ガキどもも行け!事故ったのは王族だとよ!」
イーレ:(お姫様をさらわなきゃいけないんだけど)(まだお城じゃないし、いいか)
貧民:「ヒャハハハハハ!宝石!宝石拾えるかなあ!」
イーレ:お姫様の顔を知らない。城の内部を知らない。道を知らない。イーレが知るのは、この街の中だけだ。
アレアテルナ:遠くから聞こえる声に、怯えたように身を縮こまらせている。
イーレ:それでも、子供なりの確信で行動し──そこに優先順位をつけた。
イーレ:「いいよ」
イーレ:「オレについてきなよ」
イーレ:「外、でたいんでしょ?」
アレアテルナ:「イーレ……」
アレアテルナ:「い、いいのですか?」
アレアテルナ:「お仕事があるのでしょう?」
イーレ:「良いよ」
アレアテルナ:「別のご用事の最中だったかもしれません」
イーレ:「今日は仕事をしても、生きられなさそうだ」
イーレ:言って、本当に手は貸さずに踵を返しはじめる。
アレアテルナ:「あ、待って……」
イーレ:大人一人分の高さのある壁の上だ。慣れたものならパイプに足をかけて登れる。
イーレ:遠ざかる金属音。
アレアテルナ:長いスカートを手慣れぬ形でつまんで、イーレを追いかけようとする。
イーレ:近づく金属音。
イーレ:「…………遅いね、アレア」
革命派:「いたわ!!見つけた!!」
革命派:その時。少女の後ろから叫ぶ声があった。
革命派:「第三皇女よ!やっぱり生きてた!!」
アレアテルナ:「あ、ぁぁ……っ」
イーレ:「あれ、知り合い?」
イーレ:パイプの上から見下ろす。
革命派:「誰も聞いてないの!?こいつの首が取れなきゃ――」
革命派:「計画の意味がない!我々は理想からまた遠ざかるわ!」
アレアテルナ:「っ、た、助け……」
アレアテルナ:「助けて……っ!」
イーレ:「………………」
イーレ:助けはいらない、と言われた。だから手を貸さなかった。
イーレ:助けてと言われた。
イーレ:だから。
イーレ:「わかった」
イーレ:ぱらり、と手に持った縄を投げる。油で汚れたワイヤーがパイプに引っかかり、壁の上から即席のはしごになる。
イーレ:「ほら、登りなよ」
革命派:余所者の女は、油圧銃を少女へと向けた。足だけを狙える自信があるようだった。
イーレ:追手を気にしていないように、アレアが昇る手段だけを提示する。
アレアテルナ:「イーレ……」ダン!!
アレアテルナ:ワイヤーを掴もうとした瞬間、腿を撃たれて倒れた。
革命派:「当たった」
革命派:「ち。私以外、誰もこっちの捜索に回ってる奴はいないの……?どいつもこいつも、革命と無関係な略奪ばかり……!」
イーレ:「あぁ──」
革命派:苛立ったように、倒れた少女のほうへと歩を進める。
革命派:「そこの少年」
イーレ:アレアが撃たれた瞬間、飛び降りる。足を怪我したのなら、登れなくなるからだ。
革命派:「どきなさい。無関係な者に危害を加えるつもりはないわ」
アレアテルナ:「いや……いや……」地面で丸くなるように蹲って、極限まで声を殺して呻いている。
イーレ:アレアと拳銃の射線の間に身体が入っている。
アレアテルナ:「痛い……怖い……痛いよう……」
イーレ:「お前も」
イーレ:「こっちにこないほうが、良いよ」
イーレ:アレアの足を見る。真っ白な姿に赤の一点が追加されている。
革命派:「無学者が人に指図をするな」
革命派:「何も見なかったことにして立ち去ればいいのよ。まだ無関係でいられる……」
革命派:3mの距離まで近づいていたが、歩きながら油圧銃をイーレの方へと向けた。
イーレ:「血が出てるのか。これじゃ登れないな……」アレアの怪我の状態を見ながら。
革命派:「……そのままどかないならば、関係者と見做すわ」
イーレ:「そうなるなら、関係者でいいよ」
イーレ:「見なかったことにするのは、無理だ」
イーレ:「人が死ぬのを見ていなかったら」
イーレ:「次はオレが消える」
革命派:「そう」素っ気ない返答だったが、イーレは視力が良かった。
イーレ:「…………これ、鉄かな。だったら取り出さないとだめだけど」
革命派:女が引き金を引く予備動作を見ることができた。
イーレ:ガギギ、と硬いものを擦り上げる音が響いた。
イーレ:ワイヤー網を放り投げる前に、支点として絡めたパイプの歯車だ。
イーレ:蒸気を押し出すために回る動きが阻害される。パイプの内圧が高まる。
イーレ:それは、訪れる"破滅"を少し早める。
イーレ:「お前も」
イーレ:「そこにいると、死ぬよ」
イーレ:最初に声をかけた時、アレアがいた場所。
イーレ:直ぐ側のパイプが弾けて、高温の蒸気が襲いかかる
革命派:「は?」自分自身に何が起こったかを理解する時間もなかったに違いない。"事故"が起こる時は、それほど一瞬だ。
革命派:バズン、という爆発音と共に女の体は横薙ぎに吹き飛ばされて、どこかへと落ちた。少なくとも、ここからは見えないどこかへ。
革命派:後に残ったのは、目視できぬ超高温蒸気が吹き出す不吉な音だけだ。
イーレ:空気と撹拌されて温度は下がり、しかし突風が体を撫でる。
アレアテルナ:「あ、あ……ぅあ……ぐ……」
イーレ:子供2人分の小さな体を、絡めたワイヤー網でどうにか繋ぎ止める
アレアテルナ:アレアテルナは幸いにしてその瞬間を見なかったが、銃撃で苦しんでいた。
イーレ:「うーん」
イーレ:ここに来て初めて困ったような顔をする。
イーレ:危機を避けるのは得意だが、治療は苦手だ。治療を間近で見たことがないからだ。
イーレ:「おい、アレア」
イーレ:ぺちぺち、と苦しむ頬を叩く。
アレアテルナ:「イーレ……」
アレアテルナ:「イーレが……助けてくれたの……?」
イーレ:「あぁ」
イーレ:「助けて、って言ってただろ」
イーレ:当人の理解では、壁を昇ることを、だが。
イーレ:襲撃者に対しては何もしていない。
アレアテルナ:「ありがとう……ありがとう……」イーレの裾を強く掴むようにして、お礼を言う。
アレアテルナ:「イーレは、まるで……騎士様みたい……」
イーレ:「………………………」「!」使わない語彙を検索。
イーレ:「ドウイタシマシテ」
イーレ:「騎士か」
イーレ:「お姫様を守ってるやつだな」
アレアテルナ:「わたしの……名前は、アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート……」
アレアテルナ:「もし……このまま死んでしまったら……イーレ、あなたが……」
アレアテルナ:「お父様とお母様に……伝えてください……」
イーレ:「長いな。アレアじゃなかったのか……」
アレアテルナ:「短い人生でしたけれど……幸せだったと……」
イーレ:「アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート、アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート……」
イーレ:覚えるために呟いて、既に覚えていることに気付く。
イーレ:「…………アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート?」
イーレ:「それは」オレが拐おうとして調べた「お姫様じゃないか」
アレアテルナ:指輪を手渡そうとする。自分の指から外して、手の中に握り込んでいた。
アレアテルナ:「……これを見せれば……わたしの言葉だと、証明できます」
イーレ:「………………」受け取る。割れた欠片を合わせる符丁は、普段の"仕事"でもたまにやったことがある
アレアテルナ:イフトノート王家の装飾の中には、魔法に反応して宝石の色を青から白に変えるものがある。一般に知られていない、些細な魔法だ。
イーレ:「…………アレア」
イーレ:「もっといい方法がある」
アレアテルナ:非常時や戦時の伝言において、これを用いて、王族の言葉である証明を行うためのものである。
イーレ:ガシャン、と背負っていた廃材を下ろす。
イーレ:少年はお姫様の誘拐を考えていた。
イーレ:誘拐に必要なものはなにか。一つは相手を捕らえる手段。
イーレ:もう一つは、運ぶ手段。
イーレ:デタラメに組み合わせたような廃材を展開すると、かろうじて背負子のような形になる。
イーレ:「お前が直接伝えろ」
イーレ:「そしたら一番信じてもらえる」
イーレ:ぐい、と抱き上げて、硬い椅子のような背負子に乗せる。
イーレ:自分の体格に合わせて作ったので、細部はゆるい──と思いきや、栄養状態の差かそうでもない。
アレアテルナ:「……」すでに意識を失っているのか、目を閉じている。
イーレ:「よし」
アレアテルナ:誘拐することも容易くできるだろう。装飾品を売れば街を出るに十分な金にもなる。
イーレ:「街の外まで行けば、お姫様なら、助かるだろ」
イーレ:「多分」
イーレ:この街の生活に限界を感じていた。
イーレ:一人で生きているのは無理だと思った。
イーレ:助けてくれる人が居た。──今はもう居なくなった。
イーレ:知識を与えてくれる人が居た。──今はもう居なくなった。
イーレ:危険な場所を教えてくれる人が居た。──今はもう居なくなった。
イーレ:子供の自分を見返りなしで助けてくれる奇特な人間が居て、それでも一瞬の不注意で居なくなった。
イーレ:だから、子供一人で生きていくのは限界になった。
イーレ:人が死ぬのは。
イーレ:割に合わない。
イーレ:「死ぬなよ、アレア」
イーレ:ぐい、とワイヤーを引き寄せる。
イーレ:子供一人が子供を背負い、パイプをくぐり、落下し、引っ掛け、登って。
イーレ:初めて、知らない"外"の世界へと向かった。

アレアテルナ:車に乗り込む。第76層のような、蒸気を用いる機車ではない。異世界の文明と技術の車だ。
アレアテルナ:隣の少年を、じっと見る。確かにあの時の少年なのに、彼は、あの時とは何もかもが違う。
イーレ・リュニック:目線を隠すような髪は短く整えられ、古びた服は仕立ての良いスーツに変わり、無感情だった頬には薄く笑みが乗っている。
アレアテルナ:輝くような金色の髪。深く澄んだ青色の瞳。美しい肌をしているけれど、首や手の甲には確かな筋肉の筋が見えて、どきりとする。
イーレ・リュニック:「? どうか、いたしましたか?」
アレアテルナ:「……ううん」
アレアテルナ:イーレの肩に、頭を寄りかからせる。
アレアテルナ:自動運転の車だ。運転手だって見ていない。
イーレ・リュニック:「!」
アレアテルナ:「なんでもない」
イーレ・リュニック:ビクリ、と一瞬だけ肩を震わせた。
イーレ・リュニック:「この行動の理由を求めたいのですが…………」
アレアテルナ:「ふふふ」
アレアテルナ:「寒くなっちゃったの」
イーレ・リュニック:自動運転だ。ガラスはスモーク。見られてないということは折り紙付き。
イーレ・リュニック:先の廊下の会話を踏まえると、二度言う必要を天秤にかけておく。
アレアテルナ:後ろに括った長い黒髪が、イーレの胴に絡んでいるのが分かる。
イーレ・リュニック:「………………はぁ」
イーレ・リュニック:「走っている間だけ、ですよ」
イーレ・リュニック:こわばった肩から力を抜く。硬い枕にすると首を痛めてしまうかも知れない
アレアテルナ:「……うん」
アレアテルナ:彼はもうあの頃のような、最小限で、機械的でさえあった言葉遣いでもない。
アレアテルナ:誰からも好かれる立ち振舞いの、本当に素晴らしい騎士になった。
アレアテルナ:リュニック家に養子として迎えられて、名前さえも手に入れた。
アレアテルナ:「……ねえ」目を閉じたまま呟く。
アレアテルナ:「どっちが本当なのかなんて」
アレアテルナ:「大したことではありませんよね……」
イーレ・リュニック:「そうですね」
イーレ・リュニック:今では返答を考える時間も、殆どなくなった。
イーレ・リュニック:「大したことではありません」
イーレ・リュニック:「どうあれ、行動に現れるものですから」
アレアテルナ:「――見て」
アレアテルナ:車は、フラワーガーデンの横を通り過ぎるところだった。
アレアテルナ:「白いアマランサスが咲いてる」
アレアテルナ:「決闘が始まるんだわ」

GM:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのブーケを105増加(65 → 170)


【Scene2-3:(諏訪月)陶花/白鷺達一】

白鷺達一:第76層を事実上統治する、イフトノート王家の王女が来訪する。
白鷺達一:しかも王女は祖国復興のため上層の支援を求めており、見返りとしての異世界の技術や資源の提供にも積極的だという。
白鷺達一:アーセルトレイに企業と呼べる形態の集団は少ない――だが、他に先んじて利益を確保しようとする派閥や集団は、社会がある限り必ず存在する。
白鷺達一:ある統治政府官僚が主催した王族歓迎パーティーも、そんな利益確保のための試みの一つだ。
白鷺達一:当然、招待制のパーティーである。招かれざる客はそもそも入ることができない。
白鷺達一:そのはずなのだが……
白鷺達一:「いや~、申し訳ない!妻がどうしても同伴してほしいって聞かないもので!」
受付:「そ、そうは言われましても……招待状があるわけでは……」
白鷺達一:「え?あ、諏訪月家は入場禁止でした?いや~~、それはすいませんこっちの確認不足で!」
白鷺達一:「そっかあ~~!!去年までは招待状が来ていたせいで勘違いしちゃったなあ!!」
受付:「あの、すみません。あまり大きな声では……」
白鷺達一:「いいじゃないですかあ~っ!堂々としてていいんですよ!何も悪いことしてないでしょ?」
白鷺達一:馴れ馴れしく受付嬢の肩を組んで言う。
白鷺達一:「諏訪月家は今年は招待してませんってさ!!」
諏訪月 陶花:数歩後ろから、しずしずと歩いてくる。
受付:「あ!諏訪月様……!こ、これは別に、主催の方針というわけではなく……!」
受付:「もう一度電話確認を取ってみます!失礼します!」
諏訪月 陶花:「いつもお世話になっております」
諏訪月 陶花:細身のドレスに身を包み、にこりと微笑む。
白鷺達一:「よし。この調子なら通りそうだな。一足先に中の連中に挨拶しとくか」
白鷺達一:歩き出そうとして。「……なあ」
諏訪月 陶花:「招待状は頂いております。この催しの招待は、崩落よりも前でしたから」
諏訪月 陶花:「はい?」
白鷺達一:「少し体のラインが出すぎじゃないか?いいドレスってこういうもんか?」
諏訪月 陶花:「白鷺さまも、皺の出ないスーツを愛用していらっしゃるでしょう」
諏訪月 陶花:菫色のマーメイドスカート。肩も露わだ。「それと同じことです。秘した刃を出すべき場所ですから」
諏訪月 陶花:片手を差し出す。「さあ。白鷺さま」
白鷺達一:「……調子が狂う」少しバツが悪そうに手を取る。
諏訪月 陶花:「未来の取引先の前に、今の配偶者に、エスコートをお願いいたします」
白鷺達一:「自信があるのかないのかどっちなんだ、お前は」
諏訪月 陶花:「わたしはいつも、わたしが為すべきことを考えているだけです」
白鷺達一:手を引いて、会場へと堂々と出る。
白鷺達一:すぐに多くの好奇の目が向けられるが、それも一瞬のことだ。
白鷺達一:「フン」
白鷺達一:「こんな成金の存在を気にするのは『恥ずかしいこと』だからな」小声で呟く。
諏訪月 陶花:「いずれはお一人で出るようになられるのでしょうが」
諏訪月 陶花:「それまでは御側におります。……あちらに主催者がおられます。まずは挨拶に参りましょう」
諏訪月 陶花:周囲からは、ひそひそとした囁きが聞こえてくる。
白鷺達一:「そうだな」ずんずんと進み、主催者の元へ。
諏訪月 陶花:表向きの情報としては、ロアテラの襲撃によって階層ごと崩落した不幸な家。だが、ロアテラに乗っ取られる前から、諏訪月家の評判は決してよくなかった。
白鷺達一:「いや~どうも!サルストの白鷺です!ご無沙汰です~善光寺さん!」
統治政府官僚:「ああ……君か……」露骨にうんざりした様子で振り返る。
白鷺達一:「あ、俺はいいんすよ!妻のほうがね、善光寺さんとのお付き合い長いでしょうから!俺は付き添いみたいなもん!」
諏訪月 陶花:「ご無沙汰しております。先日は、お世話になりました」
統治政府官僚:「はあ……いいのかね、君はそんな扱いをされて」
統治政府官僚:「諏訪月さんには随分とお世話になった。その未来を継ぐ君にも私なりに敬意を払っているつもりだったが」
諏訪月 陶花:「……何がでしょう? あの不幸な事故によって、こちらにおられる皆様の大半に、多大なご迷惑をおかけしました」
諏訪月 陶花:「残ったのは他愛もない小娘一人、本来ならばこうしてお礼にも窺えず、泣き暮れていたことでしょう」
諏訪月 陶花:「それを拾い上げてくださった夫には、礼を尽くしても足りないところです」
統治政府官僚:「だがねえ、だからといって……」
統治政府官僚:「結婚相手のことをとやかくは言わんが、知らぬ者が見れば驚いてしまうだろう」
諏訪月 陶花:「彼は世相や偏見に囚われず、事態に対して勘所を弁えております」
白鷺達一:「いやあ~、そうっすかね?あれだけメディアで大騒ぎされて、まだ俺らが結婚してないの知らないなんて」
白鷺達一:「そっちのが恥ずかしいんじゃないかな~~って!俺がね!個人的に思うだけなんすけど!」
諏訪月 陶花:「いずれにせよ」
諏訪月 陶花:「……諏訪月の、かろうじて枯れ朽ちていない枝葉については、彼のもとで育つことになります」
統治政府官僚:「知っている。グループ企業のほとんどをそこの彼が買い上げたそうだな」
統治政府官僚:「今では諏訪月はほとんどサルストのものになった……」
統治政府官僚:何らかの不満を零そうとしたのだろうが、代わりにワインに口をつけた。
諏訪月 陶花:「…………」
白鷺達一:「……ええ、そうです!」
諏訪月 陶花:言葉を止めて、彼がワインを嚥下するのを待つ。
白鷺達一:「つまりお取引先の皆さんには」
諏訪月 陶花:すい、と白鷺さんの喉前に手を掲げる。
白鷺達一:「む」
統治政府官僚:「……路頭に迷う者がいなかったのは、いい」
諏訪月 陶花:白く細い指を、自らの口元に寄せる。その間で、ちょうど官僚の喉が潤った。
統治政府官僚:「枝葉を代わりに育てたいと願う者もいただろうが――」
統治政府官僚:「彼ほどには金を持っていなかった」
諏訪月 陶花:「それだけではなく。貴方も――――噂話を信じておられたでしょう」
諏訪月 陶花:「諏訪月の澱みが、何を狙っていたのか」
諏訪月 陶花:「中に金貨があると思っても、真っ先に毒沼に踏み込もうとするものはおりません」
統治政府官僚:「……」
諏訪月 陶花:くすりと、目元を緩めた。はきはきと喋っていた口調が、少しだけ曖昧なものになる。
諏訪月 陶花:「それに。外から見えるほど、無碍にはされていないのですよ?」
統治政府官僚:「諏訪月さんの私有階層は『壊れた』のだそうだな」
統治政府官僚:「そんなことは普通、起こり得ることではない……本来なら……」
諏訪月 陶花:「本来なら」
諏訪月 陶花:「皆様が噂話を信じるのも、当然です」
諏訪月 陶花:「真実をわざわざ疑う必要など、ございませんから」
統治政府官僚:「……先ほど、受付から電話確認があった」
統治政府官僚:「招待状を送りそこねていた、らしい」
統治政府官僚:「私の不手際だったな。来年からは、またお願いしよう……諏訪月陶花嬢」
諏訪月 陶花:「恐縮です。ご厚意に痛み入ります」
諏訪月 陶花:そして、すぐ隣に立つ男の腕に、柔らかに腕を組む。
白鷺達一:「……」官僚に向けて、ニッと腹の立つ笑みを向ける。
統治政府官僚:「……新しい客が来たようだ。私は失礼」
白鷺達一:「おい」小声で不満を漏らす。
諏訪月 陶花:「ありがとうございました。……はい」
白鷺達一:「なんで止めるんだ。あんな隙だらけな奴、ギタギタに論破するチャンスしかなかっただろ」
諏訪月 陶花:「論破」
諏訪月 陶花:「どうしてお挑みになられるのですか」
白鷺達一:「俺はな~~、ああいう自分は理性的ぶってネチネチ遠回りな嫌味で他人を攻撃してくるやつが」
白鷺達一:「一番ムカつくんだ!それにそういうやつを人前で泣かすと楽しい!」
諏訪月 陶花:「……彼らは、私は、事情があってそのようになっているのです」
諏訪月 陶花:「事情があれば腐り落ちていいというわけではありませんが」
白鷺達一:「俺とは無関係な事情で俺が不快にされてたまるか」
白鷺達一:細い肩を抱き寄せる。「飯だ。飯を食うぞ」
白鷺達一:「嫌な思いをした分、元を取らなきゃ気が晴れない」
諏訪月 陶花:「では、その筆頭であるわたしから、お泣かせになりますか?」
諏訪月 陶花:肩をつかんだ手を、もっと寄せて、薄く細い体の中心線に誘導する。
白鷺達一:「……なんだよ」ギョッとする。
諏訪月 陶花:「公衆の面前で恥を掻かせるのがお好きかと」
諏訪月 陶花:「わたしとしては、ここから消える速度が増すだけですので、構いませんが」
白鷺達一:「いいか」
白鷺達一:「俺はそうしたくなったらそうする」
白鷺達一:「お前を泣かせて何が楽しいんだ?」
諏訪月 陶花:「……はい」
諏訪月 陶花:手の位置を、もとどおりに。落とすように微笑む。「白鷺さま。だからわたしは、あなたに上に行ってほしいのです」
白鷺達一:「……」
白鷺達一:「言われなくても上に行くつもりだが。嫌味じゃなくてか?」
諏訪月 陶花:「初めて会った日から、あなた様に心酔しております」
白鷺達一:「は」ため息のように笑う。
諏訪月 陶花:しれっと言って歩みを進める。
白鷺達一:「冗談なんて珍しいな。いつも辛気臭い顔してやがるのに」
諏訪月 陶花:「少しは緊張がほぐれましたでしょうか?」
白鷺達一:「俺は緊張なんてしない。……いや」
白鷺達一:そういえば、した。陶花に手を取って、胸元に導かれた時だ。
白鷺達一:「嘘ついたな。した。だが、お前のせいだからな」
諏訪月 陶花:「それこそご冗談を。この非力な身で、白鷺さまに何ができるか」
白鷺達一:「そういう話じゃなくてな……あっ!」
白鷺達一:腕を引いて歩く速度が速くなった。歩きとは思えないすばしっこさで、一人の少女の前へ割り込む。
アレアテルナ:「?」長い黒髪の、白いドレスを纏った少女だった。
アレアテルナ:首の後ろには青いt蝶を模した宝石の髪留めがあり、白いティアラが頭に輝いている。
諏訪月 陶花:「あ…………」少し、動揺する。
アレアテルナ:陶花と違って肩は露出していないが、腰を細く絞るデザインのドレスが豊かな胸を強調している。
諏訪月 陶花:「アレア」
白鷺達一:「あ、お初にお目にかかります!俺はサルスト・ホールディングスの白鷺達一と申す者ですが」
白鷺達一:「……ぜひ!アレアテルナ王女にご挨拶をと!」
アレアテルナ:「わざわざありがとうございます。白鷺達一さん――アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートです」
アレアテルナ:「トウカさんも、お久しぶりですね」輝くような笑顔。
アレアテルナ:「入学の折には、お世話になりました」
諏訪月 陶花:「……ええ。学校でのお話はたびたび耳にしております」
白鷺達一:「え~っ、陶花とお知り合いだったんですか!?すごい偶然!」
諏訪月 陶花:ぐい、と白鷺さんの背中のスーツを引っ張ってそれ以上の接近を止める。
白鷺達一:「一体どういう風にお知り合いを!?あ、話したくなければ――」引っ張られる。
白鷺達一:(なんだよ)
白鷺達一:(王族に近づくチャンスだぞ)
諏訪月 陶花:同時に、視線だけで周囲を見回す。
諏訪月 陶花:(彼女にはお付きの騎士がおられます)
諏訪月 陶花:(わたしは白鷺さまが茹でられるのを見たくはありません)
白鷺達一:「は!?俺が不審者だって言いたいのか!?」
アレアテルナ:「……大丈夫ですか?」少し冷や汗を流しているように見える。
諏訪月 陶花:「いえ。先日の交流試合の話も聞き及んでおります。……騎士様は?」
アレアテルナ:「壁で会場を見てくれています。私だけでなく、ここに集まられた要人の皆さん一人一人に、もしものことがあってはなりませんから」
諏訪月 陶花:「そうですか」
諏訪月 陶花:細く息を吐く。「ご紹介いたしますね。こちらは白鷺達一様」
白鷺達一:「どうも、不審者で~す」いじけたように頭を下げる。
諏訪月 陶花:「階層崩落の後、わたしの後見をしていただいております」
アレアテルナ:「階層崩落の話は……伺っています」悲しげに目を伏せる。
諏訪月 陶花:「魔沸にとても興味があるそうで。拙速に見えますが、信頼できる方です」
アレアテルナ:「大変でしたね。以前には、テアト復興のお力添えを約束して頂きましたけど……」
アレアテルナ:陶花の手を握る。「今は、私達ではなく、諏訪月の復興に力を尽くしてください」
諏訪月 陶花:握られた手を見やる。アレアテルナの顔を見る。
諏訪月 陶花:「どうか、お気になさらず。……かつての約束を履行できないことについていて、改めて謝罪をさせてください」
アレアテルナ:「いいえ。器が欠けてしまっていては、与えることが苦しみになってしまいます」
アレアテルナ:「私達二人ともが、自分の世界の欠けを満たして……それから、互いに与え合いましょう」
白鷺達一:「……」所在なさげにしている。
諏訪月 陶花:かつては、こちらが上の立場だった。彼女を審査して学校への入学を許す立場であり、彼女への援助を考える立場であった。
諏訪月 陶花:彼女の世界の可能性については、本家でも密かに評価されていた。援助の約束も、彼らの陰謀を陶花を通してカモフラージュしただけにすぎない。
諏訪月 陶花:「ええ。……ありがとう」目線が、ほんの一瞬だけ逸れた。
アレアテルナ:柔らかく微笑む。
アレアテルナ:「白鷺様。二人で会話が盛り上がってしまって、申し訳ありません。トウカさんは同級生の、恩人でしたから」
白鷺達一:「いえいえいえ、俺なんか全然!それよりお忙しいなら、名刺交換だけでもね!しばらくこの階層にいるんでしょ?」
アレアテルナ:「ええ。今回の滞在は少し長くて……学園の寮も用意していただきました」
アレアテルナ:「ビジネスのお話は、またじっくりと伺いましょう。私も、とても興味があります」
アレアテルナ:「……それでは、トウカさん。お元気で。またお会いしましょう」
諏訪月 陶花:「ええ。アレア……殿下」
諏訪月 陶花:「あなたの世界にも、良い兆しがあるよう祈っております」
白鷺達一:「まったく、わざわざ話しに行った割りには大した収穫じゃなかったな」
白鷺達一:「お前も邪魔すんなよ、さっきといい今回といい」
諏訪月 陶花:「…………」
諏訪月 陶花:相変わらず立ち姿は優雅だが、少し俯いている。
白鷺達一:「おいおい。なんだ」
白鷺達一:無言で手を引いて、人気のない廊下に連れ出す。
白鷺達一:「……どうした?落ち込む要素のある会話だったか?」
諏訪月 陶花:「あ……」連れ出されてから気付く。
諏訪月 陶花:「構いません。顔合わせを続けて頂いて」
白鷺達一:「あ!さてはあの王女、学校でいじめっ子だったんだろ?そういう時は初手だぞ初手」
白鷺達一:「ブチ切れた初手でそいつの机を窓から蹴り出すんだ。俺はこの方法で2回……」
諏訪月 陶花:「白鷺様は……」
白鷺達一:「あ?」
諏訪月 陶花:「……無邪気ですね」
諏訪月 陶花:驚き半分、感心半分といった声色。
白鷺達一:「バカにしてんのか?」
諏訪月 陶花:「いえ。本当に。……わたしのことは、本当に気にしないでくださいませ」
諏訪月 陶花:「アレア殿下が、わたしの学校に編入するときに少しだけお世話をしたことがあって」
白鷺達一:「そうらしいな!結婚する前の事情なんて知らないぜ、俺は」
諏訪月 陶花:「今の諏訪月の状況が、やや申し訳なくて」
白鷺達一:「あ~~、支援の約束って話か?」
白鷺達一:「どうせそんな約束、あれだろ?諏訪月の連中が76層の技術を仕入れたくて」
白鷺達一:「世間知らずそうな王女が来たから、年の近いやつに丸め込ませようとか」
白鷺達一:「大方そういう算段だったんだろ!」今思いついた出任せを淀みなくまくしたてる。
諏訪月 陶花:「…………」
白鷺達一:「だから気にすんな!支援が成立したってどーせろくな事にならなかったんだ!」
諏訪月 陶花:「まさか、そのようなことなんて」
諏訪月 陶花:「王女の身柄を押さえて、技術を無条件に供与させる手段すら検討されていたなんてことは、決して」
諏訪月 陶花:「もうありません」
白鷺達一:「……」
諏訪月 陶花:つとつとと歩いてゆく。
白鷺達一:(そういやこいつ、王女の護衛について妙に具体的に知っていたな……)
白鷺達一:「……どう思ってる」
白鷺達一:「無関係な事情で不快な気分にさせてくるのは」
白鷺達一:「身内だってそうだ。家族なんて所詮他人の集まりなんだもんな」
諏訪月 陶花:「白鷺さまは……ご家族は?」
白鷺達一:「いるよ。両親と母方の祖父母、父方の祖父、あと妹だ」
諏訪月 陶花:「妹御……苦労してなさって……」
白鷺達一:「言っとくが妹は俺よりワガママだぞ!」
諏訪月 陶花:「それは……楽しい家庭ですね」
白鷺達一:「それに両親やじいちゃんばあちゃんにも、デカい家は買ってやってる!俺が稼いだ金でな!」
諏訪月 陶花:「…………」近くの椅子に浅く腰かける。飲み物でひとくち唇を潤す。
白鷺達一:「妹のやつは顔合わせるたび下層旅行行きたいって……30層以下なんて安全保障されてねえって言ってんのに」
諏訪月 陶花:「仲がよろしいのですね。……わたしの家族もそうでした」
白鷺達一:「……ふうん」
諏訪月 陶花:「そうでしょう。わたしの、この、磨かれた肌も、整えられた爪も、設えられた顔も仕草も、家族が世話してくださったものです」
白鷺達一:「前から思ってたけど」
白鷺達一:「そんな態度なのに見た目には自信あるんだなお前」
白鷺達一:実際、贔屓目を抜きにして見ても陶花の容姿は整っている。
白鷺達一:亜麻色の髪色と調和をなすような琥珀色の瞳は、初めからそういう人形としてデザインされたと言われても信じるかもしれない。
諏訪月 陶花:「絵描きが、自らの絵を下手だと言いながら売りますか?」
白鷺達一:「分かってるさ。俺だって見た目も含めてイメージ戦略でやってるんだ……」
白鷺達一:「……だけど」飲み物に口をつけて、改めて陶花を見る。
諏訪月 陶花:「わたしにとって、そうあろうとしてこの身を作っています」
白鷺達一:「……後でいいか。話の続きは?」
諏訪月 陶花:「諏訪月家の中枢にとって、この世は二種類の人間しかいません」
諏訪月 陶花:「虐げる者と、虐げられる者です」
白鷺達一:「『中枢』って誰だよ」笑う。
諏訪月 陶花:「上から順の支配構造でもない。諏訪月の家の者同士はどうしようもなく甘く、優しく、裕福で」
諏訪月 陶花:「決まっています――その甘さも、優しさも、裕福さも、諏訪月以外から無情に奪い取ったもので作られていました」
白鷺達一:「なるほど……だから『中枢』か」
諏訪月 陶花:「物資が集まっていく先にいるものたち」
白鷺達一:「だから『仲良し』だったってか?」
諏訪月 陶花:「転移直後の新階層の貴重な資源。弱い世界からやってきた奴隷。自らが傀儡とすら知らない犯罪組織」
諏訪月 陶花:「そういったものを利用し財を得た話は、彼らにとって宴の最高の肴でした」
白鷺達一:「よくバレずにいられたな、そんなやり方が……」苦々しく呟く。
白鷺達一:自分の悪どさは全部どこかしらからバレているからだ。
諏訪月 陶花:「この世界は数が多すぎますので」
諏訪月 陶花:「わたしも……子どもの頃は無邪気にそれはそういうものだと信じていたのですけれど」
諏訪月 陶花:「金の通じない相手への籠絡用の駒だったので、悪事の主体になれなかった」
白鷺達一:「だから?そのお陰で身内の悪さを客観視できたってわけか?」
諏訪月 陶花:「客観視……できていれば良かったんですけど」
諏訪月 陶花:「……彼らが死んだ……ロアテラに呑まれたのは自業自得です。諏訪月の階層が落ちて、世界は確実に良くなった」
諏訪月 陶花:「ただ……それでも、わたしにとっては良い家族だったんです。食事も、睡眠、薬に化粧品、エステティシャン」
諏訪月 陶花:「どれも、わたしは快楽と恵みを享受していた。わたしは、虐げる者の側」
諏訪月 陶花:「わたしが後始末をしているのは、……彼らに死後まで罪を重ねてほしくないからなのです」
白鷺達一:「俺と似た考えだな」
白鷺達一:「俺は、凶悪殺人犯が逮捕された後のインタビューで……」
諏訪月 陶花:「…………白鷺さまが?」
白鷺達一:「『あんな奴は息子じゃない』とか抜かす親や、『いつかやると思ってました』とか抜かす友人が嫌いだ」
白鷺達一:「『出来の悪い息子が申し訳ありません』でさえイライラする」
白鷺達一:「そいつの犯行がどんなに凶悪で、弁護の余地のないクズ野郎でも――」
白鷺達一:「親はそいつを育てて、友人はそいつと友達やってたんだろう。なんで味方してやらないんだ」
白鷺達一:「『俺の子供は何も悪くない。文句があるなら俺も死刑にしてみろ』とか言えるようなやつは」
白鷺達一:「この世に一人もいないのか?」
諏訪月 陶花:「ですが、それは……」
諏訪月 陶花:「…………迷惑です」
諏訪月 陶花:「被害を受けたものからすれば、何を馬鹿なと思うでしょう」
白鷺達一:「迷惑か?『俺はこのクソ野郎の味方をする』って言うだけのことが?」
諏訪月 陶花:「…………それ、は……」
白鷺達一:「言葉に力なんかあるわけがない。それなのに世の中の連中は、傷ついた傷つけられたと大騒ぎしやがる――」
白鷺達一:「……だから、びっくりしたよ。ニュースを見てイライラしていたガキの頃の俺に見せてやりたいくらいだ」
白鷺達一:「どんな地獄行きのクソ野郎でも、愛してた家族にまで見捨てられたら救われないだろうしな」
諏訪月 陶花:「でも……」
諏訪月 陶花:何がダメだと言い返せない。
諏訪月 陶花:自分の罪人の為に祈る思考が、罪深いというのは、理論以前の感覚だった。
諏訪月 陶花:じっと、座った膝を見つめている。
白鷺達一:「それに」
白鷺達一:「身内の悪事にそう落ち込まれると、俺だって困る」
白鷺達一:「これからもガンガンあくどい事をやってく予定なんだからな」
諏訪月 陶花:「…………ああ」
諏訪月 陶花:「そう、でしたね」
諏訪月 陶花:泣いてもいいとさえ思った。
諏訪月 陶花:けれど、パーティで化粧の落ちた姿を晒すべきではないと、体に染みつかされた習慣が止めている。
諏訪月 陶花:「では……悪辣な炎上社長の妻として」
諏訪月 陶花:「微力ながら、今後とも力を尽くさせていただこうかと思います」
白鷺達一:「……そうしろ。認めるのは癪だが、こういうパーティーじゃやっぱり……」
白鷺達一:「お前の力が必要だ。それに……」
白鷺達一:「……」
白鷺達一:「いや、いいか……」どうせ、『後でいい』と言った話など忘れているだろう。
諏訪月 陶花:「?」
諏訪月 陶花:首を傾げて見上げる。

GM:白鷺(諏訪月) 陶花のブーケを106増加(57 → 163)


【Scene2-4:セリ=ティンカー/ルバート・アロス】

ルバート・アロス:【ある下層  階層北端】
見張り役:「ああ、アロス先生じゃねえか」
見張り役:立っていた男が、こちらを見て笑いながら声をかけてくる。作業着姿の男である。
見張り役:「この前はほんとに世話になったなあ。今日は何のようだい?」
ルバート・アロス:「ここに入りたい。調べ物があってな」見張り役の奥を指差す。
見張り役:「そりゃあ……あんたがやるってんなら仕方ねえ。けど、まだどこが崩れるか分からねえぞ?」
見張り役:その奥には、うずたかく積もった瓦礫の山のようなものがある。
セリ=ティンカー:きりきりと車椅子を自分で回しながら。「それだったら、あたしが”支え”るわ」少し笑いながら。
ルバート・アロス:「気にするな。セリもいる。医者の怪我は医者の責任だ」
見張り役:「おいおい、あんたに倒れられたら俺たちみんな困っちまうよ! 気を付けろよォ」
ルバート・アロス:斜めに傾いだ建造物であった。
ルバート・アロス:その建築様式は、この階層のものとは全く違う。だが、専門でないルバートにも、それが途方もなく金のかかったものであることは分かった。
ルバート・アロス:柱の一本、落ちている屋根瓦一つとっても、精緻な技術の固まりである。
ルバート・アロス:これが元あった階層から離れ、漂流してきた時には、周囲に甚大な被害が生じたものだった。
セリ=ティンカー:それを見回す。「随分と手が込んでるみたいね。手間暇とか大変そう」
ルバート・アロス:「行くぞ、セリ。よく注意してくれ。……これは、複数の階層世界の知識の塊だ」
ルバート・アロス:「上で何があったかは知らんが……君の容態についてのヒントもあるかもしれん」
セリ=ティンカー:「そうなの?」少し目をぱちぱちとして。「それなら、何かあるといいな」少し笑う。
セリ=ティンカー:「術もじゃあ、軽く全体的に”吊る”感じで行くね」あまり崩さないよう、干渉力を落としたものを。
ルバート・アロス:「頼む」
ルバート・アロス:がら、と足下にある石塊を蹴る。傷一つ無いそれには、文字が刻まれている。
セリ=ティンカー:「”きぎのくみき”。”つちのまがり”。――”ふしのつるべ”」謡うように口ずさむ。微かな青い光が、建造物を覆い、守る。
ルバート・アロス:『諏訪月 第十三邸』

ルバート・アロス:「やはり本。本だ。本がいい」
ルバート・アロス:斜めに傾いだ書斎に転がった、砂塵塗れの本を拾い上げる。
セリ=ティンカー:「文字がわかれば読めるものね。……有用そうなのだったら、保護の術を掛けるわ」
ルバート・アロス:諏訪月十三邸は、つい一月前、上層にて"崩落"した階層から流れ着いた建物である。
ルバート・アロス:階層の崩落。そのような現象が実在することを、その原因を自分たちだけは知っている。
セリ=ティンカー:「どこかの”花園”が砕けたのかな」少し溜息をつくようにして。此方もいくつかの本を手に取っている。
ルバート・アロス:「知らん。ともあれ、相当な上層なのは間違いないな……」
ルバート・アロス:「下層では、余所の階層の物品まで回らんはずだ。……うお」
セリ=ティンカー:「上層は安定してるんだっけ。ちょっとうらやましい…どうしたの、せんせ?」
ルバート・アロス:ごごごごご。本棚が僅かに浮いてなめらかに動き、奥の書斎が露わになる。
ルバート・アロス:侵入者を感知などではなく、ただの便利な機能なのが分かる。
セリ=ティンカー:「………」ぽかんとした顔になる。機械的なギミックには明るくない――世界からしてそう言うものを作らない世界だ。
セリ=ティンカー:「……本棚に隠し通路なんて、ホントに作るような人いるのね?」
ルバート・アロス:「……電気系統ならこっちも分かるが……」
ルバート・アロス:「うわっ階段せり上がってきた」
セリ=ティンカー:「わあ。物語みたいね…?」
ルバート・アロス:「こういうのやるならバリアフリーくらい考えてくれ」
ルバート・アロス:「セリ」 車椅子をその場に固定する。
セリ=ティンカー:「あ、きゃっ」ちょっと体が揺れる。
ルバート・アロス:そのまま、小さな体を抱え上げます
セリ=ティンカー:「……すぐ抱き上げるんだから!」
ルバート・アロス:「今更だろう」 そのまま下っていく。
セリ=ティンカー:そうぷりぷり怒って見せながら、寧ろあなたの胸に己の顔を寄り添わせている。
ルバート・アロス:彼女の髪からは、時によってさまざまな花の香りがする。
ルバート・アロス:花冠のようだと思う。言わないが。
セリ=ティンカー:今回の香りは、少し強くなっていた。……彼女が感情を弾ませている証拠、かもしれない。
ルバート・アロス:――既にこの場所のことは、統治政府も把握している。
ルバート・アロス:――だが、元の場所に戻す手段もなく、内部はいつ崩落してもおかしくない。
ルバート・アロス:上層の知識も、即座に金に換えられるものではない。そのため、ああいった現地の民間人が見張っているだけで、内部に入る人間など滅多にいない。
ルバート・アロス:もはや誰も居ないはずだった。
ルバート・アロス:この財産を、正しく引き継ぐものなど。

謎の少女:「…………ぇ」
謎の少女:階段を上っていった先。窓から日の光が差し込む場所。
謎の少女:小部屋の中で、少女がこちらを驚いたような顔で見ていた。
セリ=ティンカー:ずっと頬を染めていた赤髪の少女が、男性の腕の中で表情を切り替える。――いつでも魔術を使える姿勢に切り替わったのが、抱き上げるルバートには分かった。
ルバート・アロス:「……何?」
謎の少女:一瞬、コートの中に手を入れようとする。だが、すぐに身を正す。
謎の少女:「……お医者様、でしょうか?」
ルバート・アロス:「そうだが……」 ルバートは辻医者である。一目でそうと分かるように、白衣を来ている。
セリ=ティンカー:「…せんせ、降ろして大丈夫よ」彼がいつでも動けるように促す。「…確かに、あたしたちは医院のものだけど、あなたは?」
謎の少女:「トウカと申します」
セリ=ティンカー:「所属を聴いたのだけど……」どうする?とルバートせんせを見上げる。
トウカ:「聖アージェティアの学生をしております」
ルバート・アロス:「聖アージェティア? 上層も上層だ。どうしてこんな下層にいる?」
セリ=ティンカー:「あら素直に…ありがとうね」
トウカ:「下層……わたしは、一層……に落ちてきた離れから入りましたが」
ルバート・アロス:「僕達は○層に落ちてきた館から入ってきた。……石には第十三邸とあったが」
セリ=ティンカー:「……ええ?空間転移か何かかしら。崩落階層の物品って不思議なことが起こるものね…?」
トウカ:「館の内部が、つながったままなのですね」
トウカ:「そういうことは、ございます。崩落といっても、元は一つのまとまった世界ですので」
セリ=ティンカー:「確かに元々同じ建物っていえば、因果線よすがが繋がり易くはあるけど……詳しいのね、お嬢さん」
トウカ:「建物がいずれ完全に消え去る前までは、内側は同じ場所として扱われるのです」
トウカ:「物取りではないのですね」
セリ=ティンカー:「ふうん……普通に参考になった。それに、あなたからも…甘い香り」すん、と鼻を動かす。「この屋敷と同じ…ううん、似てる匂いがする」
トウカ:書斎や壁の絵を見上げている。
セリ=ティンカー:「あー……物取りというか資材集めというか、技術情報の漁りには来たから、そう言う意味だとそうなのかしら?」
トウカ:「……いえ、それでも構わなかったのです。私一人では、役立たせられるものを持ち出せないでしょうから」
トウカ:「ご希望はありますか?」
セリ=ティンカー:「……うーん、せんせ?案内してくれるみたいだし、言っちゃって良さそうかも?」
ルバート・アロス:「医療について書かれた本、USB、記録媒体。できれば科学単体ではなく、魔法、妖精についてのものがあるといい」
ルバート・アロス:即座に答える。「確かに怪しい相手だが、この館について詳しいのは確かだ」
セリ=ティンカー:「あっちからしたらあたしたちの方が怪しいっぽいけどね?」ちょっと悪戯っぽく笑って。
トウカ:「では、怪しい者同士、ひとときの邂逅を愉しみましょうか」
トウカ:「科学と魔法の共生についてでしたら、こちらです」
セリ=ティンカー:「じゃあ、ゴーゴー!探検隊、出動です!」あえて大げさにはしゃいでみせる。
トウカ:「ふふ」
ルバート・アロス:「おい暴れるな。……車椅子をとってくるべきだったか」
トウカ:「僭越ながら。お二人は、どのような関係なのですか?」
セリ=ティンカー:「わっ。結構踏み込んでくるね、トウカちゃん?」
セリ=ティンカー:「えー、どういうのなのかなあ。どうおもいますかー、せんせ?」ちょっとにやにやしながら。
ルバート・アロス:「医者と患者だ」
ルバート・アロス:つれなく断言する。
セリ=ティンカー:「ぶー」口をすがめて。
セリ=ティンカー:「釣れなさすぎ!そこは…なんか…あるはず!」
ルバート・アロス:「出会った時に命のやりとりをした仲でもある」
セリ=ティンカー:「間違ってないけど絶対誤解されるやつ~~っ」
ルバート・アロス:「おい暴れるな。君は足が純然たるデッドウェイトなんだぞ」
トウカ:「信頼されているのですね」
セリ=ティンカー:「も~~っ、そういうとこ!……って、ほらトウカちゃん笑ってるじゃん!」
トウカ:「このように、色々と不確かな世界ですから。確かなものは関係性くらいでしょう」
トウカ:廊下の窓を軽く開く。上層でも、ルバート達でもない世界の花びらが舞い込み、すぐに閉じる。
ルバート・アロス:「まるで君まで、明日にも消えるとでも言いたげだな」
セリ=ティンカー:「なになに?なんか難病とか抱えてたりするやつかい」
ルバート・アロス:「この僕の前で病状を隠せると思うなよ?」
トウカ:「まさか。……そうでしたら、少しは話も早かったのでしょうが」
トウカ:「お陰様で、何のはばかるところもない、健康体です」
セリ=ティンカー:「……ふうん?その割にはちょっと嫌そうだね。どうせ階層も随分違うんだ、言いたい事とか吐き出したい事があるなら言っちゃいなよ」
セリ=ティンカー:「君の周りに言い触らしたりなんて、物理的にできないんだから」
トウカ:「本当に、お優しいですね」
セリ=ティンカー:「そう?医院なんてやってるからだよ。きちんと言いたがらない患者さん、一杯見たことあるから」
トウカ:「傷を治したくない患者を相手にした時は、どのようにご対応されますか?」
トウカ:少し逡巡したあとに、そのように言った。
セリ=ティンカー:「ん~…医院であたしが最終的に判断することじゃあないけど。まあ、あたしは――」
セリ=ティンカー:「きちんと理由を聞くよ。いいたくないなら、言いたくなるまで傍にいてあげる。…勿論、急ぎの時は最低限の処置はしちゃうけど」
ルバート・アロス:「決まっている。ベッドに縛り付けて治さなければどうなるか脅しつけて強引に治療する……」
セリ=ティンカー:「せんせはそういうトコなんだよな~」
ルバート・アロス:「…………と、言いたいところだがそれでは資格試験には落ちる」
セリ=ティンカー:「あ、落ちるんだ。流石だコンプライアンス・・・」
ルバート・アロス:「いくつか対処法はあるが……総じて、"本当の傷"を治療する」
ルバート・アロス:「今、目に見えている傷を『治したくない』のなら……それを治すことで広がる別個の傷がある、と考えるべきだ」
ルバート・アロス:「そちらを治療する。往々にして、それは目に見えるものではないから、困難を極めるがな」
セリ=ティンカー:彼の答えを聴いて、トウカさんにどお?とでも言いたげな顔。
トウカ:「…………なるほど」
トウカ:「患者すら傷とは自覚していない、そういった傷があるのかもしれません」
トウカ:「目が覚めるようなお言葉です。素敵なお医者様なのですね」
トウカ:セリに微笑む
セリ=ティンカー:「ふふん」自分の事じゃないのに嬉しそう。
セリ=ティンカー:あたしがしたことに意味があったかどうかなんて、まったくわからないことばかりだけれど。
セリ=ティンカー:彼を助けたことには、きっとそうした意味があるのだと、今は確信している。
トウカ:「こちらです。……情報機器はお使いになれますか?」
トウカ:部屋に辿り着き、扉を示す。かちゃりと鍵をあける。
セリ=ティンカー:「あたしは事務用品程度になら…?」
ルバート・アロス:「大型精密機器まで操作は可能だ」
トウカ:「では、そちらもご用意いたしま――――」
トウカ:扉を開けて中を見て、言葉を失う。
書斎:それはありふれた書斎だった。作業用か検索用か、中心にPCが置いてある。内部電源が生きているかは、定かではない。
書斎:階層都市の世界観ジャンルごとに索引が作られており、確かな知識が得られるだろう。だが。
書斎:そのPCに、寄りかかるように突っ伏す、朽ちた遺体がある。
ルバート・アロス:「……――」
ルバート・アロス:一目で死体だと判断する。この建物の内部がどういう環境なのか分からないが、腐敗はしておらず、半ばミイラ化している。
セリ=ティンカー:「あー……」一か月以上前の落着。その衝撃だけでも人を殺すには足るものだろう。少し目を瞑って黙とうする。
トウカ:「…………っ」入口で固まっている。
トウカ:「す、みません。……これは、……」
トウカ:ロアテラに呑まれた彼らが、最終的にどこに行ったのか。
トウカ:研究においても仮説しか立っていないものの、少なくとも存在しないものと思っていた。
死体:こうして残っている以上、何らかの例外であったのだろう。豪奢な和服だけが残る死体は、何も語らない。
セリ=ティンカー:ロアテラは魂の輝きを食するのだというおとぎばなしがある。魂を食して、他の物質的要素は今回は食さなかった、ということなのだろうか。
セリ=ティンカー:「いや、しょうがないよ。階層崩落ほどじゃなくても、災害っていうのはこう言う事だから。変に気にしすぎない方がいい」
セリ=ティンカー:「……一人だけじゃないかもしれないから。一旦帰ってもいいと思うよ?無理はしないでね」
ルバート・アロス:「ああ。気にするな、トウカ嬢」
ルバート・アロス:「――――死体は患者じゃない」
セリ=ティンカー:「とはいっても、色々危ないかもだから…まず一応消毒するね」
ルバート・アロス:トウカを横に、セリを抱えて中に入っていく。
ルバート・アロス:「頼む、セリ」
セリ=ティンカー:「”つちのめぐみ”。”きぎのしげり”。”しろのひかり”…」謡うように口ずさみながら、冷静にてきぱきと。
セリ=ティンカー:白い光が、部屋を消毒する。
トウカ:目を瞬かせる。
ルバート・アロス:「良し。セリ、少し降ろすぞ」 傍らの長椅子にセリを降ろし、書庫を片っ端から漁り始める。
セリ=ティンカー:「うん。じゃあ、こっちはこっちで……」腕で体を引きずりながら、此方も周りの状況を改めていく。
トウカ:(媒介の伴わない、純粋種の魔法体系)
トウカ:「セ、セリさま、お手伝いいたします」
セリ=ティンカー:「ん?……ありがとね」にこりと微笑む。
トウカ:慌てて近づき、少女を支える。
トウカ:見かけよりも更に軽い。努力や技術、人工物ではない、ただ世界にそう作られた、美しいかたちをしていた。
セリ=ティンカー:少女の手つきは異様なまでに冷静だった。他の人から支えられ慣れている、というのもあろうが。なにより、死者に慣れているような。――まるで気にもしていないかのように。
セリ=ティンカー:髪も手指も、動かない脚さえも。妖精の少女は美しく出来ている。
セリ=ティンカー:それが、何処か情景の非現実的さを増していた。
ルバート・アロス:しばらくの探索の後、キャスター付きの本棚に乗せて大量の本を抱えて戻ってくる。
ルバート・アロス:「こんなものか。トウカ嬢、大変参考になった。感謝する」
セリ=ティンカー:「支えてくれてありがとうね」
トウカ:「あ、い、……いえ。お役に立てて、何よりです」
ルバート・アロス:「さて」
ルバート・アロス:「念のためだ。セリ、"コレ"は、聞けるか?」
トウカ:「………え?」
セリ=ティンカー:「ん?あ、わかった。多分ひと月くらいなら大丈夫だろうけど、犯人が犯人だからなあ」
ルバート・アロス:ルバートが雑に指差す。
ルバート・アロス:それは、PCに突っ伏したままの、ミイラ化した遺体。
セリ=ティンカー:それを受けて、妖精は指を組み、ことばをうたいだす。まるで当然かのように。
セリ=ティンカー:「”よみのとびら”。”れてのながれ”。――”さいのくびき”」
セリ=ティンカー:それは、死体に残った情報を霊体として取り出し、質問に答えさせる死霊術ネクロマンシーの一種である。
死体:が、がが、がががっ
死体:四肢が出鱈目に痙攣し、首つりのようにその姿勢が伸びる。
トウカ:「ひっ!?」
セリ=ティンカー:「ん、んん……やっぱちょっと難しいな…行けるかな…?」
ルバート・アロス:「行ける。セリ、目を」
セリ=ティンカー:妖精の言葉は異様なまでに普段通りだった。さっき、少女に優しく諭した時と同じように。
ルバート・アロス:眼帯を外し、その奥の目を晒す。その状態で、セリの傍に、唇の届く距離に跪く。
セリ=ティンカー:「ん~~…しょうがない。せんせ――」
セリ=ティンカー:ぴと、と。熱く湿ったくちびるが、かれの眼帯の奥の眼に触れる。
セリ=ティンカー:「”あかのおうぎ”。”なつのかけら”」
セリ=ティンカー:「――”れいのかえり”」
ルバート・アロス:隠された目はその輝きを失い、真っ黒な虚のようになる。一時的に、彼女に"力"を返還した。
セリ=ティンカー:追加の詠唱が、奥の瞳から蒼の光を赤く変えて、死体を縛り上げる。
ルバート・アロス:「この書斎の役割を教えろ」
死体:「ががががががっががっがががががっ」
死体:「ここはががが諏訪月第十三邸階層書架ですここは他の階層の情報収集長所短所脆弱点利用方法を検討しますががががが」
トウカ:「? ??」
トウカ:死体を操る術はある。死者の記憶に語りかける術はある。だが、明らかに目の前のそれは、尋常な法ではなかった。
ルバート・アロス:「お前はここに詳しいのか? 以下の条件を満たす書物がほしい、情報としては、第●層の――――」
死体:「はい可能ですがががが失敗した馬鹿をしたどうしてががが私はここの管理を任されていましたががが失敗した何故あんな馬鹿な真似を」
死体:「ご希望の書物でしたがA-7番の二段目右からすまないすまないすまないすまない」
セリ=ティンカー:「落ち着いてね?」それは柔らかく優しかったが、確かな重みをもった命令だった。
死体:強制力に静まる。びき、ばきっと乾いた右手が落ちて転がる。
死体:「あるじさまの出身世界の情報もございます。閲覧されますか?」
セリ=ティンカー:「ほええ。ティンバーなんて随分深いと思ったんだけど……じゃあ、場所を教えて?」口調は普段通りのままだった。
死体:「T-2番、下から五番目の綴りにございます。英国に譚を発する妖精郷にまつわる世界についての記載がすまないすまないすまないトウカすまない」
死体:「キミの言うとおりだった馬鹿なことをした馬鹿なことをした」
トウカ:「…………!」ここの書斎の主。階層戦力の分析担当者。参考書を優しく与えてくれた。「叔父さま」
トウカ:「ぁ」   「あ」  「あ」
セリ=ティンカー:「あら……?トウカちゃんの知り合いだったのかな」少しばつの悪そうな顔。「――話す?まだもうちょっとは質問できると思うけど」
トウカ:二人を見る。
ルバート・アロス:「本当にティンバーのものはそれだけか? 記憶の隅々、脳細胞の一片まで絞り出せ」
セリ=ティンカー:「?ああ、ごめんね。ちょっと無理をしたから。効きが良過ぎたかなあ」
トウカ:腰が抜ける。二人を見上げる。先程まで、こちらを心配してくれた。仲睦まじい、二人の
トウカ:――――――死体を操る術はある。死者の記憶に語りかける術はある。だが、明らかに目の前のそれは、尋常な法ではなかった。
トウカ:だが、ああ、彼女たち自身が今しがた言ったではないか。
トウカ:『多分ひと月くらいなら大丈夫だろうけど、犯人が犯人だからなあ・・・・・・・・・・
トウカ:ロアテラに食われた魂を呼び戻せるものなど、この哀れな犠牲者の世界アーセルトレイにいるはずがない。
トウカ:いるとしたら、それは。
セリ=ティンカー:「どうしたの、トウカちゃん?大丈夫?」心配げな声。
死体:「すまないすまないすまないすまない」体が震える。その身が文字通り磨り潰されていく。
トウカ:「ぁ……、あ。……」後ずさって、背中を書斎にぶつける。
セリ=ティンカー:「あっもう!ほら、急がないと――」
セリ=ティンカー:「”戻っちゃうよ”?」
ルバート・アロス:「抵抗するな。質問に答えろ。患者ですらない死人が、生者の邪魔をするな」
ルバート・アロス:「……どうした、トウカ嬢」
ルバート・アロス:ふと気付いたように、男が見下ろす。
ルバート・アロス:「発汗が見られる。呼吸も荒い。瞳孔もだ」
ルバート・アロス:「君は患者かどうかしたか?」
トウカ:「――――ぁ」
トウカ:「う、ぁ、あぁああああああ……っ!」
トウカ:逃げる。転がりながら、背を向ける。
トウカ:つっかえた悲鳴を挙げて、扉を開けて、逃げ出した。
トウカ:息も出来ない。心が痛い。叔父様の落ち窪んだ目が、乾いた右手が意識から離れない。
トウカ:振り返ることなど、できるはずもなかった。
トウカ:(あれが  次の――――――――――――)
ルバート・アロス:「…………なんだ」去って行った彼女から、視線を外した。
セリ=ティンカー:「…………………」ぽかんと口を開けている。「トウカちゃん?トウカちゃーんっ、あ、あ~~……大丈夫かなあ」
ルバート・アロス:「なんだったんだ? まあ、子どもから怖がられるのには慣れているがな」
セリ=ティンカー:「いやでもさっきのせんせ、圧凄かったよ?迫りすぎだって」
ルバート・アロス:「ああいう輩は好きじゃない。すぐ症状を隠すからな」
セリ=ティンカー:「前もそうやって子供泣かしたじゃん」
ルバート・アロス:「ぐ………」
セリ=ティンカー:「あやすの大変だったんですけど。ど!」
ルバート・アロス:非効率なのは分かっているのだが。
ルバート・アロス:「小児科は専門から外したし……」
セリ=ティンカー:「実際ここでは専門外だろうとみないとやってけないじゃん」
ルバート・アロス:それでもやや申し訳なさそうに肩を竦める。
セリ=ティンカー:「……ま、反省してるんだからここまでにして」
セリ=ティンカー:「資料はもらってこっか。まさかティンバーの資料まであるとはな~…」
ルバート・アロス:「やれやれ。眼鏡だけじゃなく言動まで指導医に似てきたな……」
ルバート・アロス:「ああ、せっかくの手がかりだ。これは爪の一本まで使い尽くそう」
セリ=ティンカー:「入れ物とかあるかなあ。段ボールとかあればいいんだけど…」
ルバート・アロス:叔父様、と呼ばれた遺体を見上げて、もう一度確かめるように呟く。
ルバート・アロス:それが翳った月の証明であると、気付かないまま。
ルバート・アロス:「死人は患者じゃない。僕は、患者以外の全ては、患者を治すために使う」
セリ=ティンカー:「そうだね」
セリ=ティンカー:「医院に掛かる人も、きっと助かるだろうなあ」
セリ=ティンカー:「よーし、あたしもがんばるぞ~っ」
セリ=ティンカー:――行使した魔法の光。その青に僅か黒が混じっている。宇宙の色。暗黒の色が。
セリ=ティンカー:彼女は気付いていないし、なぜか出力限度が上がっていることも気づいていない。まるで当然のことのように。
セリ=ティンカー:翳る日が近づいている。

GM:セリ=ティンカーのブーケを80増加(80 → 160)


【Scene3-1:(諏訪月)陶花/白鷺達一】

諏訪月 陶花:――――どうやって帰ったのか、覚えていない。
諏訪月 陶花:一層と二層の間に浮かんでいた諏訪月の階層が崩落した時、その破片は大半が虚空に消え、ごく僅かな一部がアーセルトレイの各地に漂流した。
諏訪月 陶花:漂流したそれらは、時間経過と共に消滅する。そうしてようやく世界が一つ消えるというプロセスが、諏訪月が過去に観測した崩落の流れだ。
諏訪月 陶花:それが全てにおいて適用できるかは分からないが、今回もそうだった。人知れず見つけた離れの残骸から、諏訪月の懐かしい建物に繋がっていて。
諏訪月 陶花:本当は治安部隊に言わなくちゃいけなくて書物や日記せめて写真でも持ち帰れればとこんなこと考えてはいけなくて私は家族を私は私は少しでも
諏訪月 陶花:「………は。ぁ……………」
諏訪月 陶花:気付けば、自宅の玄関に突っ伏して倒れていた。
諏訪月 陶花:「……セリ、様」
諏訪月 陶花:驚いた。自分がこのような状態になるなんて思えなかった。
諏訪月 陶花:アーセルトレイには数少ない、高層マンションの最上階。
諏訪月 陶花:なぜ少ないかといえば、高層にするほど他の階層てんじょうが見えてしまうから。
諏訪月 陶花:そういうのを気にしないのが、白鷺達一という男だった。
諏訪月 陶花:「はあ。はあ。ふ……」
諏訪月 陶花:ふらつきながら、コートをクローゼットに掛ける。帽子を、眼鏡を仕舞う。
諏訪月 陶花:普段通りのことができないときこそ、普段通りのことをすべきだと。
諏訪月 陶花:私事で動揺して家事が出来ない妻など、必要とする夫がいるだろうか?
諏訪月 陶花:最後に、鏡を見る。あれほど無様に逃げても、涙は流れていなかった。
諏訪月 陶花:絵描きの描く絵のように、諏訪月陶花の立ち居振る舞いは、諏訪月陶花の作る作品であった。
白鷺達一:玄関のドアが開く。「っは~~ッ、クソ、あのジジイ……」
白鷺達一:「ちょっとおだてたくらいで調子乗りやがって……!リップサービスだって分かれよ、アホが……!」
諏訪月 陶花:「……お帰りなさいませ、白鷺さま」
諏訪月 陶花:背筋を伸ばし。両手を腹の前で重ねる。
白鷺達一:今日も接待の帰りである。誇示するかのように着こなしたスーツも、一日の終わりにはすっかりよれている。
諏訪月 陶花:「お食事になさいますか。それともお風呂にいたしますか」
白鷺達一:酒やタバコの臭いもあった。「……ああ」革靴を乱雑に脱ぎ散らかしながら、短く答える。
白鷺達一:「今日は食事はいい。呑んできた。まず風呂……」
白鷺達一:陶花を一瞥もせずに、フラフラと廊下をすれ違おうとする。
白鷺達一:「……」
白鷺達一:「何があった?」
諏訪月 陶花:「………は、」
白鷺達一:酔った身体を壁で支えながら、陶花のほうを振り返る。
諏訪月 陶花:抑え付ける。気付かれていない。彼はそういう機微には疎いはずだ。だから好ましいと思う。
諏訪月 陶花:なんでもない、……と応えるのは悪手である。「何か気にされましたか?」
白鷺達一:「お前のことだよ」
白鷺達一:「うっ」吐き気をこらえる。純粋に、酒の飲み過ぎに由来するものだ。
白鷺達一:「……なんで、いつもそう、、してる、お前が」
白鷺達一:「自分の靴を揃えてないんだよ」
諏訪月 陶花:「――――」
白鷺達一:「何かあったんだな?」フラフラと近づく。
諏訪月 陶花:「すみません。少し」スーツを脱がせて。「……ご、一服されてから、お話ししようと思ったのです」
諏訪月 陶花:「ステラバトルの件で、ご報告事項がございます」
白鷺達一:――ダン!
白鷺達一:陶花に近づく時によろめいて、壁に手をつく。
諏訪月 陶花:「!」
白鷺達一:「ハァ、ハァ……危ない」
白鷺達一:「ぶつかるところだった」陶花の頭の後ろの壁に手を突いている。
白鷺達一:「……で?なんなんだよ、話って……」
諏訪月 陶花:壁に追い詰められて、見上げている。
諏訪月 陶花:「………あ」
諏訪月 陶花:「恐らくは、相手方……と思われる方と、接触をしました」
諏訪月 陶花:「相手も、ステラナイトで……」
白鷺達一:「ああ……?……ああ。そういうのがあるのか……」酔いのせいか、いまいちピンと来ていない。
白鷺達一:「まあ……あるか。アレに関する話は、お前らの専門だったろうし……」
諏訪月 陶花:どこまで話していい。動揺を隠した。万が一見抜かれても、適切な理由を見繕った。その理由も、嘘ではなく真実の一端である。
白鷺達一:「……それで?」
諏訪月 陶花:何重にも重ねた欺瞞の仮面。一層を見抜かれてもなお、隠し通せる………ように………
諏訪月 陶花:ぐすっ
白鷺達一:「……」
諏訪月 陶花:「…………て」目の端に涙が溜まっている。
白鷺達一:「……おい。何があったか知らないがな」
白鷺達一:陶花の細い体を抱きしめる。酔っているせいもあるのだろう、と思う。
諏訪月 陶花:「――――ぬいて」
諏訪月 陶花:「おさけ、ぬいて!」
白鷺達一:「……………………」
諏訪月 陶花:ぐい、と抱きしめられそうになったのを、抵抗した。
諏訪月 陶花:甲高い、少女の声であった。
白鷺達一:「はい……」
諏訪月 陶花:ぼろぼろと、目の端から涙を流す。
諏訪月 陶花:「え。あ。う、うう……」
諏訪月 陶花:ぺたりと座り込む。「おみずは冷蔵庫にあります! おくすりも!」
白鷺達一:「……風呂入って、着替えてからにする」
白鷺達一:酒が抜けても、臭いは髪や服に染み付いている。陶花がそれを嫌うのは、当然のことだ。
白鷺達一:(くそ。今まで、そんなことも……)そして、自分では全く気にしないことだった。
白鷺達一:(……我慢させてたのか)
諏訪月 陶花:「kata、お風呂沸かして」 普段なら絶対にしない口答での管理システム操作。

白鷺達一:「……」30分風呂に入り、頭ははっきりしてきたが。
白鷺達一:「…………」却って、話題に踏み込むタイミングを逸してしまったように思う。
白鷺達一:リビングのソファに座り、陶花の様子を伺い、またスマホに視線を落とす。
白鷺達一:「そろそろ……寝る。明日も早いし……」
諏訪月 陶花:反対側のソファに一部の隙もなく座って、俯いている。
諏訪月 陶花:…………自分のしてしまったことが、嘘だと思った。
諏訪月 陶花:自分が辛いときに、辛いのを的確に見抜かれ、けれど酒浸りの状態で迫られる。
諏訪月 陶花:たかがその程度で、泣いてしまった自分に驚いていた。
白鷺達一:「あのな。何か言いたいことがあるなら……」
諏訪月 陶花:なにが、諏訪月がほこる政略結婚のための良妻の駒だろうか。
白鷺達一:途中まで口にしたが、止める。もしかしたら責めるような言葉に聞こえるかもしれない。それが自分なら、尚更だ。
白鷺達一:「……おやすみ」
諏訪月 陶花:「……靴下」
諏訪月 陶花:「洗濯物に入れる際に、丸めるのをやめてください」
白鷺達一:「え……あ、ああ……」
白鷺達一:「そうだったかもな……明日から気をつける」
白鷺達一:「やっぱり怒ってるのか?」
諏訪月 陶花:「ありがとうございます」
諏訪月 陶花:「申し訳ありません。いま、自分の感情が……とめどなくて」
諏訪月 陶花:「よく、わかりません」
諏訪月 陶花:「普段は、どうやって……治めていますか」
白鷺達一:「そんなの俺が聞きたい……」ため息をつく。
白鷺達一:「なあ。俺は、誤解されがちかもしれないが――」
白鷺達一:「お前に何かを指図してさせたり、やめさせたことって、ないよな?……多分だけど……」
白鷺達一:頭をかく。
諏訪月 陶花:「わたしに……気遣っていただいているのは、承知しています」
諏訪月 陶花:「哀れんでいただいているものと……」
白鷺達一:「そういうことじゃなくて……あのさあ。だから、初めて文句を言わせてもらうけど」
白鷺達一:「俺が何か言おうとした時に限って遮るの、やめてくれよ」
白鷺達一:「確かに、酔っ払ってて、見苦しかったかもしれないけどな……」
白鷺達一:「……『別に、泣いたり靴を揃えない程度のこと』」
白鷺達一:「『大したことじゃない』……って、言おうとしたんだ。俺なりになあ、気遣ってさ」
白鷺達一:「……そうだろ?ちゃんとやれるのは、そりゃ偉いよ。俺なんて17の頃はクソガキだった」
白鷺達一:「でも、17なんて元々ガキなんだから、できなくたって恥ずかしいわけじゃない。やれてる分偉いだけだ」
諏訪月 陶花:「……ですが、見苦しいことです」
諏訪月 陶花:「家を預かる身でそれをするのは、あってはならないと、教わってきました」
白鷺達一:「そう言う奴も、そりゃ、いるだろ。赤ん坊の泣き声に文句言うやつだっている。今の話は、俺が気にしないってだけだよ」
白鷺達一:「……悪い。やっぱ、言っても言わなくてもいいような話だったかもな……」
白鷺達一:「慣れてないんだ。……もう寝る」
諏訪月 陶花:「分かりました。……お休みなさいませ」
諏訪月 陶花:すっと立って、自らの部屋に戻る。
諏訪月 陶花:……そして少しして、自らの枕を抱えて出てくる。

白鷺達一:「……怒ってるんじゃないのかよ」
諏訪月 陶花:「これ以上、恥をかきようもございません」
諏訪月 陶花:「かくなる上は、いっしょにねてほしいです」
白鷺達一:「……」
諏訪月 陶花:「自己管理については、特に躾られております」
諏訪月 陶花:「今夜は、愚にもつかない夢を見て、一睡もできません。些細なことですが」
白鷺達一:今まで、陶花からそうした要求をしたことはない。彼女が婚姻した経緯を考えれば当然のことだろうと認識していた。
白鷺達一:だが、彼女は今日、自分の靴を直すことすらできなかったのだ。
白鷺達一:玄関から帰って、意識して、1秒で終わるようなことだ。何よりも大きな動揺があったのだと直感していた。
白鷺達一:夫婦という関係を抜いても――仮にお互いが他人だったとしても、傷ついた17歳の子供だ。
白鷺達一:自分にしては珍しく、何かしてやれることはないか、と思ってしたことは、案の定無様を晒すだけに終わってしまったが。
白鷺達一:「……分かったよ」素っ気ない答えのように見えただろう。
白鷺達一:「来い」自分の寝室に向かう。
諏訪月 陶花:「失礼いたします」 入る前に、ドアの前で一礼する。
白鷺達一:ベッドに横たわる。「陶花。話したくなかったら……」
白鷺達一:「……いや。違うな。話せ」
白鷺達一:「そう言われないと、誰にも話せないだろう」
諏訪月 陶花:「…………」 目元が赤くなっている。
諏訪月 陶花:泣くことなどない女のはずだった。諏訪月の階層のあった空を背後に、白鷺と初めて会い、自らを取引材料とした交渉を行ったときも。
諏訪月 陶花:手の届く範囲で救える限りを救おうとし、その中に自分のことを一片たりとも含めたことはなかった。
諏訪月 陶花:「…………諏訪月の邸宅の、残骸を見つけました」
諏訪月 陶花:「階層が崩れて、ロアテラに呑まれたはずのそこに、……相手もいたのです」
諏訪月 陶花:するりと、首元のスカーフをとって、照明の脇におく。
白鷺達一:白く、細い首が露わになっている。普段からきっちり身につけているせいで、もしかしたら傷痕でもあるのではないかと想像したものだった。
白鷺達一:(……なんだよ。そんな綺麗な首なら隠す意味がないじゃないか)
諏訪月 陶花:白鷺が風呂に入っている間に着替えたのだろう、プリーツの入った円筒形のネグリジェ。その細い、亡霊のような姿が、ベッドの隣に屈み込む。
白鷺達一:「攻撃されたのか?知らないが……お互いがアレをやるなんて、呼び出される時まではそうはわからないんだろ」
白鷺達一:『アレ』とはステラバトルのことである。白鷺達一は、そうしたオカルトにそもそも懐疑的だった。敗北すれば階層が滅びるという話も未だに信じていない。
諏訪月 陶花:「お互いに確認はしませんでした。少女のほうは……気付いていたかも」
諏訪月 陶花:「麗しい、洗練された信頼関係の二人でした。若いお医者様の男性と、その患者だという、妖精の少女」
白鷺達一:「ふうん……」
諏訪月 陶花:「妖精の少女は両足が動かなくて、男性の方がずっと抱き上げていました。彼女の怪我を治すために戦っているステラナイトだと分かりました」
白鷺達一:「立派なものだな」
諏訪月 陶花:「彼らは、諏訪月が蓄えた医療の知識を探していた。そして、目的の書斎には、……わたしの叔父もいました」
諏訪月 陶花:そのままベッドに乗るのは……あと一歩のところで抵抗が勝った。
諏訪月 陶花:すぐ傍にひざまづいて、躊躇う。
白鷺達一:「おい」
白鷺達一:その細い手を引いて、ベッドに引き倒すようにする。
諏訪月 陶花:「ぇあっ」
白鷺達一:「――嫌なのか?」橙色の瞳で正面から、じっと見る。
諏訪月 陶花:嫌なわけがない。妻になれば当然そうなると教えられた。夜伽などという古い言葉もそのとき知った。
諏訪月 陶花:「……こわ、いです」
諏訪月 陶花:手を握り返す。震えている。
白鷺達一:「嫌なのかと聞いてるんだ」
諏訪月 陶花:自分がどうしてこんなに弱いのかと思う。
諏訪月 陶花:目を閉じて……首を横に振る。
諏訪月 陶花:さりさり、とシーツに髪が擦れる音がした。
白鷺達一:「……そうか」ため息をついて、陶花の細い背をぽんぽんと叩く。
白鷺達一:「少し……安心した」
白鷺達一:「俺は嘘つきだからな……お前が口先でどれだけ俺に尽くすと言ったところで」
白鷺達一:「やっぱり……信じられなかった」
諏訪月 陶花:「ごめんなさい。ごめんなさい」
諏訪月 陶花:「やさしく……やさしくして。いつもみたいに。……いつも、よりも」
白鷺達一:「俺みたいな下劣な成金が、お前みたいな……育ちが良くて、綺麗な女と……」
白鷺達一:「ゆっくりでいい。……話してくれ」
諏訪月 陶花:はぁ……はぁ……。と細い呼吸がする。
諏訪月 陶花:温かいベッドと、相手を前にして、恐怖がぶり返してくる。さらに身じろぎして、体を寄せる。
諏訪月 陶花:暗い朱色の瞳は、夜に溶けてしまうようだった。
白鷺達一:ガラス細工のように華奢で、少し体温の低い身体は、抱きしめるにも加減をする必要があった。
白鷺達一:それでいて……細身のドレスを纏えば分かるような、女性らしい起伏もある。陶花ならばどんな男だろうと、少し肌を寄せるだけで落としてしまえるだろう。
諏訪月 陶花:襟元が乱れるのにも気付いていない。「……叔父は、ロアテラに抱かれた者でした」
白鷺達一:自分とて、そんな凡人とそう変わらないと思っている。結婚の話が出た時は、トロフィーとしての見目の良さにも陶花の価値があると思った。
白鷺達一:「抱かれた者。お前らの呼び方だとエンブレイス、というんだったか」
諏訪月 陶花:「……一人に一人に、種子を植え付けるというより。沁みのように、ロアテラの力に支配されたものたち」
諏訪月 陶花:「群体のエンブレイスが、諏訪月の本家の末期でした。……叔父の死体は、魂だけを持って行かれ、乾いたミイラになって転がっていた」
諏訪月 陶花:「二人は、建物の探索のために、その魂を呼び戻して、隷属しました」
白鷺達一:「……はあ?」
白鷺達一:魔法――としか表現できぬ超常を操る下層市民がいることは理解していたが。
白鷺達一:「つまり、その」
白鷺達一:「生き返ったのか?君の叔父さんが?」
諏訪月 陶花:「たまに夜、パニック・ムービーをご覧になられますよね」
諏訪月 陶花:「あのようなカタチです」
白鷺達一:「うーん……分かった(ことにしよう)……それで、どうなった?」
諏訪月 陶花:「叔父は、ずっと、ずっと、謝っていました。悔いていました」
諏訪月 陶花:「二人に命令され、命令に応えて、すぐ悔いて、命令に応えて、悔いて、応えて」
諏訪月 陶花:「すまない、すまないトウカ。すまない。どうしてあんなことを。すまない、すまない、すまない――――――」
諏訪月 陶花:「二人の命令で束縛されて、崩れて、手、手、手が、手が落ちて」
白鷺達一:抱きしめて、後ろ頭をぽんぽんと叩く。
諏訪月 陶花:「いや。どうして。あんな。いや。いやです」
白鷺達一:「大事な家族だったもんな」
諏訪月 陶花:なりふり構わない。縋り付く。
白鷺達一:「俺だって、親や妹がそうなるのは、嫌だ」
諏訪月 陶花:骨ばった体。
諏訪月 陶花:がっしりとした、男性の。
諏訪月 陶花:「どうして。二人は素敵な人でした。一人のわたしを、詮索もせず気遣ってさえくれた」
諏訪月 陶花:「どうして。ロアテラは彼らを狂わせた。ステラバトルで勝たなければならない。狂わせて。狂わせておかしくなったのなら」
諏訪月 陶花:「わたしの家族は善人だった・・・・・のかもしれない。いや。耐えられない。耐えられない」
諏訪月 陶花:陶器の花だった。見目さえよければいい。取り繕えればいい。
諏訪月 陶花:「わたしは、こんな憎しみに耐えられない…………!」
白鷺達一:「……そうだな」
白鷺達一:悪人を評価するのは、いつだって世間の目だ。
白鷺達一:無知な視線が、常に物事の因果を理解できるわけではない。
白鷺達一:悪人だから、、、ロアテラに接近したのではなく、ロアテラに魅入られたから、、悪行を成したかもしれない。
白鷺達一:無神経な自分でもそれくらいは分かる。それが耐え難い恐怖だということも。
白鷺達一:そして、もしも愛する家族が悪くなかったなら、、、、、、、、――
白鷺達一:全てを単純化してしまえる、一番強い憎悪に逃げたくなってしまう気持ちも、分かる。
白鷺達一:「お前は、立派な女だよ」
白鷺達一:白い肩に顎を寄せて言う。
諏訪月 陶花:「違います。わたしは、わたしは器だけの」
白鷺達一:「そんな考えが頭に過ぎっても、憎むことに逃げたくないと思ってる」
白鷺達一:「そこで踏みとどまれる奴は少ないんだぜ。……本当だ」
諏訪月 陶花:「うそ。うそ。空っぽなのに。わたしなんて」
白鷺達一:「本当だ。おい。……俺を誰だと思ってるんだ?」
白鷺達一:「俺は白鷺達一だ。お前みたいな純粋培養のお嬢様とは違って」
白鷺達一:「世間一般の連中を、誰よりも見てきた。上から下までだ」
白鷺達一:「――俺を嘘つきだと思うか?」
諏訪月 陶花:「…………おもいません」
諏訪月 陶花:「あなたは、わたしがみたなかで、いちばんつよいひと」
白鷺達一:「怖がるのも、泣くのも、恥ずかしいことじゃない」
白鷺達一:「今日はお前が泣いてるだけだ。明日は俺が、もっと、遥かに情けない理由で泣かされているかもしれない」
白鷺達一:「だから安心しろ」
諏訪月 陶花:「…………では、はずかしいことってなんですか」
諏訪月 陶花:「いまだって、なさけなくて、かなしくて、きえてしまいそうなのに」
白鷺達一:恥知らずとして生きてきた自覚がある。他の人間が浅ましいと、恥ずかしいと、見苦しいと思うことから、率先してやってきた。
白鷺達一:別に、泥臭い努力のお陰で成功したなどと、それらしい人生論を語るつもりはない。程度の低い雑誌インタビューではそう語ったこともあるかもしれないが。
白鷺達一:誰もやっていないことなら、自分だけ成功できる可能性が高いと思っただけだ。実際には、運のほうが大きかっただろう。
白鷺達一:何の成果も得られなかったこともある。だが、そういうことを続けた。
白鷺達一:今だって何も変わらない。ゲスな取引先にへつらって、低俗な人間のように振る舞って、SNSでは炎上ばかりしている。
白鷺達一:そんな人生を送ることを、自分自身はどう考えていただろうか……
白鷺達一:「情けないこともいい。悲しいこともいい。だが……だが、俺の考えなら……」
白鷺達一:「……『消えること』が、一番恥ずかしいことだ」
諏訪月 陶花:「それが……いちばん、はずかしいこと」
白鷺達一:「もう終わりだ、負けだ、取り返せない。そう判断して、恥をかかないように消える」
白鷺達一:「レスバに負かされた奴が捨て台詞を残して消える。殺人犯になった肉親を切り捨てる。……夢を途中で諦める」
白鷺達一:「どれも。自分が生きてきたことに、嘘をつくことだ」
諏訪月 陶花:「……さいしょのねがいを、つらぬきつづけること」
諏訪月 陶花:「だから……あなたが、わたしのシースなんですね」
白鷺達一:「迷信だ、そんなものは……」
白鷺達一:今度は、自分が枕に顔を伏せる。
白鷺達一:共に戦う騎士。運命の伴侶。恥ずかしいというなら、こんなに恥ずかしい話はない。
白鷺達一:「俺は……俺の判断でお前を選んだし」
白鷺達一:「お前だってそうだ。……そうだろ?」
諏訪月 陶花:「…………ふふ」
諏訪月 陶花:選ぶ。自分の人生に、これほど不似合いな言葉はなかっただろう。
諏訪月 陶花:けれど確かに、二層の空から諏訪月が消えたとき。
諏訪月 陶花:「はい。……わたしが選んだ、わたしだけのシース」
諏訪月 陶花:胸元に、額を押し付ける。
諏訪月 陶花:「はじめてのひと」
白鷺達一:「お前は……綺麗だ。俺には勿体ない」
白鷺達一:陶花の美貌に惹かれたのは事実だ。だが、恥知らずの俗物の自分が、彼女を我が物のように好き勝手に扱えなかったのは……
白鷺達一:……グループを守るために行動した高潔さと自制心に、敬意を感じたからだ。たった17歳の少女に。
白鷺達一:彼女のような少女を少しでも思いやれるなら、自分のような人間にも、少しでもマシな部分が残っていると信じられた。
白鷺達一:「パーティーの時……」
白鷺達一:「似合っていた」
白鷺達一:「でも、他のやつには見せたくない」
諏訪月 陶花:「…………ふふ」
諏訪月 陶花:「それなら……あの服は、あなたがいるときだけ着ます」
諏訪月 陶花:「ね。だんなさま」

GM:白鷺(諏訪月) 陶花のブーケを106増加(163 → 269)


【Scene3-2:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート/イーレ・リュニック】

アレアテルナ:アレアテルナ王女および、イーレ・リュニックはこの日、第一層の各地を駆け回って"公務"を行った。
アレアテルナ:特にこの日は、第一層の訪問初日である――優先的に挨拶に回らなければならない要人の数は多い。
アレアテルナ:夕食時には統治政府官僚のパーティーに招かれ、別のパーティーに出席し、さらに別の要人の邸宅へと訪問し……
アレアテルナ:時刻は深夜0時を回ろうとしている。応接室のソファに座るアレアテルナはしかし、背筋をしっかりと伸ばして、疲れの色も見せていない。
統治政府官僚:「おや、もうこんな時間ですか。申し訳ありませんねえ。お茶を飲んでいただくだけのつもりだったのに」
アレアテルナ:「いいえ。大変楽しいお話ができました。どちらにせよ、本日は車を呼んで帰宅するつもりでしたので」
統治政府官僚:「王女様は学園生でもあるんでしょう。寮住まいですか?」
アレアテルナ:「……ええ。第一層にお邪魔させていただいているのですから、私だけ特別扱いというわけには参りません」
統治政府官僚:「全くご立派な方です。……ところで、これはほんの雑談なのですが」
統治政府官僚:「イフトノート王家のご嫡子として、お見合いのお相手などはお探しではないですか?」
統治政府官僚:「"蛹"の件は聞いております。私自身は大したお力にはなれませんが、統治政府の有力な一族の御子息でしたら、ご紹介できるかもしれません」
アレアテルナ:「……」
アレアテルナ:テアト大陸連邦再興のために、上層の統治政府とのコネクションを作る。そのために、最も効果的な方法がある。
アレアテルナ:もちろん、気付いているのだ。政略結婚という手札が、自分達にはあるはずだ。
アレアテルナ:「……ええ。お心遣い、とても嬉しく思います。その時にはぜひ、ご紹介ください」
統治政府官僚:「それは良かった」
統治政府官僚:「これだけお綺麗で気立ての良いのですから、喜んでお受けしてくれる家は、きっと多いですよ」
アレアテルナ:両膝に手を乗せたまま、深く一礼する。
アレアテルナ:「その件はまた、次にお会いした時にいたしましょう。あまり遅くまでお邪魔するわけにもいきませんので……」
統治政府官僚:「ああ、そうですね。年を取ると話が長くなっていけない。どうかお気をつけて」
統治政府官僚:「リュニック君も、退屈な話に付き合わせてしまった。この箱は、気持ち程度の菓子折りだ」
統治政府官僚:「テアト王国の子供達に持ち帰ってあげたまえ」
イーレ・リュニック:「ご厚意、ありがとうございます。受け取らせて頂きます」
イーレ・リュニック:それまで沈黙を守っていた騎士が恭しく受け取る。
アレアテルナ:「では、行きましょう。イーレ」
イーレ・リュニック:「はいアレアテルナ様。」
アレアテルナ:二人で連れ立って、邸宅の門を後にする。
アレアテルナ:アーセルトレイ上層の夜は暗い。統治政府による適度な抑制が行き届いており、崩壊前の世界のような、深夜に渡る過度な商業活動は少ない。
アレアテルナ:それでもこうした要人のために、深夜帯に配車可能な高級ハイヤーはある。これも自動運転の代物だが――
アレアテルナ:「……」星空を見上げる。
アレアテルナ:「……ね、イーレ」
アレアテルナ:「歩いて帰ってもいい?」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様?」
イーレ・リュニック:待機させている車を呼ぼうとした手を止める。
アレアテルナ:「もうこの後は予定だってないし」
アレアテルナ:「いいでしょう?」
イーレ・リュニック:「………」少し考えて、そのまま待機を解除させる手振り。
アレアテルナ:後ろに手を組んで、下から覗き込むようにする。
イーレ・リュニック:「わかりました。では、ご一緒させて頂きます」
アレアテルナ:「やった」
イーレ・リュニック:運転手にいくらか告げて、向き直る。
イーレ・リュニック:「では。こちらの足元は暗いので、気をつけましょう」
アレアテルナ:「暗い夜って、すごく久しぶり」
アレアテルナ:歩き出す。
アレアテルナ:「前に第一層に来た時、一番びっくりしたことだったの。また来たら夜の散歩をしたいって、ずっと思ってた」
イーレ・リュニック:「テアト大陸ですと、炉の火を落とすことは稀ですからね」
イーレ・リュニック:「私もまだ慣れません。建物の暗がりとも違う、夜の闇というものは」
アレアテルナ:アレアテルナは、生来あまりわがままを通すような性格ではない。どんなに辛い仕事も、笑顔を絶やすことなく、勤勉にこなしてきた。
アレアテルナ:イーレに時折わがままを向けることがあったとしても、この程度の、些細なことだけだ。
アレアテルナ:「……もしも明日、決闘に負けてしまったら」空を見上げながら言う。
アレアテルナ:「こんな夜もなくなっちゃうのかな」
イーレ・リュニック:ちらりと目線を上に向けて、ぐるりと辺りの確認も自然と行う。
イーレ・リュニック:「……そうかもしれません」
イーレ・リュニック:「少なくとも、そうなる危機は実際にあると、知ってしまいましたから」
アレアテルナ:「わたしじゃなくて、イーレが戦えればよかったのにね」
アレアテルナ:手を取る。「どうして、わたしがブリンガーなんだろう」
イーレ・リュニック:「…………」
イーレ・リュニック:左手で握り返す。
イーレ・リュニック:そのことはずっと考えていた。戦いの主体は王女を守る騎士たる自分ではなく、守るべき人が選ばれている。
イーレ・リュニック:「…………恐ろしいですか?」
アレアテルナ:「うん」
アレアテルナ:「怖いし、理不尽だと思う……」
アレアテルナ:「世界を守る戦いなら、どうして世界が崩れる前に戦わせてくれなかったんだろう」
アレアテルナ:「――その時に選ばれていたら、わたしは、本当の命だって賭けたはずなのに」
イーレ・リュニック:「…………だからこそ、かもしれませんね」
イーレ・リュニック:「ステラナイトとは、素質の他に、『同じ願いを持つもの』同士が選ばれると聞きました」
イーレ・リュニック:「もし、その時にアレアテルナ様が選ばれて、命を懸けてしまっていたら──」
イーレ・リュニック:「私は、迷っていたかもしれません」
アレアテルナ:「イーレも迷うことがあるの?」
イーレ・リュニック:「えぇ、あります」
イーレ・リュニック:苦笑を浮かべる。
アレアテルナ:「もったいぶらないでよ」隣を歩きながら、細い肩を軽くぶつける。
イーレ・リュニック:鍛えた体幹は少女の体では問題にならない。
アレアテルナ:自分のほうが少しよろめいて、くすくすと笑う。
イーレ・リュニック:「今もそうです。私達騎士は、その身分を頂く時、王家の剣であると宣誓いたしますが……」
イーレ・リュニック:「もし私がブリンガーとなっていたら、アレアテルナ様をドレスとして扱うなど恐れ多い、と思っていたでしょう」
イーレ・リュニック:「自分が剣となって打ち合ったほうがよほどマシだ、と」
イーレ・リュニック:「……その結果、貴方を矢面に立たせてしまっているので、不甲斐ない話です」
アレアテルナ:「じゃあ、イーレの願いが叶っちゃったのかもしれないね」
アレアテルナ:「私は――」歩きながらくるりと振り返って、街並みの方向を眺める。
イーレ・リュニック:「はは。では、アレアテルナ様のお悩みは私のせい、となってしまいますね──」
アレアテルナ:「どうして、こんな時に背負わされちゃったんだろう、って思う」
アレアテルナ:「第一層のみんなのことは好きなの。テアトと同じような目には、絶対に遭わせたくない」
イーレ・リュニック:「はい」
アレアテルナ:「だけど、そのためにわたしが命懸けになることなんて、できるのかな」
アレアテルナ:「もっと心配なことや、大事なこと、やらなきゃならないこと……欲しいことが、たくさんあるのに」
アレアテルナ:「わたしの気持ちのどこかで、この世界を守りたい気持ちが後回し、、、になって……」
アレアテルナ:「……取り返しのつかない悲劇になってしまったら、って思うと、怖い」
イーレ・リュニック:アレアテルナは王女だ。それも、激変した国の唯一の王族。
イーレ・リュニック:自国のことですら手一杯な上で、"他国"の危機を救うために体を張ることになっている。
イーレ・リュニック:「…………どうか」
イーレ・リュニック:「どうか、お頼りください」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様が命を懸けずともよいように。そのために、諸々を後回しになどせずとも、良いように」
イーレ・リュニック:「私が危機を退ける鎧となり、障害を切り開く剣となります」
イーレ・リュニック:「貴方の命を懸けずとも良いように」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様の気持ちを、抑える必要がないように、私をお使いください」
アレアテルナ:「イーレは、いつも……」少し寂しそうに、イーレを見る。
アレアテルナ:美しい佇まい。金色の髪も青色の瞳も、いつも乱れずに、忠実に仕えてくれる。
アレアテルナ:それを嬉しいと思う。自分には過ぎた献身だとも思う。
アレアテルナ:「……立派なことばかり言うね」
アレアテルナ:「イーレは。ねえ……わたしのこと、好き?」
イーレ・リュニック:「───」
イーレ・リュニック:炉の燃えず、歯車が軋む音のない夜。
イーレ・リュニック:その言葉は聞き逃しようもなく、しんとした空に響く。
イーレ・リュニック:「えぇ。」
イーレ・リュニック:「好きではない方に仕える理由がありませんよ」
アレアテルナ:「じゃあ、わたしは」
アレアテルナ:「イーレのこと、好きだと思う?」
アレアテルナ:その言葉よりも少し早く。
アレアテルナ:大粒の雨が、ばたり、と地面に落ちる音があった。
アレアテルナ:星空は曇っている。急激な豪雨だった。
イーレ・リュニック:「!?」
イーレ・リュニック:不意に水滴が肩を叩く。ビクリ、とに体を強張らせる。すわ襲撃を懸念して、咄嗟にアレアテルナを抱き寄せた。
アレアテルナ:「……」空を不思議そうに見上げる。大気の循環までシステム化された故郷では、急な土砂降りなど忘れられて久しい気象現象だった。
アレアテルナ:「……あ」小さく、驚きの声を上げる。
イーレ・リュニック:「雨……か?」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様、走ります。ご無礼を」
イーレ・リュニック:辺りに目を走らせ、屋根のある方へと向かう。
アレアテルナ:すぐ近くにある設備といえば、屋根付きのバス停留所くらいだ。夜間でも、防犯のためか灯りが灯っている。
アレアテルナ:だが少なくとも清掃は行き届いており、待合用の長椅子もある。雨宿りはできそうだった。
イーレ・リュニック:要人の住む区画の近くだ。放置されて久しい、ということはないらしい。
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様、こちらへ!」
アレアテルナ:「うん!」
イーレ・リュニック:自分の体で守りながらバス停へ。騎士団の制服であればマントを即席の雨よけに出来たが、今は身につけていない。
アレアテルナ:後に続いて走る。声がほとんど聞こえないほどの土砂降りで、一歩ごとに、バシャバシャという水音が鳴った。
イーレ・リュニック:バス停に付く間に、体はすっかりと水を受けていた。
イーレ・リュニック:「はぁ……!」
イーレ・リュニック:前髪は額に張り付き、シャツは濡れ、裾には道に跳ねた泥汚れ。
アレアテルナ:「ふ、ふふ」どうにかバス停の中に駆け込むが、ほとんど無意味だったかもしれない。
アレアテルナ:「濡れちゃったね」全身はひどい水浸しだ。白い上等な服が身体に張り付くようになっている。
イーレ・リュニック:「準備を怠りました。予報では降らないとのことでしたが……」
イーレ・リュニック:アレアテルナを先に退避させ、空模様を見る。
アレアテルナ:「こんなのが、本当に雨なんだ」
アレアテルナ:「すごいなあ、上層って……」天井を叩く轟音を、少し不安そうに見上げる。
イーレ・リュニック:「えぇ。火を熾します。アレアテルナ様、こちらへ──」
イーレ・リュニック:振り向いて

イーレ・リュニック:グギン!!と首を鳴らす勢いで目線を外した。
アレアテルナ:「! どうしたの?」小声になる。
アレアテルナ:「……襲撃?」
アレアテルナ:イーレの傍に寄る。守られる側にも、守られる側なりの備えが必要だ。
イーレ・リュニック:「いえ!……いえ」
イーレ・リュニック:声が近い。雨に濡れた身体が近くの体温を感じる。
イーレ・リュニック:「敵、の姿は、見えません。見てません」
イーレ・リュニック:いいつつ、目線はバス停の外に釘付けになっている。
アレアテルナ:「それならいいけど」
アレアテルナ:「警戒はいいよ。第一層は治安だっていいもの」
アレアテルナ:「せっかくだから、一緒に座って休もう」
イーレ・リュニック:「いえ、オレは……じゃない、私は、ここで……」
イーレ・リュニック:懐中時計型の魔沸機器を取り出し、火を熾す。
イーレ・リュニック:豪雨の中という環境のせいか、なかなか火力が上がらない。傍らの温度を上げる程度だ。
イーレ・リュニック:(くっ……………)
アレアテルナ:「どっちだって同じだよ……」そう言いかけて、バス停の窓を見る。
アレアテルナ:内側で灯る照明のお陰で、反射して自分の姿が見える。
アレアテルナ:「~~~~っ」
イーレ・リュニック:「あの、ですね。アレアテルナ様」
アレアテルナ:水に濡れて、少しみっともなくなった程度だと思っていた。故郷ではこんなに豪雨を浴びる機会はないし、想定されてもいない。
アレアテルナ:貼り付いた服の下の肌や下着まで透けてしまっている。
イーレ・リュニック:「私どもの国の仕立てはその性質上、難燃や防塵に優れておりますが……仕立ての都合上、撥水性はどうしても後回しとなる傾向がありまして……」
イーレ・リュニック:「むしろ、技術の性質上、水分を含み熱から守る方が本題ですので……」
アレアテルナ:「……」片手で胸を隠して俯く。
アレアテルナ:「……ごめんなさい。みっともない格好を見せてしまって」
イーレ・リュニック:「いえ!」
イーレ・リュニック:否定してどうする。
イーレ・リュニック:「いえ……自分も浅はかでした」
イーレ・リュニック:いいながら、自分も濡れたままのベストを脱ぐ。
イーレ・リュニック:こちらも水分を含んでいるが、水を含むと暗くなる色だ。
アレアテルナ:「……」火の近くに座る。
アレアテルナ:「雨が……やむまでに。乾くといいね……」
アレアテルナ:裾を絞る。
イーレ・リュニック:「はい。ほんとうに。」
イーレ・リュニック:「よろしければ、こちらを羽織ってください」
イーレ・リュニック:「その、マシになるかと」
アレアテルナ:首を振る。
アレアテルナ:「乾きが遅くなっちゃうでしょう」
イーレ・リュニック:「まぁそうなんですが……」
アレアテルナ:「それに――」
アレアテルナ:「見られたのがイーレで、良かったって思ってるの。次からは、気をつけるから」
イーレ・リュニック:「ん」
イーレ・リュニック:「そう、ですね。他の方に見られると、その、障りがありますので」
イーレ・リュニック:「その……私に見られても良くないと思いますけれど」
アレアテルナ:「イーレは、いや?」
アレアテルナ:「仕える王女が、こんな格好になって……」
アレアテルナ:「……幻滅する?」
イーレ・リュニック:窓の外を見ている。だが火力の上がり始めた炎のせいで窓が鏡張りになり始めており、座ったほうがマシじゃないか?と思っている。
アレアテルナ:座ったまま、体をイーレの足元に寄せる。
イーレ・リュニック:「………………それは」
イーレ・リュニック:答えようと言葉を選ぶ間があって。
アレアテルナ:「イーレも、座って」
イーレ・リュニック:「…………」
アレアテルナ:「それもいや?」
イーレ・リュニック:観念して腰を下ろす。
イーレ・リュニック:「いやではありません」
アレアテルナ:同じ高さに目線が合う――それでもイーレの青い瞳の方が、少し高いが。
イーレ・リュニック:首を向けると、距離が近い。近い分顔しか見えなくて、余計な情報は入らなくて済む。
イーレ・リュニック:ぐ、と息を呑む。
アレアテルナ:「やっと座ってくれた」
アレアテルナ:微笑む。
イーレ・リュニック:「えぇ、まぁ……固辞するのもどうかと思いまして」
イーレ・リュニック:命令に従って肩の力が抜けたのか、やや口調が投げやりになる。
イーレ・リュニック:額に張り付いた前髪を指で剥がしている。
アレアテルナ:「わたしは、ずるいかしら」
イーレ・リュニック:「正直に言えば、はい」
アレアテルナ:身を乗り出し、手を床に突く形になる。前かがみになると、重い乳房が重力に従って下がる。
イーレ・リュニック:重くなった生地は、その下に包む体の動きすら伝えてくる。
イーレ・リュニック:拳で自分を殴りそうになる衝動を我慢する
アレアテルナ:「今回の訪問だって、本当は……」
アレアテルナ:「イーレ一人だけを護衛にするように、わたしが元老院にお願いしたの」
イーレ・リュニック:「……そうなんですか?」
イーレ・リュニック:「それは、どうして、また」
アレアテルナ:「……テアトにいるうちは、イーレは立派な騎士をやらないといけないでしょう?」
アレアテルナ:「わたしは、イーレが好き」
イーレ・リュニック:「………………っ!」
アレアテルナ:「ねえ……」イーレの頬に、冷たい手を這わせる。
アレアテルナ:「わたしのこの気持ちは本当なの?」
アレアテルナ:「みんなが認める憧れの騎士になった、あなたの外面に惹かれただけなの?」
アレアテルナ:「イフトノートが宿した"蛹"が子を成させようとしているせい?」
アレアテルナ:「それとも、二人で一つのステラナイトに選ばれた……」
アレアテルナ:「……運命が、好きにさせているの?」
イーレ・リュニック:「アレ、アレア……」
イーレ・リュニック:青い瞳が動揺に揺れている。
アレアテルナ:「わたしは……最初に出会ったときから、あなたが好きだったって信じたいの」
アレアテルナ:「誰よりも苦しかったはずなのに、手を離す余裕なんてなかったのに、わたしに手を差し伸べてくれた……あなたのことが」
イーレ・リュニック:「オレ、は」
イーレ・リュニック:「…………立派な騎士になるとかは、ホントは、どうでもよかった」
イーレ・リュニック:「昔、貴方と出会って、屋根のある家で眠れるようになって、生きていけるようになった」
イーレ・リュニック:「ただ……ただ」
イーレ・リュニック:「オレが、お前のそばに居るためには」
イーレ・リュニック:「誰よりも"立派な騎士"になるしか、なかった」
アレアテルナ:「あなたが入団試験を受けた時、本当は……」
アレアテルナ:「ずっと気にしてたわ。気になりすぎて、あなたより先に、結果を知らせてもらったんだよ」
イーレ・リュニック:「そ、そうだったのか…………?」
アレアテルナ:「あなたは誰よりも努力を欠かさなかった。わたしでも驚くくらいに素敵になって……」
アレアテルナ:「あなたが昇級していくたびにわたしとの距離が近づいていくみたいで、本当は、すごく嬉しかった」
イーレ・リュニック:「……ホントならあのまま死んでたようなガキが、騎士になるんだ」
イーレ・リュニック:「今まで言われたことだけやってた子供が、自分の頭で考えて、足りないものを補う必要が有った」
イーレ・リュニック:「リュニックの家の人達も優しかった。足りないものを教えてくれたし、勉強までさせてくれた」
イーレ・リュニック:「だから……だから、嬉しい分、怖かった」
イーレ・リュニック:「足りないものがあれば。挫折さえあれば。勉強なんかせずに働けとか、恩を返せとか」
イーレ・リュニック:「そういう、仕方ないから諦める、なんて理由が無くて」
イーレ・リュニック:「オレはもしかしたら、お前に近づけるんじゃないかと思えてしまって──」
イーレ・リュニック:「そうして努力を重ねたあと」
イーレ・リュニック:「それでも、結果を出せないかも知れないと思うと、怖かったんだ」
アレアテルナ:「わたしも怖かったんだよ」すぐ目の前で、目を細める。
イーレ・リュニック:「うん」
アレアテルナ:「どんなに想い続けても、最後には挫折してしまうかもしれない。夢が叶わないかもしれない……」
アレアテルナ:「……ねえ、イーレは」
アレアテルナ:「わたしのことが好き?」
イーレ・リュニック:「………………」
イーレ・リュニック:まっすぐ目を合わせる
イーレ・リュニック:「好きだ」
イーレ・リュニック:「オレは、お前を手に入れたい」
イーレ・リュニック:「……………」
イーレ・リュニック:「ただ」
イーレ・リュニック:「初めて出会った時、お前にはすごくひどいことをいって、ひどい扱いをしたと思っている」
イーレ・リュニック:「こうして、勉強して、努力したから分かることだけど、それに気付くと」
イーレ・リュニック:「…………嫌われてるかもと思って、勇気が出なかった」
アレアテルナ:イーレの首元を抱き寄せて、口づけをする。
イーレ・リュニック:「!?」
アレアテルナ:唇の柔らかさを擦り合わせるように一度。息継ぎのように一度離れ、もう一度キスを交わす。
イーレ・リュニック:「ちょ、………っ! 、アレ…………、!?」
イーレ・リュニック:唇の柔らかさ。抱きつくような距離で胸板に当たる温度。口づけする度に鼓動が伝わる。
アレアテルナ:「結婚して」
アレアテルナ:「どんなことをしたって、助けてくれるって約束でしょう?」
イーレ・リュニック:「は、はい」呆然として答えながら。
イーレ・リュニック:「……………」
イーレ・リュニック:「え!?」
イーレ・リュニック:「結婚!?」
アレアテルナ:濡れた服越しに、身体を密着させる体制になっている。互いの服に染みた水分が交じるような心地がある。
アレアテルナ:「……ふふふ。いいの?」
アレアテルナ:「このままだとわたし、上層の誰かの家にもらわれちゃうんだよ……」
イーレ・リュニック:ベンチの壁際に追い込められ、アレアテルナの体が乗っかっている。
イーレ・リュニック:初めて出会った時に抱き上げた体は、生命力を失うような、触れると壊れそうな不安定なものだったのに。
イーレ・リュニック:今ではこんなに、暴力的な生命力を感じる。
イーレ・リュニック:「それは…………………」
イーレ・リュニック:今までのパーティを思い返す。コネを繋ぐための真っ当な手段として、各々が貴賓を扱うように話題に登らせてくる"政略結婚"の話。
イーレ・リュニック:あれに耐えるために精神力を減らし続けた。
イーレ・リュニック:「いや、です……」
イーレ・リュニック:「…………」
イーレ・リュニック:ぐい、とアレアテルナの肩に手を添えて、五分の体勢に戻す。
イーレ・リュニック:「ただ」
アレアテルナ:「あ」
イーレ・リュニック:「本当にいいのか?」
イーレ・リュニック:「最初に言っておくけど」
イーレ・リュニック:「ほんとうに……本当に結婚なんて言いだすと」
イーレ・リュニック:「オレは、ずっと"立派な騎士"としては振る舞えないぞ」
アレアテルナ:「なんだ――そんなこと」くすりと笑う。
アレアテルナ:「秘密にしていればいいでしょう?」
アレアテルナ:「この上層にいるうちは」
アレアテルナ:「わたしとイーレしかいないんだから」
イーレ・リュニック:「……………」
イーレ・リュニック:ふ、と脱力して笑う。
イーレ・リュニック:「意外と悪い女だったんだな」
アレアテルナ:「苦しくて、心配で……怖かっただけだよ。だから、出来ることをしたの」
アレアテルナ:もう一度、イーレにもたれかかるように身体を寄せる。
イーレ・リュニック:「……………うん」
イーレ・リュニック:「多分、誰かに渡したくなくなると思う。わがままも笑顔で許せなくなると思う」
アレアテルナ:「イーレ。あなたが、私を妻にしてくれたら」
アレアテルナ:「明日のわたしは、世界のためにだって戦えるわ……」
イーレ・リュニック:「…………お前を汚すのは、オレだけにしたい」
イーレ・リュニック:「オレ以外の誰にも、お前を汚させない」
イーレ・リュニック:"王女様"の隣に行くために、これまで頑張ってきたのだ。
イーレ・リュニック:なら次は、"王女様と結婚する"ために努力を続ける──なんだ
イーレ・リュニック:(そう考えると、今までと同じか……)
イーレ・リュニック:ふ、と笑いを零す。
アレアテルナ:「どうして、イフトノート王家の色が白色なのかは知ってる?」
アレアテルナ:「それは、結婚のその時には、相手の色に染まるから……」
アレアテルナ:イーレにもう一度口づけをする。今度はより長く。舌を絡ませるように。
アレアテルナ:「だから、イーレ……」
アレアテルナ:「わたしのこと、たくさん愛して……」
イーレ・リュニック:困惑ではなく、今度は覚悟を持ってそれを迎え入れる。
イーレ・リュニック:「…………わかった」
イーレ・リュニック:「アレア。お前をオレのものにする」
イーレ・リュニック:「お前が──好きだ」
イーレ・リュニック:ぐい、と肩においた手に力を込めて。
イーレ・リュニック:今度はこちらから口づけをする。
イーレ・リュニック:白紙に最初の色を置くように。
イーレ・リュニック:まず一歩目を踏み出した。

GM:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのブーケを78増加(170 → 248)


【Scene3-3:テトラ・トライア/香取陽吾】

香取陽吾:テトラ=トライアと香取陽吾が、先の宣言通り早速やっていこうということで。何とか日程を合わせての、二人での映画を見た帰り道。
香取陽吾:夕暮れも過ぎ始めて、だんだんと夜に近くなってきた空だった。
香取陽吾:街灯が火を灯し、夕暮れの紫は黒々とした姿を見せ始めていたときのこと。
香取陽吾:横の公園から、サッカーボールがぽん、と飛び出してきた。
香取陽吾:「お、ボールだ」何処か手慣れた様子で、それを足でトラップする。
テトラ・トライア:「わ、上手」
香取陽吾:足の下にボールを抑えると、回転を掛けて浮かべ。リフティングを慣れた様子で始める。
テトラ・トライア:売店で買ったパンフレットから目を離す。
テトラ・トライア:「スポーツも得意なんだね」
香取陽吾:「ま、昔取った杵柄って奴で…よ、っと」ぽん、ぽん、ぽん、と脚の甲、膝、足横と続け、頭の上を飛び越えさせる。
香取陽吾:その球を、後ろに出した踵でトラップ。勢いをつけ、前にもう一度放る。
香取陽吾:「よ、っと」それを直角のようにした足で、ひたりと静かに受け止める。
香取陽吾:「ほら、返すよ!」そこから浮かべ、キック。正確に子供たちの足元に。
香取陽吾:子どもたちも、その技にどこか歓声を上げた後、お礼を言ってすぐに自分たちの遊びに戻っていく。
テトラ・トライア:手足のように操る、という慣用句があるが、球技に慣れた者をそうではない者が見る時、緩急の違和感は「生物のように」と映る。
香取陽吾:「以外とできるもんだ。グレネード蹴り返すくらいにしか碌に使わなかったんだけどなあ」
テトラ・トライア:「グレネードを蹴り返す距離は、かなりピンチじゃない…?」
テトラ・トライア:「あの子達も」
テトラ・トライア:「いまので、香取くんに憧れるかもね」
香取陽吾:「人数少なかったり情報が足りないとどうしてもなあ」
香取陽吾:「ハハ。プロの選手に憧れてほしいね」
香取陽吾:「…昔は、ぼくもああいう風にサッカーに夢中になってったけなあ」
テトラ・トライア:「ふふ。香取くんの試合、探してたりして」
テトラ・トライア:「さっき言ってたね。昔取った杵柄?」
テトラ・トライア:「どんな子だったの。聞きたい。」
テトラ・トライア:パンフレットをショッパーに戻して、隣の顔を見上げる。
香取陽吾:「ん?…あんま大したことは…普通の人よりかはあるけど、テトラちゃんとかみたいな劇的な感じはないぜ」
香取陽吾:「それでも良ければ、まあ話すけど…さっきの映画と比べないでくれよ?」苦笑して。
テトラ・トライア:「お話との区別はつきますー」
香取陽吾:「ははは。ごめんごめん。じゃあ、まあ話してくか…」
香取陽吾:ぼくはまあ、個人商店の子どもでさ。
香取陽吾:家族は結構人数が居て…親父に母親、兄貴に弟がいて、親戚も結構集まってたんだ。
香取陽吾:小さいころからサッカーばっかやってて、小さい時はそれこそプロ選手になってやるぜ見たいなこと考えてたんだよな。
香取陽吾:まあ、そんなこと考えてたんだけど。リトルの試合で、結構活躍したんだ。これはすごいぞ俺、って思ってたら--
香取陽吾:幼馴染…これはまあ色々いたんだけど、その内好きな女の子は。全然俺の事なんて見てなくて、活躍そんなだった別の男の幼馴染につきっきりでさ。
テトラ・トライア:おぉ、へぇ、と細かく頷いている。
香取陽吾:なんというか、ショックだったな。下らねえんだけど、あの時は俺が頑張ってもこんなかよ、見たいに思ったもんだ。
香取陽吾:だからまあ、サッカーにも力が上手く入んなくなって…。
テトラ・トライア:そこだけは遮ること無く、じっと聴いている。
香取陽吾:空を見上げる。星が見えた。黒い雲が幾つか見えるから、雨が降っているかもしれないな、と思う。
香取陽吾:そうしたら、店の金に親戚のおばさんが手ぇ付けてさ。
香取陽吾:まあ、色々余裕がなくなって、サッカーもその時に辞めたんだ。
香取陽吾:別に大した理由があったわけじゃない。個人商店だから、まあ店と自分の払いが区別付きづらいとこで…
テトラ・トライア:む、と眉間にシワを寄せたが、話す表情を見てやや解す。
香取陽吾:まあでも、警察沙汰だよな。近所でも噂になったし、学校でも話は広まったりして。
香取陽吾:被害者だけど、加害者は俺の親戚だ。
香取陽吾:人殺しだとか、大した話でもないけど。金の話は、やっぱり汚いだろ?
香取陽吾:庇おうにもどう庇えって話だし、こっちは酷い目に遭ったから。まあ、色々。俺はどっかで世の中を斜に構えてみるようになった。
テトラ・トライア:そうなんだね、と目線で続きを促す。
香取陽吾:そうしたらまあ、署の警官さんも近所だから。色々便宜を図ってくれるっていうか、あれは半分監視もあったんだろうけど、来てくれたりするわけで。
香取陽吾:店は兄貴が継ぐし、俺はやりたい事もないけど仕送りはしなきゃあだから、じゃあ警官になるか、ってね。
香取陽吾:つっても、まあひねたガキだからさ。
香取陽吾:どんな内容が楽で、上手く安定できっかなー、みたいな眼で見てるのバレバレなのに、そのお回りさんはよくしてくれたんだ。
テトラ・トライア:"警官さん"に関しては、話の端々で感じたことがある。香取がその道を選んだであろう、影響を受けた人として。
香取陽吾:家族も碌に信じられねえ、家業もうまくいってねえ、ってときだから。まあ懐くよ。
テトラ・トライア:頼れる大人だったんだね。
香取陽吾:まあね、と青年は笑った。どこか少年じみた笑い方だった。
香取陽吾:そうして、何年か付き合いが続いて…俺が警察コースに合格したかそれくらいだったかな。
香取陽吾:家族も世話になってるから、お礼言いに行くわけ。そうしたらさ。
警官:--「ぼくは大したことをしていないし、犯罪を防ぐ職務も果たせなかった。きみが掴んだのなら、それはきみの努力によるもので。」
警官:--「君が寧ろ自分に逢うことで辛い事を思い出すなら、もう会わず、お礼も必要ないんだ。そう言うものをいらなくするために、ぼくたちはいるんだから」
香取陽吾:「……格好良いなあ、って思ったのさ」
香取陽吾:「警官なんて、所詮食う為にやってく仕事だって思ってたんだ」
香取陽吾:「誰かを押さえつける、公的ヤクザみたいな仕事だ、ってね」
テトラ・トライア:「……そうなんだ」
香取陽吾:「俺は、あの人みたいに格好良くなりてえなあ、って思ったから。まあ俺なりに、カッコつけたの」
テトラ・トライア:「うん」
テトラ・トライア:「香取くん、かっこいいもんね」
香取陽吾:「詰まんない話だろ?オチもあんまついてねえし……」
香取陽吾:「…」ちょっと面食らった顔。
テトラ・トライア:「今の話を聞いてね、その警察官の人」
テトラ・トライア:「香取くんみたい、って思ったよ」
香取陽吾:「……そうかい?」何処か照れくさそうに鼻の頭を掻いた。
テトラ・トライア:「うん、そう」
テトラ・トライア:「前々から、香取くんって憧れの警察官のお話をしてたから」
テトラ・トライア:「聞けて、嬉しい」
香取陽吾:「そんなにしてたか俺……」
テトラ・トライア:「うん」
テトラ・トライア:「私がお礼を言うと、良く『憧れの警察官ならそうするから』って」
テトラ・トライア:「照れくさそうにしてた」
香取陽吾:「俺は、あんまいい大人って知らねえからさ。親父や親戚は、まあさっきの話の通りでグダグダやってっから」
香取陽吾:「…そうか。いい大人、やれてたかね」少し、穏やかに笑う。
香取陽吾:「別に、悪者フッ飛ばしてはいおしまい、ならいいけどさ」
香取陽吾:「中々そうは現実、行ってくれねえから。…やっちまった奴も、やられたやつも、」
テトラ・トライア:「うん」目を細めて笑う。
香取陽吾:「その後の人生、続くもんでさ……」
テトラ・トライア:「香取くんが、悪い人を懲らしめておしまい、って人だったら」
テトラ・トライア:「私は多分、ここにいないもの」
香取陽吾:センチュリオの人員だった少女。交戦規則として、抵抗するなら殺害を許可する、とまであった。
香取陽吾:ふざけんじゃねえ、と俺/ぼくは思った。
香取陽吾:だから、まあしなくていい無茶をしたのだ。バカだなんだのと同じ部隊の奴らからも言われたが--
香取陽吾:「後悔はしてねえ」
テトラ・トライア:「………………えへへ」
テトラ・トライア:本当は、笑って聞く話じゃないかも知れない。
テトラ・トライア:自分の命を左右されていた話で、彼がその能力を存分に活かせる場所を退く原因の話。
テトラ・トライア:"優しいおまわりさん"は、私に出会う前はそうではなかったかもしれない、というお話。
テトラ・トライア:「ね、私の話もしていい?」
香取陽吾:「ん…ぼくだけ話すもんじゃないさ。どうぞ、お姫様」
テトラ・トライア:「うん」
テトラ・トライア:すぅ、と息を整えて
テトラ・トライア:────"センチュリオ"では、『これは世界を救う行いだ』と教わりました。
テトラ・トライア:他の世界は不安定で、いつ壊れてもおかしくなくて、何もかも壊れた後に『この世界』にやってくるのだと。
テトラ・トライア:だから、それを拾い集めて。他の階層に"流れ着いた"大事なものを全部集めて。
テトラ・トライア:管理してあげる、素晴らしい行為なんだよ。と。
テトラ・トライア:"わたし"はそれを疑わなかったし、言われたことをやれば、ちゃんとご飯を食べられたから。
テトラ・トライア:だから、だから。
テトラ・トライア:あの頃のわたしたちは本当に、世界を救うつもりだったのです。
香取陽吾:語る少女と歩調を合わせている。自然に、いつものように。少女が話しやすいように。
テトラ・トライア:──それが何もかも偽りだと知ったのは、既に世界を救ったらしい、"大人"たちが捕まった時でした。
テトラ・トライア:えぇ、はい。その時ですね。わたし達は世界を救うつもりでしたから。
テトラ・トライア:ついに出番が来たぞ、と拳を振り上げて……それで、終わりです。
テトラ・トライア:気づけば大人達のいう"この世界"より外に運ばれて、本当の世界はもっと広いと知りました。
テトラ・トライア:ある意味、あれも世界の終わりっていうのかな。
テトラ・トライア:信じてたものが全部ウソで、"わたし"達は世界を乱す子供だと知らされて。(その節はお騒がせしました)
テトラ・トライア:じゃあ、じゃあ。
テトラ・トライア:次は、私達は何を信じればいい、、、、、、、、んでしょうか?
テトラ・トライア:今まで正しいと信じたものは、嘘でした。
テトラ・トライア:じゃあ、次に正しいと教えられるものは……本当に、正しいんですか?
香取陽吾:「………」なんだっていいんだ、と香取陽吾は思う。でもそう言えるのは、自分の中に信じるものが幾つも、その欠片を与えられていたからこそだろう、とも思う。
テトラ・トライア:私達は、何を基準に、どうやって生きていけばいいんですか────?
テトラ・トライア:「そんなことを、仲間内の暗号でこっそりやり取りしまして」
テトラ・トライア:「でも、その悩みを解決してくれた人が居るんです」
香取陽吾:「大分結構重たい話じゃん……えっ誰よ??」
テトラ・トライア:「その人はですね」
テトラ・トライア:「例えば、武器を持って訓練した人達に囲まれても平気なぐらい強いのに」
テトラ・トライア:「困ったおばあさんの荷物を持ってあげてたんです」
テトラ・トライア:「泣いた子どもの親を探してあげてたんです」
テトラ・トライア:「落とし物をした人を安心させてあげてたんです」
テトラ・トライア:「……子供たちのサッカーボールを、取ってあげてたんです」
テトラ・トライア:じ、と深緑の瞳で顔を見る。
香取陽吾:「いい奴だがまあ普通に善人ならやってそうな範囲だな……」
テトラ・トライア:「………………」
香取陽吾:「武装した訓練兵に囲まれて平気なのは大分ヤベーやつだが……」
テトラ・トライア:じと。半眼になる。
香取陽吾:「…………」
テトラ・トライア:「そうですね。かなりやべー人ですね」
テトラ・トライア:「じゃあもう一つ」
テトラ・トライア:「私のことを可愛いっていう人です」
香取陽吾:「ええ?まあテトラちゃんは普通に可愛い子じゃん」
テトラ・トライア:「うぅ…………!」
テトラ・トライア:「わ、私のせいなのかなこれ……」
テトラ・トライア:「香取くん」
テトラ・トライア:「きみ、きみです」
香取陽吾:さっきのでまさか俺かな~?とか考えていたがテトラちゃんの事を出されたので分かんねーな……って顔になっている。
香取陽吾:「エッ俺」
テトラ・トライア:ぽすぽす、と親指を内側に握った拳で脇腹を叩く。
香取陽吾:「……他にいない?特に3番目は…」
テトラ・トライア:「AND検索です」
香取陽吾:「絞り込みかあ……」
テトラ・トライア:びしびし。肩を使ってショルダーチャージ。
テトラ・トライア:「続けますよ、話」
香取陽吾:甘んじて受け止めている。色々近づくたびに結構柔らかな髪とか色々靡いたりするのでちょっと危ないなあと思っている。
香取陽吾:「うむ……」
テトラ・トライア:「ええと、なんでしたっけ……ともかく」
テトラ・トライア:「その人は、感謝されてたんです」
テトラ・トライア:「こうすれば感謝される、じゃなくて。実際に、ありがとう、って」
テトラ・トライア:「だったらそれは、"いいひと"じゃないですか」
テトラ・トライア:「いつか、とか。来る日には、とか。そういうのじゃなくて」
テトラ・トライア:「感謝をされて、人を守ってて」
テトラ・トライア:「正しい人で──いえ、もし、正しくなくても」
テトラ・トライア:「この人みたいになれれば、誰かに感謝してもらえるのなら」
テトラ・トライア:「この人みたいになりたいな、って」
テトラ・トライア:「あの頃のテトラ・トライアは、思ったのです」
香取陽吾:「…………そっか」何処か、感極まったような声だった。
テトラ・トライア:穏やかな敬語。それは唯々諾々と命令に従っていた頃の、幼い頃の口調だ。
テトラ・トライア:「うん…………でも、ね」
テトラ・トライア:「私、きっと、他の人より、すごーっく遅れてるの」
テトラ・トライア:「お勉強は頑張って追いついてるけど、生活のこととか、きっと、他の子が今までちゃんとやってきたこと、やってないから」
テトラ・トライア:「多分、これからもきっと、間違えちゃう」
テトラ・トライア:「だから、ね」
テトラ・トライア:「私が悪い事をしたら」
テトラ・トライア:「香取くんが、叱って」
香取陽吾:「……」少し息を吐く。
香取陽吾:「ぼくは、何時だってそうするよ。…勿論、ぼくだっていつでも正しいわけはないけれど。今までそうしてきたみたいにさ」
香取陽吾:「でも、……テトラちゃんは頑張ってるし、そう長くないうちに出来るようになると思う。自分で自分の間違いをわかって、それを正せるようになれる」
香取陽吾:「君は、君自身として正しい道を歩もうと努めることができる。…それは、きっとすごいことだよ」
テトラ・トライア:「香取くん………」
テトラ・トライア:「うん……」
テトラ・トライア:「うん……………」
テトラ・トライア:「………………」
テトラ・トライア:「あ」
テトラ・トライア:「もし、この流れで『だからこれからも別のいい人がいるかも知れないよ』とか言い出したら」
テトラ・トライア:「ちょっと強めにぶちます」
香取陽吾:「あ、はは………言わないって」苦笑気味。
香取陽吾:それから、そっと手を伸ばして彼女の髪を撫ぜる。もっと小さな時にしたように。
テトラ・トライア:「ほんとうかなぁ…」
テトラ・トライア:「!」
テトラ・トライア:ヒュッ! 半身を引くスウェーバックでその手を避ける。
テトラ・トライア:「香取くん」
香取陽吾:「綺麗になったね。……きっと見違え……ええ!?」
テトラ・トライア:「いまのは子供扱い?それとも、女の子扱い?」
香取陽吾:「お、女の子(ども)扱い……かな?」
テトラ・トライア:「そうだね……さっきの"幼馴染さん"が同じシチュエーションのときも頭を撫でたか、で答えて?」
香取陽吾:「いやんなことしたら普通に殴られるけども……」
テトラ・トライア:「そう」
テトラ・トライア:「好きな女の子にはしないんだ?」
香取陽吾:「そもそもそういう状況になった事が俺はないけど…………」幼馴染の男にはあったのを見た事がある。
香取陽吾:「好きな女の子に此処まで接近した事がないぞ」哀しい断言だった。
テトラ・トライア:「……………………」
テトラ・トライア:本当かなぁ自覚ないだけで実はしたんじゃないかな?前に警察学校の同期とか言ってたし
テトラ・トライア:「……そう、じゃあ。良い」
香取陽吾:「うん……俺の傷が公開されただけかこれは……」
テトラ・トライア:「はい。どうぞ」
テトラ・トライア:距離を戻して、改めて頭の位置を整える。
香取陽吾:「………えっここで!?」
テトラ・トライア:「さっきしたの、そっちなのに」
香取陽吾:「え、え~~………」クソ鈍い香取にもさすがにある程度は理解できた。なんか……これはやったらそういう風に見てるってことになるんじゃないか?と。
香取陽吾:「……ええいままよ!」
香取陽吾:そっと少女の、ふわりと広がる髪を抱くように腕を回し。
香取陽吾:彼女の、滑らかなしろがねの髪を、静かに手櫛で梳く。
香取陽吾:どこか、壊れ物を扱うかのような手つきだった。
テトラ・トライア:「……………えへへ」
テトラ・トライア:くすぐったそうに、頬をほころばせて。
テトラ・トライア:少し子供っぽいと思って、きりりと変わる。
香取陽吾:きみの身体に触れないように、でも確かにそっと伝えるような手つき。
テトラ・トライア:その指が髪の毛を傷めないように、緩やかに滑るのを往復で何度か感じる。
テトラ・トライア:「………………ね。」
テトラ・トライア:頭を預けて、真っ白な髪で視界を埋めさせて。身長の違いで、表情は見えない。
テトラ・トライア:「私達、戦うんだって」
テトラ・トライア:遠く、かすかに見える円形の闘技場。
香取陽吾:「わ、」少し慌てたような声がした。きみに此方から触れないようにしたままだから、君の動きについていけていない。
テトラ・トライア:「"世界を守る"ために」
テトラ・トライア:ぴとり、といつしか、香取へ半身を預けている。
香取陽吾:「……ああ。花園フラワーガーデンに、花が咲いたんだってな」内容と裏腹に、少し困ったような顔だった。
テトラ・トライア:「世界のために戦うんだって。あはは」
テトラ・トライア:かさり、とショッパーの中のパンフレットが音を立てた。
テトラ・トライア:ラブコメディの要素のあるアクションもの。主人公とヒロインが、世界を守るために戦う王道映画。
テトラ・トライア:"なにかの参考のために"。誘い文句いいわけは、そんな感じだった
テトラ・トライア:「そういうの、得意だけどさ」
香取陽吾:「……」先の少女の言葉と、その映画を思い出した。「俺は……」
テトラ・トライア:「……私、間違ってない、よね?」
香取陽吾:「……、」少し躊躇う。「間違って、ないさ。いるものか」出た言葉は、彼女の問いへの返答だ。
香取陽吾:「……ああ、言っちゃおう。どうせだ」どこかで、真面目でない自分が顔を出すのがわかる。
香取陽吾:「--明日はきみの手に、この世界の全部が載るんだ」それは呪いの言葉めいていたけれど。
香取陽吾:「きみが嫌いなものも。いやだと思うものも。恨めしいものも。眼にしたくないものも。--同時に」
香取陽吾:「君が好きなものも、君が欲しいものも、君の未来も、君の過去も、全部。」
香取陽吾:「好きにしちまえ」
香取陽吾:「きみには、その権利がある」
テトラ・トライア:「ふふ」
テトラ・トライア:「そっか、権利か」
テトラ・トライア:「いいね、それ」
テトラ・トライア:「どっちか選ばなくて良いんだ」
テトラ・トライア:「きらいなものも、いやなものも」
テトラ・トライア:「嫌ってくる人も、嫌だと思ってくる人も」
テトラ・トライア:「都合の良いものだけじゃないなら……きっと」
テトラ・トライア:「私を見張ってくれるよね」
テトラ・トライア:私は世界を救う英雄とくべつじゃない。
テトラ・トライア:なくて、いい。
テトラ・トライア:お巡りさんは世界を救わないけど。
テトラ・トライア:関わった人こそを救ってくれるから。
テトラ・トライア:「ね、香取くん」
テトラ・トライア:「私が世界を救ったらさ…………」
テトラ・トライア:「…………」
テトラ・トライア:「いや、やっぱやめようかな……」
香取陽吾:「なんだい」いまだに彼は、君の身体に触れないようにしていた。まるで宝物を守るように。
香取陽吾:「別に後にしたって構やしないが……なんか奢れって言うなら奢るし、ぼくが出せる御褒美なら出すよ?」
テトラ・トライア:「…………えっとね」
テトラ・トライア:「"勝ったらご褒美にチューしてくれる?"って言おうと…………思ったんだけど」映画の主人公のセリフだ。
テトラ・トライア:「流石に勢い任せすぎるし」
テトラ・トライア:「報酬として義務的にされてもやだな、って」
テトラ・トライア:「思った」
香取陽吾:「…………お、おう…」
テトラ・トライア:「そういうのは、香取くんがしたくなったらしてほしい……」
テトラ・トライア:「……何言わせるのっ」
香取陽吾:凄く困った顔をしている。何というか、彼女が密着してきていて、そのしろがねの髪の綺麗さだとか、朱に染まった白い肌だとか、そもそもの柔らかさだとか。
テトラ・トライア:ぽかぽか。
香取陽吾:「言ったのはきみだって……!」そのまま甘んじて受ける。
テトラ・トライア:「それはそう…………」
テトラ・トライア:「もう、真面目な話だったのに……」言ったのは自分。
香取陽吾:きみは気付いたかもしれないけれど、彼の頬も少し赤みを帯びていた。普段から調息を欠かさず、血流をコントロールしている青年が。
香取陽吾:”きみの事を魅力的な女の子だと思ってる”、というのは。きっと嘘じゃないのだ。
テトラ・トライア:「もういい。悩んで損した……」
テトラ・トライア:「ね、香取くん」
テトラ・トライア:「勝とう、ね?」
香取陽吾:「あ、うん……」少し間が空いて、表情を整える。「ああ」
香取陽吾:「君なら勝てるよ」戦にそうした、絶対的な保証などありはしないと知っている。
香取陽吾:その上で。
香取陽吾:「きみが、負けたりするものか」
テトラ・トライア:その言葉は。
テトラ・トライア:正しいとか、正しくないとか。
テトラ・トライア:真実とか騙されてるとか。
テトラ・トライア:そういった小難しいことは抜きにして。
テトラ・トライア:どんな立派な目的より、胸の奥を、暖かくしてくれる。
テトラ・トライア:「うん。」
テトラ・トライア:(ほんとに世界を救うとかは、いいの)
テトラ・トライア:(嘘でも、良い。世界を守るためじゃなく、ホントはただの争いだとしても)
テトラ・トライア:(何もせず世界が滅びるより、ずっといい)
テトラ・トライア:世界が壊れるのは困る。とても困る。
テトラ・トライア:香取くんが私の好きにしていいと言ってくれたのだ。世界の何もかもを。
テトラ・トライア:その中にはきっと、香取くん自身も含まれていて────というのに。
テトラ・トライア:(全部これからなのに。終わるのは、ほんとうに困る)
テトラ・トライア:やることは山積みだ。おそらく子供っぽいと思われているので、早めに学生を卒業する必要がある。
テトラ・トライア:飛び級制度があるらしいので、ちゃんと学力を示せば多分出来るはずだ。(その学力で中等部と判断されていても)
テトラ・トライア:一緒の職場になれば、社会人として扱ってもらえるはずだし。扱いも変わる。はず。
テトラ・トライア:「よし。」
テトラ・トライア:そんな綿密なプランを組み立てながら、小さく両手拳を握る。
テトラ・トライア:「頑張ろう」
テトラ・トライア:テトラ・トライアは世界を救うためには戦わない。
テトラ・トライア:明日、今日より少し進むために。
テトラ・トライア:ついでに世界を救うと決めた。

GM:テトラ・トライアのブーケを64増加(97 → 161)


【Scene3-4:セリ=ティンカー/ルバート・アロス】

ルバート・アロス:――――――――――――数ヶ月前 下層 ある廃墟
ルバート・アロス:目が覚めてまず意識したのは、体が動かない、ということだった。全身を激しい痛みと倦怠感が覆っている。
ルバート・アロス:(足。裂傷あり。右腕。皮膚の引きつりを感じる。恐らく熱傷。右目、視界なし。陥没、顎骨と頬骨まで粉砕)
ルバート・アロス:手榴弾、それに類似した攻撃手段による破片外傷と熱傷と思われた。
ルバート・アロス:治安の悪い、この区域で起きた患者を見に来ていた。十分注意はしていたが、抗争に巻き込まれたのだろう。
ルバート・アロス:周囲に命の気配はない。自分だけがまだ生きていることが奇跡だった。或いは、タチの悪い神様の悪戯か。
ルバート・アロス:(クソ。怪我人は、まだ生きているものはいないか。僕は医者だ)
ルバート・アロス:声は出ない。ひゅうひゅうと、掠れたような音がする。
ルバート・アロス:戦地の医者は、まず何より自分を守らなければならないと、大学の講義に来た医師団の人が言っていたことを思い出す。
ルバート・アロス:見様見真似では限界があった。
ルバート・アロス:まして、ここは自分がいた世界にあったどんな物語よりも荒唐無稽な階層都市アーセルトレイである。
ルバート・アロス:(駄目だ。僕が死んだら僕の医術が死ぬ。僕の世界がこの世界に残せる数少ない価値あるものが、確実に失われる)
ルバート・アロス:――どんなに優れた医者でも、人が死ぬことは止められない。
ルバート・アロス:――世界ならば尚更だと、そう言うつもりだろうか。
セリ=ティンカー:ちかちかと。――きみの視界に、上から青く蒼いひかりが見えた。
セリ=ティンカー:柔らかく、優しいひかりだった。光量自体は大きいのに、眼には負担とならない。
ルバート・アロス:「……? なん、だ……」
ルバート・アロス:(閃輝暗点? 今更か?)
セリ=ティンカー:空を見上げれば。蒼くて青い、宇宙から見た地球のような。そんな蒼を深めた色の光の玉が、ゆっくりと落ちてくるのが、みえる。
セリ=ティンカー:ゆっくり、ゆっくりとそれはきみの近くへ落ちてくるようだった。
セリ=ティンカー:花のようにも。種のようにも。そして、そのどれでもないかのような、不可思議な。
ルバート・アロス:(落ちて……くる)  (ながれぼし?)
セリ=ティンカー:それが地に触れると、ひかりがゆっくりとほどけ、散って。そこに。
セリ=ティンカー:赤い髪と天輪を浮かべ、背に罅割れて今にも砕けそうな水晶質の羽根を負う、美しい少女が現れた。
セリ=ティンカー:「………ああ」
セリ=ティンカー:「ここは……」身に纏うものは、ある意味下着じみた最低限身体を覆うシュミーズくらいなものだったけれど、
セリ=ティンカー:そうだとしても、多くのものは見惚れるだけで、なにも出来なかっただろう。そうした、浮世離れた美しさ。
セリ=ティンカー:ゆっくりと少女は浮遊しながら、周囲を見ると。きみを見つけたらしかった。
セリ=ティンカー:「――ねえ、そこのあなた。此処はどこか分かる?」
ルバート・アロス:「は」思わず笑いが零れた。こぽ、と口の端から血の泡が漏れた。内臓……いや、食道損傷。
ルバート・アロス:お医者様に、天使のお迎えとは。「なん、だ。お前」
セリ=ティンカー:「……随分怪我してるわね……ああもう、ティンバーを去れたと思ったら」
セリ=ティンカー:「妖精よ」
ルバート・アロス:「ここは、第……●●層。の、抗争、地帯」
セリ=ティンカー:「……ああ、だからこんなことに…面倒な所に落ちたかも」
ルバート・アロス:「妖精、までいるのか、この世界は」
セリ=ティンカー:「あたしは、”ティンバー”Tein.verの春告精だから、此処のじゃない」
セリ=ティンカー:「…ああ」そう言ううちに、羽根のひび割れがゆっくりと広がっていっているのがわかる。
セリ=ティンカー:「やっぱり、”くらいそら”の航行なんて、やるものじゃないわね……」
ルバート・アロス:「……なんでもいい、暇なら……」
ルバート・アロス:背後にある建物を、視線だけで指差す。「あそこに、俺の世界の医術書がある。ここから北の、町の……教会に届けてくれ」
ルバート・アロス:「比較的、まだマシな書庫が、ある。……いつか、誰かが、読むかもしれん……」
セリ=ティンカー:「………助けてくれ、とは言わないの?」少し面食らったようだった。
セリ=ティンカー:彼女はいつだって、誰にだって、それを願われて叶えてきたからだ。
ルバート・アロス:「自分の容態くらい、分かる。……僕は医者だ」
セリ=ティンカー:「あなたが死ねば、あなたの環世界はそこでおしまいだわ。誰が継ごうと、どうしようもない」
ルバート・アロス:「……痛いところを」
ルバート・アロス:「けど……仕方ない。目的がある限り、死に悔いが残るのは……」
ルバート・アロス:「……当然だ」
セリ=ティンカー:「……ふうん?」
ルバート・アロス:「これまで片っ端に、通り魔的に助けた、誰か、誰か一人でも、いい」
ルバート・アロス:「人を助けようと……思ってくれれば、思想だけでも、繋がってくれれば」
ルバート・アロス:「いい。ゼロじゃ、ない」
セリ=ティンカー:何処か、その妖精は興味深そうにあなたを見た。
セリ=ティンカー:「そう。そうね。確かにそうだわ」
セリ=ティンカー:「思想が、ミームが繋がり、そこにあなたは残る」
セリ=ティンカー:「でも――」
セリ=ティンカー:「丁度都合がいい事に、”手段”はある。あなたがやりなさい」
セリ=ティンカー:「あなたの目的は、あなたが果たすのよ」
ルバート・アロス:「…………な、に?」
セリ=ティンカー:「動かないで。どうせだし。丁度いいから」こうしているうちにも、羽根にどんどんと罅が広がっている。
セリ=ティンカー:「助けてあげる。そういってるの」
セリ=ティンカー:うたがはじまる。ゆるりと風が巻き始める。世界が注目を始める。
セリ=ティンカー:其れは短縮され、改変され、捧げものも不完全で。
セリ=ティンカー:其れでも、ひとひとりを癒すには過ぎも過ぎた術だった。
セリ=ティンカー:「”あかのおうぎ”。”なつのかけら”。”あきのしらせ”」周囲の世界が色づいてゆく。リズムがぐるぐるとまわりだす。
セリ=ティンカー:きみには、彼女の言葉の意味がなぜか分かった。これは、世界への、星への呼びかけなのだと。
セリ=ティンカー:「”あおのたねび”。”ふゆのめぐり”。”はるのきざし”」青い、蒼いあまりに美しい炎が、裡に赤色を抱いて燃え上がる。
ルバート・アロス:「………!?」
セリ=ティンカー:「――”しきをめぐりて”。”そらをいやす”」
セリ=ティンカー:その言葉が終わるとともに、あなたは身体が燃え上がるように感じた。
セリ=ティンカー:感覚が全て正常を超えてはるかに良く見え、痛みは去り、活力が溢れる。
セリ=ティンカー世界再生の術式ar.ciel.el.rw。ティンバーに数ある名持ちの術でも、最上にして最高の秘跡。春告精を星に捧げ点火する、奇跡の術。
セリ=ティンカー:それを劣化し改変した、救命術であった。
セリ=ティンカー:気付けば――少女の背から、ひび割れた羽根が消えている。
セリ=ティンカー:「あたしの羽根も壊れかけてたから、それを使った」
セリ=ティンカー:少女はゆっくりと君の傍に落ちていく。
ルバート・アロス:「――――っ、ぐっ!?」 右目に、刃物が刺さったような痛み。思わず身を起こして、自由になった手で押さえる。
ルバート・アロス:それは、雪の日の照り返しを直視したような、見えすぎることによる光線の痛みだった。
セリ=ティンカー:「壊れかけと、壊れかけ。つぎはぎにするにはちょうど良かった」
ルバート・アロス:「壊れかけ……は、羽根?」
ルバート・アロス:喉も手足も、いっそ万全以上ですらあった。
ルバート・アロス:「君、一体、何を…………」
セリ=ティンカー:「あたしは妖精なんだから、」何処か自慢げに、少女は胸を張った。「羽根があるものなのよ。それを触媒にした」
セリ=ティンカー:「あなたの命を、包んで守ってくれる。ほら」
セリ=ティンカー:「目的があるんでしょう?」
セリ=ティンカー:「やりに行きなさい。――ああ」
セリ=ティンカー:「――ティンバーの春告精の仕事は、最後までなにものかを助けるためにあった。それを全うしただけよ」
ルバート・アロス:「…………」体が急激に癒えた代償の、滝のような汗をかきながら。
ルバート・アロス:何一つ状況は分からない。分らないまま。
ルバート・アロス:少女にとって一番大切なものを、自分が受けとってしまったということだけが分かった。
ルバート・アロス:「…………」
セリ=ティンカー:「?…どうかしたの?術はしっかり完全に機能したはずなんだけど……」
ルバート・アロス:「この……こんなこと……!」
ルバート・アロス:「相手の了解も得ずに移植手術をするんじゃない!」
セリ=ティンカー:「時間がなかったのよ。そろそろ限界で、壊れてしまう所だったのと――」
セリ=ティンカー:「あなたが、死んじゃうじゃない」
ルバート・アロス:「いや、この場合、ドナーは君自身か……不覚にも緊急手術が必要だったのは僕だが……!」
セリ=ティンカー:少女はぺたんと座っている。――よく見れば、彼女の脚が一切動いていないことに気付けるだろう。
ルバート・アロス:「……なんで立たない?」
セリ=ティンカー:「脚、動かないから」
セリ=ティンカー:「だからほら。もうあたしは出涸らしみたいなもので――」そう言うと、少女は苦笑した。「――もう役に立たないわよ」
ルバート・アロス:「別個に障害を有する人物の体からの器官の提供!?」
ルバート・アロス:愕然とする。動くようになった体と、周囲に散っていた血量を改めて見返して。
ルバート・アロス:そして、最後に残った最重要器官を放棄した、妖精を名乗る少女。
ルバート・アロス:「――分かった」
ルバート・アロス:「君の治療行為に対して、僕は深く感謝する。どうもありがとう」
セリ=ティンカー:「あら、どういたしまして」少し目を丸くして。
ルバート・アロス:「報酬は何が良い?」
セリ=ティンカー:「?」
セリ=ティンカー:「言ったじゃない。ティンバーの春告精の仕事だって。あなたが出す必要はないわ」
ルバート・アロス:「? と 可愛い小首をかしげるんじゃない」
セリ=ティンカー:「春告精は、奉仕の役割よ。何かを受け取ることはないの。持っていけないから」
ルバート・アロス:「馬鹿。無償の奉仕なんて堕落の遠因だ。ナイチンゲールの本を知らないのか?」
セリ=ティンカー:「知らないけど……」
ルバート・アロス:「それは……そうだな」
ルバート・アロス:「……医療の押し付けという点では僕も似たようなことをしてきている」
ルバート・アロス:「それなら、君が失ったものを取り戻せば良いな」
セリ=ティンカー:「ええ……??できないわよ。失ったものを取り戻すなんて」
ルバート・アロス:「それが最低限だ。僕だって自分が生きるための食料だの労働力だのは貰っている」
ルバート・アロス:「君はまだ生きてる」
セリ=ティンカー:「……」眼を瞬かせる。
ルバート・アロス:「生きて、話し、考えられる人間が、役に立たないなんて、出がらしなんてことがあるものか」
ルバート・アロス:今まで拠点にしていた、先ほど示した建物を見返す。
ルバート・アロス:「立て……ないのか。悪いが、持ち上げるぞ」
セリ=ティンカー:「……まあ、しょうがないわね。本当は肌を許すなんて、特別なことなのよ」
セリ=ティンカー:「まあ……」
セリ=ティンカー:「あなたは面白いから、とくべつに……いい?とくべつに、よ?許してあげるわ」
ルバート・アロス:「やんごとなき身の上というやつか。医療行為の前では同じ処置をするが」
ルバート・アロス:「……できるかぎり、敬意は払う。それで許してくれ」
セリ=ティンカー:「ティンバーの春節隊が聞いたら飛んでくるんだから。……ええ、そうね」
セリ=ティンカー:「いつまで許してあげられるか、測ってあげる」
ルバート・アロス:自ら言及するまでもなく……綺麗な少女だった。
ルバート・アロス:抱き上げる時、緊張しながら、それを悟られないように更に身を強ばらせていた。
ルバート・アロス:それが、僕と彼女の、ファーストコンタクトであり。そして――――

ルバート・アロス:【現在  とある下層 アロス医療所】
ルバート・アロス:朝の日差しが、カーテンの隙間から差し込んでいる。
ルバート・アロス:微睡みから覚め、ゆっくりと目を開ける。あの時の夢を見るのは、久しぶりだった。
ルバート・アロス:医療所の奥、居所のベッド。布団を上げて起きようとして。自分の体の上に、自分以外の重さがあることに気付く。
セリ=ティンカー:きみの上で。細く、白い肢体が日の光に照らされて浮かび上がる。まだ少女は眠っているようだった。閉じた瞳は長い睫毛に彩られ、それが微かに震える。
セリ=ティンカー:きみに抱き着いて、胸を枕にしてすうすうと寝息を立てていた。
ルバート・アロス:片目を細める。彼女の力で蘇った右目が、彼女の力を浴びて喜んでいる。
ルバート・アロス:いや、違う。……喜びと、温かさに、安心感を覚えているのは、ルバート自身だ。
ルバート・アロス:赤子のように高い体温。しなやかな四肢。すこし尖った耳。
ルバート・アロス:火照った頬も。僅かに開いた口元も。吐息の一つまで、慈しむような愛情を覚える。
セリ=ティンカー:少女の身体の熱は、春の暖かさに近しかった。あなたは、彼女の肌に触れてよい許しを得た、数少ない――否、唯一の人間だ。
ルバート・アロス:元々大した服を着ていなかったせいか(これは異文化への偏見か?)、彼女はもう、ほとんど薄布のような寝着しか付けていない。
ルバート・アロス:彼女を起こさないように、赤い髪を梳く。
セリ=ティンカー:さらさらとあなたの指が抵抗なく流れる。
セリ=ティンカー:髪にさえほのかな熱が籠っている。
セリ=ティンカー:あなたの寝起きで冷えた指を、少女の熱が温める。
ルバート・アロス:耳元に、口を近づけて囁く。ほとんど口づけするような距離。「…………セリ」
セリ=ティンカー:「……、ん……」
ルバート・アロス:耳の裏側に、口づける。
セリ=ティンカー:「…はっぅ、ひぁ………」
ルバート・アロス:甘い果実のような声。これを、つい、求めすぎてしまう。
セリ=ティンカー:耳は結構敏感なのだと彼女が君にこぼしていた。身を引きつらせ、君に抱き着く力を強くする。
セリ=ティンカー:細い腕が深く絡み、胸元の果実が柔らかく君の胸で潰れる。
セリ=ティンカー:ちょうど片手の平に包むと、少し余る程度の掴みやすい大きさ。腰元も深く括れて、きみのそれと触れる。
ルバート・アロス:……きっかけは何だったか。寒空で毛布が足りない日だったか。右目の魔力が安定しない時だったか。
ルバート・アロス:彼女が、……儚く掻き消えそうにしていた夜だっただろうか。
ルバート・アロス:「はあ。…………末期だな」
ルバート・アロス:最初の何回はほんとうにもういろいろと限界だったが。
ルバート・アロス:今は、ぎりぎり、余裕は見せられるようになっている。……きゅ、と強めに抱く。
セリ=ティンカー:「ん……えへへ……」目を閉じたまま、少女が笑う。
セリ=ティンカー:きみの身体に触れると、少女はどこか嬉しそうにする。寝ているときもだ。
ルバート・アロス:初めて出会ったときの、超然的な様子とはかけ離れた表情に。
ルバート・アロス:選択は間違っていなかったと思う。
ルバート・アロス:とはいえ。このまま甘い匂いに囚われていては、出られなくなってしまう
ルバート・アロス:春の妖精は、食虫植物めいた妖艶まで守備範囲なのだろうか。
ルバート・アロス:手を伸ばして。ベッドの横の櫛を取る。
ルバート・アロス:上体を起こすと、抱きついたままのセリもそれに続く。ベッドの端に、無造作に放り出された両足が目に入る。
ルバート・アロス:「セリ。起きなさい」
セリ=ティンカー:ぺたりと動かないまま、美しい曲線を見せている。
セリ=ティンカー:「……んん~………」
セリ=ティンカー:「………………」
セリ=ティンカー:「……………おはようの、やつ……」
ルバート・アロス:「…………」吐息一つ。
セリ=ティンカー:「……して?」薄く眼を開きながら。唇を少し開いて。
ルバート・アロス:頬をつかみ、少女の顔を上向かせて、啄むような口づけをする。
セリ=ティンカー:「ん、う……」此方も応えるように。唇をそっと触れ合わせる。
ルバート・アロス:彼女の肢体はバレリーナのように柔らかい。その体を、相手の力で曲げられるのを、好む。
セリ=ティンカー:「………えへへ……」
ルバート・アロス:「やめてくれ……」
ルバート・アロス:「摘みたくなる」
セリ=ティンカー:「えー………?」
セリ=ティンカー:「……いいのに……」本当に小さなこえだった。流石に恥ずかしいらしかったけれど、この距離ならその恥じらいも寧ろ。
ルバート・アロス:理性がドリルで削られるような音が、耳に響いた。幻聴である。
ルバート・アロス:歯科医ではないのだ。
セリ=ティンカー:花は誰かに摘まれるために咲く、なんて言葉がある。
セリ=ティンカー:嘘っぱちの、花の視点を無視したバカの言葉、と昔は聞きもしなかったけど。
セリ=ティンカー:「………ねー……?」
セリ=ティンカー:今の自分は、本当に摘まれたがっている。花のように、と美しさを喩えられた妖精が。
ルバート・アロス:薄布の下に男の手が滑り込む。
セリ=ティンカー:「あっ」期待をかなえられる事への声だった。「ひゃ、きゃ……」
セリ=ティンカー:抵抗はしない。寧ろ彼の手がより動かしやすくなるように、身体を動かしている。
ルバート・アロス:柔らかな体を、下から順に触っていく。昔から冷え性だった。体温の高い彼女にとって、一瞬で、背までぞくりと震わせるほどの。
セリ=ティンカー:寒さは敵だった。冷気は恐ろしいものだった。故郷ではそうだ。それは死の季節を思わせ、その恐れが妖魔さえ呼ぶほどに。
セリ=ティンカー:「も~……せんせの、えっち」
セリ=ティンカー:でも、彼の熱になるなら。あたしが冷たくなるのも、どこかぞくぞくした。
ルバート・アロス:昇ってきたその死の手が、彼女の心臓へと回り込む――――ぎりぎり寸前で止まる。
ルバート・アロス:いちばん柔らかな場所をふにゅりと掠めて、抜ける。
セリ=ティンカー:「んっ、く……掴んでいい、のに……」
ルバート・アロス:「本当に…………」
セリ=ティンカー:頬は赤く染まり、瞳は情欲で濡れたままきみを見上げている。
ルバート・アロス:その浮かされた表情の、不意をうつように、薄布の上から、皺を作りながら、ぎゅうっと両手で望むようにする。
ルバート・アロス:蕾を開くように、先端を指先で強く擦った。
セリ=ティンカー:「ひっ、あぁっ」
セリ=ティンカー:ぴん、と背筋が伸びる。
セリ=ティンカー:きみがそうなるまで育てた箇所だった。少女の身体は弱点だらけだ。
セリ=ティンカー:少なくとも、きみにとっては。
セリ=ティンカー:「う、うう~~~………」
ルバート・アロス:布越しは"いや"なのだと、何度も聞いている。「…………これくらいにしろ。する」
セリ=ティンカー:「せんせのばか!えっち!もっとやさしくして!」
ルバート・アロス:「やさしくするとすぐ足りないと………いやなんでもないです」
セリ=ティンカー:「あたしが寝ぼけてたの悪いけど~~~っ……!」
セリ=ティンカー:「………………ばか!!!!」
セリ=ティンカー:「女の子のそういうところはでりけーとなの!」
ルバート・アロス:「分った、分った。悪かった……」罵倒を甘んじて受け入れると、ようやく体を離せる。
セリ=ティンカー:「………」
ルバート・アロス:食べられているのがどちらか、分かったものではなかった。
セリ=ティンカー:「……むぅ」本当は離れたくないな、といつも思う。
セリ=ティンカー:でもそれだとダメなので、頑張って離れるのだ。それがわかってないのだ。
セリ=ティンカー:「せんせはもっとあたしのこと考えるべきだと思います」
ルバート・アロス:瓶に入った水を二つ取り出して、一つをセリに渡す。
セリ=ティンカー:「ん~~……」受け取る。ゆっくりと口に含み、味わいながら飲み干してゆく。
ルバート・アロス:「かなり考えているつもりなんだが」
セリ=ティンカー:「たりないのです」
ルバート・アロス:「僕を朝から晩まで君漬けにするつもりか」
セリ=ティンカー:「でも、せんせは他に色々考える事があるから、がまんしてるの」
セリ=ティンカー:「む~~~……!」ぽかぽか君の胸を殴る。
ルバート・アロス:「そういう僕でも、君は満足か。違うだろう」
セリ=ティンカー:「ちがいますけど~~~……!」
セリ=ティンカー:「乙女心は複雑なの!」
ルバート・アロス:女性の扱いなど、元の世界でも分らなかった。勉強漬けだったのだ。
ルバート・アロス:「はいはい。分っていくように努力する」
セリ=ティンカー:男性との、恋の仕方なんて知らない。ずっと、春告精としてするべきことがあったから。
セリ=ティンカー:聞きかじりの猿真似ばかり。本当にこれでいいのかなんてわからない。
セリ=ティンカー:「やくそくですからね!」
ルバート・アロス:「約束するよ。違えたことはない」
セリ=ティンカー:「ずっとそばにいてくださいね!」
ルバート・アロス:「君が許してくれる限りはずっとそのつもりだ」
ルバート・アロス:「君の体が治ったあともね」
セリ=ティンカー:「…………~~~~~~っ」殴る力が強くなる。
セリ=ティンカー:「当然ですっ!!!」
ルバート・アロス:「僕の気持ちも汲んでくれないか」
セリ=ティンカー:「えっ」
ルバート・アロス:「君に溺れないようにするだけで、必死なんだ」
セリ=ティンカー:「ま、まさかせんせほかに好きな…………な、なんだ。良かった」
セリ=ティンカー:「あたしはいつでもいいから、大丈夫ですっ」
ルバート・アロス:「食虫花サラセニア……………」
セリ=ティンカー:「あたしはヒルガオですけどっ!?!?」
ルバート・アロス:呆れ気味に肩を竦める。
セリ=ティンカー:ヒルガオはヒルガオで、絆だとか縁だとか、更には情事なんて花言葉もあったりするらしい。
セリ=ティンカー:「ともあれ、こほんっ」
セリ=ティンカー:「花園に、ヒルガオあたしの花が咲いてました」
ルバート・アロス:「今日は訪問診療がいくつかと、薬の買い出しと……」
ルバート・アロス:「ああ。……それだ」
ルバート・アロス:「もうすぐ、ステラナイツの戦いがある」
セリ=ティンカー:「本当、何とかしないとですね。がんばらないと……」手のひらをぐ、と何度か握っては開く。
ルバート・アロス:「いつもだが、医者を戦わせるな、女神め」
ルバート・アロス:「だが、僕たちはあの領域だと最強だ」
ルバート・アロス:「朽ちることのない花園で、きみに勝てる相手がいるものか」
セリ=ティンカー:「ええ。あたしは負けません」
セリ=ティンカー:「羽根を疑似的にでも取り戻したなら――あたしは、元居た世界でも最強の一人だったんですから」
ルバート・アロス:ステラバトルにおいて、ルバートは彼女の羽根になる。
ルバート・アロス:それはある意味で、こちらの世界の相似ではある。彼女の羽根を貰って、自分は生き延びたのだから。
ルバート・アロス:「いつか、あの世界のように、君が空を飛べるように望むよ」
セリ=ティンカー:「いつかじゃなくて、絶対に来る未来です」
セリ=ティンカー:「だって、あたしは……あなたの患者なんですもの!」
ルバート・アロス:「ああ。……僕の、僕だけのクランケ」
ルバート・アロス:「僕は、君を治療する、そのためだけの医師で良い」
セリ=ティンカー:彼の胸に耳を付ける。彼の心臓の鼓動を聴きながら。
セリ=ティンカー:「それが終わったら、あたしと――」
セリ=ティンカー:「………これは、終わったあと言います!」
セリ=ティンカー:途中から頬を真っ赤にして。
ルバート・アロス:「…………うん」
ルバート・アロス:小さな顔を抱きしめて、目を閉じる。
ルバート・アロス:「もうすぐだよ」
ルバート・アロス:そうだ。
ルバート・アロス:君を必要なぎせいにする世界も。君を不要なおいだす世界も、どちらも要らない。
ルバート・アロス:足が、羽根が治ったら、その翼で、新しい世界に行こう。
ルバート・アロス:誰よりも、高く、遠い場所で。
ルバート・アロス:「どんな星よりも眩く輝く花を、僕に魅せてくれ」

GM:セリ=ティンカーのブーケを53増加(160 → 213)


【Interlude1:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート/イーレ・リュニック】

アレアテルナ:室内灯の薄い灯り。幸福な微睡みから目を覚ます。
アレアテルナ:ベッドの上で、少しだけ身じろぎをする。薄いシーツが、素肌の上をじかに滑る感触。
アレアテルナ:「……?」
アレアテルナ:普段と違う目覚めの姿に、寝ぼけた頭は違和感を覚えかけたが――
アレアテルナ:(ああ、そうか……)少し笑う。
アレアテルナ:第一層への訪問初日、深夜にも渡る過密なスケジュールを詰め込んだのは
アレアテルナ:翌日のこの日……いつ『その時』が訪れるか分からないステラバトルの当日を空けなければならなかったからだ。
イーレ・リュニック:普段との違いはそれだけではない。
イーレ・リュニック:尊きものであるアレアテルナの寝室に、もう一つ身動ぎする気配が存在している。
アレアテルナ:シーツを胸元に寄せて、身体を起こす。
アレアテルナ:「イーレ?」
アレアテルナ:自由な校風で知られる聖アージェティア学園の寮は、シトラ女学院の寮ほどには厳格ではない。
イーレ・リュニック:「っ」
アレアテルナ:とはいえ、女子の自室に男子が出入りすることなどは、通常は起こり得ないことだ……重要人物の護衛という名目でもなければ。
イーレ・リュニック:「おはようございま──おはよう、アレア」
イーレ・リュニック:「起こしてしま──ったか?」
イーレ・リュニック:ベッドの傍ら、音もなく抜け出したイーレが簡単な食事を用意している。
イーレ・リュニック:もちろん、外に出るわけにもいかないので、保存ができる類のものだ
アレアテルナ:「隣にいなくて」
アレアテルナ:「少し怖くなったのよ。もしかして、ふふ。逃げちゃったんじゃないかって……」
アレアテルナ:嘘だ。
アレアテルナ:イーレがその程度で怖気づくような男子ではないことは知っているし
アレアテルナ:こんな冗談を笑ってくれることだって知っている。
イーレ・リュニック:「不安にさせたか、ごめん」
イーレ・リュニック:事実、苦笑を返す。
イーレ・リュニック:謝罪の言葉は口馴染みが薄い。謝罪をせずに済むように、と普段は心がけているから。
イーレ・リュニック:「オレは逃げないよ」
アレアテルナ:「……ん」
イーレ・リュニック:「…………目が覚めた時、アレアの寝顔が目の前にあって」
イーレ・リュニック:「このままだと、嬉しくなりすぎてしまうから」
イーレ・リュニック:「ちょっと気を紛らわせてた」
アレアテルナ:「ふふふ。いつ決闘が始まるかわからないから――ずっと備えているつもりだったのに」
アレアテルナ:「夢中になりすぎちゃったね」
アレアテルナ:白い素足がシーツから出て、内履きだけを履く。
イーレ・リュニック:こちらは、質素な拵えのシャツ。普段とは違って、ラフにボタンを着崩してる。
イーレ・リュニック:無自覚にその仕草を眺めそうになって、自覚的に頭を小突く。
アレアテルナ:真っ白な背中を隠すように、新しい下着と、その上を纏っていく。
イーレ・リュニック:「それは仕方ない」
イーレ・リュニック:「なにせ、十年以上は待ち望んだ時間だったから」
アレアテルナ:「わたしもだよ」
アレアテルナ:「わたしは今、すごく幸せ。なんだってできそうな気がする……」
アレアテルナ:(――世界が滅んで、良かったことがあったなんて)
アレアテルナ:(本当は、思ってはいけないのだけど)
イーレ・リュニック:お互い、一言一言を噛みしめるような会話。
イーレ・リュニック:今が最後だからではないからこそ、時間と機会は限られていないからこそ
アレアテルナ:だけど、代わりに一つの世界を救うことができたなら
イーレ・リュニック:"必要"に縛られることのない会話を行っている。
アレアテルナ:こんな後ろめたい気持ちだって、誰かに許してもらえるだろうか。
イーレ・リュニック:「うん」
アレアテルナ:「ね、イーレ。一緒にご飯を食べましょう。……今日は、急がなくたっていいもの」
イーレ・リュニック:「そうだな」
イーレ・リュニック:アレアテルナが普段、休みのために仕事を詰め込むということはほとんどない。
イーレ・リュニック:それはペースを崩すということで、合間合間に休憩を取ることのほうが、よっぽど長期的な活動ができると知っているからだ。
イーレ・リュニック:「アレア」
イーレ・リュニック:「オレも、すごく幸せだ」
イーレ・リュニック:「君と一緒にいられて、とても嬉しい」
アレアテルナ:「ふふ、ふふふふふ……」
イーレ・リュニック:子供が思いを告げるように、素直な言葉を伝える。
アレアテルナ:「ここにいる間は、ずっとこうしましょうね」
アレアテルナ:イーレの用意した食事といっしょに、幸福を噛み締めている。
イーレ・リュニック:「うん。そうしよう」

アレアテルナ:夕刻。この日は結局、外に出ることはなかった。
アレアテルナ:片時もイーレの傍を離れるわけにはいかなかったし、離れたくなかった。
アレアテルナ:ステラバトル。愛することが力になるのだというなら、これほど相応しいコンディションはないはずだ。
アレアテルナ:「……イーレ」転送の兆しを感じ取る。
イーレ・リュニック:「あぁ、アレア」なればこそ、騎士としての精神に切り替えている。
イーレ・リュニック:「そろそろみたいだ」
アレアテルナ:呼吸を整え、古歌の詠唱の開始を待つ。
イーレ・リュニック:騎士とは戦うものであり、戦うものは戦場にあり、戦場とは騒音の中にある。
イーレ・リュニック:故にその声は、あらゆる戦場に届くように朗々と高く、通るように発することが出来る。
イーレ・リュニック:「石火は鱗粉。野原は黒煤。カルセドニーは鉄の山」
アレアテルナ:「すべて、にわかな真珠母の火。閃き、光り、ともに消える」
イーレ・リュニック:「私達のたましいは、故に等しい」
アレアテルナ:「私達のたましいは、故に等しい」
アレアテルナ:テアトに伝わる古歌の一節である。王族の伝承などではない。詠み人も知られていない。
アレアテルナ:だが、尊き王と、火と煤に塗れる民が等しいのだとするこの歌を、アレアテルナは好んだ。
アレアテルナ:「……っ、あ……!」
アレアテルナ:身体を折り曲げ、か細い声を漏らす。
アレアテルナ:その背が裂けたように見える――白く、大きな蝶の羽が開いて
アレアテルナ:アレアテルナの体を包む。それだけではなく……
アレアテルナ:羽根のドレスの上から、さらに四肢を覆う甲冑のように、黄金色の装甲が纏われていく。
アレアテルナ:それは怪異の力を破裂させてしまわないよう支える、新たな殻のようでもある。
アレアテルナ:剣がある。複雑な機構が噛み合った、広い刃の機械大剣だ。
アレアテルナ:「わたし達なら、きっと勝てるわ。イーレ」
アレアテルナ:「どうか、力を貸してね」


【Interlude2:テトラ・トライア/香取陽吾】

香取陽吾:君たち二人は、香取陽吾の部屋に来ていた。
香取陽吾:大したものはあまりない賃貸だ。幾つかのメタルラックに、着替え用なのか服が吊るされている横、トレーニング用だろう器具や模擬ナイフなどが置かれている。
香取陽吾:本棚の内容は、警察の書類や、様々な尾行術を始めコミュニケーションのもの、各種武術、それに似合わないが、幾つかの漫画シリーズ。
香取陽吾:部屋自体は、基本的に置くものの場所を決めてそこに置く、という基本は出来ている。どこか雑ではあったが。
香取陽吾:あまり面白いものはない、と本人は言っていた。
香取陽吾:本当に危ないものは、基本職場にあるか、それかそれらだけはより丁寧に隠されているのだろう。
テトラ・トライア:その言葉を聴いていないかのように、一つ一つを眺めている。
テトラ・トライア:並んでいる漫画のシリーズなどは、いつだったか勧められて履修したものもある。
香取陽吾:「…そんなジーッと見るようなものじゃないだろ?」少し居心地悪そうに。その漫画の中には、君に勧める前に自分で確かめたのか、少女漫画などもある。
テトラ・トライア:「うん。でも、こうしてみると意外……」
テトラ・トライア:「でもない、かな。香取くんらしいお部屋」
香取陽吾:「ぼくらしいて…そうかい?そんな特色あるようには感じないけど…」
テトラ・トライア:お家にお邪魔する礼儀として、道中の売店で購入したジュースをビニール袋から取り出す。
テトラ・トライア:家人と一緒に買って戻るのは手土産と言えるかどうか。
テトラ・トライア:「うん、でも、香取くんって良く私に普通の女の子を説くじゃない」
テトラ・トライア:「だから、訓練だけのお部屋じゃないだろうなー、と思ってた」
テトラ・トライア:借りた漫画の続編や、見たことない器具を勝手に触っている。
香取陽吾:「まあ、同僚とか職場のおばちゃんとかに聞いたりして、こういうものなのか…?と手探りではあったんだけど…」
香取陽吾:異性の事は、やはりわからないものだ。彼女が浮いているというなら、自分が伝えきれなかったものもあるのかもしれない。
香取陽吾:「あー、それ結構重たいから気をつけてな」
テトラ・トライア:「わかってるよぉ」同じ見た目で中身が違うのか、負荷が異なる器具を持ち比べている
香取陽吾:少しソワソワしている。自室にあまり人を呼ばないし、それがこの少女だ、というのもなかなか慣れない。
香取陽吾:「筋トレやるの…?あまりやりすぎると成長に悪いから、こう…」
テトラ・トライア:「しないからっ」
テトラ・トライア:「お呼ばれしてトレーニングするほど、非常識じゃないもの」
香取陽吾:「お、おう。いや、やるなら教えるかと思っただけ」
香取陽吾:「そ、そうなのか……」結構出張ってトレーニングのアドバイスとかを現役時代は貰いに行ってた。
テトラ・トライア:「?」なぜこの人は言葉に詰まっているのだろう。
テトラ・トライア:「ほら、ここにも書いてある。」
テトラ・トライア:本棚の漫画の3巻を取り出し、特定のコマを指し示す。
香取陽吾:「ええ……?随分読み込んでるね……」
テトラ・トライア:アクティブなスポーティキャラが周りを巻き込んでトレーニングする描写だ。
香取陽吾:「あー……」すこしばかり、クスリと笑う。
テトラ・トライア:『教科書』として与えられた書物の暗記から始めていたため、内容は覚えている。
テトラ・トライア:なぜ成績に生かされないのか? ──人の覚えることは、漫画1冊より多いからだ。
テトラ・トライア:「あ、笑った」
香取陽吾:別段ちょっとした参考例になれば、と思ったのだ。こうしてみれば、そうして右往左往していた時のことを思い出せる。
香取陽吾:「いや、どういうのがいいかって色々本屋梯子したりドタバタしたのを思い出してさ。同僚からいらない漫画とか貰ったり…」
香取陽吾:「楽しんでくれて、役に立ったなら、よかったって思ったんだ」柔らかく笑った。
テトラ・トライア:「うん。香取くんの、おかげ」
テトラ・トライア:「ね、香取くん」
香取陽吾:「そうかい。ぼくからすれば…うん?」
テトラ・トライア:「今の私って、出会った頃より」
テトラ・トライア:「ちゃんと、普通?」
香取陽吾:少し、眩しいものを見るように眼を細めた。
香取陽吾:「ああ」
香取陽吾:「ちゃんと、よくいる…そういうには、可愛い女の子さ」
テトラ・トライア:「ん。………えへへ」
テトラ・トライア:「なんだろ。褒められるの、すごくうれしい」
香取陽吾:「認められるっていうのは、いいコトさ」
香取陽吾:「褒めるっていうのは、それを誰かにすることだ。……それをして、受け止めて貰えてる、っていうのも感慨があるね」
テトラ・トライア:「そうなの?」
テトラ・トライア:「褒められたほうが嬉しいだけかと思ってた」
香取陽吾:「ああ」片膝だけ立てて、座る。「別に、誰なのかも分からないしどういうことしてきたのか分からない人に認められても、それはそれで嬉しいだろうけど」
香取陽吾:「ちゃんと、相手がどんな人か知ってる人同士でそれが出来てる、っていうのはすごい事なんだよ」
香取陽吾:そっと少女の手を取る。
テトラ・トライア:その隣に座っている。スカートが皺にならないように手を添えながら、足を横に流す。
テトラ・トライア:このような"女の子らしさ"を意識しなくても出来るようになったのは、最近だった気がする。
香取陽吾:色々と学んで、堅さもありながら。やはりどこか柔らかくて、細い手だった。
テトラ・トライア:「ん」
香取陽吾:「ぼくはテトラちゃんが頑張ってるのを知ってるから。だから、そういう子に受け止めて貰えたのは嬉しいのさ」
テトラ・トライア:小さな手。重ねた香取の手にすっぽりと包まれる
テトラ・トライア:「そっか、そうなんだ」
テトラ・トライア:「それじゃ、これからもっと喜ばせてあげるね」
香取陽吾:「そうかい?それは楽しみだな」
香取陽吾:くすりと笑って。
テトラ・トライア:「うん、だから、目を離しちゃダメ」
テトラ・トライア:「約束ね」
テトラ・トライア:重ねられた手に、小指を絡めていく。
香取陽吾:「…ホント、爪とかの手入れもしっかりできるよになっちゃって」
香取陽吾:此方も、そっと絡める。
テトラ・トライア:「いいの」
テトラ・トライア:「校則は破ってないから」
香取陽吾:苦笑して。「あまり付け爪とかはやりすぎないようにね。実戦の時に困る……ま、分かってるか」
テトラ・トライア:「前に見た漫画の、付け爪に毒を塗るのって、本当にあるのかな……」
テトラ・トライア:──チリリ、と首筋にわすかに冷たさを感じる気配。
テトラ・トライア:これからなにかが起こる、という直感。
香取陽吾:「事例集見るかい?ああいう手口はあるよ」
テトラ・トライア:転移の気配だ。
テトラ・トライア:「うん」
テトラ・トライア:「帰ってきたら、見るね」
香取陽吾:「……やれやれ」
香取陽吾:「ああ。帰ってきてから、だ」
香取陽吾:きみは帰ってくる。つまり、勝ってくるのだと。
香取陽吾:そう言って、つい無意識に。
香取陽吾:深く少女を抱きしめる。
香取陽吾:「……傷からは守ってあげるけど、戦う恐怖は鎧を付けようが防げない」
テトラ・トライア:「!」丸い瞳をことさら丸くする。
香取陽吾:「--気を付けてね」
テトラ・トライア:「うん」そ、と抱きしめる腕に手を添える。
香取陽吾:少女の柔らかい感触と、その熱を刻む。これは、寧ろ自分が不安だったのかもしれないな、と想い。
テトラ・トライア:「帰って来るまでが遠足、ね?」
香取陽吾:「ふ」
香取陽吾:「これなら大丈夫そうだ」そう言って、身を離す。
テトラ・トライア:自分の内側からの鼓動が伝わってはしないか、と思い、言葉を平静に保つ
テトラ・トライア:「あっ………」
テトラ・トライア:もたれ掛かりそうな姿勢を戻す。
テトラ・トライア:「こほん」
テトラ・トライア:「……言います」正座。
香取陽吾:「うん。では、行こうか」
テトラ・トライア:手を胸の前に、目を閉じて唇を開く。
テトラ・トライア:「彼方をちかた繁木しげきもとを 燒鎌󠄁やきがま敏鎌󠄁とがまちて」
香取陽吾:「”打ちはらふ事の如く る罪は在らじと”」
テトラ・トライア:「はらたまきよたまふ」
香取陽吾:「”はらたまきよたまふ”--」
香取陽吾:その言葉と共に、香取陽吾の身体が光へ溶け、君の身体を覆い始める。
テトラ・トライア:祈りのように組んだ両手から、ほどけた光が包み込む。
テトラ・トライア:左手の小指だけを立てて、約束の指切りのようにくるりと糸が巻き付いていく。
テトラ・トライア:制服の上着もスカートも、光と同化するように巻き込まれて。
テトラ・トライア:シルエットは波打つように袖の広く、丈の長いものへと変わっていく。
テトラ・トライア:十字を切り神の威光を示す信徒ではなく、九字にて穢れを祓う清浄の御巫に似ていた
テトラ・トライア:白と赤、そして優しく包み込む薄緑の神聖衣装。
テトラ・トライア:その手に握られるのは、剣と言うには短く、ナイフと呼ぶには細く長い儀式刀。

テトラ・トライア:「それじゃあいこっか、香取くん」
テトラ・トライア:鞘に入った刀を指揮棒のように掲げる。
テトラ・トライア:「静粛に、突入」
テトラ・トライア:特殊部隊の掛け声とともに、その姿がかき消えた。


【Interlude3:(諏訪月)陶花/白鷺達一】

諏訪月 陶花:――――――『第零邸 水月の間』
諏訪月 陶花:そう刻まれた門が、斜めに傾いで突き立っている。
諏訪月 陶花:二層の端。人気の無い、小さな森の中。漂流してきた諏訪月の階層の一つを、あなたたちは訪れている。
諏訪月 陶花:ここを訪れるのは、何度目かだった。ステラバトルの度に、ここに来ている。
諏訪月 陶花:この位置からでなければ、あなたたちは花園へと向かえなかった。――白砂作りの庭の先に、湖が広がっている。
諏訪月 陶花:「白鷺さま。……代わり映えがなく、退屈ですか?」
白鷺達一:「なあ……もっと、ちゃんとした移動手段整備できないのか!?」
白鷺達一:「毎回時間かかって仕方がないぞ……!」
白鷺達一:大した距離は歩いていないはずなのだが、微妙に息が上がっている。
諏訪月 陶花:「そうですね。森までなら、車で来られるのですが……ここは神聖な地ですので」
諏訪月 陶花:由来について、これまできちんと説明したことはない。
諏訪月 陶花:白鷺達一はステラバトルに興味が薄い。半ば流れに巻き込むような形で、今まで戦ってきていた。
白鷺達一:「……言いたいことはあるが」
白鷺達一:「別に、何がなんでも通したいわけじゃない。俺がその気ならもうやってるからな」
諏訪月 陶花:「ふふ。流石です」
白鷺達一:「お前は何でも溜め込みすぎる奴だが――」ポケットに手を入れて、湖を眺める。
白鷺達一:「バカな伝承や迷信だけでこんな真似をするような女じゃない」
諏訪月 陶花:「……はい。ありがとうございます」枯山水のような湖を前に。陶花は来ていたコートを脱ぐと、足下に丁寧に畳む。
白鷺達一:徹底した俗物である白鷺達一の世界観と、このステラバトルの真実が相容れないのは明らかだ。
諏訪月 陶花:中に着ていたのは、滝行でもするかのような、白い着物――行衣であった。
白鷺達一:だがそれでも、多忙を極める中で、この戦いを跳ね除けたことはない。――最初の一度は、流石に驚いたが。
諏訪月 陶花:靴をゆるやかに外す。「白鷺さまは。もし願いが叶うとしたら、何を願いますか?」
白鷺達一:「世界」
白鷺達一:「この世界全てを買う。俺はそのために行動しているつもりだ」
白鷺達一:「世界が滅んだことを、お前ら諏訪月がどう解釈しようが自由だが――」
白鷺達一:「俺の考えでは、その時に人間全員が結束できなかったからだ。経済と名声で、俺がそれをやってみせる」
諏訪月 陶花:「世界を、取り戻すと?」 目を丸くする
白鷺達一:「元通りにはならないだろうがな」少し自嘲気味に笑う。
白鷺達一:「お前は?」
白鷺達一:「お前にだって、願いがあるんじゃないのか?」
諏訪月 陶花:「…………」
諏訪月 陶花:「願い。叶えたい願いがあるから、ステラナイトとなる」
諏訪月 陶花:「わたしは……死んだ家族のためにと、生き残った皆のためにと、そればかりで」
諏訪月 陶花:「自分の、心からの願いというものが何なのか……分りません」
白鷺達一:「じゃあ……矛盾してるじゃないか」
白鷺達一:「願いがあるからステラナイトとやらになるんだろ」
諏訪月 陶花:池の中に踏み出す。裸足。
諏訪月 陶花:「順序が、逆なのかも」
諏訪月 陶花:「願いが欲しかったから……ステラナイトになった、なんて」
諏訪月 陶花:「可能だと思いますか?」薄く笑う。
白鷺達一:「俺に聞くなよ」諏訪月で分からなければ、本当に分からないことだろう。
諏訪月 陶花:「……そうですね。けれど」
諏訪月 陶花:「今、思い付きました」
諏訪月 陶花:「わたしは、……白鷺さまが買い上げた世界を、生きてみたい」
白鷺達一:「……」
白鷺達一:「……それがいいのか?」
諏訪月 陶花:「あなたが買い戻した世界で、わたしは自分を取り戻す」
諏訪月 陶花:ぴちゃりと、水飛沫が揺れた。
諏訪月 陶花:振り向く。
白鷺達一:「それなら、何が何でも世界を支配しなきゃならないな」
諏訪月 陶花:「ええ。こんな、些細なことに予定を乱されることなく」
諏訪月 陶花:「何に憚ることもなく、――あなたを愛したいのです」
白鷺達一:「それは。それが……」
白鷺達一:足元を見下ろす。無意識に、自分も池に踏み込んでいた。
白鷺達一:魔性のような陶花の魅力に惹かれたのか。彼女が変わってしまう時はいつも、この世のものとは思えない光景だ。
白鷺達一:……彼女がそのまま向こう側に消えてしまうかもしれないなら、手を取って引き戻さなければいけないのではないか。
白鷺達一:「いいんだよ」
白鷺達一:「お前は意思が固くて、俺よりも賢いんだろうが、何度も言ってやる」
白鷺達一:「たかが17歳のガキが……何の戦いにも勝てなくたって、願いを決めていいだろ」
白鷺達一:「どんな世界でだって生きてていいに決まってるだろうが。法律でもそう言ってるぞ!」
白鷺達一:「それに……」
白鷺達一:「誰かを愛したって、いいだろ」
諏訪月 陶花:「…………」少女は笑った。笑おうとした。染みついた習慣が、大きく表情を崩すことができない。
諏訪月 陶花:「白鷺さま。あなたほどやさしいひとを、わたしは、他に知りません」くしゃりと、泣きそうな顔になった。
諏訪月 陶花:膝を落とす。池の浅瀬に、三つ指をつく。波は立たない。少女が、湖に同化する。
諏訪月 陶花:『――――申し上げます。申し上げます。旦那さま』
諏訪月 陶花:『あれは、酷い。酷い。はい。恐ろしいものです。叫び立てるものです。ああ。我慢ならない。生かしておいてはならない』
諏訪月 陶花:『はい、……はい。落ちついて申し上げます。あのものを、生かして置いてはなりません。この世すべての仇なのです』
諏訪月 陶花:『はい、何もかも、すっかり、全部、差し上げます。このためになら、何もかも、わたしのもてるもの全て』
諏訪月 陶花:『わたしは、あれの居所を知っています。すぐに御案内申します。ずたずたに切りさいなんで、殺さなければなりません――――――』
白鷺達一:……駆り立てられるような、凄絶な詠唱だと思う。
白鷺達一:他はどうなのだろう。本当にこんなものが、正しい戦いのための儀式なのだろうか。
白鷺達一:戦うべき『あれ』がどんな存在であるのかも、白鷺達一は知らない。
白鷺達一:だが。
白鷺達一:「殺せ」
白鷺達一:「ブチ殺してやれ」
白鷺達一何も知らない、、、、、、自分なら、断言してやれる。
白鷺達一:妻が、陶花がそこまで言うのなら、邪悪なのだろう。『全部悪い』ものなのだろう。
白鷺達一:例えそいつにどんな苦悩が、事情が、正義があったとしても。
白鷺達一:そいつの親が泣いてそいつを庇ったとしても。
白鷺達一:(陶花を、そんな風に泣かせるやつは)
白鷺達一:「――俺は、、ブチ殺してやる」
諏訪月 陶花:ごう、と水が逆巻く。
諏訪月 陶花:『ああ。ありがとうございます。ありがとうございます。我らの誓いをお聞き届け下さった』
諏訪月 陶花:『かつて、銀貨三十枚で神の子は売り渡された』
諏訪月 陶花:『あなたならば出来ると信じるのです。人も、獣の、森も海も空も大地も、魚も鳥も石も剣も毒も――妖も、霊も、神すらも喰らう』
諏訪月 陶花:『口にも出せない、叫喚roar恐怖terrorのないまぜのものを』
諏訪月 陶花:『あなたならば、殺してしまえると、信じるのです。――――わたしは、諏訪月。諏訪月陶花』
諏訪月 陶花:大水が二人を呑み込んだ。
諏訪月 陶花:細く薄い手が、飛沫の中で伸びる。『お教えください。旦那様。そのお名前を』
白鷺達一:「――俺の、名前は」もう一つの手が
白鷺達一:細い手を繋ぎ止めるように握る。
白鷺達一:「白鷺達一!忘れるな!」
白鷺達一:「忘れずに、帰ってこい!!」
諏訪月 陶花:「―――――――はい」
諏訪月 陶花:大水に呑まれて、男の姿が消える。
諏訪月 陶花:代わりに現れたのは、一つの武器。その石突から、長い、無限に逆巻くような鎖が伸びる大薙刀であった。
諏訪月 陶花:細い身体は、湖面をそのまま纏ったような、薄青に輝く、貞淑な振り袖に身を包む。
諏訪月 陶花:「………」きゅう、と薙刀を胸の内に抱え込む。鎖が、少女を護るように僅かに浮いて体を囲い、旋回する。
諏訪月 陶花:「いってきます。あなた」


【Interlude4:セリ=ティンカー/ルバート・アロス】

GM:アーセルトレイ最上層の中心部には、誰も立ち入らぬ美しい大庭園がある。
GM:その存在感故に代名詞がそのまま名前になったかのように、フラワーガーデンと呼ばれている。
GM:真実を知る者は、その地に別の名があることを知っている。願いの決闘場フラワーガーデンと。
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートは、一足早くそこに到達していた。
アレアテルナ:ステラドレスを纏った姿は、広大な花の庭園に導かれた、白と金色の大きな蝶のようにも見える。
アレアテルナ:(……ステラナイト達が来る)
諏訪月 陶花:突如、巨大な泡が少し離れた位置に生まれ、
諏訪月 陶花:それが弾けると共に、水を纏った乙女が地面に降り立つ。
アレアテルナ:「……えっ」
アレアテルナ:「トウカさんじゃないですか」
諏訪月 陶花:緊張した面持ちだ。戦うための姿とはいえ、彼女自身は全く心得はない。
諏訪月 陶花:「…………アレアさま?」
アレアテルナ:ステラナイトとして一つの戦いに共に選び出されるのは始めてのことだ。正体もたった今知った。
諏訪月 陶花:目を丸くして驚く。足下の高下駄がカランコロンと鳴った。薙刀の柄から伸びた鎖が、絶え間なく周囲を旋回している。
諏訪月 陶花:「あなたさまも、ステラナイトだったのですね」
アレアテルナ:「……わたし達が思ったより、騎士の数って多いのかもしれませんね」困ったように笑う。事実困っている。
アレアテルナ:(トウカさんの前で、情けない姿を見せてしまわないようにしないと)
諏訪月 陶花:「そうですね。しかし、お互いに知られて、まずいことは……ないでしょう」
諏訪月 陶花:(シースはどなたなのでしょう)
アレアテルナ:「公務をわざわざ空けている理由を知られてしまいます」
アレアテルナ:「トウカさんに限って、困ることはないと思いますけれど」
諏訪月 陶花:アレアテルナが結婚を急がねばならない身の上なのは有名な話だ。しかしすでに、運命の相手ステラナイトがいるのならば。
諏訪月 陶花:「わたしも……学業や仕事がおそろかにならないよう気を付けております」
テトラ・トライア:「あっ」会話に交じるのは幼さを残した声。
テトラ・トライア:巫女装束の少女が、下駄音を立てずに現れている。
テトラ・トライア:「アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート殿下だ」
テトラ・トライア:「こんにちは」
テトラ・トライア:「前に授業でみました」お辞儀をする。
アレアテルナ:「嬉しいな。知っていてくれてありがとう」顔の横で小さく手を振る。
テトラ・トライア:その仕草を真似する。こうして普通の女の子をラーニングしてきた実績がある。
諏訪月 陶花:「……テトラ様? またご一緒になるとは思いませんでした」
アレアテルナ:もっとも、もう片手には身の丈程もある機械大剣を持っている。いくつもの歯車や刃で構成され、明らかな大重量だ。
テトラ・トライア:「それと、陶花ちゃん。こんにちは」
テトラ・トライア:「前に一緒だったね。あの時は助けてくれてありがとう」
テトラ・トライア:「知り合いが居て、嬉しい」
諏訪月 陶花:「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
諏訪月 陶花:「お二人とも、装束もたいへんお似合いです」微笑む。裏表のない、爛漫な笑顔は羨ましい。
テトラ・トライア:以前出会った時、お互いの衣装が似た傾向の意匠デザインであることで盛り上がった(テトラ目線)
テトラ・トライア:「うん。陶花ちゃんも、アレアテルナちゃんも綺麗」
アレアテルナ:「そうだね。トウカ達のドレスは旧ニホンの民族衣装がモデルかな」
テトラ・トライア:「なのかな? 私のは、かみさまに仕える衣装だって。」
諏訪月 陶花:赤白の巫女装束であるテトラに対し、陶花の服は流水をデザイン化したような薄青。華奢な体のラインを際立たせる細身。
アレアテルナ:「わたしも仕立ててもらいたくなっちゃったかも。仲良くできそうでよかった」
諏訪月 陶花:「仕立屋のコネがまだ残っているようでしたら、ご紹介致します。……ですが」
アレアテルナ:とはいえ、ステラバトルにおいて今まで味方間の人間関係に問題が生じた覚えはない。そうした要素も含めて女神が調整しているのだろう。
テトラ・トライア:「着てみたら教えてね」
アレアテルナ:例外があるとしたら……
テトラ・トライア:「他の人は、まだ来るのかな?」
ルバート・アロス:――――ビシ、と。空間に亀裂が生まれる。
ルバート・アロス:十字架が連なった亀裂であった。深い切り傷を、縫い上げた後のような。
ルバート・アロス:その中から、少女を抱えた男がゆっくりと降りてくる。
セリ=ティンカー:小声で目を閉じながら、異国の歌を歌っている。
セリ=ティンカー:「…Viens, enfantsおいで 恋人よla terre s'eveille大地は目覚め
セリ=ティンカー:「Le soleil rit au gazon vert!太陽が緑の芝に微笑みかける
セリ=ティンカー:「La fleur au calice entr'overt花はそのつぼみを半分開いて
セリ=ティンカー:「Recoit les baisers de l'abeille.ミツバチの口づけを受けている…」
セリ=ティンカー:フランスがグノー作曲、春の歌Chanson de printemps
セリ=ティンカー:「…あら?」
諏訪月 陶花:「……!」眼を見開く。先日の記憶が蘇る。
諏訪月 陶花:「やはり、セリさまと、お医者さま」
アレアテルナ:「――エクリプス」
セリ=ティンカー:「今回は、3人も相手がいるのかな…ちょっと辛いけど…」
セリ=ティンカー:「あらら。トウカちゃんじゃない。無事に帰れてたんだ…って、そこは良かったんだけど」少し寂しそうな微笑み。
セリ=ティンカー:「そっち側かあ。やだなあ」
ルバート・アロス:「エンブレイスだったか。やはり、あのとき、治療してやるべきだった」
テトラ・トライア:「……あの子達が、エクリプス?」
テトラ・トライア:「ロアテラに操られた人達……」
テトラ・トライア:複雑そうな目を向ける。
セリ=ティンカー:抱えられたまま、手を振る。ひどく明るく、柔らかなままに一見は見えた。
諏訪月 陶花:「はい。既に、ロアテラに魅入られています」エクリプス、エンブレイスに、言葉での説得は届かない。
諏訪月 陶花:それを嫌というほど知っている。「セリさま……」
テトラ・トライア:操られ、あるいは魅入られ、戦いに駆り立てられる者たち。
セリ=ティンカー:「どうしたの、トウカちゃん」
テトラ・トライア:その姿はまるで──(香取くんも、こんな気分だったのかしら)
セリ=ティンカー:「変に考えないでいこ?どっちでも辛くなるだけさ」
アレアテルナ:エクリプスと戦うのは、辛い。初めて対峙した時も、こんな悲しい存在はないと思ったほどだった。だが……
諏訪月 陶花:「……」怖じ気づく陶花の背を叩くように、鎖が臨戦態勢を取った。
アレアテルナ:剣を構えたまま、セリ達の一挙一動に警戒を続けている。
アレアテルナ:(――すさまじい)
セリ=ティンカー:「あ、シースさんはしっかりしてるねえ」
セリ=ティンカー:おかしくなった相手――少なくとも、セリからはそう見えている――でも、彼女はそう気遣うことができた。其れは普段の医院としての仕事もあったし、また同時に――
セリ=ティンカー:彼女は、春を告げる妖精として、冬に狂った同類たちを捕獲し、捕殺し、その冬を開けさせるものでもあったからだ。
アレアテルナ:魔法を識る階層の人間だからこそ分かる。彼女の魔性――あるいは純粋性は、明らかに、人のものではない。
セリ=ティンカー:「そろそろそこの…お姫様とかが怖いから。いこっか、せんせ?」
セリ=ティンカー:抱き着く医師に甘えるように、彼女が袖を引く。
ルバート・アロス:「ああ。……いつになく調子が良い。セリ、施術を開始する」
ルバート・アロス:少女を抱き直して、真正面から向き合う姿勢になる。
セリ=ティンカー:「うん。――行こう」すぅ、と少女が息を吸う。そうして、彼女から謡い始める。
セリ=ティンカー:「”あおのおうぎburle”」
ルバート・アロス:「――"ぎんのはね"」
セリ=ティンカー:「”はねのかけらarsye”」
ルバート・アロス:「――"いのちのはりは"」
セリ=ティンカー:「――”はるをつげるfrawr. frawrle”!」
ルバート・アロス:少女の、その存在証明のごとき詠唱に合わせて。
ルバート・アロス:男が、女に口づけをする。
セリ=ティンカー:それを、妖精/少女は微笑んで受けた。
ルバート・アロス:深く、重い。その体を丸ごと、与えるような口づけであった。
セリ=ティンカー:彼と彼女が混ざりあう。そんな風に感じられるような。
諏訪月 陶花:「………ぁ」
アレアテルナ:「……!」絶句している。
諏訪月 陶花:それが、ひどく、よくないものだと感じた。
テトラ・トライア:「あわ」
テトラ・トライア:戦闘において"敵"から目をそらさない。
諏訪月 陶花:少女の喉元に流れ落ちる涎すら、奇妙に遅い時間で、はっきりと見えてしまう。
テトラ・トライア:今更の基本と比してすら、どうしたものか、と困惑が勝つ。
諏訪月 陶花:半ば鎖を跳ね上げて、傍らのテトラの視線を遮った。
アレアテルナ:妨害は出来なかった。そんな発想すら浮かばない。
アレアテルナ:それは、アレアテルナの性格的な問題でもあったが、それ以上に……
アレアテルナ:(……愛し合っている)
諏訪月 陶花:そのくせ自分自身は、優しく純粋だった少女の、甘えたような艶めかしい動きから目をそらせない。
アレアテルナ:理解してしまっていたためでもある。眼前の二人が、どれだけ深い絆で結ばれているのか。
ルバート・アロス:……男の体が、少しずつ光の粒に分解されていく。
テトラ・トライア:陶花の妨害に対して視線を確保するべきだ。しかし、彼女の行動に害意がないことで、そのまま遮られ続ける。
テトラ・トライア:少なくとも、口づけとは──もっと、厳かで、特別にするものではないだろうか?
テトラ・トライア漫画借り物の知識との齟齬に、少なくない意識を持っていかれている
ルバート・アロス:それはセリの背後に収束し、半透明の……しかし銀の光をまとう、翼のようなものに置換されていく。
ルバート・アロス:同時にセリの片腕に、巨大な突撃槍のような、注射器のようなものが現れつつある。
ルバート・アロス:ようなもの、としか言えない。それに近く……同時に、それどころではないほどの力を宿していた。
ルバート・アロス:「ふ、うっ」 つぱ、と口づけが終わる。
セリ=ティンカー:「ふ、ぁ……」
ルバート・アロス:「頼むぞ。僕の妖精さん」最後に残った指が、少女の目元を撫でて、もろとも光に消えていった。
セリ=ティンカー:「ええ――見ていて、あたしの主治医さん?」
セリ=ティンカー:青く蒼いひかりが周囲を取り巻く。宇宙から見た地球の色のような――そんな色に、黒が混ざっている。
セリ=ティンカー:暗黒の色。宇宙の色が。
セリ=ティンカー:少女の姿が、光が解けて完全に変わってゆく。
セリ=ティンカー:白く緻密な装飾を編み上げるレースを持つドレスと、うっすらと蒼く染められた双対四枚の翼。
セリ=ティンカー:翼の一つ一つが鋭い刃物の如く磨き抜かれ、ひどく機械的な印象を与え。
セリ=ティンカー:白いドレスは体の線を出しているが、様々な医療器具――聴診器、注射器、メス、クリップなどをいつでも出せるような物入れが目を引いた。
セリ=ティンカー:セリ=ティンカーのステラドレス。
セリ=ティンカー:かつて彼女が持っていて、失った妖精としてのカタチ。それを含みながら、彼女のシースのシンボルを幾重にも孕んだ衣装だった。

セリ=ティンカー:「さあ――舞台も整えていきましょう」
セリ=ティンカー:「”ちかのきみゃく”。”みずのながれ”。”かわのみずち”」注射器めいたものに覆われた右腕を天に。左を地に伸ばして。謡うように口ずさむ。
セリ=ティンカー:それは、彼女が地下に突入し、星の核迄たどりつくための術の改変。
セリ=ティンカー:地脈と呼ばれるものがある。それは星のエネルギーラインを示し、またその膨大さから、別の名を――
セリ=ティンカー:「――”たいじゅのゆうぐれ”。――”アル・アルカ・べヌイ”ar.arka.bengnuih!」龍脈、という。
セリ=ティンカー:蒼に黒みを帯びた、宇宙的な色彩をした巨大な光の龍が花園の上空を舞っている。
セリ=ティンカー:――世界には膨大なエネルギーがある。それを、脈に沿って”召喚”した。
セリ=ティンカー:花園の封印を壊すための、そして彼女の世界を広げるための”舞台”魔術。
セリ=ティンカー:妖精の龍と共に、赤髪の蒼銀翼の妖精が、花園に舞う。
セリ=ティンカー:「さあ――――準備はいい?」
セリ=ティンカー:「我が名はセリ。セリ=ティンカー。ティンバーの春告精にして――」
セリ=ティンカー:「アロス医療所の、事務員兼看護師さんよ!」


【Climax:ステラバトル】

戦闘BGM
GM:ステラバトルを開始します。
GM:ステラナイツでは常に願いの決闘場という円形フィールドでの戦闘になり
GM:この配置が非常に重要なバトルになるのですが
GM:驚くべきことにこのフィールド初期配置、ボスもPCも好き放題に決める事が可能です
GM:1~6までのガーデン番号のどれかをまずボスが指定し、その上でPCが好きなガーデン番号に行くことが可能。
GM:なのでセリさんから好きなナンバーを言ってもらいましょう
セリ=ティンカー:5番を選択します。
GM:花の色と同じ青だ
アレアテルナ:アレアテルナですが、そういうことなら2を選びます
アレアテルナ:対角線から攻め込んだほうが強いスキルを持ってるので、この位置取りが攻守共に有利なのだ
GM:王女は黒い2番ガーデン。他のお二人はどうでしょうか?
テトラ・トライア:じゃあテトラはせっかくなのでこの黄色の4番に行くよ
GM:テトラちゃんも花の色と同じですね
テトラ・トライア:イメージカラーというわけです
GM:セリちゃんの射程で削り合いの気概だ
諏訪月 陶花:どうしよう
諏訪月 陶花:6番でいきましょう 包囲するぜ
テトラ・トライア:いくぞっ 鶴翼の陣だ

GM:では次に必要なのは舞台の宣言!
セリ=ティンカー:ひええ怖いぜ
セリ=ティンカー:使用している舞台は、基本ルールブックp222掲載”妖精の森”となります。
GM:1対3の不利を覆すフィールド効果をボスは持っています
GM:妖精……!
GM:まさにそのもののフィールドがありましたね
セリ=ティンカー:結構強いのでみんなみておくといいぞ
テトラ・トライア:No2の強制告白効果面白いな
テトラ・トライア:いたずら妖精パックの気配を感じる
GM:こんな効果あるんだ
GM:システム単位で気ぶらせたすぎだろこのTRPG
テトラ・トライア:愛するものを叫ばないと攻撃してくるEロイス 絆の物語だぜ
GM:次はステラナイトの行動順を決めます。
GM:なんとこのTRPG、イニシアチブという概念がなく
GM:先手で動きたい人はその希望通りに動くことが可能です
テトラ・トライア:すごい
GM:もちろんエネミーが一番先手を取るわけですが、1番~3番のどの手番で動きたいかは相談して決められるわけです
諏訪月 陶花:サポート型なので後半のほうがいいかな 四葉カウンターも溜めたいし
アレアテルナ:王女はどの手番でも問題ないはず。
諏訪月 陶花:みたいなことを主張できます
GM:そういうことです。テトラちゃんは何かご希望あります?
テトラ・トライア:なるほどね じゃあPCの2番手がいいかな
アレアテルナ:じゃあ私は王女らしく先陣を切るぞっ
テトラ・トライア:王女~!
セリ=ティンカー:きゃあ
GM:行動順はセリ→王女→テトラ→陶花です
諏訪月 陶花:OK!
GM:ではチャージ判定……の前に舞台のセットルーチン発動!セリさんお願いします
セリ=ティンカー:ラウンド1のセットルーチン、妖精龍の降臨が発動します。
セリ=ティンカー:華やかな森に、妖精の長たる巨大な龍が舞い降りる。この侵入者たちが、害ある者か見極めるために。
セリ=ティンカー:効果は、エネミーの耐久力を2点回復する、です。
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を-2減少(0 → 2)
GM:平和的な効果でよかった~
アレアテルナ:害あるものじゃないよ
テトラ・トライア:ふつーの女の子だよ
セリ=ティンカー:ふふん
諏訪月 陶花:こんな清楚な乙女達を捕まえて害だなんて…… GM:マップは凝ったの作らないので、今のところこれにしましょう
セリ=ティンカー:わ~~…ありがとうございます!
GM:それではお待ちかねチャージ判定のお時間。みなさんのキャラシートを見てください。
GM:「チャージダイス数」というものがあると思います。これに現在のラウンド数を足した数だけ、1d6を振ることが可能です
GM:ここで出た出目に対応するスキルがこのラウンドで使えるスキルになるのだ
諏訪月 陶花:最初の手札を引くターンというわけ
GM:例えばキャラシのチャージダイス数が「3」だったら、今回振れる数は2+1ラウンド目なので、3d6。
GM:「チャージ」という表現ですので、ここで出たスキルの全てを使いきらなくても次ラウンド以降に持ち越せます
テトラ・トライア:スキルのラウンド使用回がダイスで決まるというわけ
GM:逆に言えば、使いたいと思えばこの最初にチャージした数を全部使い切ることができます。3回行動とかも全然可能というわけです
テトラ・トライア:異能を使う化け物だと一気に負担が上がるようなことまで出来る!
諏訪月 陶花:いかにしてここで強いスキルの使用回数を増やし……どう爆発させるかというわけ
GM:さらにさらに、出たダイス目が気に入らなくともブーケを消費することでズルができます みんなスキル番号はこのプチラッキー前提で組んでるはず……

【ブーケの使い方】
1:プチラッキー(1回に付き3枚)
・誰かの行うチャージ判定直後、そのダイス一個の出目を増減する。(一個のダイスに対してのみ、複数回使用可能)

2:ダイスブースト(1回に付き4枚)
・アタック判定直前、アタック判定で振るダイスの個数を増やせる。
一回の判定につき3回まで使用可能。

3:リロール(1回につき5枚)
・チャージ判定、アタック判定の直後に、全てのダイスを振り直す。
1回の判定につき1回まで。

セリ=ティンカー:基本ルルブp132~133記載だよ!
GM:ありがとうございます嗣子さん
GM:まあ、なにはともあれまずはやってみましょう。ダイスの個数さえわかっていればプレイヤーの介入の余地のないところなので
GM:もちろん誰からチャージ振るとかもないです。エネミーも含めて、みんな一斉にチャージダイスを振ります。
セリ=ティンカー:ちなみにダイスbotは普段のdじゃなく、bで振ると合計されないので便利だよ。
諏訪月 陶花:いくぜ~~~運命のダイスロール!
セリ=ティンカー:4b6
StellarKnights : (4B6) → 3,5,5,5

セリ=ティンカー:ちょっと。
諏訪月 陶花:4b6
StellarKnights : (4B6) → 3,5,5,6

テトラ・トライア:3b6
StellarKnights : (3B6) → 1,2,6

アレアテルナ:3d6
StellarKnights : (3D6) → 12[6,4,2] → 12

テトラ・トライア:二人共仲いい出目だなぁ
テトラ・トライア:BとDで違うんだ 普段使わないダイスボット面白いなぁ
諏訪月 陶花:これは……プチラッキーを使うべきだな
GM:あ、合計値出さなくていいときって「b」で振るんだ
GM:へえ~、GMなのに全く知らなかった
テトラ・トライア:ほんとだ ダイスボットの説明に書いてある
GM:みんなダイス置き場から自分の出した出目を取っていってね
セリ=ティンカー:そう!ステラナイツだとbがべんりです
テトラ・トライア:たすかる~
GM:さすがプレイヤーでありながらエクリプスを任された嗣子さんだぜ
テトラ・トライア:ダイスをストックするためにGMが複数個の出目アイコンを用意してくれるなんて行き届いているぜ
諏訪月 陶花:269→266
諏訪月 陶花:プチラッキー! ブーケを3枚消費し、5のダイス目を1下げて、3,4,5,6のストレート目にするぜ
GM:え!?いきなり怖いよ陶花ちゃん
GM:陶花ちゃんの目が鋭くなった
セリ=ティンカー:凄い出目にしてきたな……
テトラ・トライア:気合が入っている
諏訪月 陶花:いや……
諏訪月 陶花:攻撃手段がないです(おい)
テトラ・トライア:こっちはいい感じにバラけてるしこれでよさそう
セリ=ティンカー:www
テトラ・トライア:華奢で清楚だから…
アレアテルナ:王女もプチラッキーを2回使いましょう。
アレアテルナ:ダイス2→3、ダイス6→5
諏訪月 陶花:あ、プチラッキーは
諏訪月 陶花:一回の判定につき……一つのダイスにしか使えないのでは?
GM:そ、そうだったのか!
セリ=ティンカー:実は…そう!
諏訪月 陶花:複数回使用可能というのは……一つのダイスの目をプラス1~3できるというわけ
テトラ・トライア:1個のダイスを増減できるけど…というわけね
セリ=ティンカー:一個のダイスに対して複数使う(1を3にする、とかは可能)という意味
テトラ・トライア:妖精の手と妖精の輪ということか…
諏訪月 陶花:まあ3つプラマイ1できるだけでもほぼチャージの意味がないもんな
GM:GMなのに完全に勘違いしていた……!なら、ダイス6→5だけにさせてもらいます。あとブーケ消費も正常にカウントされてなかったので、246が正しいです
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのブーケを-3増加(249 → 246)


【チャージダイス】
セリ[3,5,5,5]耐久+2◀
アレアテルナ[2,4,5]耐久16
テトラ[1,2,6]耐久14
陶花[3,4,5,6]耐久16

GM:ではアクションを開始していきましょう。エネミーのセリさんから。
セリ=ティンカー:はい!では予兆はエネミーターンはないので、
GM:エネミーターンには予兆は発生しません。ステラナイトが行動する際にはステージ効果として予兆が発生します。
セリ=ティンカー:予兆は舞台のアクションルーチンがそのステラナイトの行動後に発生するのですが、それがどういうものか?を説明するものです
GM:説明ありがとうございます
セリ=ティンカー:どういう効果が起こるのか合わせてうごけるというわけ
セリ=ティンカー:では、行動行きます!
GM:予兆の存在、意外とステラナイツでは忘れがちなので、今回は忘れずにいきたいです
セリ=ティンカー:まずダイスの5を使い、5:戦場の華ダンス・イン・ザ・カリステギアを発動。最初は陶花ちゃんにかな。
セリ=ティンカー:キャラクター1体に【アタック判定:〔2+現在のラウンド数〕ダイス】を行う。その後、あなたの耐久力を〔あなたと同じガーデンに存在するキャラクターの数〕点回復する。
諏訪月 陶花:同じガーデンに居なくて良かった……!
テトラ・トライア:よかった包囲網で
セリ=ティンカー:なので、同ガーデンにいる人がいないのでただ アタック判定3ダイスするだけの技です
GM:5が3個もあったから
GM:固まってたら大変だったわよ
テトラ・トライア:こわい
セリ=ティンカー:判定行くよ~!
セリ=ティンカー:3b6>=3
StellarKnights : (3B6>=3) → 2,2,3 → 成功数1

テトラ・トライア:誰に対してだろ
諏訪月 陶花:私の防御力は3……これを
セリ=ティンカー:哀しい出目…… 1ダメージです。
テトラ・トライア:書いてた
諏訪月 陶花:越えた分の出目がダメージになります  上振れ怖いね
諏訪月 陶花:HPが16→15に!
白鷺達一:痛いぞ
セリ=ティンカー:同じく5をもう一個使い、5:戦場の華ダンス・イン・ザ・カリステギア。今度はテトラちゃんへ。
テトラ・トライア:ぴゃー!
テトラ・トライア:防御力は4です
セリ=ティンカー:3b6>=4
StellarKnights : (3B6>=4) → 1,3,6 → 成功数1

アレアテルナ:なんてこと……私がガーデン2でぬくぬくしている間に
セリ=ティンカー:1個は通せた……
GM:防御4は相当硬いぜ
セリ=ティンカー:テトラちゃんに1点のダメージです!
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を1減少(14 → 13)
セリ=ティンカー:はあはあ 硬いなあ
セリ=ティンカー:で、最後の行動!
GM:耐久寄りの奴らばかりなんですよねなぜか……。
セリ=ティンカー:3を使用します。3:波状攻撃。
GM:一つだけ存在する3……一体なんだというのか
テトラ・トライア:清楚だから身持ちが固い
セリ=ティンカー:キャラクター1体に【アタック判定:5ダイス】を行い、その後貴方のいるガーデンに隣接するガーデンにいるステラナイト全員に【アタック判定:3ダイス】を行う。
テトラ・トライア:ウワーッ!
テトラ・トライア:遅れて衝撃がやってくる二連撃だ
セリ=ティンカー:ふたりに殴ったのでどっち最初に殴るかはダイスで決めます。1が陶花さん、2がテトラちゃん。
諏訪月 陶花:包囲してたせいで!!
セリ=ティンカー:1d2
StellarKnights : (1D2) → 2

テトラ・トライア:テトーッ!
セリ=ティンカー:テトラちゃんに最初の5ダイスいくよ!!
テトラ・トライア:この防御力を抜けられるかー!
セリ=ティンカー:5b6>=4
StellarKnights : (5B6>=4) → 1,1,2,4,6 → 成功数2

GM:あ!すいません処理の途中ですが
セリ=ティンカー:あっすみません ストップ!
GM:GMとしてチェックしたいことがあります
GM:p195にエクリプス補正が書かれていますが
GM:これによると耐久力はステラナイトの人数×5増加、チャージダイス数はステラナイトが3人の場合追加なし
GM:アタック判定ダイスは人数にかかわらず+1個とされています
テトラ・トライア:つよい!
セリ=ティンカー:ほ、ホントだ……!抜けてました
GM:セリさんはアタックダイス多分追加してませんね
セリ=ティンカー:すみません…!チェック漏れです!!!
テトラ・トライア:私にはさっきの分含めて追加であと2つかな
諏訪月 陶花:き、気付かなかった ふり足しましょう
テトラ・トライア:なぁに 弾けば一緒ですよ
GM:そうですね、陶花さんに1個、テトラちゃんに2個、今追加攻撃して
テトラ・トライア:ハハハ
GM:防御抜けた分の耐久力を減らせば同じでしょう
セリ=ティンカー:ありがとうございます……!
GM:今攻撃してもらった分はそのまま通してもらって大丈夫です
セリ=ティンカー:ではいきます まず陶花さんから。
セリ=ティンカー:1b6>=3 陶花さん
StellarKnights : (1B6>=3) → 5 → 成功数1

セリ=ティンカー:2b6>=4 テトラちゃん
StellarKnights : (2B6>=4) → 2,2 → 成功数0

テトラ・トライア:こうして斜めの角度で弾く
諏訪月 陶花:HP15→14
テトラ・トライア:では先程の2点ダメージ
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を2減少(13 → 11)
セリ=ティンカー:うわあん硬い
セリ=ティンカー:で、波状攻撃の二回目の攻撃行きます
GM:うおーっお願いします
セリ=ティンカー:これは纏めて振った方がいいかな?
GM:今後はできればアタック追加分もまとめて振ったほうがいいんじゃないでしょうか
テトラ・トライア:あ、2人に対してってことかな 同じ出目で防御力に寄ってダメージ変わるみたいな
諏訪月 陶花:四つダイスを振っていただき、ダメージはこっちで適用しましょう
セリ=ティンカー:確かに…!いきます
セリ=ティンカー:4b6
StellarKnights : (4B6) → 1,2,2,3

セリ=ティンカー:出目が悲しいのよ
諏訪月 陶花:1ダメージ!
諏訪月 陶花:14→13
諏訪月 陶花:出目はしらないね 様子見てるのかな
テトラ・トライア:0ダメージ!
セリ=ティンカー:行動はここまでです。5は一個残しておきます
諏訪月 陶花:ただ、なんのかので二人とも結構削られたな……!
テトラ・トライア:手数は偉大なり…


【チャージダイス】
セリ[5]耐久+2
アレアテルナ[2,4,5]耐久16◀
テトラ[1,2,6]耐久11
陶花[5,6]耐久13

アレアテルナ:みんな……わたしが仇を取るよ!
アレアテルナ:でもその前に予兆ですね 何が起こるのかな
セリ=ティンカー:アクションルーチンNo1.妖精龍の問いかけ「汝らは何者か」の発動の予兆です。
セリ=ティンカー:己の出自を正直に答えぬ者には妖精龍の毒なる鱗粉が浴びせられるだろう。 ということで
アレアテルナ:きゃあーっ
セリ=ティンカー:全てのステラナイトは自身が「基幹世界人」か異世界出身の「隣人ネイバー」かを確認する。
セリ=ティンカー:この効果が実行される時点で「ガーデン1、2、3にいない「基幹世界人」と、ガーデン4、5、6にいない「隣人ネイバー」は、[1ダイス]点のダメージを受ける。
セリ=ティンカー:これが、アレアテルナ殿下の行動後に発動します。
アレアテルナ:えーっじゃあわたし食らっちゃうじゃん 嫌なところで待ち受けおって……!
アレアテルナ:だがアタッカー不足気味の現状、攻撃しないわけにはいかない……!
テトラ・トライア:こっちも食らってしまうぜ こんなおあつらえ向き・効果がるとは
アレアテルナ:いや、違う
アレアテルナ:「いない」だから
諏訪月 陶花:そうですね
アレアテルナ:隣人なら大丈夫なのか よかった……。
諏訪月 陶花:わたしが喰らいます
アレアテルナ:では安心してわたしの手番で行動させていただきます。
テトラ・トライア:キャハァッ
セリ=ティンカー:どうぞ~!
アレアテルナ:この構成の中核スキル!No.5《閃光の突撃》でガーデン2から5に特攻します。
セリ=ティンカー:なにッ
アレアテルナ:これは移動距離に応じてアタック判定ダイスが増加するすぐれもの
アレアテルナ:【アタック判定:[1+移動したマス数]ダイス】ですので、最大値の4ダイスアタックだ
アレアテルナ:4b6>=3
StellarKnights : (4B6>=3) → 1,1,2,6 → 成功数1

アレアテルナ:うっ、よわい
セリ=ティンカー:痛いよ~
諏訪月 陶花:ふむ……では!
アレアテルナ:なにっ
セリ=ティンカー:なっなんだ
諏訪月 陶花:私はこのラウンド、サポートスキルしか引いていません
諏訪月 陶花:No.3『恋とは信仰にも似て』!
テトラ・トライア:陶花ちゃん!
諏訪月 陶花:防御力未満の出目すべてを振り直して下さい。そして私は四葉カウンターを1獲得する。
アレアテルナ:い……一体どんな効果だというのだ
テトラ・トライア:つっよ
アレアテルナ:つ、強すぎる
テトラ・トライア:オール妖精の手…
セリ=ティンカー:今回だと3個振り直しですね ひーん
テトラ・トライア:風鳴りのほうだな
アレアテルナ:3b6+1>=3
アレアテルナ:一度に出すのは無理か
アレアテルナ:3b6>=3
StellarKnights : (3B6>=3) → 3,3,6 → 成功数3

テトラ・トライア:合計じゃないからムリっぽい
セリ=ティンカー:マジ?
アレアテルナ:真実(マジ)?
テトラ・トライア:PERFECT…
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を4減少(2 → -2)
諏訪月 陶花:王女…………♡
アレアテルナ:成功数はこれに+1で4。全ヒットです……
テトラ・トライア:猛打賞!
セリ=ティンカー:いたすぎ!!
アレアテルナ:もうこれかませただけでこの構成の元取ったまである
アレアテルナ:だがわたしのアタックフェイズはまだ終了してないぜ
セリ=ティンカー:なんだとお
テトラ・トライア:ひょ?
アレアテルナ:No.4《撲滅の賦》。もちろん対照はセリさんです。
アレアテルナ:キャラクター1体に【アタック判定:3ダイス】を行う。このアタック判定でダメージを受けたキャラクターが次に行うアタック判定のダイスは1個減る。
セリ=ティンカー:ギャーッ折角の補正くんが!
アレアテルナ:次の一回の攻撃を弱体化させてもらう!これちゃんとわたしが覚えてないといけないですね
アレアテルナ:3b6>=3
StellarKnights : (3B6>=3) → 1,5,6 → 成功数2

アレアテルナ:ダイス目もいい!
セリ=ティンカー:皆出目いいなあ!入ります
諏訪月 陶花:め、めちゃくちゃ強い
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を2減少(-2 → -4)
アレアテルナ:王女強し!今残ってるNo.2はアタックスキルではないので、これでこちらの手番は終了です。
セリ=ティンカー:では予兆で示されたとおりのアクションルーチンが起動します。
セリ=ティンカー:全てのステラナイトは自身が「基幹世界人」か異世界出身の「隣人ネイバー」かを確認する。
セリ=ティンカー:この効果が実行される時点で「ガーデン1、2、3にいない「基幹世界人」と、ガーデン4、5、6にいない「隣人ネイバー」は、[1ダイス]点のダメージを受ける。
アレアテルナ:アヤヤ~ッ
セリ=ティンカー:で、隣人なのはアレアテルナ殿下だけかな。二人は基幹世界人だから、
アレアテルナ:ガーデン5にいる隣人なので平気デース✌
諏訪月 陶花:代々続く基幹世界人の一族だぜ……
白鷺達一:おい!今からでも書類上で隣人になれ!
テトラ・トライア:隣人を搾取しようとした基幹世界人だぜ
白鷺達一:賄賂でどうにかなる!
諏訪月 陶花:いや、123に移動するスキルを有してはいる
セリ=ティンカー:テトラちゃんが4、陶花さんが6にいるので 二人に1ダイス点のダメージ入ります。
GM:1ダイス点は相当でかいですよ 防御無視ですからね……
諏訪月 陶花:自分の攻撃が当たらなくなるんだよな
テトラ・トライア:最大6点じゃん!
諏訪月 陶花:1ダイス点!? テトラちゃんの方がHP低いけどどうする?
テトラ・トライア:移動すると今度は私が何も出来なくなるのはある
GM:テトラちゃんも移動スキル持ってるわけじゃないですからね
テトラ・トライア:HP回復エフェクトはあるので少しは平気かも
諏訪月 陶花:じゃあ今回は攻撃ダイスないし自分でいくか……! No4『不安と依存を愛と呼べ』!
テトラ・トライア:一回だけリザレクトできる
GM:こういう戦略を踏まえてガーデン5に行ったんだなセリちゃん 賢い女……
GM:リザレクト言っとる
諏訪月 陶花:アクションルーチン寸前の移動スキル!
テトラ・トライア:このタイミング指定のスキルも面白いなぁ
セリ=ティンカー:べ、便利過ぎる
白鷺達一:かっこいいぞ陶花……
諏訪月 陶花:こういう回避をしろってルルブが言ってる
テトラ・トライア:ガンダムも言ってた
諏訪月 陶花:移動して、1に行きます 基底世界人なのでダメージなし!
GM:はーい
諏訪月 陶花:ワイロもいらないぜ このダイスさえあればな!
白鷺達一:くっ……(なぜ?)
GM:ではセリさんはダメージダイスどうぞ
セリ=ティンカー:ではいくよ~
セリ=ティンカー:1d6
StellarKnights : (1D6) → 6

セリ=ティンカー:マジ?
テトラ・トライア:ひぇー!!
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を6減少(11 → 5)
テトラ・トライア:テト~~
アレアテルナ:アヤヤ~ッ!?><
諏訪月 陶花:いや~~~~っ!
セリ=ティンカー:こういうトコだけ高いなあこいつ!
テトラ・トライア:聞こえてきました 破滅の足音が
GM:まあでもチャージダイスが酷かったから
GM:その揺り戻しと考えればいいかもね……それにテトラちゃん生存力は高い構成だし……


【チャージダイス】
セリ[5]耐久-4
アレアテルナ[2]耐久16
テトラ[1,2,6]耐久5◀
陶花[5,6]耐久13

GM:マップ表示を少しずつ改良していってます
GM:今はテトラちゃんの手番。
テトラ・トライア:進化してる
セリ=ティンカー:予兆が発生します。
テトラ・トライア:こいっ
セリ=ティンカー:No2. 妖精龍の問いかけ「汝らに愛する者はあるか」。
セリ=ティンカー:愛こそ妖精の糧。さぁ、汝らの愛する者を思い描け。出来ぬならば毒の鱗粉を浴びせよう。
セリ=ティンカー: この効果が実行される時点で、全てのステラナイトは自身の愛する者 の名を宣言する。
テトラ・トライア:強制告白エフェクト!
セリ=ティンカー:もし出来ないのなら、宣言しなかったステラナイトに【アタック判定:10ダイス】を行う。
アレアテルナ:そ、そんな……
セリ=ティンカー:これが、テトラちゃんの行動終了時に発生します。
テトラ・トライア:ロールでやれるからって無茶苦茶言うなぁ
セリ=ティンカー:る、ルルブにそう書いてあるんだもん
セリ=ティンカー:ともあれ、手番どうぞ!
テトラ・トライア:ルルブなら仕方ないか…
テトラ・トライア:いくぜ!
テトラ・トライア:死ぬまで戦え!死ななければ永遠に戦える!"センチュリオ"に撤退はない!
GM:貧民時代のテンションに戻ってる
テトラ・トライア:HPが心もとないけど元より私は死地にござる
テトラ・トライア:No2:道化の剣アキレキア・ザ・フール
テトラ・トライア:キャラクター1体に【アタック判定:[3+ラウンド数]ダイス】を行う。その後、あなたは耐久力を[ラウンド数]点減少する
テトラ・トライア:攻撃を行い1点ダメージを食らいます。セリちゃんにこうげき
セリ=ティンカー:むっきなさい ブーケで
セリ=ティンカー:増強しなくていいのかい!
GM:そういえばブーケによるアタックブーストもあるのでした
テトラ・トライア:ふっふっふ…(ルルブペラペラ)
テトラ・トライア:メモあった。
テトラ・トライア:じゃあせっかくだし使うか。
セリ=ティンカー:横にあるよ~ 4枚で一個ダイス増やせて 合計3個まで増やせます
テトラ・トライア:ダイスブースト。12枚使って3個増やしましょう
GM:バカみたいなブーケありますからね何故か……
テトラ・トライア:不思議
テトラ・トライア:ダイスロール!
テトラ・トライア:7b6>=3
StellarKnights : (7B6>=3) → 1,2,2,3,3,3,4 → 成功数4

セリ=ティンカー:痛すぎ!
テトラ・トライア:4面ダイス?
テトラ・トライア:ともあれ4点。1点反動喰らいます
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を1減少(5 → 4)
セリ=ティンカー:サポートスキルとかはありますか~
諏訪月 陶花:もうない!
セリ=ティンカー:了解!
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を4減少(-4 → -8)
テトラ・トライア:ならば続けて殴ります!
テトラ・トライア:前進制圧!
セリ=ティンカー:ええいきなさい
テトラ・トライア:No1:騎士のたしなみ
テトラ・トライア:「あなたはキャラクター1体に【アタック判定:2ダイス】を行う」と「あなたは1マス移動する」を好きな順番で1回ずつ行うことができる。
テトラ・トライア:殴った後にガーデン3に後退。
セリ=ティンカー:なるほどね…!これにもアタックブースト使えるよ!
テトラ・トライア:当然やります!そしてさっきの分減らしてなかった!
テトラ・トライア:そしてダイスブースト3回!
テトラ・トライア:テトラ・トライアのブーケを12減少(161 → 149)
テトラ・トライア:テトラ・トライアのブーケを12減少(149 → 137)
テトラ・トライア:ダメージ!
テトラ・トライア:5b6>=3
StellarKnights : (5B6>=3) → 1,2,2,3,4 → 成功数2

テトラ・トライア:5と6がない異聞帯
セリ=ティンカー:それでも痛い
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を2減少(-8 → -10)
テトラ・トライア:ともあれ2点ダメージで後退 引き撃ちテトラ
GM:ただ成功数でいえば5個ならそんなもんですね
セリ=ティンカー:気付いたら結構がっつり削れてる
テトラ・トライア:6のスキルを温存して手番は以上です
セリ=ティンカー:ではアクションルーチンが起動します。
セリ=ティンカー:No.2 妖精龍の問いかけ「汝らに愛する者はあるか」。
セリ=ティンカー: この効果が実行される時点で、全てのステラナイトは自身の愛する者 の名を宣言する。 もし出来ないのなら、宣言しなかったステラナイトに【アタック判定:10ダイス】を行う。
テトラ・トライア:香取陽吾くん
セリ=ティンカー:宣言を…しな!
テトラ・トライア:香取陽吾くん!
セリ=ティンカー:なぜか胸が痛い
諏訪月 陶花:お慕いしております、白鷺達一さま!
アレアテルナ:ステラナイツやってんのに愛する者の名を宣言できない奴いる?
アレアテルナ:いねえよなあ!!?
アレアテルナ:イーレ・リュニック!
セリ=ティンカー:ぐううOK!その意気やヨシ という訳でアタック判定は発生しません
アレアテルナ:アヤッター
テトラ・トライア:テット~
セリ=ティンカー:ちなみにあたしはルバート・アロスせんせいです。
テトラ・トライア:くっ 強敵
テトラ・トライア:手番は以上です
諏訪月 陶花:ウウ~~~


【チャージダイス】
セリ[5]耐久-10
アレアテルナ[2]耐久16
テトラ[6]耐久4
陶花[5,6]耐久13◀

諏訪月 陶花:陶花ですが……手持ちのスキルで使えるものなし!
セリ=ティンカー:予兆が発生します。No.3 妖精龍の問いかけ「汝ら、願いを阻む者か」。
セリ=ティンカー: 妖精龍は、ステラナイトたちにエネミーへの恭順を要請する。無論、同意出来るはずなどないというのに。
セリ=ティンカー:この効果が実行される時点で、全てのステラナイトは、エネミーと戦 うか、敗北を認めるかを宣言する。
アレアテルナ:そんな~
セリ=ティンカー:敗北を認めた場合、そのステラナイトの耐久力は即座に0となる。 戦うことを選んだステラナイトには【アタック判定:6ダイス】を行う。
アレアテルナ:なんたるワガママ!
セリ=ティンカー:これが陶花さんの手番終了後に発生するよ~
テトラ・トライア:ヌゥーッ!
諏訪月 陶花:敗北を……み、み、認め……
白鷺達一:敗北を認めるんじゃない諏訪月院!
テトラ・トライア:さっきの好きな人告白大会からの落差よ
諏訪月 陶花:自分の手番ですができることはございません。
諏訪月 陶花:棒立ちでございます ですが、諏訪月はまだ負けておりません……
テトラ・トライア:和風だ
諏訪月 陶花:(日の丸ハチマキ)
GM:ガチガチのサポート構成だけあるなあ
テトラ・トライア:ステラナイツのユニカム
セリ=ティンカー:なんだとお…
GM:でも陶花ちゃんのサポートマジで強かったからね
テトラ・トライア:マジで強い
諏訪月 陶花:自分も上手いこと逃げたしね
GM:では予兆を発生させてください
諏訪月 陶花:というわけできませい! アクションルーチン!
セリ=ティンカー:はい!
セリ=ティンカー:No.3 妖精龍の問いかけ「汝ら、願いを阻む者か」。
セリ=ティンカー:この効果が実行される時点で、全てのステラナイトは、エネミーと戦 うか、敗北を認めるかを宣言する。 敗北を認めた場合、そのステラナイトの耐久力は即座に0となる。 戦うことを選んだステラナイトには【アタック判定:6ダイス】を行う。
アレアテルナ:認めませ~~ん
諏訪月 陶花:ジーク・諏訪月!
テトラ・トライア:認めません!
アレアテルナ:しかもスキルも使っちゃいま~す!No.2《より疾きは光の一手》!
セリ=ティンカー:なにッ
アレアテルナ:あなたにアタック判定を行おうとしているキャラクターに[1+現在のラウンド数]点のダメージを与える。また、これから受けるアタック判定1回の間、あなたの防御力を[現在のラウンド数]点増加する。
アレアテルナ:これによりこの攻撃の間は防御力を1も増やしちゃいます!
テトラ・トライア:刃が復讐している
セリ=ティンカー:これは舞台だけどセリにダメージ入るのでいいのかな
アレアテルナ:む、確かにこの場合どうなるんでしょうね?
セリ=ティンカー:まあ折角のスキル!
セリ=ティンカー:pl有利に裁定しましょう。
テトラ・トライア:ありがたい!
セリ=ティンカー:セリに2点ダメージ入ります~
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を2減少(-10 → -12)
テトラ・トライア:防御アップ+ラウンド数、すごいな…
GM:いや、「舞台による攻撃」とルルブには書いてあるので
GM:ボスに入らないのが裁定としては正しそうな気もするなあ
セリ=ティンカー:あっそうか きっちり決まってるんだ
テトラ・トライア:ちゃんとしてる
GM:勿体ないですが、今回は反撃ダメージは与えないこととしましょう
セリ=ティンカー:了解です!
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を-2減少(-12 → -10)
アレアテルナ:ということで防御を5にするだけのスキルとして使わせてもらいます
セリ=ティンカー:ではアタック判定6ダイス行きます。他はないかな?
諏訪月 陶花:なし
セリ=ティンカー:では行きます
セリ=ティンカー:6b6
StellarKnights : (6B6) → 1,2,4,5,5,6

アレアテルナ:ウワ~
セリ=ティンカー:な、なんか高いな
アレアテルナ:こんな時に限って5以上出しまくるんじゃない
テトラ・トライア:死にます!!
諏訪月 陶花:待て!
セリ=ティンカー:あわわわ
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートの耐久力を3減少(16 → 13)
テトラ・トライア:介錯しもす!
テトラ・トライア:なにっ!?
GM:一体どうしたというんだい陶花ちゃん
諏訪月 陶花:No.5『夢と幻の剣』を宣言!
諏訪月 陶花:テトラちゃんのダメージ4点を引き受けます。8点ダメージ
テトラ・トライア:陶花ちゃん…!
諏訪月 陶花:13→5!
諏訪月 陶花:死に瀕すると書いて……瀕死!
テトラ・トライア:儚げになってしまう~~~
アレアテルナ:わ、私がちょっと目を離した隙になんでこんなことに
セリ=ティンカー:舞台、つよい
諏訪月 陶花:固有結界特化型のエクリプスだったらしい
GM:壊滅状態……
GM:でも設定的にも実際そうですからね
テトラ・トライア:満身創痍のウロボロス、ボロボロス
諏訪月 陶花:残るは6番のみ
GM:自前の攻撃がそうでもなくフィールド攻撃が異常な強さなのは全く正しい
テトラ・トライア:世界を作る側だもんね
諏訪月 陶花:これが春……!


【チャージダイス】
セリ[5]耐久-10
アレアテルナ[なし]耐久13
テトラ[6]耐久4
陶花[6]耐久5

GM:では1ラウンド目のロールに入っていきましょう。

GM:花園の変容は、破壊的であるとさえ言えた。
GM:ステラナイト達を包囲する花の一つ一つに、異界的なまでの生命の活性がある。
GM:夜空のような空を覆う光は、星雲ではなく、生命を持つ龍である――
セリ=ティンカー:それは星が持つ生命のちからであり、
セリ=ティンカー:暗黒に漂う超常存在さえも引き付けた、美しきかがやきである。
セリ=ティンカー:――そこに立つ貴方達は、誰もが血が沸き立つのを感じる。比喩ではない。
セリ=ティンカー:本当に、沸き立っているが如くに、身体が熱い、、
セリ=ティンカー:「ティンバーの春告精は」
セリ=ティンカー:「熱の妖精でもある――」それは彼らが持つ種火、エネルギーのそれが故であり。「行くわよ」彼らにとって、その温度は。
セリ=ティンカー:これ程のものでこそ、漸く平熱なのだ。
アレアテルナ:「……信じられない。機械でもない生命が――こんな熱を……発するなんて……」
テトラ・トライア:テトラが驚愕を覚えたのはその瞬間だ。
テトラ・トライア:異常は想定している。異なる世界の存在も了解している。
テトラ・トライア:(けど、この子は……)「まだ、戦う意志を見せなくても、"このレベル"なの…?」
諏訪月 陶花:「セリ、様……!」
セリ=ティンカー:空気が裂ける音がする。銀の羽根を閃かせ、諏訪月陶花へ右腕の注射の針が伸びた。
セリ=ティンカー:「余りいたくないようにするわ。注射で子供を泣かせないの、得意なのよ?」
諏訪月 陶花:莫大な熱に抗うように、鎖が跳ねる。周囲の花園から水が噴き出し、少女を纏う。
諏訪月 陶花:だが、薙刀の刃は防御にはいささか遅かった。
セリ=ティンカー:「む……やっぱり見た通り、身持ちが固いね」幾筋か銀色が走り、鎖と水を払い。一つの線が切り裂いている。
諏訪月 陶花:「くう……!」 斬線にそって、肌に赤色が走り、花弁が舞う。
セリ=ティンカー:常に妖精は浮いている。その浮遊からの加速は、碌な予備動作がない。其れでもほとんどを防いだのは、やはり薙刀のリーチと鎖と水の複合防御が故だろうか。
諏訪月 陶花:負傷による動きの鈍化をなくすための、女神の加護。花園の作用。通り過ぎた妖精を、いくらか遅れて目で追う。「――テトラ様!」
セリ=ティンカー:薙刀の振りに合わせて、後ろに跳ねている。
テトラ・トライア:「くっ!」
セリ=ティンカー:「――ぃいやっ!」注射器の構造を見れば、ピストンと本体で構成されている。そのピストンを利用して、異様に伸びた一撃が、テトラ・トライアへ。
テトラ・トライア:逆手に構えた白木拵の祭祀刀を針の軌道に合わせる。
テトラ・トライア:体の中心線を攻撃の延長におかず、常に半身の回避と回転を行う──香取から教えられる防御方法。
テトラ・トライア:致命的な一撃こそを避け、尋常じゃない熱に肌を灼かれながら、舞いを踊るように攻撃を受け流す。
テトラ・トライア:「でも、すごく重い…!」
セリ=ティンカー:ぎゃぎ、と金属が噛み合い衝突し、擦れ合う音がした。
セリ=ティンカー:「うわ。初見で流されるとは思わなかったな――」
セリ=ティンカー:ピストンの送り出しによるリーチの増大は、その分の遠心力などから元に戻すのに時間がかかる。
セリ=ティンカー:だから。「よし、手数増やしていきますか」
セリ=ティンカー:「”あかのみぐし”。”しろのはがね”。”ほしのうたげ”」
セリ=ティンカー:銀色の半透明の翼が輝く。その輝きが、破片たちが零れ落ちる。
テトラ・トライア:(武器の形状は信用しちゃいけない、大事なのは目線と、足運び)
テトラ・トライア:("相手の狙いから思惑を外すように動く"……)
テトラ・トライア:「っ、魔法……!」
セリ=ティンカー:キラキラと輝く小片が、周囲に浮かぶ。其れは上空の龍の光と合わせ、ひどく美しい。
セリ=ティンカー:腕を指揮者のように振るう。
セリ=ティンカー:細片が、諏訪月陶花とテトラ・トライアへ降り注いだ。
諏訪月 陶花:「飛び道具……!」薙刀を緩く持ち、演舞のように半回転する。伸張し、水をまとった鎖が波打つ。
セリ=ティンカー:見た通り、飛び道具に等しい。それが、雨のような勢いで、一個一個を数えるなどできない数で降るだけだ。
テトラ・トライア:「でも、同時じゃ、ない」
テトラ・トライア:小片が雨のように降り注ぐのであれば、その速度には微妙に差が生じる。
テトラ・トライア:近いものからなぞるように刀を振るい、致命傷を受ける場所のみを切り払っていく
諏訪月 陶花:単純だがその防御能は高い。軽い羽刃の大半を呑み込むが、いくらかが頬を掠め、思わず目を細めてしまう。
セリ=ティンカー:「、む……これも防ぐか」
テトラ・トライア:「武器なら、対処できるけど…………」
テトラ・トライア:「数は、厄介だね」
テトラ・トライア:ハ、と空っぽの肺に熱された酸素を求めて息をつく。
諏訪月 陶花:「速い……本人も、刃も」
アレアテルナ:「"我が身は軋み"、"空に茜の紅を差す"」
アレアテルナ:キン!!!
アレアテルナ:音。炎。それに僅かに遅れ、中空に存在する小片のいくつかが同時に砕けた。
アレアテルナ:鋭角軌道の流星が、水平に落着したかのようでもある。
アレアテルナ:凄まじい速度で飛来したアレアテルナが、セリを機械大剣で串刺しにしようとした――と目視できた者がいたかどうか。
セリ=ティンカー:「…!」右腕を振り上げ、直観した方向にかざそうと動きはしていた。(ダメか――逸らしきれな、)
アレアテルナ:イーレが見せた炎の魔法の本領は、遠隔の敵に対する飛び道具ではなく、むしろその逆にある。
アレアテルナ:王国騎士団の高速戦闘においてその魔法は、自らを弾丸と化す、瞬間的な加速の噴射炎だ。
セリ=ティンカー:「”ちから”joueeよ――!」そういう魔法における速攻性、というものでは。別世界には別の戦術がある。
セリ=ティンカー:ばきん!と砕くような音。自身の至近のみを弾き飛ばす、斥力を生む緊急脱出術。
セリ=ティンカー:其れで何とか大剣を逸らしきっている。
アレアテルナ:「そん……な!?」
アレアテルナ:急激な速度は、その反作用をも当然伴う。斥力に弾かれれば、奇襲のアドバンテージは一瞬でなくなる。
諏訪月 陶花:「――――いえ」
諏訪月 陶花:攻撃は失敗した。妖精の力場に、蒸気突撃は弾かれた。
諏訪月 陶花:音もなく、それはセリ=ティンカーの周囲に満ちていた。
諏訪月 陶花:本来なら、ざらざらと空間を威嚇するように鳴るはずの鎖の群れは、全体に纏われた水によって消音され。
テトラ・トライア:「対応リアクションが早い…!」いや、そうではなく。本質は……(術の起動セットアップまでの、差?)
セリ=ティンカー:「ギリギリ…、いや、これは…!」
諏訪月 陶花:シースの信念に則り、神秘オカルトを介さぬ鉄鎖の投網が、妖精の動きを鈍らせる。
諏訪月 陶花:諏訪月家は、ステラバトルについても詳細を知る家である。
諏訪月 陶花:ブリンガー、シースともに戦闘経験のない陶花は、それを補う"戦術論"を無数に持つ。
諏訪月 陶花:「アレア様」 鎖が王女を引き上げる。「もう一度!」
アレアテルナ:「トウカさん……!」反動のまま地面に叩きつけられる前に、その鎖に支えられて墜落を免れる。
アレアテルナ:「ありがとう、ございます!」
アレアテルナ:そして、鎖の張力があれば、離された距離を再び詰めることができる。跳躍。点火。
アレアテルナ:「"歯車よ、回れ"!」
アレアテルナ:――キン!!
アレアテルナ:今度も正面からではなかった。セリ=ティンカーの真横へと、一瞬で回り込んでいた。
セリ=ティンカー:「……っ」鉄は妖精を縛り、触れた妖精は火傷をするのだという伝承がある。対処に一手が確実に必要だった。――アレアテルナの大剣に間に合わない。
セリ=ティンカー:「、ぐ、ぅ……!」
アレアテルナ:高速噴射の速力を用いて、セリ=ティンカーが攻撃のために空間に満たした輝く破片を
アレアテルナ:あるいは陶花が巧妙に配置した鎖を蹴り、不規則に突進方向を変えていた。
アレアテルナ:ザギュ!!
アレアテルナ:戦闘機同士のドッグファイトに近い。交錯は完全に一瞬の出来事で
アレアテルナ:セリを斬った機械大剣も、剣術ではなく、純粋に超高速突進の運動エネルギーをぶつけるような攻撃だった。
アレアテルナ:「当たりました……!けれど」
アレアテルナ:「斬撃の瞬間に、抵抗の力も感じました……まだ、余力がある!」
アレアテルナ:着地と同時に機械大剣が展開し、大量の蒸気を排気する。
セリ=ティンカー:悲鳴は零れない。その速度帯における運動エネルギーは、音を超えた速度に至っていたからだ。「…、けほっ……もう…!」
セリ=ティンカー:がりがりと注射針がガーデンの地面を削っている。「せんせを、傷付けないでよね…!!」
アレアテルナ:「はぁ、はぁ、はぁ……!」こちらも、今の戦技の実現に相当の精神力と体力を消耗した。イーレならば、もっと上手く使いこなせるのだが。
セリ=ティンカー:「…わかってたけど、やっぱり数が違うとキッツイな…!」
セリ=ティンカー:左腕を天に掲げる。
セリ=ティンカー:ひび割れた翼のかけらたちが、幾つもそれぞれ宙を舞う。セリが手を伸ばすと、その先に欠片が集い、ひび割れた長剣を象った。
セリ=ティンカー:「”あさのひかり”。”そらのしずく”。」
セリ=ティンカー:その長剣へ、光が注がれてゆく。
セリ=ティンカー:「裁定よ、此処にあれ…!」
セリ=ティンカー:「――”ゆめのきざし”!」
セリ=ティンカー:天に浮く竜から力を借り受けて、ステラナイトたちに光の柱が降り注ぐ。
セリ=ティンカー:裁定の刃は、対象が何者かであるかを問う刃だ。
セリ=ティンカー:「”ふさわしきものは、ふさわしきところへ”」
セリ=ティンカー:竜が裁定を為さんとする。今回は、出身世界なのだと対象は理解が出来た。己の出身が示す所へ移動せよ、と。それが為されなければ、刃が振り落とされる。
セリ=ティンカー:花園の地面が二色に染まる。基幹世界は白、そうでなければ黒。
諏訪月 陶花:("問いかけ"に正しい回答をしなければならない攻撃……!)
諏訪月 陶花:墓守の怪物が、問いを間違えた相手を一方的に喰らう行為にも似ている。
アレアテルナ:(速すぎる)裁定の基準を予感として識ることができるのは、そのような"魔法"だからなのだと理解は出来る。
アレアテルナ:だが、異常なのはその実行までの速度だ。問いかけに対して正しい振る舞いを取るだけの時間的余裕を与えていない。
アレアテルナ:(滅んだ世界で……生きた者と消えた者の差のような。理不尽な不幸――)
テトラ・トライア:(攻撃の軌道が、わかりやすい?)おそらく、相手を滅ぼすためではない。
テトラ・トライア:ならば、行動を操るための攻撃だ。
諏訪月 陶花:刃の色と地面の色を見極める。刃が落ちてくる寸前、足下に池が出現。そこに倒れるように飛び込む。
諏訪月 陶花:刃が池を蒸発させ……隣接した花園に池が発生し、陶花が飛び出す。
テトラ・トライア:よくよく見れば彼女に近づくための道には密集し、いかにも回避を促すように誘導されている。
テトラ・トライア:「じゃあ」
テトラ・トライア:「これは、思惑がある攻撃だ」
テトラ・トライア:突き進む。前に。危険なのは攻撃の密度ではない。相手の思惑に乗ることだ。
テトラ・トライア:距離を取れば安全だ。それで、その次は?
セリ=ティンカー:テトラ・トライアが推察した通り。これは、態勢を整え、相手の連携を切るための攻撃だった。手数に劣るものは、相手のイニシアチブを妨害せねばならない。
テトラ・トライア:相手は1アクションで世界に干渉する術の使い手。回避し、近づくのに2アクション。
テトラ・トライア:「だから、」
テトラ・トライア:「予想外のことを、する!」
諏訪月 陶花:(――まさか)「テトラ様!?」
テトラ・トライア:光の柱が突き立つ。テトラの体を貫き──小柄な体に対して、余裕のある衣装の一部をかすめたことを知る。
テトラ・トライア:「一手!」
テトラ・トライア:回避の動きはそのまま攻撃に。相手が1アクションで行動するなら、2アクションを1つにまとめる。
テトラ・トライア:──"要は、手数を押し付けるしかない。相手は何でもありだから"
テトラ・トライア:(うん)
テトラ・トライア:「香取くんの言う通りにする!」
テトラ・トライア:逆手に持った小刀はそのまま徒手空拳の拳の形。
テトラ・トライア:密着する距離の至近でセリに拳を当て、
テトラ・トライア:ズン!!
テトラ・トライア:中華拳法の発勁、古武術の無寸打。総じて、振りかぶりを必要としない衝撃を伴う打撃。
テトラ・トライア:特殊部隊にアレンジされた打撃。そして拳を振り抜いて刀の切り裂き。
セリ=ティンカー:「ぅぐっ、かはっ……!」息が肺から押し出される。大規模な術の行使の直後だ。まだ態勢を整え切れていない――
テトラ・トライア:打って、引く。シンプルな動きに2度のダメージを乗せて、ダメ押しに蹴りつけるように距離を取る。
テトラ・トライア:「──はぁ、はぁっ!」
テトラ・トライア:「ダメージは入るね、このまま呼吸を奪えればいける……」
テトラ・トライア:「かも!」
アレアテルナ:「これが、基幹世界の戦闘術……」
アレアテルナ:あの試合でイーレ・リュニックが全ての手を見せていなかったのと同じで、対戦相手の警官もそうだったに違いない。
アレアテルナ:打ち合い続けるのではなく、一打を打ち込めばそのまま制圧に至る『流れ』を確立している。
セリ=ティンカー:「ぅぐ、ごほっ、げほっ……!、”ふゆの、とうど”」息を碌に吸えていない。だが、そのまま吐く勢いに任せて唄を謡う。
セリ=ティンカー:「”ゆきの、ひか……り”っ」
セリ=ティンカー:「”や……みの、しじま”!」
アレアテルナ:(わたしに……攻撃をしてくるなら)膝を立てて座り込んだまま。大剣がオーバーヒート中は、先程のような戦闘軌道に移ることは不可能だ。
アレアテルナ:(それでいい。だけど、この詠唱は……!)
セリ=ティンカー:竜からの協力を得るための詠唱。
セリ=ティンカー:この舞台”アル・アルカ・べヌイ”のと特徴として、あくまで竜は中立の存在である、ということだ。
セリ=ティンカー:竜は請願を叶え、それを裁定する。
セリ=ティンカー:だから、あくまで請願の仕方を知らなければならないし、裁定する余地のあるものでなければ願えない。
セリ=ティンカー:今の彼女は余裕がなかった。だから、
セリ=ティンカー:「……ごほっ、”あいをあかしせよ”!」
セリ=ティンカー:妖精は愛から生まれるのだ、という。ティンバーではそう言い伝えられている。
アレアテルナ:「…………っ!」他より一拍早く、その魔術の意味するところを理解する。
セリ=ティンカー:だから、彼女は咄嗟にそれを裁定に掛けた。貴方達は、己の愛する人を正しく真実に、告げなければならない。
アレアテルナ:自分が攻撃を引き受けることまでは覚悟していた。だが、この術は――
諏訪月 陶花:また問いかけだ。己が愛するもの――シースの名を明かすこと。
諏訪月 陶花:だが、正々堂々の名乗りを逃げるようなものを、あの竜は容赦なく焼き尽くすだろう。
諏訪月 陶花:少しだけ、怖くなった。彼は、自分のことをどう思っているのだろうか。
諏訪月 陶花:自分の立場を哀れんで、ただ庇護してくれているだけではないか。同情や、憐憫を越えるものを、相手に求めていいのか。
諏訪月 陶花:けれど。「……白鷺さま」
諏訪月 陶花:そうやって迷ったとき……彼はいつも、"求めていいのだ"と、言ってくれる。
諏訪月 陶花:「……わたしの、お慕いしている人の名は、白鷺達一さまです」
テトラ・トライア:中立である故に、条件は誤り無く伝えられる。
テトラ・トライア:愛する者の名前の開示。それが出来なければ裁きが起こる。
テトラ・トライア:「………?」
テトラ・トライア:「????」
テトラ・トライア:(変な事を気にするなぁ。愛する人って、あ、人質にするため……とか?)
テトラ・トライア:戦闘中だと言うのに、じ、と反応を伺うために見てみるも、そういった悪意は感じない。
テトラ・トライア:無論、内心をすべて見透かせるほど経験豊富じゃないけど、それとはもっと別の、悪意とか、攻撃するぞって意志を感じない。
テトラ・トライア:つまり、本当に、好きな人を知りたいだけなのだ。
テトラ・トライア:「……調子狂うなぁ!?」
テトラ・トライア:「香取くん! 香取陽吾くんが好きで、そのお陰で生きています!……コレで良い!?」
テトラ・トライア:まっすぐ宣言し、反応を確かめるために構えを取り直す。
テトラ・トライア:(こ、)
テトラ・トライア:(攻撃が来ないな……!?)
セリ=ティンカー:諏訪月陶花、テトラ・トライアから竜の視線が外れたのがわかる。
セリ=ティンカー:確かに真実、愛するものを告げたのだと世界のエネルギーたるそれは認定した。
セリ=ティンカー:「ごほっ……ああもう。あたしは、決まっているわ」
セリ=ティンカー:「ルバート。ルバート・アロス。あたしの唯一のひと」
セリ=ティンカー:当然のように、彼女はそう口にした。彼女からも竜の視線が外れる。
アレアテルナ:「……わたしの」
アレアテルナ:「あ……愛する人は」
アレアテルナ:胸元を強く押さえる。
アレアテルナ:明かさなければいけない。秘することを選べば自分はステラナイトとして敗北し、もしかしたら、この階層も崩壊する。
アレアテルナ:心に決めた恋人は一人だけだ。だが、まだ、、明かしてはならない秘密だった。たとえそれを聞く者がたった3人、あるいは6人でも。
アレアテルナ:王国の未来を左右する一言であるかもしれない。ただ一人の王女が、婚約前に不義の関係を結んでいるなど……
アレアテルナ:(ああ。だけど――)
アレアテルナ:胸の鼓動を強く感じる。
アレアテルナ:恐ろしいことに、自分はこの問いを嬉しい、、、と感じているのだ。
アレアテルナ:ずっと、10年以上も、誰にも憚らずに叫びたかったことなのだから。
アレアテルナ:世界の存続がかかっているのだから。
アレアテルナ:「……………」長い睫毛を伏せたまま、恥じらうように声を絞り出す。
アレアテルナ:「……イーレ・リュニック」
アレアテルナ:「わたしの愛する人は……過去も、未来も、イーレただ一人だけ」
セリ=ティンカー:…その答えを聴いた竜は、視線を外した。
セリ=ティンカー:何よりも、真実である証はそれで十分であったろう。
テトラ・トライア:「……!」
テトラ・トライア:「授業で見た騎士さんだ……!」聞き覚えがあった。
テトラ・トライア:王女様と騎士様。あの謎の竜が何も起こさないということは、その思いは私達といっしょ。
諏訪月 陶花:(全員が"捧げ物"を返した。竜への協力要請は、全員が等しくなる)
諏訪月 陶花:(最悪では全員に『処分』が下る可能性もありましたが……今回はそうではないみたい)
アレアテルナ:(――言ってしまった)両手で顔を覆う。
諏訪月 陶花:(そして、アレア様のシースは……やはり、あの方なのですね)
諏訪月 陶花:結婚相手がまだいないのだから、立場上は近しい人間だろうと予想はついたが。
テトラ・トライア:「そんなの、まるで漫画みたいな……」内心で感じたことが口から漏れる。
アレアテルナ:「言わないで!」
諏訪月 陶花:テトラさんたちに向けて、指先を口元に立てる。
テトラ・トライア:その言葉で正気に戻る。人に対して漫画みたいというのはかなり失礼だ。
テトラ・トライア:「ご、ごめんね!」
アレアテルナ:声が裏返ってしまった。戦いの最中に、自分はこんな恥ずかしいことを……
諏訪月 陶花:「秘密は、お守りいたします」
テトラ・トライア:「で、でも私は良いと思うよ、うん!」
テトラ・トライア:「応援す──秘密にする!うん!」
アレアテルナ:顔を覆ったまま、頷きで返すことしかできない。
テトラ・トライア:陶花さんの振る舞いを見て軌道修正する。色々囃すのは駄目。覚えた。
セリ=ティンカー:「……こほん。ええと、あたしも変に言い触らしたりすることはしないから。乙女の秘密だし……」
セリ=ティンカー:「ともあれ」
セリ=ティンカー:「行くわよ――”ひるのれんず”。”ねつのながれ”。」請願の詠唱が続く。
セリ=ティンカー:「”ゆれのみたま”!」
セリ=ティンカー:今度の請願は、しっかりと練る時間があった。
テトラ・トライア:「あっ!?」いきなりの衝撃に思考が奪われた。今の会話の間に奪った呼吸は整えられている。
セリ=ティンカー:だから、こんな条件を付けることができる――「”ひざまづけ”!!」服従の強要。
テトラ・トライア:(まさかあの竜、このために──っていうのじゃないのはわかるのへんな感じ!)
セリ=ティンカー:服従するならば剣を捨てさせ、まだ抗うならば剣が振る。…流石に、先程迄の条件より厳しい分、威力は落ちるが。
テトラ・トライア:「しまった──」
アレアテルナ:「……抗います!わたしは!」今度は、アレアテルナが真っ先に即答した。
アレアテルナ:先の回答で退路を絶つしかなかったことが、この質問に対しては却って有利であった。
アレアテルナ:アレアテルナの周囲だけ時間が動き出したかのように、剣の雨が降る。
諏訪月 陶花:「……そうですね。もう二度と。諏訪月はそちらには屈しません」
テトラ・トライア:一瞬。ほんの一瞬だけ、相手があんな行動をする竜を呼んだ"意図"に、和解の可能性を考慮したのが隙。
テトラ・トライア:「私も負けない、からっ」
諏訪月 陶花:「たとえ、恥を注ぐにはもう、手遅れだとしても」
アレアテルナ:「"我が身は変じ""炭を命の糧とする"!」――ガギン!
アレアテルナ:機械大剣が蒸気とともに、左右二つに分離した。軽く、二振りとなった剣で、剣の雨と打ち合う。
テトラ・トライア:降り注ぐ剣の雨を映像として認識し、反射の思考で防ぐ軌道を描く。
テトラ・トライア:細かな負傷と疲労、存在するだけで余裕を削る極限環境。
テトラ・トライア:(無事かどうかは)「6:4ってところかな……!?」
テトラ・トライア:玉のような汗を浮かべながら、熱された空気を肺に送って覚悟を決める。
テトラ・トライア:時計回りに一凪ぎ、空いた空間に身を躍らせる。
テトラ・トライア:利き腕とは反対の腕を盾とする。切っ先が振れる瞬間に体を回し、分厚い生地の巫女の服の上をすべらせる。
テトラ・トライア:ギリギリまで近づくことでそれ以上を踏み込ませない。死線上で踊ることで活を見出していく。
テトラ・トライア:徐々に裾を貫かれ、引っかかり、その動きに陰りが生じて
テトラ・トライア:「いけな、い──」
テトラ・トライア:左右の判断を間違えた瞬間に、致命に届く刃が複数取り囲んだ。
諏訪月 陶花:――踏み間違えた、その足下が、唐突にざぶんと沈む。
諏訪月 陶花:花園に突如として生じた小さな水鏡は、テトラ・トライアの小さな体を受け入れて。
諏訪月 陶花:入れ代わりに、水の奥から上がってきた細い影が、刃から庇うようにテトラの体に覆い被さる。
テトラ・トライア:「きゃっ……!?」重力に従い落ちて。
テトラ・トライア:(この感覚は、前にも……つまり、)「陶花ちゃん!」
アレアテルナ:「トウカさん……ありがとうございます……!」自分自身の身を守ることで精一杯だった。
諏訪月 陶花:「う、く――――ぁ!」 代わりに体に突き刺さり、突き抜けていく光の刃。
アレアテルナ:しかも、それでもなお防ぎきれたわけではない。3本ほどの細い刃に串刺しになっている。
諏訪月 陶花:琥珀色の草花が、ボロボロと崩れ落ちる。
テトラ・トライア:「ごめんね、ありがとう」
諏訪月 陶花:「テト、ラ、さま」
諏訪月 陶花:こほ、こふ、と口元を押さえる。花が零れ落ちる。「どうぞ――思うとおりに動かれて」
テトラ・トライア:誰かが自分の身体を包んで、危険から守ってくれる。
テトラ・トライア:かつて、自分が一番大事にしたい記憶の中でも感じた、安心感。
テトラ・トライア:あの時は相手に返せるものは何もなかった。だけど。
アレアテルナ:(この中で一番戦闘能力に秀でているのは、テトラさん。私の能力も、一人で戦うだけなら十分な域だとは思う――)
テトラ・トライア:「……わかった」
諏訪月 陶花:逆巻いた鎖と水流が、刃の群れを弾く。「諏訪月は、もとより神を守る水月おとりを担うもの」
アレアテルナ:(――だけど、この中で誰よりもステラバトルの経験と知識に優れているのは、トウカさん)
アレアテルナ:彼女のささやかな支援がなければ、とうに誰かが落ちている。セリ=ティンカーはそれほどのエクリプスだ。
諏訪月 陶花:光を弾き返す薙刀は、指揮棒に似ている。
テトラ・トライア:「じゃあ、ありがとうは、働きで返す、ね」
アレアテルナ:「わたしも、トウカさんの指示通りに動きます」
アレアテルナ:「今のわたしは、騎士ですから」
諏訪月 陶花:微笑む。「お願いいたします」 
テトラ・トライア:ぎゅ、と陶花の体を短くもちゃんと抱きしめ返す。
テトラ・トライア:「あと」
アレアテルナ:両手の剣を支えに片膝を突いたまま、天に光る恐るべき妖精を見上げる。
テトラ・トライア:「私は神様とくべつとかじゃないから」
テトラ・トライア:「次は私が守るからね!」
セリ=ティンカー:悠然と浮かびながら、きみたちを睥睨していた。――妖精は、未だにその威勢と羽根、そこから放たれるひかりを保っている。
セリ=ティンカー:「……一人は落とせると思ったんだけど。なかなかしぶとい――」
諏訪月 陶花:「ふふ。ありがとうございます、アレア様、テトラ様」
諏訪月 陶花:テトラの額に、こつりと額をぶつける。途端、少女の体を水飛沫が包む。するりと腕の中を抜けて、元いた位置に立っている。
諏訪月 陶花:「セリ様はたいへん強力で……この花園を完全に支配しています」
諏訪月 陶花:「この舞台の彩る花の一つすら、ひとつ彼女の要請があれば我らに牙を剥きましょう」
諏訪月 陶花:「立ち止まらず、動き続けてくださいませ」
アレアテルナ:頷く。この庭園の花々は、踏みにじられるだけの弱い生命では、もはやない。
アレアテルナ:攻撃の数々に対して咄嗟の反応が遅れた要因のいくらかは、それだと考えていた。
アレアテルナ:敵は妖精。花園を支配する、春のあるじ。
アレアテルナ:(勝てない)花の騎士たるステラナイトが勝てる道理はない。
アレアテルナ:(一人だけでは)
テトラ・トライア:「うん。私達が戦う相手は、あの子だけじゃない」
テトラ・トライア:「必要なのは」
テトラ・トライア:「この世界の攻略だ」

GM:では、まずはエネミーのセットルーチンです。
セリ=ティンカー:ラウンド2・セットいたずら妖精の乱舞。
セリ=ティンカー: ちょっとしたイタズラだって。ほんのちょっと、ちょこっとだけ、ちくーってするだけだから♪
アレアテルナ:そっか~。ちょっとしたイタズラならあんしんだね
セリ=ティンカー:全てのステラナイトは1点のダメージを受ける。エネミーは[与えたダメージの合計]点、耐久力を回復する。
テトラ・トライア:注射器!
アレアテルナ:(明治製菓さんに問い合わせ中……)おい
諏訪月 陶花:これだよ~
セリ=ティンカー:1点ダメージうけてください。こっちは3人なので合計3点回復かな…
テトラ・トライア:いたいよ~
アレアテルナ:テトラちゃんが死んじゃうってんだよ
諏訪月 陶花:いや……
セリ=ティンカー:なにッ
諏訪月 陶花:これは切り時だろう 『四葉カウンター』を1だけ消費。
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートの耐久力を1減少(13 → 12)
諏訪月 陶花:テトラちゃんのダメージを0に。同時にセリちゃんの回復も1減る。
セリ=ティンカー:なんだとお…
アレアテルナ:なるほどね、一石二鳥の効果なんだ
諏訪月 陶花:火力補助にもなるからあんまり減らしたくないんだよな 自分はHPうけます 5→4
テトラ・トライア:陶花殿~!
セリ=ティンカー:じゃあ…ふたりに通ったので、2点回復!
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を-2減少(-10 → -8)
GM:ではチャージダイスを皆さん振っていただきます。ラウンドが進行したので+2になることに注意です
アレアテルナ:4b6
StellarKnights : (4B6) → 1,2,5,6

セリ=ティンカー:5b6 3+2ラウンド
StellarKnights : (5B6) → 1,2,2,4,5

テトラ・トライア:4b6
StellarKnights : (4B6) → 2,2,3,4

諏訪月 陶花:5b6
StellarKnights : (5B6) → 1,1,3,4,5

諏訪月 陶花:ブーケ発動! 1を2に!
諏訪月 陶花:12345だぜ
諏訪月 陶花:266→263
テトラ・トライア:ブーケでプチラッキ-3回。2の出目を5にします。
テトラ・トライア:2345!
テトラ・トライア:テトラ・トライアのブーケを9減少(137 → 128)
アレアテルナ:プチラッキーを使用。5の出目を2に。
アレアテルナ:すみません、プチラッキーをやっぱり1から2にさせてください。残りブーケは243。


【チャージダイス】
セリ[1,2,2,4,5,5]耐久-8◀
アレアテルナ[1,2,2,6]耐久12
テトラ[2,3,4,5]耐久4
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

GM:では手番はセリさんから。たくさん行動できてうれしいね
セリ=ティンカー:いっぱいうごくぞ~ エネミーなので予兆はなし。
GM:今回は予兆はありません。撲滅の賦のアタック補正も忘れないように。
セリ=ティンカー:了解!
セリ=ティンカー:ではまず2を使い、2:最前線に舞う絆の花アヴァンドナー
セリ=ティンカー:キャラクター1体に【アタック判定:1ダイス】を行った後、あなたは1マス移動する。その後さらに、キャラクター1体に【アタック判定:1ダイス】を行った後、あなたは1マス移動する。
アレアテルナ:アヤヤ~ッ!?
セリ=ティンカー:殴って動き殴って動くというスキルというわけ。
テトラ・トライア:八艘飛び!
諏訪月 陶花:嫌~~~~
諏訪月 陶花:怖すぎ
セリ=ティンカー:とはいえこれは殴れないと動けないんだけど、丁度同じガーデンにいるね!
アレアテルナ:移動スキル使わないで~
アレアテルナ:アテアテルナ・リスフィタ・イフトノートです!
セリ=ティンカー:アレアテルナ殿下にアタック2ダイス…なのですが、ここで撲滅の賦の効果により、1ダイス減ります。
アレアテルナ:0ダイスにはならないんだよなあエクリプス補正で
セリ=ティンカー:アタック判定1ダイスいくよ!
アレアテルナ:まあ私の防御力は4ある!かかってこい
セリ=ティンカー:1b6>=4
StellarKnights : (1B6>=4) → 3 → 成功数0

セリ=ティンカー:かなしい
アレアテルナ:アヤッター
テトラ・トライア:あぶな~
セリ=ティンカー:とはいえ一ガーデン移動できる。
セリ=ティンカー:今回は…まあまず6に動こう。
セリ=ティンカー:皆を一応平等に殴っておくね……


【チャージダイス】
セリ[1,2,4,5,5]耐久-8◀
王女[2,2,5,6]耐久12
テトラ[2,3,4,5]耐久4
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

セリ=ティンカー:陶花さんにアタック判定2ダイス行きます。
セリ=ティンカー:あ、いや
セリ=ティンカー:殴れるか 殿下。
諏訪月 陶花:まだ殴れますね
アレアテルナ:うっちょ~
セリ=ティンカー:さっきの入ってないしもう一回行くぜ!
セリ=ティンカー:2b6>=4
StellarKnights : (2B6>=4) → 3,6 → 成功数1

アレアテルナ:たすけて~っ
テトラ・トライア:ヒエ~
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートの耐久力を1減少(12 → 11)
諏訪月 陶花:まだまだ元気というか
諏訪月 陶花:他が瀕死
セリ=ティンカー:これで1移動。
セリ=ティンカー:5に戻ります。
アレアテルナ:戻ってきた


【チャージダイス】
セリ[1,2,4,5,5]耐久-8◀
アレアテルナ[2,2,5,6]耐久11
テトラ[2,3,4,5]耐久4
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

セリ=ティンカー:もう一個2があるから2:最前線に舞う絆の花アヴァンドナー
GM:ここまででチャージ1個分です
GM:また!
セリ=ティンカー:これは最後だよ
セリ=ティンカー:アレアテルナ殿下にまず2ダイス行きます。
セリ=ティンカー:2b6>=4
StellarKnights : (2B6>=4) → 5,5 → 成功数2

アレアテルナ:痛い!痛い!
セリ=ティンカー:あっ
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートの耐久力を2減少(11 → 9)
セリ=ティンカー:急に出目良くなってきたなあコイツ…
セリ=ティンカー:移動先はガーデン4.


【チャージダイス】
セリ[1,4,5,5]耐久-8◀
アレアテルナ[2,2,5,6]耐久9
テトラ[2,3,4,5]耐久4
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

セリ=ティンカー:ここでテトラちゃん殴るべきかなと思うんだけど、まだ耐久力が二倍近く違うんだ
テトラ・トライア:不思議
セリ=ティンカー:とはいえずっと殴ってるからな テトラちゃん二ダイスだし受けて貰って……
セリ=ティンカー:2b6>=4
StellarKnights : (2B6>=4) → 2,2 → 成功数0

アレアテルナ:よ、よかった……
セリ=ティンカー:こんなもんだよ普通は!
GM:移動先はどうしますか?
テトラ・トライア:平気!
セリ=ティンカー:ここから5を使っていくので一旦ガーデン5にいきます。
アレアテルナ:戻ってきた!
セリ=ティンカー:うふふ


【チャージダイス】
セリ[1,4,5,5]耐久-8◀
王女[2,2,5,6]耐久9
テトラ[2,3,4,5]耐久4
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

セリ=ティンカー:という訳でお待ちかね 5:戦場の華ダンス・イン・ザ・カリステギアを5を使って発動するよ。
テトラ・トライア:ヒエ~
アレアテルナ:イヤーッ
セリ=ティンカー:キャラクター1体に【アタック判定:〔2+現在のラウンド数〕ダイス】を行う。その後、あなたの耐久力を〔あなたと同じガーデンに存在するキャラクターの数〕点回復する。
アレアテルナ:アタック5ダイス!?
諏訪月 陶花:お待ちかねじゃないよ~~~
セリ=ティンカー:アレアテルナ殿下にアタック5ダイス!
アレアテルナ:1点回復!?
セリ=ティンカー:5b6>=4
StellarKnights : (5B6>=4) → 3,4,5,5,6 → 成功数4

テトラ・トライア:ボス性能~!
セリ=ティンカー:えっマジ?
アレアテルナ:《より疾きは光の一手》を使用します。
セリ=ティンカー:あっすみません!振り直した方がいいかな
アレアテルナ:防御力+1、セリさんに2点ダメージです
セリ=ティンカー:いたい!
アレアテルナ:いや、元々宣言するつもりだったので
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を2減少(-8 → -10)
アレアテルナ:ちょっとタイピングが遅れただけ
諏訪月 陶花:防御力+1ってことは……
セリ=ティンカー:先に回復だけします
テトラ・トライア:3点ダメージか
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を-1減少(-10 → -9)
アレアテルナ:成功数は3になるはずです
セリ=ティンカー:ですね。
諏訪月 陶花:それでも痛いがいいカバーだぜ
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートの耐久力を3減少(9 → 6)
セリ=ティンカー:…とはいえ残りが騎士のたしなみ(1)、ダンスインザカリステギア(5)、まだ使ってない奴か


【チャージダイス】
セリ[1,4,5]耐久-9◀
アレアテルナ[2,5,6]耐久6
テトラ[2,3,4,5]耐久4
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

セリ=ティンカー:此処で使わない理由がない…!
アレアテルナ:助けて~
セリ=ティンカー:5:戦場の華ダンス・イン・ザ・カリステギア。ごめんね殿下!
アレアテルナ:より疾きは光の一手。2個めを切ります。
アレアテルナ:防御力は+1!
セリ=ティンカー:5b6>=5 ぎええ 5として計算します。
StellarKnights : (5B6>=5) → 1,2,3,6,6 → 成功数2

セリ=ティンカー:こういう時だけで目がいい!
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートの耐久力を2減少(6 → 4)
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を2減少(-9 → -11)
テトラ・トライア:出目に強キャラガデテル
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を-1減少(-11 → -10)
セリ=ティンカー:痛い。
セリ=ティンカー:此処は…最後にこれを使います。
セリ=ティンカー:1:騎士のたしなみ。
セリ=ティンカー:「あなたはキャラクター1体に【アタック判定:2ダイス】を行う」と「あなたは1マス移動する」を好きな順番で1回ずつ行うことができる。


【チャージダイス】
セリ[1,4]耐久-10◀
アレアテルナ[5,6]耐久4
テトラ[2,3,4,5]耐久4
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

セリ=ティンカー:まずガーデン4に移動してから、テトラちゃんにアタック3ダイス!
テトラ・トライア:うおおお
セリ=ティンカー:3b6>=4
StellarKnights : (3B6>=4) → 4,4,4 → 成功数3

セリ=ティンカー:ちょっと!!
アレアテルナ:ギャッ
テトラ・トライア:DEATH出目!!
テトラ・トライア:まず3点受けまして
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を3減少(4 → 1)
アレアテルナ:スキル6を使用します。《生命の図書館》。
アレアテルナ:テトラちゃんはチャージ判定2ダイスを行ってください。
テトラ・トライア:No3:愚者の咆哮アキレキア・ザ・レムナント:このスキルにセットされているすべてのダイスを取り除くことで使用できる。あなたの耐久力を[3+取り除いたダイス数]点回復する
テトラ・トライア:あ、コレチャージ結果で効果変わるな
アレアテルナ:どっちのタイミングが先になるんでしょうかねこれ
テトラ・トライア:ダメージを受ける→ダメージの結果HPが特定の数値になる…かな?
GM:私もそういう解釈です
テトラ・トライア:じゃあ先にチャージインします
テトラ・トライア:2b6
StellarKnights : (2B6) → 1,3

セリ=ティンカー:それでよさそう!
テトラ・トライア:的確に増えた
テトラ・トライア:2個のダイスを取り除き5点回復します!
アレアテルナ:でもこれ、ダイス1個使って1点分しか回復しないから
アレアテルナ:実は別の出目出た方が効率的にはよかったなあ
テトラ・トライア:実はそう。
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を5増加(1 → 6)
セリ=ティンカー:プチラッキーも使えるはず
テトラ・トライア:1の出目はストック。
アレアテルナ:でもテトラちゃんは今は1点でも耐久値ほしいのも事実だから……
アレアテルナ:どれだけチャージダイスがあっても耐久値が残らなければ意味がないのだ
アレアテルナ:あ、そうでした
テトラ・トライア:なのだ
アレアテルナ:プチラッキー使わなくて大丈夫ですか?
テトラ・トライア:そうですね 使わせてもらおう
セリ=ティンカー:ククク 歪みの点数を上げることでイモータル・ライフとか異形化も…ありかもしれませんよ
テトラ・トライア:えーと 今全てに1つずつダイスが乗ってるから…
セリ=ティンカー:plとしては嫌だけど……!
GM:今回は本当にセリさんが強いから使わざるを得なくなるかも……
GM:いえ、テトラちゃん、プチラッキーは
GM:今チャージした2つのどれかを動かすことになる……はずです。表記的には
セリ=ティンカー:チャージ判定時のダイス目を動かす、なので。
テトラ・トライア:あっそうですね 今の手持ちが全部1つはチャージ持ってたので 3を何に変えるのがいいかなーと思ってました
GM:1,3に乗ったどれかを動かしてください。3を動かして回復値巻き戻すのもアリです
セリ=ティンカー:ですね
テトラ・トライア:3に2回使い、5に変えてカバーリングを増やします。
テトラ・トライア:テトラ・トライアのブーケを6減少(128 → 122)
テトラ・トライア:HPは4点回復。
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を1減少(6 → 5)
セリ=ティンカー:オッケーかな?大丈夫になったら、セリの手番は終了です。
テトラ・トライア:コレで良いはず!


【チャージダイス】
セリ[4]耐久-10
アレアテルナ[5]耐久4◀
テトラ[1,2,4,5,5]耐久5
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

GM:セリちゃんが4残してるの不気味だなあ
GM:それではまずは予兆を宣言してください
セリ=ティンカー:No.4妖精乱舞。
セリ=ティンカー:無数の妖精たちが剣をとり、ステラナイトたちに迫る!
セリ=ティンカー:この効果が実行される時点で、ガーデン1、3、5にいるステラナイト全員に【アタック判定:3ダイス】を行う。
GM:手番は1ラウンド目で決めた通りにする……と思いきや
諏訪月 陶花:3ダイスなら確定で耐える! 対応しません
GM:なんとステラナイツはこのイニシアチブすら「相談して自由に決めて構わない」というルールが存在します
テトラ・トライア:協力プレイ推奨TRPGだぜ
GM:移動スキルを持ってる人は殴られないよう逃げることも可能ということ……!最初の行動希望者は挙手してください
アレアテルナ:ちなみに私は動きたいです!殴られないようにしつつ攻撃できます
諏訪月 陶花:テトラちゃんの後がいいです
テトラ・トライア:うむ。
GM:では2ラウンド目はアレア→テトラ→陶花という順番になるわけですね
テトラ・トライア:そんな感じで!
GM:1ラウンド目と同じじゃないか
アレアテルナ:私はオートアクションで激闘を繰り広げたので
アレアテルナ:残っているのは5の出目だけ……。でも予兆を回避しつつ攻撃を叩き込むことならちょうどよくできるぞ
セリ=ティンカー:なんだとお
アレアテルナ:閃光の突撃。5から4に1マス移動し、アタック判定1+移動分1をセリちゃんに食らわせます。
アレアテルナ:本当なら3に移動して3アタックしたかったところだが
アレアテルナ:私ももう体力が危ないから……!
セリ=ティンカー:ぐう~~っいたい アタックブーストはしますか!
アレアテルナ:しましょう!ここでしなくていつするのか
アレアテルナ:12枚のブーケを消費し
アレアテルナ:アタックダイス5個だ!
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのブーケを12減少(237 → 225)
アレアテルナ:5b6>=3
StellarKnights : (5B6>=3) → 1,1,3,3,5 → 成功数3

セリ=ティンカー:うわあいたい
アレアテルナ:どうや!
アレアテルナ:ウチの手番はこれでしまいや!
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を3減少(-10 → -13)
セリ=ティンカー:終了したので、No.4妖精乱舞の効果が起動します。
セリ=ティンカー:この効果が実行される時点で、ガーデン1、3、5にいるステラナイト全員に【アタック判定:3ダイス】を行う。
セリ=ティンカー:陶花さんとテトラちゃん…かな?
諏訪月 陶花:はあい
テトラ・トライア:わぁん
セリ=ティンカー:ダイス行くよー
セリ=ティンカー:3b6
StellarKnights : (3B6) → 4,4,5

セリ=ティンカー:だから高いって!!
GM:たっかい!!
GM:テトラちゃん回復してなきゃ死んでたぞ
テトラ・トライア:ぎゃあー!
セリ=ティンカー:セリさん容赦がなさすぎ
テトラ・トライア:No5:庇護の盾マターナル・ラヴ:あなた以外のキャラクター1体が直後に受ける1回分のダメージは0になる(P74)
テトラ・トライア:陶花ちゃんのダメージをゼロに!
GM:テトラちゃん……!
セリ=ティンカー:えらすぎ
諏訪月 陶花:そしてこちらも……『四葉カウンター』2消費!
GM:陶花さん……!
テトラ・トライア:コレが絆パワーだ!
諏訪月 陶花:テトラちゃんのダメージを1点に押さえます! もう温存している暇も意味も無い!
テトラ・トライア:陶花ちゃん~!


【チャージダイス】
セリ[4]耐久-13
アレアテルナ[なし]耐久4
テトラ[1,2,4,5]耐久4◀
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久4

テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を1減少(5 → 4)
GM:ではテトラちゃんの手番!予兆も発生します!
テトラ・トライア:なんだなんだ
セリ=ティンカー:No.5妖精龍の咆哮
セリ=ティンカー: 樹々は揺れ、風は鳴き、妖精の森全体がステラナイトを拒絶する。
セリ=ティンカー:全てのステラナイトに【アタック判定:4ダイス】を行う。 この判定はそれぞれ個別に行い、ダメージを1点でも受けたステラナイトは時計回りに1マス移動する(例えばダメージを受けたステラナイトが3にいたなら、4へ移動する)。
テトラ・トライア:ぎゃあー!
セリ=ティンカー:なんかこの舞台…強くないすか?
テトラ・トライア:妖精、戦闘民族らしい
セリ=ティンカー:手番どうぞ……!
テトラ・トライア:はい!
テトラ・トライア:とは言え、HP消費系は怖いので…
テトラ・トライア:No1:騎士のたしなみ:「あなたはキャラクター1体に【アタック判定:2ダイス】を行う」と「あなたは1マス移動する」を好きな順番で1回ずつ行うことができる。
テトラ・トライア:しばきます。攻撃前にダイスブーストでダイス+3
テトラ・トライア:テトラ・トライアのブーケを3減少(122 → 119)
テトラ・トライア:5b6>=3
StellarKnights : (5B6>=3) → 2,2,4,4,4 → 成功数3

セリ=ティンカー:うぐうう
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を3減少(-13 → -16)
セリ=ティンカー:け、結構きつくなってきたな
テトラ・トライア:いい感じ!
テトラ・トライア:もう一発行けるけどギリギリ命があぶない
テトラ・トライア:移動も出来るけど一応このまま!
テトラ・トライア:そして……No6:戦場の令嬢イエス・マイ・レディ:この効果に同意したあなたの任意のキャラクター1体と、あなたの位置を入れ替える
テトラ・トライア:陶花ちゃんを召喚する!
セリ=ティンカー:なんだとお
諏訪月 陶花:陶花わーおう
テトラ・トライア:位置を入れ替えガーデン1に、陶花ちゃんをガーデン3に召喚します!
テトラ・トライア:いけー!令嬢!
セリ=ティンカー:本当に令嬢なのすごいはなしだよ
テトラ・トライア:手番は以上です 予兆も来てください
セリ=ティンカー:No.5妖精龍の咆哮。
諏訪月 陶花:どうも、マイレディです
セリ=ティンカー:全てのステラナイトに【アタック判定:4ダイス】を行う。 この判定はそれぞれ個別に行い、ダメージを1点でも受けたステラナイトは時計回りに1マス移動する(例えばダメージを受けたステラナイトが3にいたなら、4へ移動する)。
セリ=ティンカー:では個別に行えって書いてあるので
セリ=ティンカー:一人ずつ行くよ!
アレアテルナ:ヒエーッ
セリ=ティンカー:4b6>=4 アレアテルナ殿下
StellarKnights : (4B6>=4) → 2,3,4,5 → 成功数2

セリ=ティンカー:4b6>=3 陶花さん
StellarKnights : (4B6>=3) → 1,1,4,5 → 成功数2

セリ=ティンカー:4b6>=4 テトラちゃん
StellarKnights : (4B6>=4) → 1,3,6,6 → 成功数2

アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートの耐久力を2減少(4 → 2)
セリ=ティンカー:なんか平たいな
テトラ・トライア:あぶない
テトラ・トライア:テトラ・トライアの耐久力を2減少(4 → 2)
諏訪月 陶花:HP4→2 ガーデン3から4へ移動
テトラ・トライア:ガーデン2へ
セリ=ティンカー:アレアテルナ殿下はガーデン5かな。時計回り移動なので。
アレアテルナ:そうでした。ダメージ効果を計算に入れてなかった


【チャージダイス】
セリ[4]耐久-16
アレアテルナ[なし]耐久2
テトラ[2,4,5]耐久2
陶花[1,2,3,4,5,6]耐久2◀

GM:陶花ちゃんの手番。予兆も発生します。
セリ=ティンカー:丁度アクションルーチンが一周したため、1番からとなります。
セリ=ティンカー:No.1妖精龍の問いかけ「汝らは何者か」
セリ=ティンカー:全てのステラナイトは自身が「基幹世界人」か異世界出身の「隣人ネイバー」かを確認する。
セリ=ティンカー: この効果が実行される時点で「ガーデン1、2、3にいない「基幹世界人」と、ガーデン4、5、6にいない「隣人ネイバー」は、[1ダイス]点のダメージを受ける。
テトラ・トライア:位置交換のおかげで安全だ
セリ=ティンカー:これが発動します。
GM:陶花ちゃんは覚悟の位置入れ替えというわけだ
諏訪月 陶花:基底世界人でガーデン4にいるので、このラウンドで動かなければ5/6で死ぬ
アレアテルナ:王女も運良く回避できます 位置取り運だけは本当に良い
テトラ・トライア:流石アレアちゃん、立ち居振る舞いにそつがない
諏訪月 陶花:だが……移動はしません! なぜならこのラウンドでありったけを使うから!
GM:ウオオオオ
セリ=ティンカー:その意気やよし!
諏訪月 陶花:No.6 『女神よ、あなたの愛は今ここに』!
諏訪月 陶花:このスキルのセットダイスを取り除く代わりに、No,1~6 のセットダイスを1個ずつ取り除く。その後、あなたは、キャラクター1体に【アタック判定:1ダイス】を行い、【アタック判定:2ダイス】を行い、【アタック判定:3ダイス】を行い、【アタック判定:4ダイス】を行う。
GM:これ、マルジナリアで追加された本当にとんでもないアタックスキルです
セリ=ティンカー:滅茶苦茶な事書いてあるんだよな
諏訪月 陶花:でもダイス6個使って10ダイスですからね
テトラ・トライア:とんでもない
GM:陶花ちゃんがここまでで1~6までのダイスを全てそろえていたのを皆さんご存知でしょう……!
テトラ・トライア:なにっ そうか、あのプチラッキーはこのために…!
セリ=ティンカー:なんだとお……
GM:もちろんアタックブーストも……?
諏訪月 陶花:何故私が天使の施しでしょっちゅう手札を交換していたのか……!
諏訪月 陶花:もちろん全てに載せます(決断的)
セリ=ティンカー:SP-エンジェル・バトンをあんなに発動していたのは…!
諏訪月 陶花:ではまず、自分でアタックボーナスを使用。12枚
諏訪月 陶花:ブーケ 263→251
諏訪月 陶花:アタックダイスを1から4に。いきます。
諏訪月 陶花:4b6>=3
StellarKnights : (4B6>=3) → 1,3,4,6 → 成功数3

セリ=ティンカー:ぐえええ
テトラ・トライア:いい調子!
アレアテルナ:2回目は王女がブーケをあげましょう!12枚!
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を3減少(-16 → -19)
諏訪月 陶花:えらいい! 続いて二撃目!
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのブーケを12減少(225 → 213)
諏訪月 陶花:王女さま~~~~~! アタックダイス2→5!
諏訪月 陶花:5b6>=3
StellarKnights : (5B6>=3) → 2,2,2,3,6 → 成功数2

セリ=ティンカー:…リロールする?
アレアテルナ:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのブーケを5減少(213 → 208)
アレアテルナ:リロールしてください!
セリ=ティンカー:…どうぞ!
諏訪月 陶花:させてください!
諏訪月 陶花:5b6>=3
StellarKnights : (5B6>=3) → 2,4,6,6,6 → 成功数4

テトラ・トライア:反転した
セリ=ティンカー:いったい……!
アレアテルナ:やった~~
テトラ・トライア:さっすが~!
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を4減少(-19 → -23)
テトラ・トライア:3回目はテトラの手助け!判定にアタックボーナス3回!
諏訪月 陶花:王女さま……一生着いていきます!
テトラ・トライア:テトラ・トライアのブーケを12減少(119 → 107)
諏訪月 陶花:テトラちゃんの巫女パワー!
アレアテルナ:テトラちゃん~~♡
テトラ・トライア:かしこみかしこみ!
アレアテルナ:立ち絵もかわいいよ
諏訪月 陶花:アタックダイス3が6に!
テトラ・トライア:きゃ~♡
諏訪月 陶花:6b6>=3
StellarKnights : (6B6>=3) → 1,1,3,4,5,6 → 成功数4

セリ=ティンカー:ぐええ
テトラ・トライア:いい感じいい感じ
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を4減少(-23 → -27)
GM:4は十分!
諏訪月 陶花:ハァ、ハァハァ……!
GM:がんばれ……!
セリ=ティンカー:ぐう
GM:1スキルで4回攻撃……陶花ちゃんの負担は計り知れない
諏訪月 陶花:最後……ダメだ、もうブーケをくれる人がいない
テトラ・トライア:侵蝕率の高まり…
アレアテルナ:そんな……
諏訪月 陶花:孤独………
セリ=ティンカー:……アタックにブーケを12枚投げます。
テトラ・トライア:セリちゃん!?
セリ=ティンカー:セリ=ティンカーのブーケを12減少(213 → 201)
GM:え!?セリさん!?
セリ=ティンカー:やれーっ
GM:確かにエクリプスがブーケを自分で使うことはできないが
GM:……他のステラナイトに投げてはいけないとは書かれていないのだ!本当にルールにそう書いてある!
諏訪月 陶花:妖精さん……!? 敵に……花を贈るというのか!
諏訪月 陶花:なんでルールに抜け道が記載されているんだ
GM:(p196)
諏訪月 陶花:いきます! ダイス4が……7に!
諏訪月 陶花:7b6>=3
StellarKnights : (7B6>=3) → 2,2,3,5,5,5,6 → 成功数5

セリ=ティンカー:いたすぎ
アレアテルナ:ワアーッ
テトラ・トライア:やりおる
嗣子:セリ=ティンカーの耐久力を5減少(-27 → -32)
テトラ・トライア:なんとかなれーっ!
諏訪月 陶花:ダイスを全て……失いました
セリ=ティンカー:32ダメージ…!滅茶苦茶くらっちゃった
テトラ・トライア:すご
諏訪月 陶花:これが私の全力全開!


【チャージダイス】
セリ[4]耐久-32
アレアテルナ[なし]耐久2
テトラ[2,4,5]耐久2
陶花[なし]耐久2◀

セリ=ティンカー:hpは、青の12点に、エクリプス補正で3×5=15
セリ=ティンカー:なので、hpゼロです!
テトラ・トライア:うおおお~!
アレアテルナ:か、勝った~~
セリ=ティンカー:あとちょっとだったんだけどな~
GM:本当に凄い 超必殺技によるドラマチック勝利です
諏訪月 陶花:ヤバかった あまりにも
GM:戦闘終了。演出に入っていきます。

セリ=ティンカー:「さて、皆ばらけたか。ちょっと傷もついたし――」がしゃん、と右腕の注射器をランスのように構える。
セリ=ティンカー:「一気に、まずはいくよ…!”かたのばんこ”。”いきのつばめ”。」
セリ=ティンカー:「”やえのあざみ”!」
セリ=ティンカー:単純な浮遊から、高速の突撃形態に。
アレアテルナ:(食い止めなければ――)
アレアテルナ:自在に飛行するセリ=ティンカーの高速機動に対抗できる者がいるとすれば、自分だけだ。
アレアテルナ:魔法による点火。蝶の羽根めいたステラドレスを広げるようにして、追いすがろうとするが。
セリ=ティンカー:銀の羽根が組み代わった、と思った瞬間には。
セリ=ティンカー:きんっ、という音速越えの衝撃波が通り過ぎている。それが一周ぐるりと、花園を回るように。
アレアテルナ:「!」
アレアテルナ:翔び立つよりも、銀色の衝撃波が一周するほうが速い。
アレアテルナ:音速突破のダウンバーストによって、逆に自分が叩きつけられた――そう理解できたのも、全てが終わった後だ。
セリ=ティンカー:当てることよりも、相手の陣を崩すことを目的とした騎兵突撃。そして本命は、
セリ=ティンカー:衝撃波に紛れての注射器の機能。”花の騎士”たるステラナイトから、その活力を回収し、自身の装具を補修することだ。
テトラ・トライア:銀色の風。スピードによって輪郭の溶けた世界で認識できたのはそれだけで、咄嗟に生き残るための最低限の防御を強いられる。
諏訪月 陶花:ざらららら。分割した鎖が、四葉を模した形状で一帯に浮かぶ。
諏訪月 陶花:強度と数に任せた防御。だが、それがかろうじて、半ば偶然にもテトラへの一撃を防いでいる。
セリ=ティンカー:ばぢぃッッ!!と、鎖の一帯が相殺するように弾け飛んだのは、通り過ぎた後からだ。
セリ=ティンカー:あまりに高速であったが故に、彼女自身も軌道を修正できていなかった。
諏訪月 陶花:(刹那の高速攻撃――ならば)("迂回"や"回り込み"をすることはできない) 一方で、自らは避けきれず、傷口から花弁を吸い上げられる。
アレアテルナ:「く……ぁ……っ」体を起こし、機械大剣を構え直そうとする。
アレアテルナ:何かが強く吸い取られたような喪失感があるが、倒れるわけにはいかない。
アレアテルナ:今、セリ=ティンカーに最も近いのは自分だ――
諏訪月 陶花:足は震えている。地に突き刺した薙刀を支えにして、かろうじて身を起こしている。
セリ=ティンカー:寧ろ減速し、それでもかなりの運動エネルギーを持っての突撃姿勢でありながら、技が入り込む隙間がある速度帯。そうなった少女が狙うのは、
セリ=ティンカー:「さあ、踊りましょうか…お姫様!」
アレアテルナ:(わたしが)
アレアテルナ:テトラも、陶花も、ダメージの蓄積がひどいことは分かった。(止めなければ!)
セリ=ティンカー:二人への追撃は、舞台に任せても十分にトドメをさせる。
セリ=ティンカー:だから、(あたしが最も削るべきは…あなたよ…!)
セリ=ティンカー:突撃姿勢からの突き。払い。ただの単純なようでいて、異様なほどの速度域に於いては、制御できていること自体が異様だ。
アレアテルナ:対応しようとする。騎士団の教練に忠実に、高速軌道の起こりを見――
アレアテルナ:「っ、あぅ!」
アレアテルナ:対応する前に鎖骨を突かれ、さらに体制を崩される。速すぎる。リーチが長い。
アレアテルナ:(短距離加速――を、点火する。次の一手で抑え込めば……)
セリ=ティンカー:そして、先程テトラ・トライアに見せたピストンを用いたリーチの最大伸長は切らない。だが、あることは見せてある。それを相手が意識から外した瞬間、それで取るつもりだった。
アレアテルナ:「ひ、っ」声にならない悲鳴。
アレアテルナ:薙ぎ払いに対して、瞬間的な点火の回転運動で回避しようとした。
アレアテルナ:だが、次は負傷した右鎖骨とは逆の、左上腕に深い切り傷が刻まれる結果になる。
セリ=ティンカー:(あれは威力はあるけど戻すのに時間がかかる。微妙なセンチ単位の伸長とで抑える――)(からくりの火付け)
セリ=ティンカー:(熱があつまってる。蒸気が圧を高めて。次)
セリ=ティンカー:羽根の光の勢いが増した。
アレアテルナ:セリ=ティンカーの見立て通り、機械大剣の蒸気圧が高まっている。何らかの機構を発動するつもりでいただろうが
アレアテルナ:今は、それを握るアレアテルナ自身の両腕が殺されている。
アレアテルナ:必殺の間合いに踏み込まれて、身を守る術がない。
セリ=ティンカー:注射器を抱くように体を伏せる。一気に貫くか、そうでなくとも高速の突撃はそのまま相手の後ろへの移動ともなる。
セリ=ティンカー:セリ=ティンカーはそれでも何かをしてくることを見越したうえで、必殺を取らんと動いた。
アレアテルナ:赤い花弁のような血煙の中で、アレアテルナの視線は伏せた前髪に隠れていた。
アレアテルナ:苦悶の悲鳴に紛れて細く呟く。
アレアテルナ:「――"孵れdwone'l"」
アレアテルナ:ザギャ!!!!
アレアテルナ:二本の機械大剣が、まるでバネじかけのハサミの如く、内に入ったセリ=ティンカーを捕らえた。
セリ=ティンカー:「ぐっ、……ぎ、ぃ……!」常人ならそのまま突撃を緩め、死地に陥っただろう。彼女は、傷が広がるのを承知で、思い切り加速した。
アレアテルナ:予兆を見ることは困難だっただろう。殺された両手は、それぞれに分割した大剣を握ったまま、、、、、なのだから。
アレアテルナ:蝶の一部。タテハチョウ科の蝶の中には、足が四本しかない、、、、、、ように見えるものがいる。
セリ=ティンカー:肋骨に守られた肺を圧迫される音。ごぼ、と口から蒼いラッパ状の花弁が零れる。
アレアテルナ:それは実際に足が四本なのではなく、退化した一対の前足が折りたたまれて、外見からは目立たないためだ。
アレアテルナ:何枚も重なり合った蝶の羽根の隙間から現れた二本の攻撃肢。――そして
アレアテルナ:それに合わせて、一本が二本に、二本がさらに四本に分割する機械大剣。
アレアテルナ:それが、アレアテルナ・リスフィタ・イフトノートのステラドレスである。
アレアテルナ:「セリ=ティンカーさん……!」
セリ=ティンカー:セリ=ティンカーの勝算は、あくまで相手が人間のステラナイト――二本の腕と脚を持つことを前提としていた。(み、誤った……!)
アレアテルナ:「止まってください!あなたの愛と願いを、あなたが汚してしまう前に!」
セリ=ティンカー:「けほっ、、、っ、はは……」
セリ=ティンカー:「あなたがやさしいひとなのは、なんとなくわかる……」
アレアテルナ:「はぁ、はぁ……はぁ……っ!」
セリ=ティンカー:「立場がどうこうじゃあ、ない。そのやさしさに免じて教えてあげる」
アレアテルナ:「わたしも……分かります。分かります……」
セリ=ティンカー:「――あなただって、もしそうなったら……」
セリ=ティンカー:「止まる気なんて、ないでしょう」
アレアテルナ:ようやく振り向く。剣による捕獲を強引に通過された。高速飛行を継続できるようなダメージではないはずだが――
アレアテルナ:「……」
セリ=ティンカー:白いドレスが大きく脇腹をえぐられている。
アレアテルナ:(だから、この人は)
アレアテルナ:(愛する者の名を答えさせたのか)
アレアテルナ:そして次には……それでも戦いを選ぶかどうかを。
セリ=ティンカー:ひかりが零れている。其れに触れる時の少女の手は、本当にいとしいものに触れるように撫ぜた。
アレアテルナ:それは誰よりも、自分自身の意思の表明だ。想いの正しさや強さで勝てる相手ではないのだと。
セリ=ティンカー:「たたかう事に……正しさなんてものがあったとして」
セリ=ティンカー:「絶対に、負けられないのだとして……」
セリ=ティンカー:「そんなの、誰だって持っているわ」
アレアテルナ:「それでも……」負傷が深い。一度きりの攻撃肢で辛うじて体を支えているだけだ。
アレアテルナ:「それでも、世界が滅んでしまうなんて……」
アレアテルナ:「そんなことは、二度とあってはいけない……!」
アレアテルナ:「――人に背負わせていい罪ではありません!」
セリ=ティンカー:「そう思えるなら、それがあなたがやさしいってこと」
セリ=ティンカー:どこか寂しそうな微笑みだった。
セリ=ティンカー:「そうしたものを、どうだっていいって思わないでいることは。」
セリ=ティンカー:「中々、難しいからね」
セリ=ティンカー:ほつれたドレスを、ある程度繕った。姿勢を整えた。
セリ=ティンカー:――こうして語る間にも、戦うために動いている。
セリ=ティンカー:「世界を愛せるという事は…」
セリ=ティンカー:「世界の中にいるものを、愛せているってことだから。……ああ、そう思うなら、あたしは」
セリ=ティンカー:「本当に、好きだったのかな」
アレアテルナ:「一体、何を……」
セリ=ティンカー:「終わった話だよ。……消えかけの火を、絶やさないためには…燃えさしが必要で」
セリ=ティンカー:「あたしは、そうはなれなかった。其れだけのおはなし」
アレアテルナ:「――テトラさん!」出し抜けに叫ぶ。
アレアテルナ:「防いでください!もう攻撃が始まっています!!」
セリ=ティンカー:「あは。バレた」(もりのこみち。いきのそよぎ。)花園を囲う森。
セリ=ティンカー:そこから響く音が、声を象っている。
セリ=ティンカー:「――”なぎのひすい”」
セリ=ティンカー:音が消えた。正確には、テトラ・トライアの周囲の空気が消えた、と言うべきだった。
セリ=ティンカー:そこから、消えた空気が圧縮され、断頭の刃となって振り落とされる。
アレアテルナ:「"我が身は沈み"、"地平に夕陽の線を引く"!」詠唱は現象に気付いた直後だ。間に合うかどうか。
テトラ・トライア:音の消える直前。カロン、と下駄を踏み鳴らす音が合図だった。
アレアテルナ:こちらで響いたのもまた、空気の炸裂音であった。使えぬ両手の機械大剣を組み合わせ、蓄積した蒸気で射出する。
セリ=ティンカー:ああいう手合いは呼吸が重要なのだ、と故郷で聞いたことがあった。だから周囲の空気ごと奪い去り、武器とする術。
テトラ・トライア:足音は、訓練で消すことが出来る。音を立てない動き方が出来る。
アレアテルナ:どのみち、自分が持っていても意味のないものだった。テトラ・トライアであれば、飛来したそれを盾として使いこなせる……と、刹那の内に判断した。
テトラ・トライア:ならば逆に、音を出す動きができる。
テトラ・トライア:適切に、意識の区切りに差し込まれる存在感の主張は、攻撃の矛先を無自覚にこちらに向けさせる。
アレアテルナ:だが、刹那であるが故に把握が間に合わぬ事象もあった。(音がない……)
テトラ・トライア:自分と陶花。"どちらか"に来るかわからない矛先を固定させれば、必要な対処は半分に減る。
アレアテルナ:射出を知らせる音も、空気を切る音も聞こえない中で、反応できるだろうか。ましてや突然飛来した武器に合わせて防御することなど。
諏訪月 陶花:膝をついて、薙刀を地に刺したままだ。動けないのではない。動こうとしていない。
諏訪月 陶花:「アレアさま……セリ、さま……!」その表情は険しく、どんどん汗が浮かび、憔悴していく。
テトラ・トライア:(息が出来ない)水中、高地。酸素の薄い場所に似た閉塞感。
諏訪月 陶花:何かをしている。力を溜めている。逆転の隙を。
テトラ・トライア:空気が奪われた。燃える炎の側に近い。景色が歪んでいる。空気が集まって、ねじれている。
テトラ・トライア:「っ!」祭祀刀を投げる。まっすぐに、空気に向かって。
テトラ・トライア:弾かれる。軌道が変わる。(そこ、ね)
テトラ・トライア:刀が干渉して、不可視の刃の距離と速度がわかる。
テトラ・トライア:空気を奪われた空間、重力の軛から少し開放された一瞬。刀の投擲のために伸ばした腕が代わりに飛来した大剣を掴む。
テトラ・トライア:(大きな剣の使い方は)
テトラ・トライア:(授業で見た!)
テトラ・トライア:「──!」
テトラ・トライア:音の消えたまま、聞こえない叫びと共に、"見えた"先頭の刃を薙ぎ払う。
テトラ・トライア:(一つは弾いた!あとは……)
テトラ・トライア:「───がまん──!」
諏訪月 陶花:少女の無垢な突撃を守るように、周囲に鎖の四つ葉が舞い上がる。
諏訪月 陶花:それはテトラの動きを邪魔しないように縦横無尽に動き回り、障害を、攻撃を弾いていく。
諏訪月 陶花:「そ、の、まま……!」
諏訪月 陶花:「行ってくださいませ――……!」
テトラ・トライア:弾いた刃のそばを通り、多少の傷みは覚悟の上で突っ込んでいた。
セリ=ティンカー:「……結構な殺し技だったんだけどな……!」驚きといら立ちが混ざったような顔だった。
テトラ・トライア:しかし想定した痛みは体を襲わず、眼の前を漂う鎖が届く前に弾いてくれる
テトラ・トライア:「陶花ちゃん!」音のある世界に戻る「ありがとうっ」
テトラ・トライア:体格に似合わない大剣を、腕力ではなく突撃の勢いだけで振り被る。
テトラ・トライア:大剣のギミックは使えない。詠唱や魔法の技術は、言葉をなぞればいいというものではない。
テトラ・トライア:リズム、抑揚、韻。そこに含まれた機微は"聴いただけ"で再現を目指すと、予期しない結果を招く。
テトラ・トライア:「何度か死ぬかと思った、けど」
テトラ・トライア:「まだ、生きてた」
テトラ・トライア:「だから、止めに来た!」
セリ=ティンカー:注射器を付けた右腕を冷静に翳し、受け流そうとしていた。――魔法の術技…特に他世界のものを判別するのは難しい。テトラが使える可能性も含めて一度間を取ろうとしている。
テトラ・トライア:感情だけが先走って、明らかに説明は足りていない。
テトラ・トライア:それはセリに話しかけると言うより、テトラにとっての決意表明。
テトラ・トライア:(誰かが、望んでひどいことをするならともかく)
テトラ・トライア:「どっちが正しいとか、じゃなくて」
テトラ・トライア:「本人が、笑ってやれないことなんて」
テトラ・トライア:「やらせるつもりはないんだから」
テトラ・トライア:少なくとも、自分が憧れた香取くん警察官ならそう言うのだ。
テトラ・トライア:『一旦、落ち着いて考えてみようか』なんて。
テトラ・トライア:「だから止めるよ!」
テトラ・トライア:「セリ=ティンカー!」
テトラ・トライア:技術も何もなく、シンプルな質量の大剣の振り下ろしを叩きつける
セリ=ティンカー:「子供じみたのんびりしたことを……!」
セリ=ティンカー:受ける。単純な身体能力が大きく違う。
セリ=ティンカー:何より、常には有利に働く浮遊の働きが、セリの体重という格闘戦に於いて重要な要素を、足を止めての動きでは大きく削いでいる。
セリ=ティンカー:「…ッ」
セリ=ティンカー:(脚が動けば……!)
テトラ・トライア:(あの速度には、加速がいる、ハズ)
テトラ・トライア:「この距離なら、速さも、武器も使えない、よね!」
テトラ・トライア:助走を取らせないように、細かく距離を詰めていく。
セリ=ティンカー:「……、」顔を歪める。本来なら、脚の移動や体重移動、ステップによる魔術補助によって対処を行うのが、ティンバーの術技である。
セリ=ティンカー:それが出来ない。脚が動かないからだ。だから、それまでも全身突撃のような形で攻撃をしていた。威力を乗せるために、そうする必要があったからだ。
セリ=ティンカー:だが。だからこそ、セリは周囲を見渡した。この機に乗じての追撃を嫌ったからだ。
セリ=ティンカー:(……トウカちゃん、何で動かない?)
諏訪月 陶花:「…………」薙刀を支えに座り込んだまま動かない。怪我が重い、わけではない。
諏訪月 陶花:じっと刃先を見ている。セリの力となって咲き乱れる花々の、その奥を。
セリ=ティンカー:ぞわ、と背筋を撫でる寒気がした。其れは直観だった。
セリ=ティンカー:身を固める。羽根で強引に吹き飛ぶように加速。テトラ・トライアから、態勢が崩れてでも間合いを取り。
セリ=ティンカー:「”からのうつわ”。”はなのしぶき”。」
セリ=ティンカー:「――”はるのひかり”!」
諏訪月 陶花:(――、きづ、かれ) ただ迫るセリに無抵抗であった。"これ"は彼女には重すぎて、他のことに気を裂く余裕がまるで残らない。
セリ=ティンカー:ちか、とまばゆく輝く光が溢れる。
セリ=ティンカー:それはひとがたを象った。かつての春を齎した、神話の如く語られるおとぎばなしたち。
セリ=ティンカー:そこから来たる、英雄のアヴァタールの召喚。――持って十数秒だが、動かぬ人を殺すなら十二分の術である。
テトラ・トライア:(──来た!)
諏訪月 陶花:回避する余裕はない。耐える。ステラナイツに、傷や欠損による不調は起こらない。
セリ=ティンカー:彼らは各々の武器を持って襲い掛からんとした。大剣。長剣。槍。弓。棍。杖。
テトラ・トライア:テトラは、セリ=ティンカーの戦闘の要を精密性に求めた。
諏訪月 陶花:(あ)だが。その向けられる剣群の総量を見て、本能的に理解する。(駄目。堪えられない)
テトラ・トライア:巨大な注射器ランス。衝撃波。見た目に大味と見せかけて、武器を振るう機序に理論立てた道理を感じる。
テトラ・トライア:周りを巻き込むのは、出力ゆえの"余分"……のはずだ。
テトラ・トライア:だからこそ。
テトラ・トライア:「咄嗟に狙うときは、一点、だよ、ね」
テトラ・トライア:ぐい、と羽織った緑の衣の内から鎖を取り出す。
テトラ・トライア:それは先の攻撃を防いだ陶花の鎖の能力の一部。常に死角に位置するように隠した奥の手。
テトラ・トライア:本人に繋がる鎖は、最も火力の集中するキルゾーンから陶花の姿を移動させる。
テトラ・トライア:「…………でも全部はムリかも。ごめん!」
セリ=ティンカー:「………!」テトラ・トライアが見て取った通り、セリ=ティンカーの戦闘は酷く精密だ。
諏訪月 陶花:「――――え」 ぐるん、と視界が急に変わる。
セリ=ティンカー:それは、元々空を舞うという事は何よりもピンポイントな精度を必要とするからでもあったが、
セリ=ティンカー:彼女の春告精という特性が、なによりもそうさせた。精密に、周囲への被害を抑え、必要な所にのみ力を集中させる。そうでなくてはならなかったからだ。
セリ=ティンカー:そうでなくては、彼女たちこそが地表を焼き尽くす災害となっていただろう。もうそんな力を亡くしても、彼女に根付いた習慣は変わらない。
諏訪月 陶花:武具のいくらかが体を掠めるが、体が引っ張り出され、ばたんっと離れた位置に倒れ込む。
諏訪月 陶花:覚えがある。「テトラ様の」
諏訪月 陶花:「ありがとうございますっ」
諏訪月 陶花:同時に、『準備』が終わった。
セリ=ティンカー:――テトラ・トライアからの妨害を避けるために、態勢を崩してでも羽根で身を運んだ。
セリ=ティンカー:もう対処を挟める状態ではない。
諏訪月 陶花:周囲の地に、螺旋状に鎖が配置される。陶花が中心で背筋を伸ばすと、それらが一様に輝き出す。
諏訪月 陶花:「はあ、ふう……っ!」
諏訪月 陶花:諏訪月のステラナイトは代々、その表出形質を流水とする。
諏訪月 陶花:――その理由は、奇しくも、春を司るがゆえに花園を支配するセリ=ティンカーの理論と似通ったものであった。
諏訪月 陶花:「この、願いの花園フラワーガーデンを利用できるのは……」
諏訪月 陶花:「エクリプスあなたがただけでは、ありません」
諏訪月 陶花:――――轟!
諏訪月 陶花:鎖に沿って、花園から螺旋状に舞い上がった水流に、陶花の矮躯が呑み込まれた。
セリ=ティンカー:「……これはっ……!」妨害の手立てを考えた。
セリ=ティンカー:だが間に合わない。あくまでセリが招来した”竜”は、中立の存在である。
諏訪月 陶花:間欠泉のごとき勢いは――この花園の力の源である数多の花を、根より引きずり出し、奪い取り、その内側に取り込んでいく。
セリ=ティンカー:強力であるが、常に彼女に味方をしない。彼女の支配力を超えたところ、超えた観点からのものには、彼女の意図を汲んではくれない。
諏訪月 陶花:『園満ちて――――』
諏訪月 陶花:『縒り風待ちの』
諏訪月 陶花:『――――花薙筏はないかだ
諏訪月 陶花:……春が、咲き誇る花を、天より支配するなら。
諏訪月 陶花:――――諏訪月は、その花を育み行き渡る、水を支配する。
諏訪月 陶花:水流に呑み込まれた……水流に搭乗した陶花が、厳かに告げる。
諏訪月 陶花:それは、願いの花園を喰らい生まれた意志ある水流。瓶花標本ハーバリウムの胴体を持つ、巨大な東洋龍のようだった。
諏訪月 陶花:『セリさま』 水中より響く、不可解な音と共に、少女が告げる。『わたしは、あなたを止めます』
諏訪月 陶花:『優しく、暖かな、春のような貴方に。もう一度、日の光の下に戻っていただきたいから』
セリ=ティンカー:「……淑やかな顔して、本当道を譲るつもりがない子だね……!」
セリ=ティンカー:「いいさ…!君の望む通りになるか、やってみるとしよう…!――”はなのかべん”。”くきのしぶき”、」対抗の詠唱を唱え始める。
諏訪月 陶花:『アレア様! テトラ様!』
諏訪月 陶花:『わたし一人では、満足な制御に足りません……お力を……!』
諏訪月 陶花:陶花の指揮に応じて、水流が一気に空中を走り、花園を抉る。だが、その力は一時的で、今にも四散してしまいそうなほど不安定だ。
アレアテルナ:それは、陶花の呼びかけよりも早く動いていたに違いない。
アレアテルナ:そうでなければ、その瞬間ちょうどに間に合う道理はなかった。
アレアテルナ:テトラの防御のために射出した機械大剣――ではない。攻撃肢で保持していた二本分の片割れが。
アレアテルナ:流星じみた青い噴射炎とともに、セリ=ティンカーの眼前へと割り込んでいた。
アレアテルナ:「"我が身は軋み"」
アレアテルナ:「――"空に茜の紅を差す"!」
アレアテルナ:射出した剣を媒介として放たれるのは、ごく単純な、火を放つ魔法だ。剣術に交えて牽制する程度の。
セリ=ティンカー:「”たねのめぐみ”。続けて――ッ、」首をひねり、何とか頭への直撃だけは避ける。「う、ぐぃ……!」
アレアテルナ:だが、水を蒸気と化す技であれば――
アレアテルナ:どの世界よりも、テアト大陸連邦の魔法は優れている。
アレアテルナ:直撃させるためのものではなかった、と気付くだろう。白く厚い蒸気が、セリ=ティンカーの照準を乱す。
セリ=ティンカー:「……、油交じりの……ッ」
諏訪月 陶花:同時に、弧を描く軌道で襲いかかる水龍が、妖精を弾き飛ばす。
諏訪月 陶花:花園に罅を入れ、水量が乱れる。だが、周囲に沸き立つ白い蒸気を、同じ色の花弁に変えて取り込む。
セリ=ティンカー:彼女のひどく忌々しそうな声が零れた。魔術とは認識の術であるがゆえに、認識を阻まれることは酷い困難を齎す。
テトラ・トライア:「私は、そういう、不思議な力は、ないんだけ……ど!」
諏訪月 陶花:『もう……一度……っ!』 薙刀を強く握って力を込める。舵を切るように、龍が軌道を変える。
セリ=ティンカー:「ギ、ぐ……っ、”くろのひじり”。”あいのまこと”。”しろのあかし”……ッ」羽根が羽ばたき、蒸気を散らす。羽根の欠片が舞い、周囲に陣をいくつも敷いている。
セリ=ティンカー:それが、何とか衝撃を和らげているらしかった。それ以外にも、色々と反撃の準備として使われているのは見ればわかる。
テトラ・トライア:「なるほど、ああすればいいんだ」
テトラ・トライア:バラララッ。巫女服の広い袖から、黒い手榴弾が放り出される。
テトラ・トライア:「せぇ、の!」
テトラ・トライア:借りた大剣の腹をフルスイング。ピンを抜かれた手榴弾を打ち上げる。
セリ=ティンカー:「――鋼の……!」
テトラ・トライア:炸裂。命を奪う火薬も破片も光もない。音を媒介にしたフラッシュバン。
テトラ・トライア:衝撃波となって荒れ狂う水龍を押し留め、質量を持つ音圧は妖精の声を、集まる羽の欠片を乱していく
セリ=ティンカー:「――――――――ッぁあぁあああッ!」
セリ=ティンカー:目が割れそうに痛み、耳が聞こえない。頭が酷く痛む。直撃を食らって。
諏訪月 陶花:相手の抵抗を、その領域ごと呑み込むのが、諏訪月が受け継ぎし対花園戦術秘奥『花薙筏』であった。
セリ=ティンカー:陣が幾つも乱れている。水竜が残った障壁ごと叩き落し、壁が割れる。
セリ=ティンカー:「……、ぐ……、ぅ」
諏訪月 陶花:(テトラ様……相変わらず、幼気なお顔に反して、戦術が容赦ありません……!)
セリ=ティンカー:羽根の銀色の光は明滅し、花園の地面にへたり込むように座り込んでいる。
諏訪月 陶花:手榴弾の破片が、黄色の花になって取り込まれる。敵を乱し、味方を取り込む。
諏訪月 陶花:位置関係は逆転していた。上空より、諏訪月が見下ろす。
セリ=ティンカー:正確には、座り込んでいるというよりも、脚を投げ出している、と言う方が近かった。彼女の脚は動かないままだ。
諏訪月 陶花:『ふっ……ふう……っ』
諏訪月 陶花:『セリ、さま。もう、抵抗はなさらないで』
セリ=ティンカー:「は、っ、ぐ………、まだ……まだ……」瞳も焦点がろくにあっていない。
セリ=ティンカー:「……よ、”よるの、とばり”。”そ、らの……しずく”」
セリ=ティンカー:それでも、彼女の唇は抵抗を選んだ。
セリ=ティンカー:――何に対してか。
セリ=ティンカー:「――”ゆめのおわり”」
セリ=ティンカー:蒼いひかりが、ゆっくりとつどってゆく。
セリ=ティンカー:それが、あなたの水の中にしみこむように集い、集って、ひかりの刀身を形作る。
テトラ・トライア:「いけない、まだ、諦めてない……!」
セリ=ティンカー:それは、セリ=ティンカーが、元居た世界で振るった得物を作る術だ。
諏訪月 陶花:出会った時の彼女を思い出す。優しい声。ころころと変わる表情。"先生"に向ける愛おしげな視線。
諏訪月 陶花:……今ここでさえ動かない足。現実で会ったときは存在しなかった羽。
諏訪月 陶花:『これは…………』
セリ=ティンカー:ゆめを、終わらせるための術。
セリ=ティンカー:かつての彼女が、他者に向けて振るい――
セリ=ティンカー:いま、己に対して向けることを選んだ術だった。あなたは、それを振う事が出来る。それがわかる。
諏訪月 陶花:薙刀から手を離す。眩く輝く刀身を、手にとる。
諏訪月 陶花:制御を失った水花の龍が、眼下へと落ちていく。陶花は、その刀身を握って。
諏訪月 陶花:まるで抵抗など感じなかった。
セリ=ティンカー:まだ……まだ。あた、しは……」手指だけで、何とか体を動かそうとしていた。口だけが彼女を裏切ったのか、それとも。
セリ=ティンカー:「あ」
セリ=ティンカー:ぱたん、と少女の腕が落ちる音がした。
諏訪月 陶花:落ちる勢いのまま。妖精の少女の胸に、刀身を突き立てていた。
諏訪月 陶花:ば しゃん
諏訪月 陶花:制御を失った水流が上空まで飛び上がり弾けた。願いの花園には本来ありえない大雨を降らせる。
諏訪月 陶花:「……セリ、様」
セリ=ティンカー:「……ああ。ごめん、トウカちゃん……」ひどくさみしそうな。悲し気な、それでも少女は笑っている。
セリ=ティンカー:「手間を……かけさせ、ちゃったね……」
セリ=ティンカー:その声と、降ってゆく雨に塗潰されてゆくように。森が淡く溶けて、流されて。
諏訪月 陶花:「ごめんなさい。ごめんなさい……」
セリ=ティンカー:「…いいよ」
セリ=ティンカー:「…きみがしたのは……ほんとうに、残酷なことだったけど……」
セリ=ティンカー:「それでも、してよかったことなんだ」
諏訪月 陶花:力の抜けた、小さな体を抱える。弱く細い自分では、あの先生のように、安心できる体勢ではいられなかった。
セリ=ティンカー:明滅していた羽根の、銀の光が消えてゆく。
セリ=ティンカー:「……ああ」
セリ=ティンカー:「………ふふ。ごめん」
セリ=ティンカー:「…あたしが飛んでるのは」
セリ=ティンカー:「綺麗だった……?」
諏訪月 陶花:「…………っ」 雨が降る。髪が顔に張り付き、ステラドレスから重く滴る。
諏訪月 陶花:雨よりも暖かなものが、頬を濡らす。
諏訪月 陶花:「きれいでした。この世のどんな空よりも、あなたの羽は」
諏訪月 陶花:この雫の暖かさこそが、春の温度なのだと、そう思った。
セリ=ティンカー:「………そっかあ。なら……」それでいいや、と。
セリ=ティンカー:妖精の少女は、最後にそうつぶやいた。きみの記憶の中、瞳の中にだけ。
セリ=ティンカー:あの銀色の羽根が残っている。

GM:バックトラックです。
GM:あ、間違えました。勲章の授与を行います。
GM:ステラナイツではステラバトル内で達成した実績によって勲章が配布され、
GM:この勲章ポイントを消費することでいろいろないいことが起こるとされています。
GM:【授与条件1:勝利の騎士】
ステラバトルに勝利した時、全てのステラナイトに授与される。

GM:これは当然ですが全員獲得ですね。獲得者はアレアテルナ、テトラ、陶花。
テトラ・トライア:やった~
セリ=ティンカー:あたし以外みんなだね!おめでとう~!
アレアテルナ:よ、喜べねえ~
セリ=ティンカー:よろこびなさい
諏訪月 陶花:あ、ありがたくいただきます
アレアテルナ:はい……アレアテルナ喜びます……
テトラ・トライア:やった~
GM:テトラちゃんはかわいいね
GM:【授与条件2:終撃の騎士】
エネミーの耐久力を0にしたステラナイトに授与される。

GM:これはもう文句なしでしょう……!陶花ちゃんこそ終撃の騎士!
テトラ・トライア:流石のパワー!
アレアテルナ:最強の必殺奥義でした
諏訪月 陶花:みんなのブーケの力だぜ!
GM:【授与条件3:鉄壁の騎士】
ステラバトル終了時に、耐久力が初期値から減っていない、あるいは増えているステラナイトに授与される。

GM:いるわけないんだよな
GM:こんなの達成できるのか……?
テトラ・トライア:接戦だよ
諏訪月 陶花:二人死にかけてる
セリ=ティンカー:大分ぼろぼろにしちゃった
テトラ・トライア:位置取りが上手いと出来るのかな…
GM:って思ったけど、私初参加でこれ獲得してた覚えあります
セリ=ティンカー:エッすご!!
テトラ・トライア:すげぇ!
GM:敵の体力をバカスカ吸収する構成だったんですよね確か
諏訪月 陶花:どうやって取ったんでしたっけ……
GM:【授与条件4:模範の騎士】
自分以外にブーケの効果を使用したステラナイトに授与される。

諏訪月 陶花:ああなるほど
セリ=ティンカー:ほええ
テトラ・トライア:あ~ それこそ今回のセリちゃんみたいに吸収する効果ありますものね
テトラ・トライア:みんなだ
GM:これは陶花ちゃん以外全員獲得かな?
諏訪月 陶花:あっこれ……! 忘れてた
セリ=ティンカー:ぽいですね
GM:陶花ちゃんもやってたんでしたっけ
諏訪月 陶花:やってないですね……!
GM:ではアレアテルナ、テトラ、セリが獲得します。
テトラ・トライア:そっか カウンターはスキル効果か…!
テトラ・トライア:やった~
諏訪月 陶花:孤高の騎士になります ともだちがいない
セリ=ティンカー:あたしもゲット!
GM:【授与条件5:共闘の騎士】
ステラバトル中、他のステラナイトと会話した場合に授与される。

GM:全員です
テトラ・トライア:たくさんおしゃべりした
セリ=ティンカー:いっぱいしゃべりました
諏訪月 陶花:しましたねえ
GM:以上より勲章の獲得数は、PC3人は3。セリちゃんは2となりました。大事に使ってね
セリ=ティンカー:わーい
テトラ・トライア:わーいわーい
諏訪月 陶花:うう……こんな程度しか稼げないなんて 旦那様になんて言えば……
アレアテルナ:アヤッター
GM:次も頑張ってね!


【Scene4-1:(諏訪月)陶花/白鷺達一】

諏訪月 陶花:……こうして、初めてのエクリプス討伐が終わった。
諏訪月 陶花:これまでで、実力的にも負荷的にも最大の激戦であった。
諏訪月 陶花:あれから、再び諏訪月の階層残骸に向かったものの、それはただの見かけ通りの屋敷の瓦礫だけになっていて。
諏訪月 陶花:下層に流れ着いた別邸と空間が繋がるようなことはもうなかった。
諏訪月 陶花:こうして、それぞれの世界に同化して、諏訪月の階層は真に消えていく。
諏訪月 陶花:そういったことも含めて、後処理が一段落したころ……諏訪月陶花は、白鷺達一から一つの提案を受けた。
諏訪月 陶花:彼の実家に案内するとのことだった。二人の結婚がとうとう明らかになり、取材や調査が厄介になってきた為だった。
諏訪月 陶花:あくまで一時避難が目的で、けれど……故郷を失った陶花が、またひどい顔をしていたのかもしれない。
諏訪月 陶花:自分が隠せていると思ったことを見破られるのは、少しだけ心地よかった。
諏訪月 陶花:そして当日。
白鷺妙子:「ほら香蓮!あんたねェ~~!まだ前の肉茹だってないでしょ!?次の肉入れてどうすんの!?」
白鷺妙子:「どっちが茹だってるか分からなくなるでしょうが!!」
白鷺妙子:――当日。諏訪月陶花は豆乳鍋を囲んでいた。
白鷺香蓮:「別にいいでしょー?あたしの肉はあたしが入れるんですぅー」
白鷺文雄:「なあ、母さんも香蓮も、喧嘩はやめよう……陶花さんが見てる前なんだからさ……」
諏訪月 陶花:「……? ……」 無論、文化としては知っている。学校のキャンプなどで体験したことも皆無ではない。
諏訪月 陶花:一つの鍋、あるいは鉄板、焼き網などを囲って、各々が取るタイプの食事体験だ。
白鷺妙子:恰幅の良い女性は白鷺妙子。白鷺達一の母だ。快活そうな香蓮は達一の妹、精悍な見た目に反して弱々しい文雄は父である。
諏訪月 陶花:だが……絶対的なものが足りていなかった。
諏訪月 陶花:速度と、テンポについていけない。
白鷺妙子:「ほら陶花ちゃん!どんどん食べなさい!いい肉なんだから!ね!」
白鷺妙子:「今日陶花ちゃんが来るっていうんだから、もういつも買わないような肉買っちゃったのよ~!グラム400円もするお豚さんなのよ!?」
白鷺文雄:「母さん、値段の話なんかするもんじゃないよ。お客さんの前で……!」
諏訪月 陶花:「え、あ、は、はい。ありがとうございます、いただきます」
白鷺香蓮:「そーだよ!大体陶花さんなんて普段からもっといいお肉食べてるに決まってるじゃん!」
諏訪月 陶花:取り皿の上にどんどん載せられていく。
白鷺香蓮:「マズかったら正直に言っていいんだからね陶花さん!」
白鷺文雄:「陶花さん、うちの達一が本当にいつも……申し訳ない……」
白鷺妙子:「どんどん食べなさいな!こんな細っこくてかわいそうにねえ!17歳なんて育ち盛りだってのに!」
諏訪月 陶花:肉を一つとる。どんどん食べろと言われても、噛み始めてから、呑み込むまでにかなり時間がかかっている。
白鷺妙子:「あのバカ、本当にちゃんとした食い物食べさせてやってるのかい!」
諏訪月 陶花:ぎゅむ、ぎゅむ、ぎゅむ。ぎゅむ。ぶち。ぎゅむ。こくん。
諏訪月 陶花:「……いえ、いつも達一さんには、気を遣っていただいています。」
諏訪月 陶花:にこりと笑う。
諏訪月 陶花:そういって、当人に視線を向ける。
白鷺達一:「……」廊下で商談の電話をしてくるという話だったが
白鷺達一:この空間に気まずさを感じているのは明らかだった。通話を終えてしばらくして、渋々といった調子で戻ってくる。
白鷺妙子:「このバカが気なんて使うわけないでしょうに!こら!こんな良い子に無理やり言わせてんじゃないよ!」
白鷺達一:「べ、別に俺が言わせてるわけじゃなくてな。そいつは教育が……」
白鷺香蓮:「あーあ!今の時代でこういうの絶対炎上するんじゃない~~?最悪パワハラ夫ってさあ~~」
諏訪月 陶花:「お帰りなさい、達一さま。しらたきが煮えていますよ」
白鷺達一:「……」
白鷺達一:「……。食べるが」
諏訪月 陶花:さっき好きだと家族が話していた。
白鷺達一:「おい、母さん。ちょっと横にどいてくれ」
白鷺妙子:「ま~た親に向かって偉そうに『おい』とか!隙間で十分だよ!言うほど体もデカくなってないくせしてね!」
白鷺文雄:「達一……近々お前が脱税容疑で逮捕されるって話は本当なのか……?この前そういう動画を見たんだが……」
白鷺達一:「父さんはネットやめてくれって何度も言っただろ!もう……」
白鷺達一:うんざりした様子でしらたきを取っていく。
白鷺達一:「……やっぱり息苦しいか?自分で言うのもなんだが、ひどい家だろう」
白鷺達一:隣の陶花にぼそりと呟く。
諏訪月 陶花:「え。いえ」自分でも驚くほどに、するりと言葉が出た。「……あ。はい。確かに、初めてですが」
諏訪月 陶花:「でも。とても……よいと感じます」
諏訪月 陶花:「好きなのだと思います」
白鷺妙子:「陶花ちゃん!あんたまだ若いんだから、こんなカスいつでも家から叩き出して、ここに逃げてきていいんだからね!」
白鷺妙子:「本当に、こんな礼儀正しくて良い子をよくも騙くらかしてくれたもんだようちの息子は!世間様に恥ずかしいよ!」
白鷺香蓮:「え~~、でもあたしは陶花さんには離婚しないでほしいなあ」
諏訪月 陶花:「そんな……いえ、もし家から出たとしたら、ここに戻ってくるのは達一さまのほうなのでは……?」
白鷺香蓮:後ろから寄りかかって甘えてくる。
白鷺香蓮:「昔からこんなバカおにいじゃなくて、美人で礼儀正しいお姉ちゃんが欲しいって思ってたもん」
諏訪月 陶花:「お姉ちゃん」 きょとんとする
白鷺妙子:「こんなのもうウチの敷居も跨がせないよ!陶花ちゃんは実家だと思ってくつろいでくれていいわよ~♡」
白鷺香蓮:「へへ、変かな?あたしの方が年上だし……でも妹だと思ってなんでも言ってくれていいからね、陶花さん」
白鷺文雄:「達一……じゃあこの動画は本当なのか……!?白鷺達一の正体は諏訪月の人間兵器で実はたくさんいるっていう動画なんだが……」
諏訪月 陶花:「……妹ができたのは初めてです」
諏訪月 陶花:自然と頬が綻ぶ。
諏訪月 陶花:「必要な時があったら、頼らせてください」
白鷺香蓮:「ふふふ、嬉しいな。今度さ、一緒に遊びに行こうよ!家族でボウリング行ったりして」
白鷺達一:「おいおいやめろよ、そういう低所得者層向けの娯楽……」
諏訪月 陶花:「低所得……そういえば以前より考えていたのですが」
諏訪月 陶花:「わたしもSNSを始めた方が良いのでしょうか……」
白鷺香蓮:「え!?絶対やめたほうがいいよインターネットなんて!」
白鷺香蓮:「おにいとかお父さんみたいなことになるよ!」
白鷺文雄:「え!?じゃあ達一の正体はレプティリアンというのも嘘だったのか!?」
白鷺達一:「逆に俺のことをなんだと思ってたんだ……」父のスマホを覗き込んで呆れている。
諏訪月 陶花:「ですが、達一さまがいつも真偽不確かなる評判に晒されており……」
諏訪月 陶花:「わたしもオークションで競り落とされたことになっていたりして……」
諏訪月 陶花:「心苦しいです」
白鷺妙子:「あっはっは!そんなの見なけりゃないのと一緒よ一緒!」
白鷺妙子:ご飯を大盛りによそう。
白鷺妙子:「あたしなんかインターネット?とか分からないから、達一がどれだけボロクソに言われてるか知らないけど」
白鷺妙子:「まあ、大したことじゃないでしょうよ!どんな書かれたって、達一みたいなバカが現にこうしてピンピンしてるんだから!」
白鷺妙子:「達一もねえ!奥さんが不安になってる時はちゃんと守ってやんなさいよ!」
白鷺妙子:「あんたが投資?とか株式?とかよく分かんない話でフラフラしてるから」
白鷺妙子:「陶花ちゃんを不安にさせてるんじゃないのかい!」
白鷺達一:「……あー、その……」
白鷺達一:ずるずるとしらたきを啜る。
白鷺達一:「……いつも心配させてるのは、悪かったよ」
諏訪月 陶花:「達一さま」
白鷺達一:「ネット上の俺の評判はもう回復不可能だが、金はあるんだ。お前の身柄に危険はないようにする。……してるつもりだ」
諏訪月 陶花:「いえ……大丈夫です。学校でも気を遣って頂いていますし」
諏訪月 陶花:「それに……わたしはご自分の意志で積極的に動かれている達一さまのお姿が好きです」
白鷺達一:「だが……嫌な評判や視線がつきまとうのは、これからもそうだと思う」
白鷺達一:いつものような、商談のために作った不敵な笑みはない。家族の中にいることで、ようやく弱みを口に出せていた。
白鷺達一:「俺が同じことを続けていく限り、これからもお前に迷惑は……かかる」
白鷺達一:「……俺だって、諏訪月とそう変わらない。そういう厄介な人間なんだ」
諏訪月 陶花:「…………」
白鷺達一:「ここから先の話をするが……もし耐えられなくて別れるなら、俺をいくらでも悪者にしていい」
白鷺達一:「……それくらいの借りは返すつもりだ」
諏訪月 陶花:「達一さま」
諏訪月 陶花:僅かに身を引く。達一の視界から外れて、声を出す。
白鷺達一:振り返る。
諏訪月 陶花:ぐい。と。
諏訪月 陶花:こっそり顔の傍で立てた人差し指が、振り返った男の頬をついている。
白鷺達一:「今日考えてほしいのは、そういうところも……」
白鷺達一:「むぐ」
白鷺香蓮:「あは!あははは!」
白鷺香蓮:「嘘でしょ!?こんなのに引っかかる成人男性初めて見た!!写真撮っちゃお!!」
白鷺達一:「むぅ……お、前なあ~~」
諏訪月 陶花:「わたしが、悪意や評判に、たえられない娘とお思いですか」
諏訪月 陶花:「こうして人を引っかけもしますし、恨みもします。無菌室の純粋培養ように思われていたら、それこそ心外です」
白鷺達一:「でも、それにしたって、その……し、心配なんだよ!自分の見た目をもっと自覚してくれよ!」
諏訪月 陶花:「鍋の飛沫が頬についております」そのまま頬をお手拭きでぬぐう。
白鷺達一:「そんなに細くて、綺麗で……いつも悲しげにしてるじゃないか……!」
諏訪月 陶花:「わたしの用途として、それが適切であったからです」
白鷺達一:その中には何にも揺るがない意思と、世を渡る優れた頭脳があることは分かっている。だが……
白鷺達一:「じゃあ俺だって適切に心配していいだろう!」
白鷺達一:「妻なんだから!」
諏訪月 陶花:「ならば、別れる際のお話なんてしないでくださいませ」
諏訪月 陶花:「ふ、……はい、夫婦……です、ので」
白鷺妙子:「そうよ!アンタ、こんないい子と別れたいっての!?ホント、どんなねじ曲がった育ち方しちゃったんだろうね!!」
諏訪月 陶花:改めて告げると気恥ずかしさが勝る。考えてみれば、達一からそれを肯定して貰ったのはほとんどないのではないか。
白鷺達一:「いや、母さんもさっき別れろって……」
白鷺妙子:「親からぎゃあぎゃあ言われた程度で別れるくらいの覚悟で結婚してたのかいアンタは!」
白鷺妙子:投擲されたおたまが直撃する。
諏訪月 陶花:「いえお義母様。わたしが弱い見かけなのは確かです……達一さま?!」
白鷺達一:「痛い……!リアルに痛いよ……」
諏訪月 陶花:「やはり……心配されぬよう、活気と活力に溢れた外見になるよう努力すべきでしょうか。お母様のご助言とご指導を頂いて」
白鷺文雄:「陶花さん。達一は確かに出来の悪いところもあるし、人様に対する礼儀もなっていない」
白鷺文雄:「そこは……自分達の教育の至らなかったところだと思う」両膝を合わせて突き、頭を下げている。
諏訪月 陶花:「え。そんな、頭を上げてください、お義父様」
白鷺文雄:「だが、大事な人間を蔑ろにする子ではない。大きな子供を育てると思って、できれば、一緒にいてやってくれないか」
白鷺文雄:「だってあの達一が……こんな綺麗な嫁さんを……うっ、ううっ……」
白鷺香蓮:「ほら父さん酔っ払い過ぎだよ~」
白鷺香蓮:「水飲んでこよ!ね?お母さんもお布団用意してあげて」
白鷺妙子:「まったく仕方ないねえこの人は……!ごめんねえ、陶花ちゃん」ドタドタと食卓を去っていく。
白鷺達一:そうして二人きりになった食卓には、いつものような静けさが戻ってくる。
白鷺達一:「……。あ、あのな……陶花」口を開く。
白鷺達一:「普段の俺なら……言えるんだよ。絶対に守るって。何も言わずについてこいって……」
白鷺達一:「でも、本当に……真剣に家族になるって、考えたら――」
白鷺達一:「未来がどうなるかなんて分からないぜ」
諏訪月 陶花:「……明日がどうなるか分からない」
白鷺達一:「もしかしたら、エクリプスとやらになっちまうかもしれないんだろう?」
諏訪月 陶花:窓の外に視線をやる。それはかつて、彼女の階層があった方向だ。
諏訪月 陶花:このアーセルトレイで、それは間違いなくもっとも絶対的な真実だろう。
諏訪月 陶花:ともすれば……こうして家族が揃い、欠けることなく、一般販売されている安物の肉で鍋を囲めることは
諏訪月 陶花:アーセルトレイの全階層から見れば、『上澄み』とすら言えるかもしれない。
諏訪月 陶花:「そうですね。あなたの傍に居ることも……わたしたちが夫婦でいることも」ステラナイツとして戦うことも。
諏訪月 陶花:「どれも、大きな……避けられるリスクに自ら挑むようなことではあります」
諏訪月 陶花:「……けれど」
諏訪月 陶花:取り皿を両手で持ったまま、隣の夫を見上げる。
諏訪月 陶花:「……達一さまが、他人の悪評を避けようとし、確実に評価されることのみ目指して、目に見えるリスクを当然に避ける方だったら」
諏訪月 陶花:「わたしが、こうして、暖かな食事を皆で囲むことは、永遠に叶わなかったでしょう」
白鷺達一:「……」目に見えるリスク。諏訪月陶花は、そうした要素そのものと言える少女だった。
白鷺達一:だけど自分は、彼女と結婚した。思えばその最初の分岐は、陶花がそうあるように造られた容姿や言動のためではなく――
白鷺達一:白鷺達一が白鷺達一らしく、そんなリスクを掴むことを選んだからだ。
白鷺達一:自分は相手を、相手は自分を選んだ。自由意志で選び取った道なら、別れることだっていつでも選ぶことができる。それが自分の人生哲学だ。
白鷺達一:だが……
白鷺達一:「また……来年も、再来年も」
白鷺達一:「ずっと……鍋を食いたいよ。お前に、そういうことを選んでほしい」
白鷺達一:「わがまますぎると思うか?」いつもとは違う、力の抜けた笑みで言う。
諏訪月 陶花:「いえ。この上なく謙虚で……とても贅沢です」
諏訪月 陶花:「どうかそのまま、求めるものを求めてください」
諏訪月 陶花:「……もし、それでも、足下の不確かさに堪えられなくなった時があったら」
諏訪月 陶花:「どうか言って下さい。触れれば折れる花として育てられましたが……」
諏訪月 陶花:「案外、これでも見かけより硬いのです。――陶花ですから」
白鷺達一:「ふ」笑う。
白鷺達一:「どうして俺とお前が運命の騎士とやらなのか……」
白鷺達一:「俺にはお前みたいなやつが、一番必要だったんだろうな」
白鷺達一:「1000兆の資産よりも、俺はいい買い物をした」
白鷺妙子:「陶花ちゃん!今日はこっちに泊まっていくでしょう!?」片時も止まっていないのか、寝室の方で声が聞こえる。
白鷺妙子:「達一の買ってきたクソ高っかい羽毛布団使っていいから!そいつはソファに寝かしときな!」
白鷺香蓮:「あ!違うってお母さん、ピンクの布団カバーはあたしのなんだから……」
白鷺達一:「ふふふふ、ふ」苦笑のように笑う。
諏訪月 陶花:「あっ、……くっ、ふふっ」つっかえたような、慣れない笑い方。


【Scene4-2:テトラ・トライア/香取陽吾】

香取陽吾:基幹世界 第〇層 香取神宮系列氷川神社
香取陽吾:……その付近の甘味処”まろがれ”。
香取陽吾:テトラ・トライアと香取陽吾は、近場の神社の近くにある有名店である甘味処にいた。
香取陽吾:簡単に言えば、そういう甘味を味わうのも良かろうと思ったのと、それなりにスペースがあって色々話すのに都合が良さそうだったからだ…というのは、
香取陽吾:香取陽吾の視点であるけれど。
香取陽吾:「結構高いな此処………まあ、勝利のお祝いだ、好きなの頼んでいいよ」
テトラ・トライア:その日、テトラ・トライアの気合は特別だった。
テトラ・トライア:具体的に言えば、服装がいつもの制服ではなく、最近買った私服だった。
テトラ・トライア:記念日というわけではない。ただ、ステラバトルに勝利したことと、バイトの給料日が近かったこと。
テトラ・トライア:なにより、どうやら自分は子供として見られていたのだと知って、早急な改善が望まれたのだ。
テトラ・トライア:服の基準も「運動に適している」ではなく、ちゃんとマネキンの着ている組み合わせを参考にした。
テトラ・トライア:お店がおすすめするということは、主力兵装だ。
テトラ・トライア:「うん、ありがとう」
香取陽吾:「服も…買ったのかい?見違えたよ」
香取陽吾:そう柔らかく君に言う彼も、珍しく私服を着ていた。黒のベストに青のストライプシャツを合わせ、スラックスにも灰色ストライプ地の、店員に言われて買ったんだろうな…というセット。
テトラ・トライア:シンプルながら刺繍の入ったシャツに、肩にヒモを引っ掛けるロングスカート。一見ワンピースに見える組み合わせ。
テトラ・トライア:「そう?……そうでしょ」
テトラ・トライア:意識してそっけない素振りをしていたが、褒められて頬が緩む。
テトラ・トライア:「香取くんも」じ、と服を見て「珍しいね」
テトラ・トライア:「制服じゃないや」
テトラ・トライア:お団子とどら焼きで迷っていたが、お団子の方に決める。
香取陽吾:「さすがに休日私用で出かけるのに制服とかは着ないって」苦笑している。
香取陽吾:「決まったかい?…ぼくは…暑いし、かき氷とかにでもしようかな」
テトラ・トライア:「うん。お団子にする。あんこと抹茶の味の。」
テトラ・トライア:「かき氷も美味しそう。涼しいもんね」
香取陽吾:「熱が籠ってしょうがないからなあ…」
香取陽吾:「はいはい、じゃあ店員さん――」注文を店員に告げて。
香取陽吾:「じゃあ、反省会。してくかい?」別にいやだというならそれで良さそうな口調だった。彼は、どうしても必要なことなどでなければ、出来る限り強制をしようとしない。
テトラ・トライア:「うん、する」お品書きを片付けて、テーブルを広く整えている。
香取陽吾:「ま、じゃあそうだな。まずは戦闘というか、戦域全体の判断から行こうか――」
テトラ・トライア:「うん」新しい服とは違って、普段遣いのカバンから取り出すのはメモ帳。
テトラ・トライア:こうした香取からの会話や、普段のメモなどが書き連ねられている。
香取陽吾:「最初は攻撃を重視して、後半からは生存重視の防御と、援護に徹した。簡単にまとめるとこうだ」戦闘の流れなどを書き出したぺら紙を君に渡す。
香取陽吾:「この判断の変化の理由は?」
テトラ・トライア:ん、と可愛らしいシャープペン(女子向けとして買い与えられた)を唇に当てつつ。
テトラ・トライア:「最初の攻撃は、様子見だった。倒せたり、削れてたら理想だったけど」
テトラ・トライア:「相手の攻撃の範囲が広かったのと、場所の問題かな。まとまってるほうが危険だって感じた」
テトラ・トライア:「だから、私が無理するより、皆で囲むのを意識したほうが良いな、と思って変えたよ」
香取陽吾:「うん。相手が詠唱…特に口唱型の魔法使いなのを見て、肺の空気を押し出すのを狙ったり、そういう戦略から実際にやってる行動自体に問題があったわけじゃない」寧ろ良い攻撃だったしね、と置いて。
香取陽吾:「ステラバトルは基本的に、防衛側の人数の方が多い」
香取陽吾:「つまり、単純な戦力をぶつけることよりも、連携を取れたほうが良い…上で、同輩の技術や技法、思想がわかってるわけでもない」
香取陽吾:「今回はある程度見たことがあったり、合わせやすかっただろうけど。それでも合わせるのに時間が掛かった」
テトラ・トライア:「陶花ちゃんは前にも知ってて、アレアテルナちゃんはお付きの騎士さんのを見てたからね」
香取陽吾:「これはもう仕方のないことでもある。…だから、責めてるわけじゃない上で」
テトラ・トライア:「うん」
香取陽吾:「テトラちゃん個人の資質と戦法は、攻撃よりも防御と援護…特に援護防御だね…に向いてる、とぼくは思ってる」
香取陽吾:「特に鎖の彼女が庇ったときだね。あの時に君が援護防御を出来ていれば、無傷に抑えられた可能性はあった」
テトラ・トライア:「そうかも」
香取陽吾:「うん。責めてるわけじゃあない。もっとより防御向きの子とか、支援向きの子が居たりする時もあるからね」
テトラ・トライア:配置から前衛を担当したが、一当てして下がれば体制も整えられた。
テトラ・トライア:「アレアテルナちゃんの剣とか、陶花ちゃんの必殺技とか、だね」
香取陽吾:「そう。ステラナイトは、個人ごとの特質がより大きく出るし…通常の人間より頑丈だ」
香取陽吾:「言うなら、普段…普通の人間相手の時のように、”急いで制圧”する必要はない、ともいえる」
テトラ・トライア:「ふむふむ」
テトラ・トライア:「痛かったりしても耐えられる部分が多いから、だよね」
香取陽吾:「相手のラッキーパンチとか、隠してる武器があるかも、という事を普段より警戒しなくて済む、という事だからね」
香取陽吾:「そう。其処が理解出来てるなら、大丈夫さ」
香取陽吾:「……個人的な見解だけど。攻撃しなければ相手は倒せないのは当然だ。その上で、テトラちゃんはもっと防御とか、他の人の援護を考えると、よりよくなる気がする」
香取陽吾:「はは、実際には手を出せないのに、偉そうかな」
テトラ・トライア:「なるほど。次はもうちょっと……落ち着いてみる」
テトラ・トライア:「いいの。参考にするから」
テトラ・トライア:「私に出来ることが増えたら、他の人も楽になって、笑える人も増えるよね」
香取陽吾:少し目を細めて、青年は笑った。
テトラ・トライア:「それで、香取くん」
香取陽吾:「そうそう、そういう気持ちが大事……うん?」
テトラ・トライア:「対人戦の心構えはわかったんだけど」
テトラ・トライア:「今回みたいに、舞台のほうも使ってくる相手って」
テトラ・トライア:「どうしたら良いと思う?」
香取陽吾:「ああ、フィールド系ね……これはもう、何というか」
香取陽吾:「ステラナイトの性質として、機動力があるか、それとも移動援護が出来るタイプもいるから」
香取陽吾:「そういう子がいないとなると……そうだな。予兆があるだろ?それの内容を忘れないようにすることかな。あまりパターンを繰り出せないんだ。リソースは有限だから」
香取陽吾:「今回で言うなら出身世界ごとの位置分けとかが、他の舞台でもあるみたいで…」
テトラ・トライア:「移動のタイミングや、間合いとか場所取りは大事、っていつも言ってるもんね」
香取陽吾:「そう言う事。地の利は人の利を上回るからね」
テトラ・トライア:「でもそっか、確かに似たような攻撃になってたかも……」
テトラ・トライア:「……」
テトラ・トライア:「ねぇねぇ」
テトラ・トライア:「他の時も好きな人って答えさせられると思う?」
香取陽吾:「ごほっ」
香取陽吾:「エー……ああいや…どうだろうね…?ああいう問いかけタイプはあるみたいだけど……」
テトラ・トライア:「私は憂慮(深く考えるという意味)しているよ、香取くん」
テトラ・トライア:「幸い、今回は好きな人っていう簡単な話題だったけど」
テトラ・トライア:「先に伝えてなければ、なし崩しになっちゃってたじゃない?」
香取陽吾:「いや………」焦っている。ああいう場で、本気なのだと示されて、なにも思わないほど木石ではない。
香取陽吾:「なし崩して。俺が押せば崩れるみたいないい方はやめてくれないか!」
テトラ・トライア:「? …………なし崩しに好きだってバレた、ってことだけど」
香取陽吾:微妙に焦っていらんこと言った、と気づいて臍を噛む。
テトラ・トライア:「崩れるの?」
テトラ・トライア:ずい、と身を乗り出す。先程より熱意がある。
香取陽吾:「いやあのね……」
香取陽吾:「俺も男なわけ。そう言う欲求はきちんとある訳よ」
香取陽吾:「だからね、そういうのきちんと気を付けないとダメだって……」
テトラ・トライア:「………………」
テトラ・トライア:「きれいな女の人に言われたら誰でもいいんですか?」
テトラ・トライア:じと。
香取陽吾:「いや……そう言う訳じゃなくてさあ……」
テトラ・トライア:「むー」
テトラ・トライア:そのタイミングで注文した甘味が運ばれてくる
香取陽吾:(正直助かった)
テトラ・トライア:追及の手を止めて、一旦興味を奪われた。
香取陽吾:「美味しそうだな……いや普通に美味しそう」
テトラ・トライア:「うん。美味しそう。みてみて、黒蜜もついてる」
香取陽吾:「ん、ああ。いいな、そっちも」
テトラ・トライア:4つずつ串についた団子のセットをひとくち食べて、目を緩ませている。
香取陽吾:こうやって楽し気にする少女を見ると、やっぱり可愛いなあと思うのだ。
テトラ・トライア:しばらくそれに夢中になり、何かを思い出したのか、ハッと目を丸くするのが見える。
テトラ・トライア:全体的に表情の変化は乏しいながら、そういった細かな機微が出るようになってきた。
香取陽吾:顎を肘で支えながら、それを見て微苦笑が零れる。(……本当に、女の子らしくなっちゃって)
テトラ・トライア:口元についた粉をこっそり拭いながら、目線を香取に向ける
香取陽吾:此方も、ブルーハワイのかき氷をすくい、一口。(甘い。上で、何かさっぱりしてら)
テトラ・トライア:「………私」
テトラ・トライア:「そっちも、食べて、みたい、なぁー」
香取陽吾:「…………」
テトラ・トライア:「スプーンがないなぁー」
テトラ・トライア:何かを吹き込まれたようだ
香取陽吾:スプーンもう一個、ってつい店員さんに頼みそうになった手が迷う。
香取陽吾:(いや俺は何を考えてるんだって本当にさあこの子はもう自分が色々そういう目で見られてるって気づかないのかなあもう!)
香取陽吾:「……店員さーん!スプーンもう一個ください!!」
テトラ・トライア:お気づきだろうか。迷っていたどら焼きのセットには、切り分けるためのフォークがついていたことを。
香取陽吾:妄念を断ち切ってそう大声で言った。
テトラ・トライア:万難を排してこの盤面を整えている。
テトラ・トライア:「…………………」じーっ
香取陽吾:「見たって駄目!!」
テトラ・トライア:「押せばいけるって言ったのに」
香取陽吾:「あのね、本当言わせてもらうけど異性からの眼とかそういうの気にしなさい!無防備!」
香取陽吾:店員さんから貰ったもう一個のスプーンを取り、
テトラ・トライア:「香取くん以外にはしないもん」
香取陽吾:「ほら!これで食べていいから」その上に取ったかき氷が載っている。
香取陽吾:「普段から気を付けないとダメってことだよ、もう…!」
テトラ・トライア:「!」好機。
テトラ・トライア:「あーん」はむ。
テトラ・トライア:手ではなく口で受け取る。
香取陽吾:「……ああっ」
香取陽吾:「……俺って奴はも~~……!」
テトラ・トライア:「冷たい、美味しい、ね」
テトラ・トライア:「………香取くんの言ったとおりだね」
テトラ・トライア:「攻撃を焦らなくても、チャンスを待てば良いわけだ」
テトラ・トライア:やや得意げ
香取陽吾:「そうなの。だから、これから食べたかったら自分で食べなさい!」彼女の手を取って、彼女が口を付けたスプーンを握らせる。
香取陽吾:「あ~も~、変なとこに応用しちゃって…!」
テトラ・トライア:年相応に小さい手は包みこまれている。
テトラ・トライア:「はぁい。あ、お返しにお団子もどうぞ」
テトラ・トライア:串から取り外す。どら焼きに比べて渡しやすい。同じものを食べて親密度アップ。高度なタクティクス。
香取陽吾:その細くて、しなやかな指や手のひらの感触がした。
香取陽吾:「……自分のスプーンで取るからね?」
テトラ・トライア:「……」外した団子をスプーンに載せようとしていた。(先手か……)
テトラ・トライア:「……どうぞ」つい、と小皿を移動させる
香取陽吾:「ったく、こんなの見られてたらどういわれるか……」自分のスプーンで取って。「ありがとう」
香取陽吾:ぱくりと一口。静かに味わって、その餡の甘味に少し顔がほころぶ。
香取陽吾:「うーん、こっちも美味しいな……柔らかい…」
テトラ・トライア:「大丈夫、大丈夫。平気平気」
香取陽吾:「本当かなあ……」
テトラ・トライア:「うん。私が責任を持って説明するね」
テトラ・トライア:結局こちらの目論見は阻止されているが、その顔を見られれば文句は出ない。
香取陽吾:「何というか、計算高くもなっちゃって…」
香取陽吾:そう文句を言うようでいて、彼の表情は楽しそうだった。
テトラ・トライア:香取陽吾という人間は、楽しい時や嬉しい時の笑顔に囲まれるのが、一番似合ってるからだ。
テトラ・トライア:「それほどでも」
テトラ・トライア:「ちなみに、今日の本番はこのあとだから、ね」
香取陽吾:「えっ」
テトラ・トライア:「知ってる? 今から行く神社って」
テトラ・トライア:「縁結びで有名なんだって」

香取陽吾:香取神宮系列 氷川神社 境内
香取陽吾
香取陽吾:氷川神社は、香取神宮の系列の神社であり、そうでありつつも様々な逸話がある神社である。
香取陽吾:地元民から愛され、観光客を呼び込むために周辺は開発され、先程の甘味処などのような店舗が展開していた。
香取陽吾:…その騒がしい外とは違い、境内の中はどこか静けさがある。
香取陽吾:人の数自体は多いし、社務所前などはやはり騒がしいが、やはり鳥居の中からは外と違う空気が流れている。
香取陽吾:少し懐かしいな、という目で周囲を見ていた。此処は以前と変わりがない。
テトラ・トライア:普段はあまり来ない場所だ。
テトラ・トライア:いつもお祈りをするほど信心深くはないし、配達のアルバイトとしても関わる理由がない。
テトラ・トライア:人気が少なく長い石段があればトレーニングには向いているかも知れないが、ここはそういう場所でもない。
テトラ・トライア:ただ、学校の会話では何度か名前が上がるのだ。その効能が主として。
テトラ・トライア:「お賽銭入れれば良いんだっけ」
香取陽吾:「ああ、そうだね。小銭はあるかい?ないならぼくが出すよ」
テトラ・トライア:シンプルな財布から、一番少額の貨幣を取り出している。
テトラ・トライア:「大丈夫。準備してきたから」
香取陽吾:「準備いいなあ……」此方は100円玉を取り出している。色々警察の道場だとかでお世話になったこともあるからだ。
テトラ・トライア:「知ってる? 製造されたのがちょうど5年前だと一番良いんだって」迷信である。
テトラ・トライア:◯年前の部分は話が伝わるごとに変化しているが、テトラがそれを知る由はない
香取陽吾:苦笑する。「…神様には、敬意を持ってね」
香取陽吾:色々という事は出来たが、それだけ言って彼女の楽しそうな話を聞く。
テトラ・トライア:「うん」
テトラ・トライア:「一回、ちゃんとお礼を言わなきゃと思ってたの」
香取陽吾:「…?ここに来たことあったのかい?」
テトラ・トライア:「ううん」ふるる、と首を降る
テトラ・トライア:「来ようとは思ってたよ。忙しくなる時期はアルバイトの募集があるって聞いたから」
テトラ・トライア:「でも、ほら、縁結びの神様でしょ?」
香取陽吾:「ああ~……ここは結構人来るからなあ。…ああ」
テトラ・トライア:「……香取くんとの縁を結んでくれたこと。お礼を言わなきゃ、って思ったの」
テトラ・トライア:少し頬を染めて、照れくさそうにいう。
香取陽吾:「……」眼を上に逸らす。少し此方も照れそうになるような、そんな破壊力のある表情だった。
香取陽吾:「…そりゃ、いいコトだ。そう言う事なら、きっと神様も気に入るさ」
テトラ・トライア:「うん、うん」
テトラ・トライア:縁結びは縁結び。成就ではないのだから、出会った後は自分の努力が不可欠……というのもよかった。
テトラ・トライア:通常は、素敵な誰かに出会わせてください、と祈るらしいけど
テトラ・トライア:すでに出会ったのなら、お礼を言っておくのが筋だろう。
テトラ・トライア:「……香取くんは?」
テトラ・トライア:「私に出会えて、良かった?」
香取陽吾:「……」ふいと前を向く。
香取陽吾:「悪いとは思ってないさ。………これでいいかい?」
香取陽吾:神様。
香取陽吾:俺には過ぎた子だってやっぱり思うんだけど、なんか色々他で辻褄合わせてないですよね。
香取陽吾:「……なんて、バチが当たるかね……」
テトラ・トライア:「100点の答えじゃ、ないなぁ」
テトラ・トライア:ツーンと言いつつ、少し笑って身を寄せる。
テトラ・トライア:少しだけ勇気を出して片腕を取りつつ、手のひらを合わせる。
香取陽吾:「そりゃ失礼。もっと頑張りますよ、お姫様」硬くて大きい手だった。
テトラ・トライア:こうして手に触れるのが好きだった。一番最初に、伸ばしてくれた手のぬくもりを覚えてる。
香取陽吾:様々な修練と、実戦で、傷も幾つも出来ている。そんな武骨な。
テトラ・トライア:「うん。そうして」
テトラ・トライア:お姫様扱いにくすぐったくなりつつ、じゃあ守ってくれるなら騎士様だろうか、と思って。
テトラ・トライア:最近知り合った顔を思い出したので、訂正する。
テトラ・トライア:「王子様になってくれるの、待ってるね」
テトラ・トライア:うふふ、と。
テトラ・トライア:ちゃんと好きだというより、なんだか照れるのだった


【Scene4-3:アレアテルナ・リスフィタ・イフトノート/イーレ・リュニック】

アレアテルナ:アーセルトレイ第76層。
アレアテルナ:一週間ほどの上層外交に向かっていたアレアテルナ王女は、その成果報告と今後の展望を兼ねた君主演説を行った。
アレアテルナ:広大な広場だったが、今や、この国家の主要な要人はこの広場に収まる程度で足りてしまう。
アレアテルナ:「――の一方、先に述べたような様々な形で、復興の兆しがテアトには芽生えつつあります」
アレアテルナ:普段の装いとも異なる、丈の長い純白のドレスだ。髪はまとめず、白いティアラを身に着けている。
アレアテルナ:「これは文化再生庁を始めとした、復興に携わる皆様の多大な努力であるとともに」
アレアテルナ:「苦境の中にあって互いを思いやり、力を尽くすことのできる、国民一人ひとりのお力による結果だと考えております」
アレアテルナ:「わたし達の誰もが、最大の苦難を味わいました。誰もが同じように失い、同じように悲しむのだと……」
アレアテルナ:「それをお互いに理解し合えたことが、わたし達の手に入れた数少ない、けれど希少な――」
騎士団:「しかし、本当に綺麗っすねえ、王女殿下」
騎士団:イーレの隣で警護をしている後輩の騎士が、ぼんやりと呟く。
騎士団:「あんな美人さんなら世界がこうなってもすぐ結婚相手見つかりそうなもんっすけど」
騎士団:「やっぱり王女殿下くらいの人だと、そういうの興味なさげなんすかね?清純そうだしなあ」
イーレ・リュニック:「お喋りは感心しませんよ」唇を動かさずに発声する。唇を読まれないための騎士の嗜みだ。
イーレ・リュニック:「ですが、そうですね」続けて雑談に興じる。タガを緩めてもよくないが、締め上げすぎてもよくない。
イーレ・リュニック:「世界がこうなったからこそ、かもしれませんね」
イーレ・リュニック:「状況が変わったのです。選択肢も色々増えているでしょう」
騎士団:「確かに、お相手の候補がたくさんいて迷ってるのかもしれないっすね~」
騎士団:彼は特に政治的事情に疎い後輩で、イーレの司祭達への根回しや、王女周辺の政略結婚の噂をほとんど理解していないようだった。
イーレ・リュニック:だからこそ、イーレも安心して側仕えに参加させている点もある。考える頭がある者には、それ相応の場所があるのだ。
騎士団:「状況が変わったっていや、護衛任務も前の王国よりずっとヒマになって、そこは良かったっすよ」
イーレ・リュニック:「おや、斬新な視点ですね」
イーレ・リュニック:「むしろ、対応する幅は増えておりませんか?」
騎士団:「まあ他の層が侵略してくる可能性は、いつも言われてる通りあるんすけど――」
騎士団:「前よりも世界が平和になったってことじゃないすか?そっちの方がいいと思いますね、俺は」
イーレ・リュニック:「…………そうですね」
イーレ・リュニック:「騎士が手柄を上げるより、お飾りであるほうがよっぽど良い話です」
アレアテルナ:「かつてのような大国ではなく、小さな国家となったからこそ」
アレアテルナ:「一人ひとりの未来に、大きな幸いが望めるように……真に平和で、格差のない社会を創り出せるのではないでしょうか」
アレアテルナ:「わたしは、そような世界の礎になりたいと願います。ただ一人残ったイフトノートの娘として……」
アレアテルナ:「これからも責務を果たしてまいります」
アレアテルナ:聴衆からの歓声が上がる。壇上のアレアテルナは一礼をして、去り際に、騎士団にも目配せをする。
イーレ・リュニック:アレアテルナに合わせて騎士団も拍手。
イーレ・リュニック:その後は事前の取り決め通り。集まった騎士団は解散する聴衆達の誘導や、警備と協力するために各所に分散していく。
イーレ・リュニック:「では、後はお願いします」
イーレ・リュニック:後輩であり、一番実力を伸ばしているものに現場の指揮を譲渡。
騎士団:「はぁ、しかし控室の警護はイーレ先パイだけで大丈夫すか?」
イーレ・リュニック:イーレ本人は近衛騎士として、退場するアレアテルナに付き従っていく。
イーレ・リュニック:「えぇ。特に問題ないでしょう? 建物の出入り口は固めることになっていますし」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様も、普段から物々しく騎士を引き連れていては、威圧感を与えてしまいますからね」
イーレ・リュニック:「後は我々が不審者を通さなければ大丈夫です。信頼していますよ?」
騎士団:「まあ、平和っすからね~。大丈夫っす!任してください!」
イーレ・リュニック:ぽん、と肩に手を置いて応え、後を任せる。
アレアテルナ:君主演説にも用いられる広場に付帯する施設には、各種のイベント用の控室が設けられていた。
アレアテルナ:王族が用いるのは、当然ながら個室だ。イーレは扉前で警護を担当することになる。
アレアテルナ:「……イーレ」扉の向こうから声がかかる。
アレアテルナ:「演説、上手くやれてたかな」
イーレ・リュニック:「えぇ。いつも通り、素晴らしい演説でした」
アレアテルナ:「昔から――」
アレアテルナ:「わたし達の国で虐げられて、苦しい思いをしている人達を救いたいって思ってたの」
アレアテルナ:「お父様やお姉様達だって真面目に考えて、できるかぎりのことをしていたと思う……。だけど、志だけで全てを救うには」
アレアテルナ:「わたし達の国は広すぎたんだろうね」
アレアテルナ:「……世界がこうなってしまわないと、わたしの夢は叶わなかったのかな」
イーレ・リュニック:「……いえ」
アレアテルナ:「昔のイーレみたいな子を、みんな、不幸から掬い上げてあげたいって……」
イーレ・リュニック:「きっと、そんなことはありません」
イーレ・リュニック:「なぜなら、私はここに居るからです」
イーレ・リュニック:「アレアテルナ様の思う理想の、全てではなかったかも知れません」
イーレ・リュニック:「ですが、かつては広すぎて、手が届かなかったとしても」
イーレ・リュニック:「もし世界が続いていた時……いつか、その手は届いたものと思っています」
アレアテルナ:「……イーレは、信じてくれるんだね」
イーレ・リュニック:「もちろんです」
アレアテルナ:「イーレがいてくれたからだよ。全部なくなってしまっても、まだ、信じてくれる人がいたから――」
アレアテルナ:「だから頑張れたの。わたし、本当は……すごく弱くて臆病な……ただの女の子だから」
イーレ・リュニック:「…………あぁ」口調を崩す。
イーレ・リュニック:騎士団に警護を任せ、彼らが実直に仕事をこなすのならば、ここに侵入できる手合はいない。
イーレ・リュニック:少なくともイーレの自覚ではそうであり、その上で警戒を続けるのは──強迫観念と呼ばれても仕方がない。
イーレ・リュニック:「初めて会った時は、王女様とは思ってなかったからな」
イーレ・リュニック:「それなのに、こうして国を背負って、大変なことをしている」
アレアテルナ:「ふふ。あっちが本当かも……しれませんよ」
アレアテルナ:「……イーレ。中に入ってきて」
アレアテルナ:扉の向こうから言う。
イーレ・リュニック:「もし、あっちが本当なら…………」
イーレ・リュニック:扉に手をかける。見られてないのならば、気にすることはない。
イーレ・リュニック:「お互い、秘密の姿は相手だけに見せてるってことになるな」
アレアテルナ:「――うん」
アレアテルナ:座っている。ドレスを脱いだ、白い下着姿だった。
アレアテルナ:「この傷のこと、覚えてる?」
アレアテルナ:白い太腿の銃痕は、このような姿にでもならなければ、誰も見る機会のないものだろう。
イーレ・リュニック:その宝石のような肢体に、今更目線を反らすことはない。
イーレ・リュニック:あるいは思いを告げる前であれば、『騎士らしく』扉を開けることすらなかったかも知れないが。
イーレ・リュニック:「その傷は……」
イーレ・リュニック:足の銃創。初めての出会いの時に、彼女の生命と自分の運命を左右したもの。
イーレ・リュニック:「消したものだと思っていた、な」
イーレ・リュニック:少なくとも、前に見た時は傷一つなかった。我ながらそんな事を確認しているのもどうかと思う。
アレアテルナ:「侍医さんにも……消したほうがいいって、何度も言われたんだよ」
アレアテルナ:「でも、残してたの」
アレアテルナ:「ずっと、他の誰にも……見せたくなかったんだから」微笑む。
イーレ・リュニック:「あぁ……騎士ならともかく、そうだろう、な」
イーレ・リュニック:王女の太ももの傷。女学生らしくスカートでも履くのでなければ、実際に見るのは同衾を許される相手ぐらいだろう。
イーレ・リュニック:「よかった」
イーレ・リュニック:「見るのが、オレだけで」
アレアテルナ:「――イーレ」細い手で、イーレの背中を抱きとめて
アレアテルナ:そして囁く。「昨日までで、元老院の4人に結婚相手について事前にお話をしたわ」
イーレ・リュニック:騎士服の分厚い生地の向こうにアレアテルナの体温を感じる。
イーレ・リュニック:「そうなのか」
イーレ・リュニック:口調は淀みなく。しかし、触れた背中に緊張の動きがある。
アレアテルナ:「わたしがもう少しだけ真面目なお姫様をやっていれば、すぐに過半数になる」
イーレ・リュニック:「すごいな」
イーレ・リュニック:本心だ。国のトップに意見を通すのは、自分にはまだ手の届かない領域だ。
アレアテルナ:「イーレだって、努力をしてるんでしょう?」
アレアテルナ:「なんでもするって約束してくれたもの」
イーレ・リュニック:「あぁ、している」
イーレ・リュニック:「こうした、自分を鍛える以外のことは難しいな」
イーレ・リュニック:イーレの起こした行動は、端的にいって"恋バナ"になる。
イーレ・リュニック:王女の周りではなく、市井の周りや、騎士団。
イーレ・リュニック:本人からとは思わせず、"王女の結婚相手"について会話する機会や、その相手への興味をそれとなく流布していく。
イーレ・リュニック:その中に、ロマンスの話題として「側にいる騎士」の存在などを徐々に盛り込んでいく。
イーレ・リュニック:時たま、本人に突撃するものが出れば否定はしない。そうすれば、憶測はどんどん広まっていく。
イーレ・リュニック:"他者からどう見られるか"。それはイーレが常に考えて、実践し続けてきた領域だ。
イーレ・リュニック:「今までもやろうと思って、控えてはいたんだけどね」
アレアテルナ:「……婚約発表までは、共犯がばれないようにしないとね」笑う。
イーレ・リュニック:「そうだな」
イーレ・リュニック:「きっと皆、びっくりするだろう」
イーレ・リュニック:普段の笑顔とは違う、口角を上げるいたずらっぽい笑い。
アレアテルナ:「それまでは、上にいる間だけ――」
アレアテルナ:「わたしを秘密の妻にしてね」
イーレ・リュニック:「あぁ」
アレアテルナ:アレアテルナ王女は多忙だ。76層に戻っても休むことはほとんどなく、明日からは上層の統治政府との交渉に向かう。
アレアテルナ:その時には、近衛騎士としてイーレ・リュニックだけが傍らにいる。
アレアテルナ:「だから今日は、お互いいるべきところに戻って」
アレアテルナ:「良い子でいましょう?約束よ」
イーレ・リュニック:「約束だ、な」
イーレ・リュニック:かがみ込み、愛おしげにアレアテルナの頬を撫でる。
アレアテルナ:目を閉じ、幸せそうにその体温を受け入れる。
アレアテルナ:(女神様。わたしの望みは、もう叶ってしまいました)
アレアテルナ:(王としても、女としても)
イーレ・リュニック:そして唇同士が触れ合うような一瞬のキス。衣装を変える際、化粧を整える前でなければ出来ない。
イーレ・リュニック:わずかについた紅を親指で拭い、体温を名残惜しみながら離れる。
アレアテルナ:一度だけだ。今日は、それ以上求めることはしない。
イーレ・リュニック:二度を許すと、タガが外れる。外れてしまうなら、それをすることは出来ない。
イーレ・リュニック:次に上層に上がる時、きっとキスが増えるのだろう。
アレアテルナ:(……だから、自分の世界の欠けを満たした……それ以上の幸福は)
アレアテルナ:(みんなのために。悲劇を生まないために、与えることを誓います)
アレアテルナ:(だから、わたしは)
アレアテルナ:(……ステラナイトになった)
アレアテルナ:イーレが去った部屋で、座ったまま一人、目を閉じて思う。
アレアテルナ:そうしてまた、王女としての日常に戻っていくのだ。
アレアテルナ:「……よし」


【Scene4-4:セリ=ティンカー/ルバート・アロス】

ルバート・アロス:【とある下層】
ルバート・アロス:建物よりも瓦礫のほうが多い、とある下層の端。
ルバート・アロス:時に治療を求める人で賑わい、時に泣き声や怒号や悲鳴が響く、アロス治療所。
ルバート・アロス:だがこの日は、医療所は静かだった。まれに通りすぎるものが、驚いたようにその看板を見てから、……再び見て、離れていく。
ルバート・アロス:『 closed 臨時休業 』
ルバート・アロス:それは、開業以来初の出来事だった。

ルバート・アロス:「……考えてみれば」
ルバート・アロス:「君に、慰労を出したことがなかったな」
ルバート・アロス:あの戦いの後。
ルバート・アロス:ルバート・アロスは、セリにそう告げた。
セリ=ティンカー:「うん…?ああ、そう言われてみると……」珍しく、セリは普段と違う服装をしている。
セリ=ティンカー:黒のパーカーを羽織る様に着込んで、下は薄い白のシャツ。下はチェック柄の赤いスカート。
セリ=ティンカー:「確かに、なかったかも」
ルバート・アロス:「出そう」
セリ=ティンカー:「え?」
ルバート・アロス:「そうだな。……一週間だ。その間で、近い内に処置や予定が入っている患者を、先一ヶ月分片付ける」
セリ=ティンカー:「また無茶苦茶な予定たてますねせんせ」
ルバート・アロス:「出来ることしかやらないぞ、僕は。……その間、君は行きたいところを考えてくれ」
セリ=ティンカー:「えー、普段ひと月に一回とか数か月に一回しか来ない人には手紙とか色々で連絡して……」
セリ=ティンカー:「……良いの?」
セリ=ティンカー:「うん。色々、考えてみるね」ふわりと笑う。
ルバート・アロス:「ああ。……頼む」
セリ=ティンカー:思えば。あの日から、少女はどこか寂しげに笑うのが増えたように見えた。
セリ=ティンカー:明るくて、周りを照らすような輝きが、どこかちらついているかのような。

ルバート・アロス:【下層  或る廃教会】
ルバート・アロス:車輪が、割れた石畳を行く音だけが鳴っている。
ルバート・アロス:空は晴天。アロス診療所より、更に住宅地から離れた場所だった。
ルバート・アロス:あるいは、かつては人の賑わう場所だったのだろうが、何らかの事情で放棄されたのだろう。
ルバート・アロス:「ここか?」
ルバート・アロス:白衣の上から黒いコートを羽織っている。
セリ=ティンカー:「うん。なつかしいねぇ」遠くを眺めるように、少女はその廃教会を見渡している。
ルバート・アロス:外回りでもない、純粋な外出など本当に久しぶりだった。ひょっとしたら、大学在籍時まで遡るかも知れない。
ルバート・アロス:「懐かしい?」
セリ=ティンカー:少女も、普段とは違った服を着ていた。闇市で何とか、実用性がありつつもお洒落ができるように、と集めた服だ。
セリ=ティンカー:「もう。覚えてないの?」
セリ=ティンカー:「あたしとあなたが出会った場所だよ」
ルバート・アロス:「…………ああ」
ルバート・アロス:言われて、ようやく思い出した。あの抗争に巻き込まれて、瀕死の状態で……
ルバート・アロス:「耄碌していたか」
セリ=ティンカー:「懐かしいなあ。本当、一杯いっしょにいた気がしたのに。振り返ってみると、全然時間が経ってないんだもの」
セリ=ティンカー:「忙しかったんでしょ」ふふん、と少し得意げにしながら、手を腰に当てる。
ルバート・アロス:「……それだけ、濃い時間だったってことだろ。」
セリ=ティンカー:「そうかも」弾けるような笑顔を浮かべる。
ルバート・アロス:くしゃりと、低い位置の赤髪を撫でる。
セリ=ティンカー:「きっと、此処に来る前のあたしに言ったら、絶対信じないわ。あなたはここに落ちてきて、」そのまま彼の腕を受け入れる。
セリ=ティンカー:「そこで助けた人に、肌を許して……そうして、そのひとが運命の人なのよ」
ルバート・アロス:「運命、か」
セリ=ティンカー:「うん」少女は嬉しそうだった。笑ってそう言った。
ルバート・アロス:……少しだけ、自重するような響きを帯びていた。この男にしては珍しく。
ルバート・アロス:「あと少しで、僕は全てを壊してしまうところだった」
セリ=ティンカー:「でも、壊してない」少女は腕をがんばって伸ばして、きみのほっぺたに触れさせようとした。…届いていないかもしれない。
ルバート・アロス:自分の顔を下げる。そのまま、膝をついて、少女の前に跪く。
セリ=ティンカー:「どうしたの、せんせ。改まって」
ルバート・アロス:「僕は、ステラナイツの資格を失った」
セリ=ティンカー:「あたしもそうだよ」少し寂しそうに笑う。
ルバート・アロス:「君の足を治す手段が、……無くなった、とは言わないが大きく遠のいた」
セリ=ティンカー:「そうかも…勲章、頑張って集めてたのになあ」
ルバート・アロス:治療の手段は問わない。理論を無視して、一足飛びに結果が得られるのが患者のためならそうする。
ルバート・アロス:「すまない」
セリ=ティンカー:「なんで謝るの。こうなったのは、あたしが歪みを使ってきたからでしょ」
セリ=ティンカー:「そのたびに、せんせは色々痛かったり苦しかったりしたでしょう?なら、謝るのはあたしの方なのよ」
セリ=ティンカー:「ごめんね、せんせ」
セリ=ティンカー:「あたしは、分かってたんだ。あの時に。何度も使えばそうなるって。なのに使ったんだもの」
ルバート・アロス:「そうしなければ、負ける恐れのある戦いがあった。……だが、その後もそれを許したのは、僕の誤りだ」
セリ=ティンカー:「じゃあ」
セリ=ティンカー:「あたしたち、二人とものまちがいだね」
ルバート・アロス:「……そうか」
ルバート・アロス:「二人とも、か……」
セリ=ティンカー:「そうだよ。だって、あたしたちは」
セリ=ティンカー:「ふたりでひとりの、ステラナイトだったんだから」
ルバート・アロス:「ステラナイト。星の騎士」す、と立ち上がる。「……運命の相手が、揃って間違えるなんて、お笑い草だな」
セリ=ティンカー:「あたしはね、せんせ」
ルバート・アロス:そのまま、再び車椅子を押していく。廃教会は、かつてよりもずっと、ボロボロだった。
セリ=ティンカー:「間違いと、後悔と、出来なかったことだらけだったのよ」ゆっくりと押されていく。
ルバート・アロス:時間が経過したから当然そうなのだろうが、草木の侵蝕が激しい。壁にも雑草が生えている。
セリ=ティンカー:「故郷の世界は、あたしが救えなかった。救う巡礼の旅で、どうしようもなかった人たちと、妖精たちが一杯いた」
セリ=ティンカー:「あたしは、救いになれなかった」
ルバート・アロス:「……聞いている」
セリ=ティンカー:「うん。そうして、世界がロアテラによって滅んで――」
セリ=ティンカー:「そうしたら、春告精はいらなくなった。都市レベルの規模なら、普通に皆で何とかなるから」
セリ=ティンカー:「--言ってなかったと思うけど」
セリ=ティンカー:「あたし、本当に皆が皆、憎たらしくてたまらなかった」
ルバート・アロス:「……………」
セリ=ティンカー:「あたしの脚を返して。あたしの眼を返して。あたしの時間を、後悔を返して」
セリ=ティンカー:「そう、言ってやりたかった」
セリ=ティンカー:「でも、ロアテラに食われて戻ってきた皆は、何とかなってよかったって喜んでいたの」
セリ=ティンカー:「……世界が憎かったのは、あたしだけだった」
セリ=ティンカー:「だから、あたしは宇宙に出たんだ。死んだって良かったの」
セリ=ティンカー:「暗い空のなかで、燃え尽きればいいって思ったの」
セリ=ティンカー:「………そうしたら、あなたに出会った」
ルバート・アロス:彼女と出会った時のことを思い出す。別の階層に渡り、出会ったばかりの瀕死の男に残った力を与えて。
ルバート・アロス:それは、彼女の無差別の献身であると思っていたけれど。そうではなかった。
ルバート・アロス:「君は」
ルバート・アロス:「……自暴自棄の、故郷の世界への当てつけのために、僕を救った?」
セリ=ティンカー:「ちがうよ」
セリ=ティンカー:「そこまで、あたしはね。故郷だって、嫌いにすらなれなかった」
セリ=ティンカー:車椅子を止める。キリキリと回して、あなたに向き合う。
セリ=ティンカー:「あなたは、ずっと誰かを助けようとしていた」
セリ=ティンカー:「はじめてだったのよ」
セリ=ティンカー:「あたしに、助けてって言わなかったのは」
セリ=ティンカー:「だから、こんな人を放って置けなくて……ふふ。迷惑だった?」
ルバート・アロス:「……もちろん、助かったには助かったが」
ルバート・アロス:少しだけ表情を不快そうに歪める。「それを聞いて思う。治療が必要なのは、君の世界の他の住人だ」
ルバート・アロス:「病名は、春告精への精神的依存症」
セリ=ティンカー:ぺろりと舌を出して、悪戯っぽく笑うと。少女はこう言った。「ふふ。しょうがないのよ。本当に皆、英雄で、神様みたいに思っていたの」
ルバート・アロス:「僕の世界の医者なら、皆同じ事を言うだろう。こんな少女に世界を背負わせて……」
ルバート・アロス:「けど。……」
ルバート・アロス:「……生き残ったのが、僕で良かった」
セリ=ティンカー:にこりと少女は笑う。本当に嬉しそうな微笑みだった。
ルバート・アロス:扉を開ける。
ルバート・アロス:――――――――――ざあ、と風が吹いた。
ルバート・アロス:教会は、あの日よりも更に崩れて、風雨に晒されていた。
ルバート・アロス:崩れた天井から光が差していた。
ルバート・アロス:数多の草花が、長椅子の間から、突き破った絨毯の下から、朽ちたオルガンの隙間から顔を出して咲いていた。
セリ=ティンカー:「わあ………」少女が瞳を輝かせる。こうした、野生の花々、草木の生命力あふれる様子が、彼女は本当に好きなようだった。
ルバート・アロス:扉が傾いで。つむじ風が花弁を巻き上げた。
ルバート・アロス:「セリ。……」
セリ=ティンカー:「なあに、せんせ?」ゆっくりとかしげるように、君を見上げる。
ルバート・アロス:「君がいなければ、僕は死んでいた」
ルバート・アロス:「あの日の話じゃない。僕は君という縁がなければ、片端から報酬も得ないで無茶な治療を続けて、遅かれ速かれ野垂れ死んでいた」
セリ=ティンカー:「そこで改めようとしないのがせんせだよねえ」
ルバート・アロス:錨のようだった。自分がいなければ失われるものが。失いたくはないと、真に思う相手が必要だった。
ルバート・アロス:「あの時、僕こそが、治療が必要な患者だったんだ。……君は、世界を救えなかったとして」
ルバート・アロス:「僕を、僕の世界を救ったんだ」
セリ=ティンカー:「そうかな」頬が、感情の昂りと共に白から赤く染まってゆく。
セリ=ティンカー:「……せんせはね、気付いてないかもしれないけれど――」
セリ=ティンカー:「この階層で、貴重なお医者さんでしょう?色々、つなぎとめようってする女の子とか、好きな子もいるんだよ?」
セリ=ティンカー:「あたしで、よかったのかな」本当に嬉しい言葉だった。だからこそ、あまりにすぐ受け取る、という事が出来なくて。
ルバート・アロス:「それは。……だから。その、なんだ……」
ルバート・アロス:片目を閉じる。手のひらの底を、頬に当てる。
ルバート・アロス:頬が熱い。医学生の頃に戻ったようだった。
ルバート・アロス:「きみが、いいんだ」
ルバート・アロス:花をひとつも踏まないように気を付けて、もういちど、屈み込む。
ルバート・アロス:「好きだ。……愛している。セリ=ティンカー。きみが、一人の女の子として……その生きてきた過程も含めた、すべてを」
セリ=ティンカー:おそるおそる、あなたを見上げる。頬は赤くて、瞳は潤んでいて。本当に、それが聴こえたのか半信半疑なくらい嬉しくて。
セリ=ティンカー:ぽろ、と。頬を染めた少女が、ひとしずく。銀色の涙が零れ落ちる。
セリ=ティンカー:「……ほんとう?」こわごわと、少女は囁いた。
ルバート・アロス:「何度だって」
ルバート・アロス:「繰り返すよ」
セリ=ティンカー:「ああ………」感極まったような、熱く湿った吐息をこぼす。
セリ=ティンカー:「あ、あた……」
セリ=ティンカー:「あたし、も……」
セリ=ティンカー:「あたしも、ルバート…あなたのことを、愛しています」
ルバート・アロス:指先がそっと伸びる。少女の頬に触れる。
ルバート・アロス:「僕もだ、セリ。……ああ、良かった」
セリ=ティンカー:いつもなら、淀みなく複雑な歌を歌い上げることも容易いのどが、ひどく引き攣って。それでも何とかそう告げる。
セリ=ティンカー:「うれしい……」
ルバート・アロス:「ほんとうに……不甲斐ないところを、見せているから」
セリ=ティンカー:あなたの指に、少女の涙が触れた。本当に熱くて、火傷しそうなくらいの熱と感情が、そこにある。
セリ=ティンカー:「ううん……」
セリ=ティンカー:「あたし、そういうところも………、うん……その、」指をくるくると目の前で回す。
セリ=ティンカー:「すき、だから……」
ルバート・アロス:「……そういってくれると、助かる」
ルバート・アロス:教会の中央、蔦の絡まった十字架を見る。
ルバート・アロス:ごく自然に、その言葉が出ていた。
ルバート・アロス:「病めるときも、……いずれ、健やかなるときも」
ルバート・アロス:「喜びのときも、悲しみのときも 富めるときも、貧しいときも」
ルバート・アロス:「きみを愛し、きみを敬い、きみを慰め、きみを助け。この命と医術のある限り」
ルバート・アロス:「真心を尽くすことを……二人の女神にかけて、誓います」
セリ=ティンカー:「あ、あたしも」
セリ=ティンカー:「病を前にしたときも。健やかなる人を前にしたときも」
セリ=ティンカー:「喜びの時も。悲しみの時も。富める時も、貧しき時も--」
セリ=ティンカー:「あなたを愛し、敬い、慰め、助け……この身と、この頌があるかぎり」
セリ=ティンカー:「至誠を尽くすことを、花と色の女神、光と闇のかのかたら、二人の女神さまに、誓います」
セリ=ティンカー:「……………」
セリ=ティンカー:手を組んで、眼を閉じ祈る。何にかは、本人でさえはっきりとしなかったけれど。
セリ=ティンカー:(冬の様に峻厳で。秋のように豊かで。夏のように眩しく)
セリ=ティンカー:(--春のように、新しいことに踏み出せる勇気を、あたしにください)
セリ=ティンカー:「ね、せんせ」袖を引く。
セリ=ティンカー:「………誓っちゃったね。破れないからね」
ルバート・アロス:「それでいいよ。僕は嘘はつかない」
セリ=ティンカー:「ずっといっしょだからね」
ルバート・アロス:「うん。ずっと愛してる」
セリ=ティンカー:「---------、」
ルバート・アロス:緩やかに、その小さなおとがいを手でとって。唇を重ねる。
セリ=ティンカー:「ぅ、ん………」眼を閉じて受け入れて。
セリ=ティンカー:「……あたしと、篝火を作って、ずっとずっと残そうね」
ルバート・アロス:柔らかく、優しい、甘い感触だった。
セリ=ティンカー:それは、彼女がお話や同年代の妖精たちから漏れ聞いて知っていた、妖精と人が結ばれるときの作法だった。
セリ=ティンカー:絶えること無き火が、残す子供たちを、一族を守るようにと、そうするのだと。
ルバート・アロス:「……医学生だった頃も。この世界に来た後も、やるべきことが沢山あった。充実してるつもりだった」
ルバート・アロス:不幸だったはずがない。そのつもりもない。けれど。だというのに。
ルバート・アロス:「……ああ。誓うよ。春告精」
ルバート・アロス:「きみに逢うまでの全てが、冬だったように思える」
セリ=ティンカー:「------」顔を真っ赤にしながら、少女はきみに抱き着いて。
セリ=ティンカー:「あたしが、春にしてあげます。ああ」
セリ=ティンカー:「あなたの冬を、おわらせにきました!」
ルバート・アロス:男が、少女を抱き返す。
ルバート・アロス:雪溶けの日差しが、二人を照らしていた。




銀剣のステラナイツ『四面楚歌』 終



【目次へ戻る】